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ナレッジマネジメントを成功に導くポイントを失敗の理由から学ぶ

更新日: 2023年1月27日

経営の3要素の1つ「ヒト」は、流動化の進展や帰属意識の希薄化で優秀な人材をつなぎとめておくことが難しくなってきています。そのため「ヒト」の中に眠るナレッジを引き出し、能力を最大限に活用できる手法であるナレッジマネジメントは、その重要性から多くの企業が実践しています。

しかし、成果が上がらずに失敗している企業もあります。ナレッジマネジメントの活用に失敗する場合、その理由はどこにあるのでしょうか。失敗した理由、失敗によるデメリットの大きさ、成功に導くポイントについて解説します。

ナレッジマネジメントの重要性については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

ナレッジマネジメントとは?
意味、手法、システムを解説

ナレッジマネジメントがうまくいかない理由

ナレッジマネジメントに取り組んで失敗する理由は、大きく分けてナレッジマネジメントの「導入」「運用」「推進」プロセスのいずれか、あるいは複数のプロセスにあります。「導入」「運用」で失敗する企業もありますが、多くは「推進」で失敗する企業が多いと考えられます。なぜなら、ナレッジマネジメント推進役は、「導入」「運用」に課題が生じても、それらを解決しながら成功まで「推進」していく役割を果たせるからです。

  1. ナレッジの収集、蓄積がうまくいかない

    「ナレッジの収集、蓄積がうまくいかない」のは「導入」「運用」「推進」のすべてのプロセスが関係します。社員にナレッジマネジメントの重要性(目的やベネフィット)が理解されていなければ、社員の協力が得られません。また、重要性が理解されていても収集・蓄積の運用体制が整備されていなければ、社員は余分な手間をかけたくないと考えてナレッジを収集・蓄積しようとしません。

    さらに、社員に収集・蓄積すべきナレッジの内容を周知できなければ、何に価値があるのか認識できず、やはり収集・蓄積が進まない可能性があります。社員の意識がナレッジの収集・蓄積に向かうように推進していかねばなりません。

  2. 蓄積されても必要なときに必要なナレッジを見つけられない

    「蓄積されても必要なときに必要なナレッジを見つけられない」のは、主に「運用」に関係します。多くのナレッジを収集できても、適切に整理・管理されて利用しやすいように整備されていないと、活用しづらくて業務に役に立たず、利用されません。

    利用価値がないと社員が判断すると、ナレッジマネジメントはそこで失敗します。「需要の高いナレッジや特定の部門からの開始」「検索の容易なデータベース構造の検討や検索機能の豊富なツールの導入」など、十分に検討してから運用しなければなりません。

  3. ナレッジを言語化する負担が大きい

    「ナレッジを言語化する負担が大きい」は、主に「運用」「推進」に関係します。ナレッジのなかにはテキストや図形などで表現するのが困難、あるいは面倒なものがあります。これらは、主に実務経験の豊富な社員や優秀な社員が持っている有益性の高いナレッジであることが多いものです。

    しかし、このようなナレッジを持つ社員には、アウトプットを働きかけたりインセンティブを与えたりして、ナレッジの蓄積を「推進」しなければなりません。有益なナレッジが多く蓄積できるほどナレッジの活用が促進され、それがナレッジの収集・蓄積にも影響を与える好循環が生まれます。

  4. ナレッジが更新されない

    「ナレッジが更新されない」は主に「運用」に関係します。ナレッジのなかには最新の情報やデータでなければ意味を持たないものがあります。また、分かりにくいナレッジは、分かりやすく書き換えないと利用されません。新しいナレッジも随時追加が必要です。そのため、ナレッジの追加、書き換えなどの更新が適切に行われるようにする運用が重要です。

  5. ナレッジマネジメントの運用ツールの操作が分かりにくい

    「ツールの操作が分かりにくい」は主に「導入」「運用」に関係します。ナレッジマネジメントを効果的に運用するにはツールの導入が必要です。ツールを安易に決めてしまうと、ナレッジの収集・蓄積が十分にできたとしても、「操作性が悪い・面倒」「機能・性能の不足」などの理由で、活用されません。

    事務処理用パソコンソフトでナレッジの記録をすませると、ナレッジが蓄積するほどに使い勝手が悪くなっていきます。ナレッジが蓄積するほど、管理が煩雑になる、古い情報が残されてしまう、情報が見つけづらくなるなどの課題が発生します。また、外出先から利用したいようなナレッジが多い場合には、社外からでもストレスを感じずに利用できないと活用されません。

