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チャットボットを使ってカスタマーサービスを改善する方法とは?
いまだに「チャットボットを導入すべきか」「どんな場面、方法でチャットボットを使えばよいのか」といったことを考えているようでは、優れたカスタマーサービスを提供することは難しいでしょう。
更新日: 2023年1月5日

カスタマーサービスにおいて、チャットボットはもはや最新のテクノロジーではありません。チャットボットは既にあらゆる業界で、ホテルの予約変更、請求書の支払い、自分に合う口紅探しといったさまざまな目的で顧客に利用されています。チャットボットと対話型AI活用は今後もさらに進むことが予想されており、Gartnerの予測では、2022年までに顧客とのコミュニケーションの70%に、機械学習、チャットボット、モバイルメッセージなどの新しいテクノロジーが利用されるようになります。これは、2018年の実績と比べて15%も高い数値です。
チャットボットを使って優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することは、決して難しいことではありません。適切なツールさえあれば、すぐにでも実現可能です。ただしその前に、まずはチャットボットとは何なのか、またその仕組みと顧客にもたらすメリットについてよく理解する必要があります。
チャットボットとは
スクリプト、あるいは自己学習によって、顧客と人間同士のような会話ができるようにプログラミングされたAIツールのことで、アプリ、メッセージプラットフォーム、SNS、チャットソリューションなどで利用されています。
チャットボットの仕組み
チャットボットはバーチャルアシスタントとも呼ばれ、あらかじめ定義されたルール、自然言語処理、機械学習、ディープラーニングを使用して、顧客(または従業員)から寄せられたさまざまな問い合わせを理解し、それに応答します。
ユーザーが質問を投げかけると、チャットボットプラットフォームのプログラム内容に応じて適切な回答を導き出します。たとえば、購入したランニングシューズのサイズが大きかったとき、顧客が販売業者のチャットボットに「返金方法を知りたい」や「サイズが合わない」などと入力すると、チャットボットはこれらがいずれも返品のリクエストだということを認識して、返品手順に関するヘルプセンターの記事を勧めてくれます。
チャットボットは、テキストまたは音声による問い合わせを処理でき、さまざまな言語、チャネル(モバイルアプリ、Webページ、メール、SNS、メッセージプラットフォームなど)に対応しています。そのため、従業員が会社のVPNに接続できずに困っているような場合も、Slackを使って社内のチャットボットにサポートを求めることができます。
Gartnerによると、チャットボットの適用範囲は限られており、少なくとも現時点では、人間が選択した特定の問題を解決し、人間が設定した特定の目標を達成するという役割にとどまっています。
チャットボットが最も効果を発揮するのは、構造化データを扱うときです。顧客のニーズがピンポイントではっきりしている場合は、シンプルで反復的なコミュニケーションを通して効果的に対応することができます。一方、創造性や感情的思考が求められるあいまいな内容に関しては、自動化するには複雑すぎるため、まだ人間には及びません。
CB Insightsのチャットボット普及に関するレポートでは、「各企業は高望みせずに、チャットボットに任せても問題のない作業を吟味しており、チャットボットの利便性を高めることに成功している」と説明されています。チャットボット活用のカギは、人間の知性と組み合わせて利用すること、そして、より良い相乗効果を生み出せるように人間と機械のパートナーシップを強化する方法を模索することにあります。
チャットボットがカスタマーサービスにもたらす
メリット
CB Insightsによると、チャットボットは、時間や費用のかかるワークフローを自動化して「多大な時間や費用を節約してくれる」という点で、企業のカスタマーサービス部門にメリットをもたらします。しかし、メリットがあるのは企業だけではありません。ここでは、社内および社外のユーザーにとってのチャットボットを活用するメリットをご紹介します。
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顧客からの問い合わせにすばやく応答できる
顧客は企業に対し、問い合わせにすばやく回答してくれることを望んでいます。実際、「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020」によると、顧客の半数以上が、カスタマーエクスペリエンスを妨げる一番の要因として「待機時間が長いこと」を挙げています。チャットボットを使えば、簡単な問い合わせへの対応を自動化して、顧客の問題をすばやく効率的に解決できます。そうなれば、初回応答時間は短くなり、顧客の満足度も向上します。
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24時間年中無休のサポートを提供できる
前述のレポートでは、顧客の40%以上が、優れたカスタマーエクスペリエンスに最も必要なものは、24時間年中無休のサポートをリアルタイムで受けられることだと考えていることもわかっています。サポート担当者の勤務時間外であっても、顧客は必要なときにいつでもサポートを利用できることを望んでいるのです。チャットボットなら、人間と違って睡眠や食事をとる必要がないため、担当者がそうした時間を取っている間も顧客からの問い合わせに対応できます。
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サポート担当者のエクスペリエンスが向上する
研究では、モチベーションが高い担当者ほど、顧客とより強固な関係を築けることがわかっています。しかし、いつも同じような質問に答えているだけではモチベーションは上がりません。そうしたよくある質問の対応はチャットボットに任せてしまえば、サポートチームは人間の介入が必要な難しいタスクから優先的に対応できます。そうなれば、作業効率が向上するうえ、担当者のエクスペリエンスも全体的に改善されます。
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顧客のニーズに先回りで応え、コンバージョン率を引き上げる
