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ヘルプデスクとは? 定義・要素・メリット

ヘルプデスクは、社内外のユーザーに優れたサポートを提供するための礎となるものですが、その重要性は見落とされがちです。この記事では、ヘルプデスクがビジネスにどのように役立つのか解説します。

更新日 2023年1月5日

VPN接続に手間取っている従業員であれ、バグに対処しようとしている顧客であれ、必要なときに企業からサポートを受けられないことほど苛立たしいことはありません。だれもが時間に追われているようなこの時代、顧客と従業員の双方が企業に期待しているのは、シームレスなカスタマーサービスであり、そうした対応をすることはユーザーを尊重しているという姿勢の表れにもなります。

ヘルプデスクは、社内あるいは社外のユーザーに優れたサポートを提供するための礎となるものですが、その重要性は見落とされがちです。成功のカギは、単にヘルプデスクを設置するだけでなく、自社にとってのヘルプデスクの位置づけを理解し、担当者がスムーズに業務を進められるようなツールを導入することにあります。

ヘルプデスクの定義

ヘルプデスクとは、多くの場合、企業内で大勢の従業員や顧客に対応するチームを指し、ソフトウェア製品を利用してユーザーとのやり取りを管理します。

企業による定義の違い

ヘルプデスクが意味するところは、各企業によって異なります。

ほとんどの企業では、技術的なサポートを求める社外のユーザーまたは社内のユーザー(従業員)に対応するITサポートを指します。中には、定義を拡大して、カスタマーサポートチーム、カスタマーサービスチーム、カスタマーアドボカシーチームといった組織をヘルプデスクと呼ぶ企業もあります。他にも、ユーザーが助けを必要とするときにアクセスするソフトウェアをヘルプデスクと表現することもあります。

Zendeskアドボカシーオペレーションズシニアマネージャー、Chris Grosspietschは、

「ビジネスの性質によって、ヘルプデスクはさまざまな意味を持ち得ます。しかし、根っこをたどっていけば、いずれも『サポートを提供してユーザーを助ける』という本来の役割に行き着きます。」

と述べています。

ヘルプデスクとサービスデスクの違い

おにぎりと呼ぶか、おむすびと呼ぶか。このように、同じように見えても、呼び方が異なるものというのは珍しくありません。ヘルプデスクについても、一部の企業では「サービスデスク」と表現しているところがあります。ヘルプデスクとサービスデスクの違いについては、サービスデスクはヘルプデスクの進化版で、より迅速でパーソナライズされた対応を目指していると見る向きもあります。ともあれ、一番大切なのは、そのチームが高品質なサポートを提供しているかどうかであり、名称の違いはたいしたことではありません。

ヘルプデスクがもたらすメリット

多数のクライアントに各国の言語で対応しなければならないBtoBの多国籍企業から、少数陣営で迅速なサポートを提供することが求められる小規模のBtoC企業まで、企業の規模や種類にかかわらず、ヘルプデスクはビジネスに多くのメリットをもたらします。ここでは、特に重要な3つのメリットに絞って説明します。

顧客満足度が向上する

最もわかりやすいメリットは、問い合わせをすばやくスムーズに解決して、満足度の高いサポートを顧客に届けられることです。
Grosspietschは次のように話します。「ヘルプデスクは、製品やサービスについて疑問や問題を抱えている顧客に対し、解決策を提示してトラブルを解消します。顧客を適切にサポートできれば、ロイヤルティの向上にもつながります」
以下は、カスタマーサービスがビジネスに与える影響を調査した「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020」の調査結果の抜粋です。

  • 顧客の60%は、購入先企業を決めるうえで、問い合わせへのレスポンスの速さを重視している。
  • 顧客の57%は、製品やサービスではなく、カスタマーサービスがブランドへのロイヤルティを最も高める要素だと考えている。
  • 顧客のおよそ半数は、カスタマーサービスで不快な対応を一度でも受けたら他社に乗り換える(2回以上になると、この割合は80%にまで増加する)。