  6. マネージャーのナレッジマネジメントに関する知識不足

    「マネージャーのナレッジマネジメントに関する知識不足」は主に「推進」に関係します。マネージャーやナレッジマネジメント推進者に十分な知識がないと、「導入」「運用」に十分に関与できず、また効果的な「推進」もできません。知識と意欲があれば、運用を始めてから予期しない課題が見つかっても、「導入」「運用」にさかのぼって課題を解決しながら「推進」して成功まで導けます。

ナレッジマネジメントの失敗で生じるデメリット

ナレッジマネジメント失敗によるデメリットは、企業活力の低下を招き、事業の成長、売り上げ・利益の拡大を困難にします。

  1. 社員の教育コストの軽減や新入社員の早期戦力化が困難

    業務に必要なナレッジを蓄積して活用できないと、新入社員の入社の都度、教育が必要になってコストと時間を軽減できません。ナレッジが豊富であれば、新入社員であっても業務に必要なナレッジを検索して遂行することで早期戦力化が期待できます。しかし、蓄積できていないと手取り・足取りのOJTが必要になって組織全体のパフォーマンスの低下にもつながります。

  2. 業務効率の低下

    ナレッジが活用できないと、特定の社員しかできないブラックボックス業務が多くなってボトルネックが生じます。その結果、ナレッジを持った社員に教わる時間のロス、その社員が不在で生じる業務の遅延などで業務効率が低下します。また、間違いやすい業務処理がナレッジになっていないと、その間違いによって生じる時間、経費、トラブルなどが業務効率の低下やコスト増を招きます。

  3. 顧客満足度の低下

    顧客対応業務では、ナレッジが活用できないと迅速・的確な回答はできません。また、回答内容の一貫性が保たれずに顧客満足度が低下します。迅速で的確な回答、回答内容の一貫性、回答の質の均一性が維持できれば、顧客満足度を向上させられます。

  4. 多様な働き方への対応が困難

    近年は多様な働き方が進み、フレックスタイム制、リモートワーク制、短時間勤務制などを採用する企業が増加しています。これらの働き方に対応した業務フローやシステムとともに、社内のナレッジも必要なときに、いつでもどこからでも利用できるようにしておかねばなりません。ナレッジの活用がうまくできないと、業務を円滑に進められず多様な働き方を推進できません。

  5. 企業全体としての統一性の維持が困難

    ナレッジが全社員に共有されないと、企業の利害関係者に対する統一性のある対応や業務の推進が困難です。ナレッジには仕事に対する姿勢、業務の進め方、ブランドに対する考え方などまで反映されます。そのためナレッジが共有できないと製品開発、広告・販促活動、営業活動、サポート活動など、企業活動の全般にわたって統一された活動ができません。

    その結果、部門をまたぐプロジェクトに弊害が出るほか、ブランドの信頼感が低下したり利害関係者への対応に一貫性が欠如したりするダメージを、企業に与えるリスクがあります。

    ナレッジ活用による生産性向上については、以下の資料で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

ナレッジマネジメントを成功に導くためのポイント

ナレッジマネジメントを成功させるには失敗の理由を作らないことが大切ですが、そのなかで特に重要なポイントについて紹介します。

ナレッジ共有および活用の意義を社内に浸透させる

ナレッジマネジメントは、社員が保有しているナレッジを企業全体で共有して、活用できなければ成功しません。そのため、社員全員にナレッジマネジメントの意義や目的、目指すべき目標、経営や社員へのメリットなどを明示して、社員が積極的に参加する意欲を醸成しなければなりません。

また、運用ルールや評価制度を定め、ナレッジ共有がしやすい運用制度、雰囲気づくりなど、意欲が継続する環境整備への配慮が重要です。ナレッジは蓄積できればできるほど利用価値が上昇し、利用が自然に活発になるため、ナレッジマネジメントの継続的な推進が重要です。

以下の記事でナレッジ共有について詳しく解説しています。あわせてぜひご一読ください。

ナレッジ共有とは?
最適なツールを選ぶ際のポイントやメリット

共有しづらいナレッジが存在することを知って対策を考える

ナレッジのなかには、文章で表現することが難しいノウハウや、勘に基づくもの、あるいは文章で表現できても作成に時間と手間がかかる高度で難解なものがあります。これらは暗黙知と呼ばれ、蓄積して共有することが困難です。

