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優先度の可視化で「当日中にオープンゼロ」の体制を確立、対応漏れのない保守運用へ

統合ITインフラベンダーのエイチ・シー・ネットワークスは、民間企業や大学・病院・公共機関など高いサービスレベルが要求される顧客のネットワークインフラ保守を24時間365日体制で提供している。問い合わせ件数が増加する中、老朽化した既存システムとOutlookを併用した管理体制では優先度の判断や担当者間の引き継ぎなどに限界を迎えていた。Zendesk導入から約2年。旧システムの廃止を進めながら、「オープンチケット当日ゼロ」の運用を実現するまでの過程を聞いた。

エイチ・シー・ネットワークス株式会社
「私たちの使命は明確です。お客様へ約束した価値を確実に届け、そのサービスレベルを常に安定して維持すること。Zendeskを使いこなせたらもっと面白くなると思っています。我々が実現したいことに応えてくれる機能と拡張性がある。それが非常にいいなと思っている部分です」

足立 敦一 氏

テクニカルサービス本部 カスタマーサービス部 部長 - エイチ・シー・ネットワークス株式会社

40%

対応件数あたりで見た生産性向上

Zendeskソリューション導入の背景と課題

エイチ・シー・ネットワークス株式会社は、提案から構築・保守サービスまでを一貫して提供する統合ITインフラベンダーである。マルチベンダー体制でネットワーク製品を取り扱い、大学、病院、官公庁、公共機関といった「止まることが許されない」インフラを数多く支えている。月間約350件の問い合わせがあり、製品故障判定後は4時間以内に現地へ駆けつけるというSLO(Service Level Objective:サービスレベル目標)を設けている。チケット1件あたりの平均コメント数は20回。その他問い合わせ先のベンダーや社内担当者、協力業者とのやり取りも含めると30件を超える。1年以上オープンが続く長期チケットも珍しくなく、一般的なコンタクトセンターとは異なる、高い専門性と持続的な対応が求められる現場だ。

しかし、取り扱う製品も問い合わせ先のベンダーも増え続ける中、従来の管理体制には限界が近づいていた。当時のサポート業務はOutlookでのメール管理、Excelの共有ファイルによる引き継ぎメモ、そして老朽化した受付番号発行システムと履歴管理システムの4つで運用されていた。第二グループ マネージャーの三島 航氏によれば、「Outlookはそもそも複数人でのメール対応を前提としているシステムではないので、メールを受けたあとの問い合わせがどう進んでいるのか、誰がボールを持っているかというステータスの共有ができていなかった」という。

シフト制で複数メンバーが交代しながら対応する体制において、引き継ぎはExcelの共有ファイルに状況を記載し対応していた。そのため、「緊急性の高い障害か、簡単な問い合わせか」という優先度を意識した対応が出来ていなかった。さらに旧システムは老朽化により年に数度停止し、受付番号の発行やお客様への自動通知が止まっていた。お客様から見ると何もしていないように見える上に、運用を専任担当者に頼っているという属人化のリスクも抱えていた。

カスタマーサービス部 部長の足立 敦一氏は、「ひどい時だと初回対応までに1〜2日かかっている問い合わせがあった。当時は業績拡大に伴って月300件を超える問い合わせが見込まれ、この状態が続くと確実に破綻するのが見えていた。それが危機感でした」と振り返る。

Zendeskが選ばれた理由

Zendesk選定にあたり重視したのは、既存の業務フローをなるべく崩さないことだった。三島氏は「システムを変えることで運用が大きく変わると担当者の負荷が増えてしまい、かえって対応が遅くなることもある。だからこそ、現状の業務の形を保ったまま移行できるかどうかを基準に選定した」と語る。

2023年6月に複数製品の選定を開始、同年9月にZendeskでの本格検討を決定し、Zendeskパートナーによる3ヶ月間の伴走支援を経て正式導入を決定した。問い合わせIDの自動付与、優先度・緊急度の可視化、既存の対応ステップをそのまま再現できること。複数社のトライアルを経て、「一番理想の動きに近かった」のがZendeskだったという。

Zendeskへの切り替えは、組織変革と同時に進められた。2022年に買収し子会社化した企業へ業務を移管し、外部パートナーへの委託から子会社運営に一本化。17名体制で新たにスタートを切った。移行は段階的に行われ、まず一部のサービスをスモールスタートとしてZendeskに移し、その後全面移行へと進めた。問い合わせの特性上、1件のクローズに数週間〜数ヶ月かかるため、約1年間は新旧並行運用を続けた。足立氏は「今までできてなかった優先度の定義や取り組みの順序を、この機会に整理することができた」と語る。


