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- カスタマージャーニーマップとは? 目的や作り方を徹底解説!

顧客の思考や感情が理解できていなければ、記憶に残るカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience、CX、顧客体験)を生み出すことはできません。カスタマージャーニーマップの作成は、企業として「顧客がたどる道のりのどの部分でどんなサポートを提供すればよいか」を理解するための大切なステップです。
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客がブランドとの間にもつすべての体験をまとめたものです。作成にあたっては、顧客がブランドを見つけてから、製品を購入し、ロイヤルティを育んでいく過程で行われるすべてのやりとりが考慮されます。それぞれのステージで顧客がブランドのことをどう感じるかなども含め、カスタマージャーニには、顧客が体験するあらゆることが記載されます。
Zendeskでカスタマーアドボカシー担当シニアディレクターを務めるZoe Kovenによると、企業やサービスプロバイダーに対して顧客がもつ理解と視点は、カスタマージャーニーを進む過程で形成されるといいます。カスタマージャーニーは、バイヤージャーニーやカスタマーライフサイクルと呼ばれることもあります。
カスタマージャーニーは直線的なものではなく、無限ループの形状をとります。顧客のたどる道筋は、商品を購入した時点に終わるわけではありません。顧客はその後も、ブランドの評価を続け、投資するだけの価値があるかどうかを判断するプロセスを継続します。つまり、逆を言うと、カスタマージャーニーから離れた顧客がいても、もう一度顧客になってもらうチャンスがあるということでもあります。
カスタマージャーニーのステージ
- 認知
- 興味・関心
- 購入
- 体験
- ロイヤルティ
顧客が製品やサービスのことを知るようになるのがこのステージです。ブランドの認知は口コミや広告で広がります。
製品やサービスに関心を持った顧客は、他の選択肢と比較して評価します。このステージにいる顧客に向けて販売促進活動をすると、次のステージに進んでもらえる可能性が高まります。
顧客が企業から製品を購入するのがこのステージです。この段階では、顧客は製品を試してみることには意欲的ですが、顧客のロイヤルティを得るまでにはいたりません。
製品やサービスが顧客に届いて、顧客が使い始めるのがこのステージです。この段階でワークショップやナレッジベースの記事を提供すると、顧客が製品やサービスを最大限に利用できるように支援できます。
製品を使った時に顧客をうならせることができれば、顧客はブランドにロイヤルティを持つようになります。このステージにいる顧客は、ブランドアンバサダーとなって、口コミで製品を紹介してくれるようになります。この段階では、ロイヤルティプログラムを提供すると効果的です。限られた人しかアクセスできないコンテンツやVIP対象のプロモーションなどを提供するなど、顧客に企業の感謝を伝えれば、末永く愛用してもらえる可能性が高まります。
「カスタマージャーニーマップを導入する際には、関係者全員が顧客の現在地を正しく理解できるように、共通の言葉を使う必要があります。『5年間購入し続けてくれている』と言わずに、『評価ステージ』あるいは『購入ステージ』にいると表現する企業が多いのはこのためです」とKovenは説明しています。
カスタマージャーニーの例
- 認知
- 興味・関心
- 購入
- 体験
- ロイヤルティ
Shawnaは潜在顧客です。Podcastを聴いている時に、スキンケア製品サブスクリプションサービスの広告を耳にしました。
Shawnaはその企業のWebサイトを訪れて、詳細を確認することにしました。クリックしながら、会社情報、企業哲学、SNSなどを確認していきます。
初回利用者向けのキャンペーンがあったため、Shawnaは試してみることにしました。
ワクワクしながら製品の到着を待つShawnaのもとに、最初のボックスが届きます。幅広い種類の商品が入っていて、いい感じです。さっそく商品を使い始め、その後も数週間にわたって使用を継続しました。
Shawnaは動物実験をせずに開発された他の製品も使ってみたいと思っています。この点について、ヘルプセンターで調べてみましたが、詳しく調べるためにカスタマーサービスの担当者に電話で問い合わせることにしました。
Shawnaは今までの体験に満足しています。このサブスクリプションサービスを使えば、わざわざ店舗に足を運ぶ手間を省けると感じています。友人にもこの会社のことを紹介するほどです。