従業員満足度が向上する

顧客のニーズに応えることももちろん重要ですが、従業員、つまり社内ユーザーのサポートエクスペリエンスを改善することも同じくらい重要です。実際、従業員に提供するエクスペリエンスの品質は、顧客に提供するエクスペリエンスの品質に密接にかかわっています。Gartnerの調査によると、従業員のおよそ3分の2が、余計な作業が多いせいで高品質なカスタマーエクスペリエンスを届けられないことがあると回答しています。これはもっともな言い分で、従業員がスムーズに業務を進められる環境が整っていないと、顧客のニーズにすばやく応えることはできません。

会社の成長・拡大を後押しする

顧客と従業員の満足度が低いと、長期的な成功にはつながりません。ユーザーにとって十分なサポートを提供できなければ、ロイヤルティはいずれ失われてしまいます。ユーザーに負担をかけている状態では、企業は順調に成長することはできません。しかし、ヘルプデスクがあれば、社内外のユーザーのニーズに合わせてビジネスを成長、拡大させることができます。

ヘルプデスクに欠かせない7つの要素

ヘルプデスクをうまく機能させるには、2つのレベルから環境を整える必要があります。直接ユーザーとやり取りするヘルプデスク担当者だけでなく、その業務をスムーズにするためのツールについても考慮しなければなりません。まずは両方のレベルで重要な要素を満たすことが、成功への第一歩となります。

  1. 適切なメンバー

    ヘルプデスクの根底を支えているのが、そこで働くメンバーです。対人的なカスタマーサービススキルを備え、ユーザーの視点に寄り添えるような人材を集めましょう。Grosspietschも次のように述べています。「人助け精神に溢れた、快活でエネルギッシュな人物が望ましいでしょう。人的スキルと技術的スキルの両方を備えている必要があります」

  2. 優れたチケット管理システム

    ヘルプデスクチームを支援するには、業務効率化を後押ししてくれるテクノロジーが必要です。問い合わせをサポートチケットとして管理すると、各チケットにユーザーとのあらゆるやり取りが記録され、問題の解決状況をモニタリングすることができます。これにより、複雑な問題も複数のメンバーで連携して対処でき、各ユーザーのエクスペリエンスを包括的に把握できるようになります。こうした一連の対応を可能にするのがチケット管理システムです。

    オムニチャネル対応のチケット管理システムなら、ユーザーがどのチャネルを使って問い合わせてきた場合でも、問題の追跡、管理、優先度付けから、ユーザーへの応答、問題の解決まで、終始スムーズに対応できるようになります。Grosspietschは次のように話します。「優れたチケット管理システムがあれば、チャットやメッセージアプリ、メール、カスタマーポータル、電話など、いずれのチャネルでもユーザーとコミュニケーションを図れます」

  3. 効果的なイシュートラッカー

    イシュートラッカーITヘルプデスクに欠かせないツールで、ユーザーがソフトウェア製品を使っているときに発生した問題やバグを効率的に記録してくれます。これにより、サポート担当者、エンジニア、マネージャーは、問題を終始追跡できるだけでなく、その解決状況をユーザーにリアルタイムで知らせることができます。たとえばトリガメールを使うと、従業員からのリクエストの処理状況を適宜社内に共有できるようになります。

  4. セルフサービス

    セルフサービスは、ナレッジベース、コミュニティ、Answer BotなどのAI搭載ツールを基に、ユーザーの自己解決を可能にするサポート形態で、ヘルプデスクの頼もしい味方となってくれます。

    「ユーザーが人間の担当者にサポートを求める前に、自力で解決策を見つけてもらえるようにすることが重要です。実際、多くのチームメンバーは、より高度な問題に取り組みたいと考えており、一日中パスワードのリセット対応に明け暮れたいなどとは思っていません」(Grosspietsch)

