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7つの失敗例に学ぶカスタマーサービス

カスタマーサービスで顧客に嫌な思いをさせてしまうと、企業の売上にも影響が及びかねません。この記事では、実際にあった失敗例をご紹介しながら、サポート部門が顧客の体験を向上させる方法を探ります。

更新日: 2024年2月22日

最悪のカスタマーサービスとしか言いようがない、と思うような体験をしたことはありませんか?「あの会社からはもう買わない」と、友人に伝えたことがある人もいるのではないでしょうか。実際、こうした反応は珍しいものではありません。不満が募る体験をすると、顧客は何かしら行動をとります。

顧客のロイヤルティを獲得できるかは、企業が満足度の高いカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience、CX、顧客体験)を提供できるかで決まります。今の時代、企業が優れた製品をそろえるだけでは、もはや十分とはいえません。満足度の高いカスタマーサービスを提供できている企業が、他社との差別化に成功しています。対応を誤ると、その顧客を永久に失うリスクを負うことになります。

Zendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート2022年版によると、61%の消費者は、たった一度でも不愉快な経験があれば他社に乗り換えると回答しており、さらに不愉快な経験が重なると、その割合は76%まで上昇します。

常に満足度の高い顧客体験を提供するために、企業として何ができるでしょうか?SNSなどで見つけた企業の実例をご紹介しながら、どうすれば失敗を避けられるかをまとめました。

顧客が不満を抱くカスタマーサービスとは

顧客はどんな点に最大の不満を感じているのでしょうか?

Zendeskはこの答えを見いだすために、世界の3000人を対象に調査を実施しました。

調査によると、不満の募るカスタマーサービスの最大の要因は「同じことを何度も説明させられる」で、第2位の要因は「自動応答システムのせいで、人間の担当者となかなか話しができない」で、第3位の要因は「サポート担当者に問い合わせた時の長い保留・待ち時間」との結果ができました。

つまり、顧客の不満を誘う2大要因は、「対応の遅さ」と「時間の浪費」で、どちらも企業として取り組める事柄です。しかも、実のところ、この対応をおろそかにすることは、インターネットでいつでも簡単につながることのできる今日の

カスタマーサービスで嫌な体験すると、すぐにSNSに不満の声を投稿する人も少なくありません。 たいていの人は「企業の顧客対応はこうあるべき」という基準をもっているため、社員がまずい対応をしたり、カスタマーサポートのレベルが低かったりすると、ブランドが打撃を受けることになります。

カスタマーサービスの7つの失敗例

1. サポート担当者が共感を示さない

「地元のバーベキューレストランでスペアリブを注文した時のことです。テーブルにバーベキューソースが用意されていたので、ソースをかけようとボトルを傾けると、スズメバチの死骸がソースと一緒に出てきました。しかも3匹もです。たまたまその場にオーナーが居合わせたのですが、『僕にどうしてほしいと言うんですか』としか言ってくれませんでした」

改善方法:これは基本的な部分です。顧客に満足してもらえるサービスを提供するためには、顧客を心から大切にしなければなりません。そのためには顧客に共感を示す必要があります。顧客との間に人間的なつながりを作ることが、これまで以上に大切になっています。顧客の体験こそ、そのブランドにしか生み出せない他とは違う独自の強みになるためです。

IDCの調査によると、顧客の73%は、単に許容できる体験ではなく、抜きん出て満足できる体験でなければ、ロイヤルティを感じないと答えています。顧客の体験に注意を払わなければ、顧客にとって不満の残る体験になるため、企業の評判に傷がつくことになります。

共感の鍵となる顧客中心主義

顧客中心主義を実践する企業では、共感が企業文化に深く浸透しています。企業にとって、共感とは、どんな時も顧客を第一に考えることを意味します。また、共感はカスタマーサービスにとって重要なスキルであるため、サポート担当者を採用する時には、このスキルを持った人を選ぶ必要があります。パフォーマンスの高い部門には、人を助けることに熱心で、顧客とのやりとりが大好きなサポート担当者が揃っています。

どうすれば、共感のある対応を促進できるでしょうか?サポート担当者に通話時間を短くするよう迫るのではなく、問題を解決するために顧客にもっと時間を使えるようにすることが解決策になる場合もあるかもしれません。