プロアクティブサポートとは、顧客の問題を予測して先回りで対応することです。髭剃り用品のオンデマンドサービスを展開するDollar Shave Clubは、自社のWebサイトにボットを実装し、よくある質問とその回答が含まれたヘルプセンター記事を表示するようにしています。このように、顧客が購入段階で持つであろう疑問をいつでも解消できるようにしておくことで、顧客が購入を中断するのを防ぐことができます。実際、疑問への答えをすばやく見つけられない場合、購入を中断すると回答した買い物客の割合は55%にのぼっています。チャットボットなら、簡単にコンバージョン率を改善することができます。
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スマートに業務を拡張して、作業効率を高める
業務を拡張するうえでも、AIは大いに役立ちます。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020」によると、42%のサポートリーダーが問い合わせ件数の増加を見込んでいるのに対し、メンバーを増員できると答えたリーダーの割合は36%にとどまっています。チャットボットは、このギャップを埋める絶好のツールです。
ライフスタイル・フィットネスブランドのSpartan Raceでは、小規模なサポートチームがボットをうまく活用して、レース中に急増する顧客からの問い合わせに対応しています。レースはたいてい週末に開催されており、メンバーの増員が難しかったことから、チームは人数を増やす代わりにZendeskのAnswer Botを導入したのです。その結果、チャットでのやり取りが9.5%減少し、チャットの対応時間を1日あたり3時間増やすことに成功しました。 -
パーソナライズされたセルフサービスを提供できる
顧客のフィードバックによると、顧客はまずは自力で問題を解決したがる傾向にあります。チャットボットを活用すれば、顧客は別のチャネルへ移動することなく、ヘルプセンター以外の場でもセルフサービスを利用できるようになります。
たとえば、企業の人事チームならSlack上で従業員にヘルプセンターの記事を提示する、eコマース企業ならチェックアウトページ上でナレッジベースのコンテンツを使って顧客の質問に回答するなど、個々の問い合わせに適したヘルプセンター記事を提示して、各ユーザーの状況に応じた情報を提供することができます。 -
必要に応じて人間も介入できる
AIは、人間と組み合わせて使ったときに最も効果を発揮します。顧客への共感が求められるリスクの高い問題など、問い合わせの中には人間の方が対応に適しているものもあります。チャットボットとサポートチームが使っているカスタマーサービスソフトウェアを統合させれば、そうした問い合わせが寄せられた場合に、人間の担当者にシームレスに引き継ぐことができます。
AIボットを導入する際に考えたいこと
AIを効果的に活用するには、まずは限られた範囲で利用し、徐々に適用範囲を広げていくことがカギとなります。ZendeskのAnswer Botなどの簡単に使い始められるソリューションを導入すれば、すぐに成果が現れるはずです。ナレッジベースと連携されたこのようなAI基盤のボットを使うと、さまざまなチャネルで顧客の問い合わせを解決できるようになります。
企業によっては、高度にカスタマイズされたAIチャットボットが必要となる場合もあるでしょう。航空会社ならTwitter上で座席を選択したり、ホテルならFacebook Messenger上で予約を取ったり、金融サービス業なら自社のチャットボット上で請求書の支払いを済ませたりと、ユーザーがボットとのやり取りを通じて各種手続きを行えるようになったら便利に違いありません。このような仕組みを実現するには、デベロッパーと強力なソリューションが必要となります。
チャットボットで達成したい目標が何であれ、大切なのは顧客を中心に据えることです。ここでは、カスタマーサービスにチャットボットを導入する際に考えるべき点を挙げていきます。
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サポートチームに最も多く寄せられている問い合わせは?
多くの企業は、繰り返し寄せられる質問への対応にばく大なコストを費やしてしまっています。こうした単純な質問は、チャットボットに対応を任せると効果的です。簡単な回答で解決できる問い合わせがないか確認してみましょう。このような問い合わせは事前に予測可能なものであり、製品チームやドキュメントチームが既に適切な回答を用意していることも少なくありません。
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自社の主要な顧客層は?
チャットボットは、自社の顧客層のニーズに合わせてカスタマイズしたときに最大限に効果を発揮します。たとえば、見込み客からハイレベルな質問が多く寄せられている場合は、チャットボットでもそうした質問に答えられるようにし、知識豊富な顧客でさえサポートが必要なほど製品が複雑な場合は、チャットボットを通して関連するリソースを提示できるようにします。また、グローバル展開している企業なら、多言語対応のチャットボットが必要になるでしょう。
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ユーザーに最も利用されているサポートチャネルは?
チャットボットは、実際の利用場面に合わせて最適化することが重要です。そのためには、ユーザーに最も利用されているチャネルを特定する必要があります。たとえば、社内で従業員向けにチャットボットの導入を検討している場合、従業員どうしでSlackを利用することが多いなら、Slackと統合できるチャットボットが必要になるでしょう。また、チェックアウト時にチャットで問い合わせが多く寄せられるeコマース企業なら、チェックアウトページにWebウィジェットを組み込むと効果的です。
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成功の測定指標は?
チャットボットの効果を最大化させるには、自社の目標に合った測定指標を用いる必要があります。一般的には、チケット(問い合わせ)の削減率、CSAT(顧客満足度)、節約できた時間などが成功指標として用いられます。
AIボットでカスタマーサービスを刷新しましょう
今や企業にとって、AI導入のハードルは決して高くありません。そのため、いまだに「チャットボットを導入すべきか」「どんな場面、方法でチャットボットを使えばよいのか」といったことを考えているようでは、優れたカスタマーサービスを提供することはできません。顧客のニーズに合わせてチャットボットをカスタマイズし、AIと人間の力をバランス良く組み合わせられれば、ロイヤルティの向上につながる優れたAIエクスペリエンスを構築できるでしょう。
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