    また、社内向けナレッジ管理システムを使うと、業務プロセスや問題の解決手順をまとめておくことができ、これを参照することで一貫したサポート対応が行えるようになります。

  5. 解析

    ヘルプデスクは、ユーザーに関するたくさんの貴重なデータを提供してくれます。ただし、これはヘルプデスクシステムに便利な解析ツールが備わっている場合に限ります。解析ツールがあれば、マネージャーは、チームのパフォーマンスからユーザーの満足度に至るまで、あらゆる面で深い洞察を得ることができます。さらに、社内でその結果を共有すれば、ユーザーが困っている点や改良が必要な製品などが見えてくるかもしれません。

  6. ユーザーからのフィードバック

    ユーザーからのフィードバックは、どんなヘルプデスクにも欠かせないものです。ヘルプデスクソフトウェアを使えば、問題が解決された後、サポート対応についてのアンケートをユーザーに自動で送信できるため、毎回忘れずにフィードバックを依頼できるようになります。さらに、AIを利用すれば、フィードバックを入手する前にユーザーの満足度を予測することも可能です。

  7. 自動化、アプリ、インテグレーション

    ヘルプデスクの形態は、企業によってさまざまに異なりますが、自動化、アプリ、インテグレーションを活用すれば、サポート環境を自由にカスタマイズできます。たとえば、それぞれの専門知識に応じて問い合わせの担当者を割り当てる、一定の期間が経ったら問い合わせをクローズする、マクロを使ってチケットに対して特定の処理を実行するといった自動化による対応が可能になります。また、ヘルプデスクシステムをSlackなどの社内ツールと連携すれば、チームでの作業がよりスムーズに進みます。グローバル企業のヘルプデスクなら、翻訳アプリも便利に使えるでしょう。

自社に合ったヘルプデスクシステム選びを

共有のメールボックスやスプレッドシートなどの非効率的なツールを使っていると、顧客や従業員のエクスペリエンスを妨げてしまう可能性があります。一方、適切なヘルプデスクシステムは、上に挙げたツールや要素など、迅速でパーソナライズされた対応に必要なあらゆるものを備えています。

自社にとって最適なヘルプデスクの種類は、チームの形態やユーザーのニーズによって異なりますが、ヘルプデスクシステムの選定にあたり、必ず頭に入れておきたいポイントがいくつかあります。Grosspietschは、以下の条件を満たしているソフトウェアを推奨しています。

  • 既存のビジネスシステムと連携可能で、簡単にセットアップできる:システム管理に手がかからない分、ユーザーのサポートに十分な時間を割けるようになります
  • 独自のデータセンターを構築、維持する必要がなく、場所を問わずアクセスできる:クラウドベースのヘルプデスクシステムなら、リモートサーバー上にデータを格納して管理できるため、さまざまな場所から柔軟に作業を進められます。こうした仕組みは、とりわけ各メンバーがリモート環境で勤務しなければならないような緊急事態時のカスタマーサービス業務で役立ちます。
  • ユーザーのニーズに応じて拡張できる:Grosspietschは次のように話します。「最も重要なことは、すばやい変化に対応できるオープンなプラットフォームを選んで、ユーザーのニーズに自在に対応できるようにすることです。最初に、ユーザーが価値を感じるまでにかかった時間を把握し、その後も、別の価値を感じるまでにかかった時間を継続的に把握することは、サポート業務に欠かせないことです。」つまり、あらゆるワークフローに対応できるカスタマイズ機能を備え、複雑なビジネスにも応じられるほどスマートでありながら、企業の成長に応じて柔軟に拡張できるヘルプデスクシステムこそ、理想的と言えるでしょう。

優れたヘルプデスクシステムは、社内外問わず高品質なサポートエクスペリエンスを提供するための土台を築きます。自社にとってのヘルプデスクの位置づけを理解し、チームに適切なツールを提供できれば、カスタマーエクスペリエンスを改善して、ユーザーの満足度とロイヤルティを向上できるようになるでしょう。

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