問い合わせ対応の品質を追求することは、従業員体験を高めつつ、 本来の業務に集中できる環境を作ること、ひいては、味の素グループの製品をご愛顧いただいているお客様の満足度を高めることにも繋がります。
Strategy Tower長 - 味の素デジタルビジネスパートナー株式会社
※今回の取組みは先行して実装した味の素株式会社人事部より受託している味の素株式会社従業員からの人事領域の問い合わせ業務が対象。以下、「従業員」は委託元の味の素株式会社の従業員を指します。
Zendeskソリューション導入の背景と課題
「Eat Well, Live Well.」をコーポレートスローガンに掲げ、食と健康の課題解決企業としてグローバルに事業を展開する味の素グループに2020年に設立された味の素デジタルビジネスパートナー株式会社は、グループ各社のコーポレート機能のうち、人事・総務・広報・調達・庶務業務に関わるオペレーションを担い、円滑な事業展開を支えている。
しかし当初は、従業員からの膨大な問い合わせへの対応に苦慮していたという。Strategy Tower長の石黒 正樹氏は、次のように振り返る。
「味の素株式会社の人事領域の問い合わせ業務に先行導入したのですが、当時は電話、メール、チャットなど、あらゆる手段で従業員からの問い合わせを受け付けていました。2022年に行ったメール分析では、業務を受託しているグループ会社からの問い合わせを年間約6万件ものやり取りを処理していたと推計されます。しかも問い合わせ対応の専門部署ではなく、各窓口担当者が問い合わせを受けていましたので、従業員に寄り添ったサポートを心掛けている窓口担当者は問い合わせ対応に追われ、本来の業務に傾注するのが難しくなっていました」
ADPでは業務の標準化や効率化などのOE(Operational Excellence)に取り組んでいたが、人海戦術では対応の抜け漏れや遅れ、作業負荷の増大といった課題はなかなか解消できなかった。
「電話内容を転記する方法は、どうしても抜け落ちが発生しますし、メールベースでやり取りを重ねると、スレッドが長くなって対応完了の判断がしにくくなります。問い合わせの件数や内容をデータで把握できない限り改善策を練れない点も解決したいと考えていました」
Zendesk が選ばれた理由
これらの課題を解決するため、ADPでは新たな問い合わせ管理システムの導入を検討。比較検討の末、Zendeskの採用を決定する。石黒氏によれば、決め手となったのは「コスト」と「導入のしやすさ」、そして「使いやすさ」だった。
「まず運用コストに関して述べれば、個々の利用者IDごとに課金されるシステムは、私たちのグループの規模を考えても現実的ではありませんでした。また、導入のしやすさに関しては、細かな機能が使えても設定に時間がかかるのでは実装が遅れますから、そのまま使えるような製品が望まれました。最も考慮したのは各窓口担当者にとっての「使いやすさ」で、デモを拝見しZendeskが最適だと判断しました」
導入作業は、多忙な年度末・新年度を挟みつつも、半年弱で完了し、本稼働している。石黒氏は短期間での実装を可能にしたのが、周到な準備であったと明かす。
「新システムをいきなり導入するのではなく、入り口の整理から始めました。まず、MicrosoftのSharePointと Formsを活用して、自己解決できるようにFAQへの誘導を強化する。それでも解決しない場合に、問い合わせフォームへ進むよう設計にしました。この事前準備があったからこそ、スムーズに運用を軌道に乗せることができたと考えています」
人事領域を担うHuman Resource Tower(HRT)で給与ユニット長を務める吉田 拓氏は、現場主導で「使いやすさ」を追求したことが、利用定着を早めたと語る。
「我々の業務では、問い合わせてきた方が『どの部署の、どのような雇用形態の方か』という属性情報を即座に把握することが生命線になります。ZendeskはUIがわかりやすいだけでなく、画面右側に関連情報を常時表示させるようなカスタマイズが簡単にできます。これが非常に役立ちました。1画面で問い合わせに必要な情報が一覧できるので、的確な操作や回答ができ、誰もがストレスなく対応できています」

Zendesk 導入の効果
