小売業の新時代に必要なカスタマーサービス・スキルの見直し

小売業界が進化し続けるうえで、カスタマーエクスペリエンスはとても重要な要素です。経験を重視する経営陣は、業界の進化に対応することにリソースを集中的に投入するかもしれませんが、その下にいる小売のプロフェッショナルである人たちが時代に合った考えや仕事をするようになるためには、人材に関してすべき取り組みがまだたくさんあります。

これは、小売業におけるトレーニングについて全面的に見直すことを意味しており、そこには、もはや時代遅れになった「顧客対応スタッフ」の意味を再定義することも含まれています。(後ほど説明しますが、以前よりもはるかに多くの人材が必要になっています。)

報道されるニュースは、人々に不安を与えるだけのものとなっています。ロボットが労働者の雇用を奪い、商品企画においてはAI(人工知能)の活用が進み、歴史ある小売店の実店舗は次々と閉鎖しています。しかし、National Retail Federation(全米小売業協会)のスポークスパーソンAna Smith氏は、小売企業は合理化を推進して人員を削減しているように見えるが、実は小売業界で利用されているスキルや役割の種類はむしろ増えていると述べています。同氏によると、昨年、Walmart、Target、Macy’s、Best Buy、Hobby Lobbyといった大手小売が、新人研修から継続して教育していく社員がたどるジャーニー(employee journey)を強化する計画を発表しているそうです。

ここで、進化を続けるうえで必要なスキルを磨くために小売業のプロが留意すべきポイントを見ていきましょう。

人間の代わりではなく、人間と協働するテクノロジー

ecommerce 3小売業で働くということは、いまや、単に第一線の販売員として働くというだけのことではなくなっています。たとえば、小売業ではオンラインおよびソーシャルメディアでの問い合わせに対応するカスタマーサポートや配送、そして、オンラインと対面での接客をシームレスにすることを可能にする技術の構築といった、10年、20年前には存在しなかった仕事と役割が必要になったため、以前よりはるかに多くの人材がカスタマーサービス・ビジネスに従事しています。

これは、すべての従業員が、いま現在店内で販売されている商品は何かということを把握するだけでなく、もっと大きな視野で考えるように訓練される必要があることを意味します。たとえば、オンラインで購入した商品を返品するために来店する人がいるとしましょう。その場合に、来店客に必要な情報や商品を提供するために、従業員はどの程度の準備を整えているでしょうか。あるいは、顧客がある品物を目当てに来店したにもかかわらず在庫がなかった場合に備え、他の店舗の在庫を確認する方法や、店頭での受け取りや配送サービスについて顧客に案内できるようトレーニングを受けているでしょうか。

「実店舗での販売は、未来志向の戦略を成功させるうえでも引き続き不可欠な要素となるでしょう。なぜなら、こういったエクスペリエンスこそが、人間の感情を刺激し行動を促すからです」と、作家のWarwick Heathwood氏は2018年のAdWeek掲載記事で述べています。

これらのスキルを磨くかどうかで、商品を売って顧客とのコネクションを構築することができるか、もしくは、誰一人として望むものが手に入らない状況のままで終わってしまうかの明暗が分かれてしまう可能性があるのです。

National Retail Federation(全米小売業協会)のリサーチ・アンド・ストラテジックイニシアチブのSVPであり、トレーニング、教育、人材獲得に関する業界におけるソート・リーダーシップ(thought leadership)を提供するEllen Davis氏は、「そのブランドでの良い経験によって構築された人間関係は、大多数の消費者にとって、ひいては小売店にとっても、依然として極めて重要です。商品について深い知識のある小売店の店員は、顧客とその雇用主の両方から高く評価されます。」と語っています。

顧客のお店での体験を理解し改善させることができる従業員は、カスタマーサービスの水準を引き上げるという極めて重要な役割を果たします。そのため小売業者は、たとえばセルフサービスポータルの技術的な面に頼ってスタッフをゼロに減らすというような極端な改革をしないよう気を付けなければなりません。このような極端な改革は、結果的にマイナス影響を受けてしまうからです。The Wall Street Journalは、Macy’sやJ.C. Penneyなどといったアメリカの最大手小売業者の多くが店舗スタッフを大幅に削減したと報道しました。同紙によると、J.C. Penneyにおいては、店舗閉店の2倍の早さでスタッフの削減を実行した結果、残っている店舗では長蛇の列が発生し、顧客のストレスがさらに増しているということです。

科学(特にデータ)の重要性

ファッションや商品企画、デザイン、サプライチェーン管理はカスタマーサービス体制に関係ないと考えているかもしれませんが、状況はどんどん変わってきています。

003「小売業者は、驚くほどの早いペースで、データ・サイエンティストや分析の専門家を雇用しています」とDavis氏は語っています。これらの専門家を採用することにより、顧客がどのように買い物をしたとしても、そのニーズに合った製品、価格、プロモーションを提供し、カスタマーサービスとユーザーエクスペリエンスの質を上げることが可能になります。

消費者データを分析し、分析結果に基づいて実用的なビジネス上の意思決定を下すことができるチームや個人を採用することは、現在、多くの小売業者の人材戦略において非常に重要になっています。Davis氏によると、たとえば米国DIY小売チェーンであるThe Home Depotが、顧客がいつでもどこでも好きな方法で買い物できるサポート体制を整えるために1,000人の技術専門家を新規雇用すると、今年の始めに発表しています。

小売店という基本的な枠組みを超えたコミュニティ・コンセプトの効果

Davis氏によると、多くの人に驚きを与えた紙パック入りの飲料水や、その他の「コミュニティ・コンセプト」のように、小売業者はカスタマーエクスペリエンス全般についての発想を変え、見直しをしています。たとえば、店舗内にネイルサロンやワインの試飲コーナー、即仕上げの寸法直し、荷物の受け取り、コーヒーやレモネードスタンドなどの設備があるのを見たことがある方もいるでしょう。このような店舗では、従業員は、コーヒーを手に持って店内を見て回りたい買い物客のニーズを満たすよう訓練されている必要があります。購入商品がテレビであれ靴であれ、ほしいものをただ購入するだけでなく、色々な体験ができるように設計されている必要があるのです。

いつどこにいてもショッピング・サービスを提供すること

どのような小売業者も、24時間365日いつでも商品にアクセスし、ブランドと交流したいと思う顧客を確実にサポートできるよう、全従業員へのトレーニングへの投資を継続的に行っています。

Davis氏は、「小売の概念が変わるのにともない、今後はより多くの小売業者が、より多様な専門分野の卒業生を採用するよう人材採用計画の枠を広げるようになり、新入社員の持つ知識や技術、経験はますます多様化していくでしょう。」と述べています。「小売店は、いまの消費者のニーズを満たすために必要な知識や技術、経験を持つ、大学やコミュニティカレッジ卒の若者を採用しています。」