エイチ・シー・ネットワークス株式会社
(左から)
テクニカルサービス本部 カスタマーサービス部 第二グループ 深川 春稀氏
テクニカルサービス本部 カスタマーサービス部 第二グループ 川原 悠矢氏
テクニカルサービス本部 カスタマーサービス部 第二グループ マネージャー 三島 航氏
テクニカルサービス本部 カスタマーサービス部 部長 足立 敦一 氏

Zendesk導入の効果

Zendesk導入後、同社が最も大きな変化として挙げるのが、手付かずのまま残っている“オープン”状態にあるチケットの「積み残しゼロ」運用だ。当日中に「未対応」を必ずなくすというルールを設けているが、以前は翌日まで積み残すことがあった。Zendeskに変えてからは、意識しなくても全てのオープンが必ずクリアになる運用が実現できているという。以前は「ボールを握ったまま誰も動いていない」状態が発生しクレームにつながっていたが、現在はビューの画面で全員が優先度を確認し共有できるため、緊急度の高い問い合わせを見逃すこともなく、管理者が見てもすぐに状況が把握できるようになった。

導入時17名だったチームは現在15名に最適化された一方、月間問い合わせ件数は300件から400件に近づきつつある。人数を減らしながら対応件数は増えており、対応件数あたりで見た生産性は約40%向上している計算になる。この効率化を支えているのがビューとマクロの2つの機能だ。ビューでは、対応が必要なチケット数、その中の優先度の高いチケット件数、ベンダー返信待ちの件数、対応期限切れの件数が全て可視化されている。同部 第二グループの川原 悠矢氏は「全ての情報を視覚的に把握できることが一番寄与している」と話す。同社の製品問い合わせ先は300以上に達し、宛先もフォーマットも全て異なっていた。以前はExcelに書いてあるなかから目視で探す運用だったが、マクロを整備することでベンダー名を入れればすぐに呼び出せるようになったと川原氏は語る。

初回応答についても顕著な改善が見られた。同社は「すべての問い合わせを1時間以内に内容確認し、初回応答を返信する」という目標を設定し、Zendeskの分析機能で逸脱したチケットを毎月抽出して原因を振り返っている。川原氏は「初回応答までに時間を要したチケットを個別に振り返ることで原因にすぐたどり着け、毎月改善を図れるようになった」と語り、数ヶ月で応答遅延は劇的に減少した。ただし一般的なコンタクトセンターのような一次解決率やコメント数の削減は、マルチベンダー対応の特性上、単純には適用できない。足立氏は「お客様が曖昧なまま問い合わせてくることも多い。やり取りの回数をいたずらに減らすのは顧客満足度を下げる行為にもなる」と述べ、まず初回応答と積み残しゼロから成果を出し、その上で次を探るという姿勢を貫いている。

定量的な面に加え、チームの心理面にも変化が生まれている。対応しなければならないチケットが一見してわかるようになったことで、マネジメント側も現場のオペレーターも、自分たちの残タスクを容易に把握可能となり、お互いにとって安心感をもたらしている。シフト交代時も「1つ前のやりとりをすぐ見られるのが大きい。前のシフトでこうやったから次はこうつなげないといけない、というのがすぐわかる」と三島氏が言うように、画面を開けば何が起きているかが把握できる状態が、チーム全体の心理的な負荷を下げている。

今後の展望

同社はZendesk AIの活用を前向きに進めている。方向性は明確で、顧客向けではなくオペレーター支援に絞っている。まずは自動要約機能によって経験が浅い担当者でも複雑な問い合わせを素早く理解でき、立ち上がりを早くするためのAIを模索している。最終的な目標は、AIによる優先度・重要度の自動トリアージと、お客様の温度感を検知して管理者へ自動通知する仕組みだ。実際、同部 第二グループの深川 春稀氏がアプリビルダーをノーコードで試作したところ、プロンプトを入れるだけでアプリが作れたといい、現場が自らの手で改善を形にできる土壌が整いつつある。

Zendesk上でのナレッジ構築プロジェクトも進行中であり、AI活用によって一次解決率を向上することで、コスト削減という更なる成果がもたらされることにも期待を寄せている。同社のメンバーからも前向きなフィードバックが届き始めており、課題を見つけ解決策を模索し少しずつ運用を良くしていくポジティブな循環がZendeskの上で回り始めている。

足立氏は「とにかく効率よく早く適切な情報にたどり着き、お客様をお待たせしない。AIもツールもそうだが色々なものを使って組み合わせていく。そういったものに積極的に取り組んでいく組織を作っていきたい」と語る。メンバーが自ら課題を見つけ、新しい機能を試し、改善を重ねていく。そうした組織づくりの先に、お客様への価値が届いていくと足立氏は考えている。

ネットワークという「見えないインフラ」を支えるための同社の取り組みが、Zendeskという基盤の上で、確実に進化を続けている。