現在ADPでは給与、社会保険、人事、就労管理、福利厚生業務などの問い合わせ対応にZendeskを活用。マルチチャネルの問い合わせを集約し、チケットで管理するフローを採用している。石黒氏によれば、内容に応じてチケットを自動起票し、担当者も自動で割り振る仕組みにより、対応時間は導入前と比較して30%削減。FAQの整備や関連情報の自動提案機能により、自己解決率も25%向上している。
吉田氏は件数の増減に現れない、定量的な成果についても語る。
「通常、問い合わせ件数は、税法改正や社内制度の変更などで大きく変動します。しかしZendeskの導入以降、HRTでの問い合わせ件数は、毎月150〜200件程度で安定しています。つまり、定型的な質問を水面下でうまく吸収し、その余力をよりきめ細かな対応に回すことができていると推察できます」
石黒氏は、メールの履歴や属性確認などの所要時間が半減したと前置きしつつ、定性的な効果も強調した。
「しっかりチケット管理できるようになったことで、見逃しミスのような初歩的なエラー事象はなくなりました。基本的なことですが、こういう根本を徹底するのは極めて重要です。SLA(サービス品質合意)違反にならないか、問い合わせ総数と未回答の件数を一箇所で可視化し、全員で把握できるようになったのも大きいですね」
このような合理化は、味の素株式会社人事部との連携の深化にも寄与している。
「データを活用し、『今月はこういう問い合わせが増えています』という会話が月次定例会でできるようになりました。また、問い合わせの満足度を高めるための次の一手を考えたり、問い合わせの記録を味の素株式会社人事部と共有し、対応が適切だったかどうかを相互確認ができるようになりました。これらの取り組みも業務効率化と、対応の品質向上に役立っています」
30%減
対応時間
25%増
自己解決率
月150件超
人事領域における問い合わせ数
今後の展望
Zendeskの導入がもたらした効果はそれだけにとどまらない。取締役 兼 Human Resource Tower長を務める山口 義道氏は、本プロジェクトの意義を次のように語る。
「昔の味の素株式会社では、新卒で一括採用された従業員が中心でしたが、現在はキャリア採用や外国籍の従業員、障がいをお持ちの方など多様な方々が活躍されており、人事労務関連規程も、充実した内容になっています。一方、その分だけ解釈や運用が複雑になりがちで画一的なマニュアルでは対応しきれないケースが増えています。このような状況を踏まえつつ、個々の事情や属性に合わせたきめ細やかな回答を行い、従業員のロイヤリティも高めるうえで、Zendeskの導入は必然だったと思います」
山口氏は、Zendesk導入の効果が今後さらに表れてくると期待を寄せる。
「現状ではコストと使い勝手の良さが評価されていますが、真のシナジーはこれから生まれてくると思います。Zendeskで処理した問い合わせ内容がデータとして蓄積され、Microsoft Teamsなどの外部ツールとも連携していけば、より効率的に、もっと寄り添ったサポートを能動的に提供できるようになります。これは将来に向け、弊社単体で適正な収益を確保しつつ、グループ全体の事業を発展させていく基盤となります」
一方、石黒氏は今後の目標の一つとして、AIを活用し「人とシステムの役割分担」を明確にすることを挙げる。
「たとえば『規程の格納先を教えて』といった単純な問い合わせは、チャットボットやエージェントに任せ、難易度の高い人事の領域は、人間が対応するという棲み分けもしていければと考えています。我々の自負として、効率化できる部分は効率化しつつ、AIエージェントに負けない、グループ従業員に寄り添った温もりのあるサポートを提供していきたいと考えています」
味の素グループのコーポレートスローガンは、「Eat Well, Live Well.」である。この実現を支えるために、ADPはWork Well(働きやすい環境づくり)に挑んでいるとも言えるだろう。石黒氏は、今回の成功事例をグループ全体へ広げていきたいと意欲を滲ませた。
「現在、Zendeskは人事・給与領域と調達領域での活用が中心ですが、経理や総務などの他の領域、他のグループ会社が担当している問い合わせ業務も効率化できるはずです。問い合わせ対応の品質を追求することは、従業員体験を高めつつ、本来の業務に集中できる環境を作ること、ひいては、味の素グループの製品をご愛顧いただいているお客様の満足度を高めることにも繋がります。本プロジェクトはその先駆けとも言えるケースですので、今後もZendeskを活用し、グループ全体の成長に貢献していきたいと考えています」