また、テクノロジーの力を借りて、サポート担当者が先を見越して対応しやすい環境を整えることも助けになります。問題が実際に起こる前に、先回りして対処できれば、顧客にとっても企業にとってもメリットがあります。こうした取り組みを重ねると、顧客を重視する企業の姿勢が伝わり、顧客のロイヤルティを高めていけます。

2. サポート担当者が顧客の苦情に耳をかさない

「その商品のせいでどんなにひどい目にあったかを説明しているのに、サポート担当者はまるで他人ごとで我関せずという態度なんです。腹が立って仕方がありませんでした。商品を売ってしまったら、あとはどうでもいいと思っているのかもしれません」

改善方法: 顧客からの苦情」と聞くだけで、少しナーバスになる人もいるのではないでしょうか。しかし、どんな企業も、苦情がゼロになることはありません。顧客から苦情を受けた時にどう対処すればよいかを理解していれば、ピンチをチャンスに変えられます。

苛立ちを感じている顧客に対応する時の3つのヒント

  • 対立的な顧客に対応する時は、つとめて落ち着いて穏やかに接する姿勢を保ちましょう。
  • 気が立っている人は、相手に自分の話を聞いて言い分を理解してほしいと思っているものです。
  • 十分な時間を取って顧客の話にしっかりと耳を傾けて、その問題で大変な思いをした顧客に共感を示したうえで、謝罪しましょう。状況を是正するための処置を行うのは、それからです。

顧客の苦情は、企業にとって学びのチャンスです。顧客の苦情に何らかのパターンを見いだせる時は、企業として何かを変えなければならない合図かもしれません。例えば、解決のための手順や返品の手続きを説明した時に混乱する顧客が多いのであれば、解説の記事をヘルプセンターに追加することもできます。また、製品の品質に関する苦情が多い場合は、この点を社内で調査する必要がないか、検討することもできます。

Shaking hands

3.顧客に敬意を示さない

「かなり前のことですが、主人と一緒に大手小売店にテレビを買いに行った時のことです。手に財布を握りしめて、すぐにお金を払えるように準備していたのに、販売員の注意を引くことができませんでした。意を決して、『マネージャーと話をしたい』と伝えたところ、『上司はその時間が取れないんです』と言われました。 テレビを買うのはあきらめて、店をあとにしました。それ以来、その店には足を踏み入れていません」

改善方法:誰にでもよい日もあれば悪い日もあります。サポート担当者の対応が問い合わせに追いつかないような、多忙を極める日も出てきます。こうした状況は避けきれるものではありません。

その一方で、企業は、顧客とのすべてのやりとりで、プロとして礼儀正しい接し方ができるよう、サポート担当者に十分な研修を提供する必要があります。これはほんの一言「喜んでお手伝いさせていただきます。申し訳ありませんが、少々お待ちいただけますか?」と伝える時間をとるだけでよいこともあるのです。

サポート担当者の成功の鍵を握るのが、カスタマーサービスの研修です。サポート担当者に十分な研修を提供することは、担当者自身の成功にとどまらず、顧客ロイヤルティの構築を促進して、企業の成功に貢献することもあります。Zendeskが実施したブランドロイヤルティ調査では、回答者の72%が、価格よりもカスタマーサービスのほうが大切だと考えています。部門のカスタマーサービススキル構築のための投資は、企業にとって時間をかけて取り組む価値のあることです。

逆の見方をすれば、軽視されたまたは無視されたと感じさせてしまうと、企業はその顧客を失うことになりかねません。ぞんざいに扱われた体験はいつまでも記憶に残るものです。

4. 顧客が望む問い合わせ方法に対応していない

「助けが必要だったのでアプリを開いたのですが、カスタマーサービスに問い合わせる方法が用意されていませんでした。何とか問い合わせる方法を見つけられたからよかったものの、その情報を探すだけでも一苦労でした。『この人とは話したくない』と、企業に意図的に避けられているように感じたほどです」