カスタマージャーニーの理解は非常に大切です。この理解を図るためのひとつの方法が、カスタマージャーニーマップの作成です。カスタマージャーニーマップを用意しておくと、企業のすべての部門が適切なタイミングで適切な体験を顧客に提供しやすくなります。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップは、企業との接点という観点で作成された、顧客が進む道すじを表した図です。
社内の各部門がいつどこでどのように顧客の体験に貢献するかを整理した、非常に広範なマップもあります。例えば、この場合は、営業部門が登場するのは、カスタマージャーニーの最後に近くなってからのことで、カスタマージャーニーの初期には道路脇の広告板が登場するという具合です。
カスタマージャーニーマップは細かく分けて作成することもできます。例えば、Instagramのスポンサード投稿を受け取ってから1時間以内に購入するというような、短いカスタマージャーニーもあります。
企業にカスタマージャーニーマップが必要な理由
企業として、顧客をより深く理解して、製品やサービス、顧客の体験を改善していくためには、カスタマージャーニーマップが必要です。結局のところ、顧客が何を考えどんなことを感じているのか、あるいはどんな点に不満を抱え、どこに満足しているのかがわからなければ、顧客に適切に対応することはできません。
考えや感情を共有してくれる顧客がいないわけではありませんが、カスタマージャーニーマップを作成しておくと、企業は行間を読み取り、理解を補うことができます。
「100人あるいは200人といった社員を抱える企業の場合は、カスタマージャーニーマップを用意しなければ、一貫性のある顧客の体験を生み出すことは難しいでしょう」
Zendeskカスタマーアドボカシー担当シニアディレクター Zoe Koven
カスタマージャーニーマップの作成は、顧客の視点で企業を見つめ、時間をかけて企業と顧客の関係を深めていくための取り組みです。
金融機関を例に考えてみましょう。金融製品やサービスの購入を検討している顧客は、担当者と一対一で話す前にいろいろな情報を調べる傾向があります。パーソナルファイナンスは非常に個人的で重要な事柄であるため、時間をとって、できるだけ多くの製品やサービスについて知ろうとする人が多いのも理解できることです。
カスタマージャーニーのこの段階では、顧客がナレッジベースやコミュニティ、ブログで有益な情報を見つけられるようにする必要があり、これが企業として適切な対応です。ポップアップ表示を使って担当者とのチャットを提案する必要はなく、この段階でこうした積極的な働きかけをするのは不適切なことです。
企業がカスタマージャーニーマップを作成すると、顧客に多くのメリットがもたらされます。しかし、社内で得られるメリットも非常にたくさんあります。
企業では、誰もがチームの一員としてプロジェクトや活動に取り組みます。社内には、カスタマーサービス、カスタマーサクセス、カスタマーアドボカシー、マーケティング、営業などの部門が設けられ、このような組織にすることで秩序が保たれています。しかし、この体制はカスタマーエクスペリエンスには不利に働きます。
カスタマージャーニーマップの作成は、顧客の視点で企業を見つめ、時間をかけて企業と顧客の関係を深めていくための取り組みです。
「自分の業務だけが顧客の体験を作り出すと勘違いしてしまうことがあります。パズルの1ピースにすぎない自分の業務が、パズルの残りの部分とどう作用し合うかに目を向けることを忘れてしまうのです。カスタマージャーニーマップをがあれば、顧客がどんな体験をしているかを理解できるため、全体像を把握して、自分の業務がその中でどう貢献するかを考慮に入れて、顧客にとって一貫性のある体験を生み出せます」とKovenは指摘しています。
カスタマージャーニーマップを作成する際には、部門間の協力が必要です。次のセクションでは、部門の垣根を超えたチームを編成して、カスタマージャーニーマップを作り上げるプロセスをご説明します。
カスタマージャーニーマップの作成手順
顧客の体験を描き出すカスタマージャーニーマップは次の手順で作成します。
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部門間協力チームを作る
企業と顧客の接点で顧客とのやりとりを担当する社内の各部門から、優秀な人材を見いだしましょう。部門ごとの壁を取り払って、各部門の代表者を集めるのが、非常に重要な最初のステップです。このステップを踏むことで、自分の担当するパズルのピースだけではなく、パズル全体を理解するための準備が整います。
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作業セッションを実施する
まずは大元になる質問「顧客の体験はどのタイミングから始まるのか?」を議論することから始めましょう。 インターネットの検索結果で企業の名前を見つけたら、それを顧客体験の開始点と考えるのでしょうか?それとも、インターネットでスクロールしていた時にジーンズの広告を見かけて、購入を考えはじめた時を開始点と考えるのでしょうか?