マネージャーやナレッジマネジメント推進者は、これらのナレッジも蓄積して共有できるようにする方法を理解しておく必要があります。暗黙知は特定の社員に潜在しているため、全社員が共有して活用できるようにすると経営に与える効果が大きくなります。

以下の記事では「暗黙知」や「暗黙知」を共有化できる方法について詳しく解説しています。あわせてぜひご一読ください。

暗黙知と形式知を理解して
ナレッジ共有を推進し経営に活用する方法

ナレッジが蓄積・共有・活用される仕組みづくり

社員がナレッジを積極的に収集・蓄積しないとナレッジマネジメントは早々に失敗します。一方、ナレッジが収集・蓄積されても利用しにくい場合、あるいは利用した結果、ナレッジに利用価値がないと社員が判断した場合などは積極的に活用されません。こうした場合もナレッジマネジメントは失敗に終わります。そのため、ナレッジの蓄積・共有・活用が進む仕組みづくりを十分に検討し、活用の促進対策を講じなければなりません。

収集・蓄積が進まないのは、社員のなかには「忙しい」「他人に提供したくない」「価値が低いので提供するのが恥ずかしい」などと考える人がいるからです。社員に収集・蓄積を強制するのではなく、ハード・ソフトの両面から社員がナレッジを提供しやすいようにする対策を講じます。

例えば、「記入しやすいフォーマットの準備」「共有に必要な時間の確保」、あるいは「マネージャーが日報やコミュニケーションから有効なナレッジを社員に指摘する」などです。また、ナレッジの蓄積用と閲覧用のデータベースを2つ用意すると、蓄積を促しつつ、そのなかから有益なナレッジを選んで閲覧用に蓄積できます。利用する社員に有益性を感じてもらえる一方で、ナレッジの蓄積をためらう社員に対する抵抗感を軽減させられます。

ナレッジマネジメントツールの導入

ナレッジマネジメントの運用・成功にはツールの導入が欠かせません。ナレッジマネジメントの目的、ナレッジの用途など自社に合ったツールを検討することで、「導入」「運用」および「推進」までを効果的・効率的に進められます。例えば、社内FAQから始めて社内wiki、SNS、文書管理などまで行うといったように目標を決めて、適切なツールを選びましょう。

また、ツールは手段であるため、導入したらそこで終わりではありません。社員への意識付け、運用ルールの徹底など、ツールを活用できる仕組みをつくり、ナレッジマネジメントに生かせているかの定期的な検証が重要です。

以下のページでは、ナレッジマネジメントツールについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

ナレッジマネジメントツール完全ガイド

ナレッジマネジメントの成功事例

Zendeskは世界10万社以上が利用するカスタマーサービスプラットフォームであり、ナレッジマネジメントを推進できる多彩な機能を有しています。Zendeskを利用してナレッジを活用した事例をご紹介します。

株式会社フューチャーショップ「店舗の思いとアイデアをシェアして成長戦略を支えるサポート基盤を構築」

株式会社フューチャーショップはECサイト構築プラットフォームを提供する企業です。同社の製品は顧客の悩みに向き合って課題を解決することで高い顧客満足度を得ています。この高い顧客満足度の維持には継続的な改善の取り組みが欠かせません。

しかし、当初はサポートツールにメール共有ソフトを利用していました。このツールでは問い合わせ状況の管理が煩雑で、顧客対応の質を高めるために必要な情報が不足し、場当たり的な改善の繰り返ししかできていない問題点を抱えていました。

そこで、問い合わせ状況の一元管理、サポートデータの分析、マルチチャネル対応、外部システム連携などの要件を満たすZendeskを導入。その結果、ECサイト構築において顕在化できていなかった課題や要望が可視化でき、必要なアクションを精査した顧客対応の最適化やスムーズな問題解決を実現しました。

また、それだけではなく、Zendeskなら蓄積されるナレッジを社内で共有して、コンテンツの強化や社内コミュニケーションの活発化のツールとしても役立つと期待されています。

【Zendesk導入事例】
株式会社フューチャーショップ

ナレッジマネジメント失敗の理由に目を向けよう

ナレッジマネジメントは業務の円滑化・効率化に貢献する重要な経営手法です。しかし、ナレッジの共有・活用を社内に定着させることは容易ではありません。

ナレッジマネジメントは、失敗理由を知ることで同じ失敗を避け、成功できないときのデメリットの大きさを知って、強い意欲を持って取り組むことで成功できます。

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