改善方法:これは大きな問題です。企業は、顧客が望む方法で問い合わせられるようにする必要があります。つまり、スマートフォンをはじめ、顧客が望むチャネルでやりとりできるようにしなければなりません。確かに、SMSやチャットボット、音声アシスタント、メッセージングアプリ、チャットは、電話やメールなどの従来のチャネルほど一般的ではありませんでした。しかし、メッセージングに関するZendeskの調査によれば、この状況が変わろうとしているといいます。

顧客は迅速・便利・安全なことが理由でメッセージングを利用していますが、企業がメッセージングを採用するのも同じ理由からです。メッセージングは従来のカスタマーサービスチャネルとは違って、セッションというまとまりがなく、タイムラグがあるのが普通であるため、顧客は好きな時に好きなだけやりとりできます。サポート担当者は一度に複数の顧客に対応できるため、問題を迅速に解決できます。

顧客は家族や友人とやりとりするのと同じ方法で企業ともやりとりすることを望んでいます。このため、オムニチャネルのカスタマーサービスを提供すると、満足度の高い顧客の体験を生み出すうえで非常に効果的です。

Reasons companies offer messaging

サポート担当者は様々なチャネルで、迅速かつ効率的に顧客からの問い合わせに対応できなければなりません。企業と顧客の間のすべての会話をシームレスに追跡して、チャネル間の切り替えを容易にするテクノロジーは大きな助けになります。例えば、顧客からメールで問い合わせを受けた時に、メールでは対応しきれない複雑な問題だと判明したら、サポート担当者が簡単に電話に切り替えられるのが理想的です。

5. 自動応答システムのせいで、人間の担当者となかなか話ができない

とても複雑な問題だったので、どうしてもサポート担当者と話をする必要がありました。ところが、電話をかけても何度も自動音声が続くだけで、どうやっても人間と話すことができません。結局、解決策は見つからずじまいです」

改善方法:チャットボットと自動化は、正しく使えば顧客の体験を大きく向上できます。顧客は自分で問題を解決できる状態を望んでいます。すばやく効率的に解決できるのであれば、チャットボットや人工知能(AI)の活用にも前向きです。Zendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート2020年版によると、高い業績をあげている企業は、AIを導入すれば成功を促進できるといいます。

チャットボットが効果を発揮するのは、潜在する背景情報にアクセスできる場合です。どのパンツを買う時も同じサイズを選ぶ人なのか、あるいは最近何かを返品をしていないか、といった情報にアクセスできるようにすると、チャットボットは企業の強力な味方になります。

背景情報の鍵を握るのがデータです。。データがあれば、その人に適した推薦内容にできるため、より効果的に顧客を支援できます。

例えば、顧客の保証期間がもうすぐ終了する場合や、最近別の製品について不満を寄せている顧客である場合など、この点を踏まえて対応するのと、これを知らずに対応するのとでは、大違いです。顧客のデータを分析して、そこから洞察を引き出せるようにするのが、チャットボットを有効に活用するための秘訣です。

効果をあげているAIシステムの背後には、必ず人の存在があります。顧客が苛立ちを感じ始めている場合や、ボットでは対応しきれない複雑な問題の場合は、適切に人間のサポート担当者に引き継げるシステムでなければなりません。人間と機械の協力関係があってはじめて、シームレスなカスタマーサービスが生まれます。

Hand with phone

6. 顧客をあまりにも長時間待たせる

「電話で1時間以上も待たされたことがあります。諦めようかとも思ったのですが諦めきれずに、担当者が出るまで延々とスムーズジャズの保留音を聞き続ける羽目になりました。今でもあの音楽が悪夢に登場します」

改善方法:顧客の期待はこれまで以上に高まっています。顧客は企業に迅速な応答を望んでいます。

Customer response expectations by channel

特にミレニアル世代とZ世代は、SNSやアプリ内のメッセージング機能、ソーシャルメッセージングのアプリなど、応答が早いチャネルを好む傾向があります。

もう少し年齢が上の世代は、依然として、電話やメールといった従来からあるチャネルを好んでいます。そうは言っても、顧客はそれほど長くは待ってくれません。調査の対象となった顧客のほぼ3人に1人は、企業が5分以内に応答することを期待しています

デジタルに熟知した今日の消費者は、どうしても必要がなければ待とうとは思いません。

顧客がどれくらいの時間で応答してもらいたいと考えているかを理解することは、もちろん大切なことです。しかし、すべての電話にすぐに応答できない場合、企業として何ができるでしょうか?