質問を重ねながらチームで話し合うことで、まずは顧客にとっての入口となるファネルの最上部を定義します。そのうえで、顧客の次の体験がどんなものになると思うかを、チームの一人ひとりに確認します。事前にファネル全体を描くことはしません。次にどんな体験をするかは人によって違うことを、この段階で、チームとして改めて認識します。
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パターンと道筋を見いだす
今までのブレインストーミングを構造化するのがこの段階です。この時点では、どう分類すべきかわからない詳細や項目がまだたくさん残っているでしょう。しかし、何らかのパターンを見いだせるはずです。そうしたきっかけやブランドとのタッチポイントを特定できれば、カスタマージャーニーを定義しやすくなります。
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名前をつけてマイルストーンを設定する
それぞれのカテゴリーに名前をつけます。作業セッションを続けるうちに、最初に提案されたカテゴリーではうまくいかないことが明らかになることもあるかもしれません。まったく新しいカテゴリーを使う必要性が出てくることもあります。カテゴリーが決まったら、マイルストーンを設定します。顧客がどんな条件を満たした時に、次の段階に進んだとみなすべきでしょうか?顧客は各段階を行ったり来たりできるのでしょうか?それとも、原則的には1方向にだけ進むのでしょうか?
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対応を担当する関係者や部門を追加する
以上の手順をひとつずつ振り返りながら、それぞれのステージで各部門が顧客をどう支援するのかをチームで考えていきます。各部門のスキルと影響力をどう使えば、顧客と企業の双方にとって最良の成果をもたらせるでしょうか?
すべての部門がすべてのステージで何らかの役割を担うわけではありません。それでも、顧客がそれぞれのステージでどんな体験をするかは、すべての部門が理解しておくべき事柄です。
カスタマージャーニーマップの例
必ずしもマップ形式にする必要はありませんが、やはり多いのはこの形式です。よく使われるのは次のタイプです。
- 顧客が進む道のりを示すロードマップ形式
- マーケティングファネルやセールスファネルに似た、次のようなファネル形式
- 顧客が利用を考え直す場合や解約など、様々なシナリオを考慮に入れた、次のような複雑なスライド
カスタマージャーニーマップのタイプ
カスタマージャーニーが人によって違うのと同じで、カスタマージャーニーマップも企業によって違います。
カスタマージャーニーマップは、会社全体を含めた非常に広範な範囲をカバーするものにすることもできれば、細分化して作ることもできます。特定のチームや活動だけのために多数の小さなカスタマージャーニーマップを用意することもできます。
例:
- ユーザーエクスペリエンスに特化したカスタマージャーニーマップ:
- 「生活の中」という視点からのカスタマージャーニーマップ:
- 「将来像」としてのカスタマージャーニーマップ:
EコマースのWebサイトなどでの、スクロール、クリック、アイテムの保存といった顧客の行動に焦点を当てたマップです。
企業や業界以外の各種要素を考慮に入れて作られたマップです。
例えば、大型製品の発売やアップデート後など、将来の顧客の体験を想像して作られたマップです。
これらのカスタマージャーニーマップは規模が小さいだけで、作成手順としては、上記に説明したステップを踏みます。
カスタマージャーニー管理
「カスタマージャーニー管理の「主幹部門」をどこにすべきか?」が問題になることも少なくありません。主幹部門は企業によって違います。
- マーケティング部門:
- 専用の部門:
- カスタマーエクスペリエンス部門:
Kovenによると、マーケティング部門は、企業で果たす役割の性質上、普段の業務のなかでカスタマージャーニーマップ作成に関する多くの部分に対応しているといいます。
一部の大企業では、カスタマージャーニーマップのグローバル管理のために専用部門を設けて管理を一元化しています。
企業によっては、契約の更新や顧客基盤の拡大に向けた取り組みを担当するカスタマーエクスペリエンス部門を設ける場合もあります。
管理の主幹部門には、カスタマージャーニーマップの内容と、KPIのなかでも特にカスタマージャーニーに関連するアナリティクスを定期的に確認する業務を割り当てることもできるでしょう。
説明責任を負うのはひとつの部門かもしれませんが、それでも顧客の体験を正しく反映したカスタマージャーニーマップを維持することは会社全体の責任です。
カスタマージャーニーマップ作成の意義
顧客が進む道のりを理解したうえで業務に取り組めば、企業と顧客の関係は互恵的なものになります。Kovenによれば、これができていると、顧客は一貫性のある体験だと感じるようになるといいます。これはメールを使ったマーケティングや販売促進に限られた話ではありません。営業担当者やカスタマーサクセス担当者など、企業の様々な部門がカスタマーエクスペリエンスの適切な部分で必要な貢献をするようになります。
長期的に見れば、精度の高いカスタマージャーニーマップがあれば、顧客ロイヤルティと顧客からの信頼を育みながら、各タッチポイントでの顧客の行動を適切に解釈できます。
「企業は個々の状況に合わせて顧客に接する必要があります。顧客は、それまでに企業と接した時の体験や、顧客の立場と企業との関係にふさわしいパーソナライズされた企業の対応などを通じて、『自分のことを理解してもらえている』と感じます。」とKovenは言います。
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