
顧客の膝にコップ一杯の水をこぼしてしまった、と想像してみてください。その瞬間、顧客の気持ちが表情として浮かびあがってくるのが見てとれるはずです。しかし、オンライン取引の時代では、顧客と直接対面する機会がありません。企業が急速に規模を拡大し、顧客が一気に急増した今、この傾向は特に顕著になりました。
しかし、企業が顧客のエクスペリエンスを理解する責任から逃れられるわけではありません。間接的でも顧客からのフィードバックを集める方法はたくさんあります。最もよく利用される手法の1つに、顧客調査があります。その種類は、Net Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)、トランザクションCSAT、グローバルCSAT、顧客努力指標(CES:Customer Effort Scores)など他にも多岐にわたります。ここでは、各アンケートの仕組みと、アンケートを利用してカスタマーエクスペリエンスを改革する方法について簡単に説明します。また、アンケートを存分に活用するための注意事項もいくつかご紹介しましょう。
NPS
NPSは、企業の提供する商品やサービスを他者に薦める度合いを測定する業界標準の手法です。その企業の商品やサービスを、家族や友人にどの程度薦めたいかを、0から10までの点数で顧客に評価してもらいます。
顧客の評価は3つのカテゴリに分けられます。
スコア別のカテゴリ:
- 0から6までは「批判者」に分類されます。
このカテゴリの人は、企業に不満を感じている可能性があります。 - 7または8は「中立者」です。
- 9または10は「推奨者」です。
評価後に、顧客は点数を付けた理由やコメントを残すように求められることがあります。NPSにおいて最も価値ある洞察(インサイト)は、顧客自身のコメントから得られます。コメントは必ず読むことをお勧めします。
カスタマーエクスペリエンスの向上にどのように役立つか:
自社の商品やブランド、カスタマーサービスについてどう思うかを顧客に積極的に尋ねることによって、カスタマーリレーションシップの改善に向けてヒントを得ることができます。
重要なポイント:
NPSで重要なのは、顧客のコメントです。特定の顧客が批判している場合は、データを詳しく調べて、その理由を見つけてください。たとえば、0から6までの点数を付けた「批判者」は、あなたの会社に不満を持っている可能性もありますが、単に会社を推薦する行為自体が不愉快な場合もあります。批判者が不満を感じている問題点を突き止めて、対処するための行動を起こしましょう。
トランザクションCSAT
トランザクションベースで短期的な満足度を測定する顧客満足度調査(CSAT)です。CSAT調査を、特定のやりとりが終了した後、顧客に送信します。たとえば、顧客がカスタマーサービスのアドボケートに相談した後に送ります。
カスタマーエクスペリエンスの向上にどのように役立つか:
CSAT調査では、カスタマーエクスペリエンスの特定の瞬間における顧客満足度を測定できます。顧客の不満によって明らかにされた問題点は、企業のどの部分に改革が必要なのかを示します。
コンテンツマネジメントとコラボレーションプラットフォームで知られるBox社のケースを見てみましょう。Zendesk Supportを導入後、エージェントによる問題対応が効率化され、各チケットに費やす時間を20〜30秒削減し、CSATを7%増加させることができました。
重要なポイント:
CSATは、顧客とのやりとりにおいて、どの点を改善すべきかの特定に役立つツールです。長期的な満足度や顧客のロイヤルティを示す指標ではありません。
NPSは顧客が「推奨者」となる可能性を測定し、CSATは顧客の短期的な満足度を測定しますが、これらの測定値だけでは、カスタマーエクスペリエンスを完全に把握することはできません。
グローバルCSAT
トランザクションCSATはカスタマーエクスペリエンスのある特定の瞬間しか測定できませんが、グローバルCSATの調査では、顧客が企業全体にどの程度満足しているかを調べることができます。プロアクティブな調査であり、顧客が問題に直面する前に実施する点が特長です。
カスタマーエクスペリエンスの向上にどのように役立つか:
カスタマーリレーションシップの健全性を測定します。顧客が提供するデータから、カスタマーリレーションシップの改善に必要なヒントが得られます。
重要なポイント:
顧客が調査に記入するのは時間がかかります。今後も継続してフィードバックを提供してもらえるように、顧客が時間を割いて回答してくれたことに感謝の意を示しましょう。また、いただいたフィードバックがカスタマーエクスペリエンスの改善に必ず活用される旨を明記しましょう。
NPS、トランザクションCSAT、グローバルCSAT。これらはすべて、カスタマーエクスペリエンスの異なる側面に焦点を当てています。これらのアンケートを組み合わせるとより包括的な洞察が得られますが、顧客に送信するアンケートの数と種類については戦略的に検討すべきです。部門間で協力しながら調査戦略を策定し、どの調査がどの顧客に送信されたかを追跡することで、無駄を排し、各部門が社内で調査情報を共有しやすくなります。
企業から送るアンケートは全て、メッセージとトーンを常に一致させることが重要です。IT部門からのアンケートでも営業部門からのアンケートでも関係なく、ブランドのメッセージに合わせたエクスペリエンスを顧客に提供しましょう。アンケートは、顧客と直接対面することができない場合に、顧客と会話をする1つの手段だと考えてください。