応答時間を短縮するためのベストプラクティス

顧客の期待に応えるために企業としてできる取り組みに、次のようなものがあります。

  • 自動応答メッセージを作成する:推定される待ち時間を伝えるようにします。待ち時間があまりにも長い場合には、サポート担当者から折り返し電話を受けられるようにするコールバック機能を提供するか、サポート担当者に音声のメッセージを残せるようにするとよいでしょう。
  • 優先的に対応する必要のある顧客を明確にする:優先的に対応する必要のある顧客や問い合わせ内容がひと目でわかるシステムを用いることで、サポート担当者がすみやかにフォローアップできるようにしましょう。
  • プロセスを改善する:プロセスを改善する:対応を遅らせているプロセスがあれば、改善しましょう。問い合わせを受けたときにできるだけ短時間で適切なサポート担当者に振り分けられなければ、カスタマーサービスを迅速化させることはできません。問い合わせの振り分けには自動化機能が役立ちます。

7. 社内で何度もたらい回しにされる

「医療費の請求額についてカスタマーサービスに電話で問い合わせた時のことです。電話に出た相手に、その電話番号は請求書の担当部門のものではないと言われました。


電話を転送してもらったのですが、転送先の人もまた請求書の担当ではありませんでした。そこでまた転送されて、状況をもう一度最初から説明しなおしました。それなのに、そこで担当者と話せたわけではないんです。その後も何度も同じことが続いて、気が付いたら1時間以上たっていました。最終的に担当の部門の人と話はできたのですが、どうすることもできないというのが回答でした」

改善方法:通常、顧客が電話で問い合わせるのは、自分でその問題を解決できなかった時です。Zendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート2020年版によると、顧客の63%は「問題があったら、必ず、あるいはほぼすべての場合、まずはその会社のWebサイトを検索する」といいます。

電話を手にした時点で、顧客はすでに苛立ちを感じていることが多いものです。適切なカスタマーサービスソフトウェアを導入して、スムーズに対応できるようにすることをお勧めします。サポート部門がすぐに顧客データにアクセスできるようにして、サポートを提供できる体制を整えることが求められます。このためには、必要なすべての情報を1か所にまとめられるソフトウェアが必要です。この体制になっていれば、顧客を社内のいろいろな部門でたらい回しにする必要も、顧客を待たせて答えを探し回る必要もありません。

問題解決のためにあらゆる手を尽くすことが大切なのは言うまでもありません。「その問題について、できることはありません」と回答するようでは、顧客が嫌な思いをすることは避けられません。

よりよい顧客体験のための顧客データ管理

サポート担当者が顧客に満足してもらえる体験を作り出すためには、顧客のニーズを理解しておく必要があります。つまり、適切なデータとツールにアクセスできる環境が必要です。

Zendesk Support Suiteを導入すると、カスタマーサービス部門がすべてのチャネルでシームレスに対応できるようになるとともに、企業の各部門が保有している顧客情報のうち、関連性のあるものが自動的に表示されるようになります。

チャネルの種類を問わず顧客データと顧客とのやりとりを効果的に管理できるようになれば、カスタマーエクスペリエンスを向上させる方法の幅は広がります。

  • サポート担当者は1か所からすべての顧客データにアクセスできるため、複数のシステムを検索する必要がありません。その分、顧客の待ち時間を短縮できます。
  • 信頼できるナレッジベースを用意しておけば、顧客は自分で答えを探して、問題を解決できるようになります。/li>

  • AIを活用して適切な記事を推薦するようにすれば、顧客は必要なサポートをその場ですぐに受けられます。

質の高いカスタマーエクスペリエンスを生み出す顧客中心主義

顧客のロイヤルティを獲得するのは簡単なことではありません。しかも、たった一度、嫌な体験をさせてしまうだけで、信頼を裏切ることになります。落とし穴を避けながら満足度の高いカスタマーエクスペリエンスを生み出すために、この記事でご紹介したヒントをぜひご活用ください。

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