更新日: 2026年6月11日
IT資産管理ツールの選び方ガイド
IT資産管理(ITAM)ツールとは、PCやスマートフォン、プリンタなどのハードウェアに加え、OSやアプリケーション、ソフトウェアライセンス、SaaSの契約・アカウントといったITに関わる資産情報を管理するツールです。資産の保有状況や利用状況を把握しやすくなり、未利用ライセンスの整理や更新漏れの防止につながります。あわせて、端末の状態や利用実態の把握が進むことで、セキュリティ上のリスクを早期に把握しやすくなります。
この記事は2026年4月の情報をもとにZendeskが作成しています。各製品の最新情報は公式サイトでご確認ください。
目次
- IT資産管理ツールとは?
- IT資産管理ツールの対象範囲
- IT資産管理ツールが求められる背景
- IT資産管理ツールの主な機能
- IT資産管理ツールを導入するメリット
- IT資産管理ツールのデメリット
- IT資産管理ツールの選び方
- IT資産管理ツールを選ぶ時の注意点
- IT資産管理ツールの種類・分類
- おすすめのIT資産管理ツール9選
- IT資産管理ツール導入のステップ
- IT資産管理ツールに関するよくある質問
- IT資産管理ツールを無料で試すなら「Zendesk」がおすすめ
IT資産管理ツールとは?IT資産管理(ITAM)ツールとは、PCやスマートフォン、プリンタなどのハードウェアに加え、OSやアプリケーション、ソフトウェアライセンス、SaaSの契約・アカウントといったITに関わる資産情報を管理するツールです。 資産の保有状況や利用状況を一元的に把握しやすくなり、未利用ライセンスの整理や更新漏れの防止、セキュリティリスクの早期把握などに活用されます。 |
IT資産管理ツールの対象範囲
IT資産管理ツールを導入する前に、ツールが扱う対象の範囲・機能領域・適用先となる企業像を整理しておくと、選定の軸が定まりやすくなります。本セクションでは、IT資産管理ツールが担う機能、Excel管理との違い、IT資産そのものの定義、向いている企業の特徴を順に解説します。
IT資産管理ツールが担う機能の中心
IT資産管理ツールが担う領域は製品により異なりますが、一般的には以下の機能が中心です。
- 端末情報の収集(メーカー、機種、OS、インストールソフト、IPアドレスなど)
- ソフトウェアライセンス/SaaS契約の管理(契約数、利用者、更新日、費用など)
- 資産のライフサイクル管理(調達、配布、異動、返却、廃棄など)
- 棚卸し、監査に向けた証跡の整理(変更履歴、レポート出力など)
- 運用に必要な権限管理(閲覧範囲の制御、作業者の権限分離など)
Excel管理との違い
Excel管理との違いは、資産情報の収集・更新の自動化に加え、台帳の整合性を保つ仕組みが備わっている点です。端末情報やソフトウェア情報を自動で取得し、変更を追跡できるため、手入力による更新漏れや棚卸しの負担を抑えられます。加えて、履歴管理や権限管理、レポート作成などが標準で用意されることが多く、監査対応や部門間の運用統一にも活用しやすくなります。
そもそもIT資産とは?
IT資産は、社内のPC・スマートフォン・プリンタなどの機器だけを指すものではありません。ソフトウェアライセンス、SaaSのID・アカウント、クラウド上のサーバーやストレージ、ネットワーク回線、周辺サービスの契約情報などもIT資産に含まれます。ITの利用形態が多様化するほど、どの資産を誰が利用し、契約がどのようになっているかを継続的に把握する重要性が高まります。
どんな企業に向いているのか
IT資産管理ツールは、次のような課題を抱える企業で特に効果を発揮します。
- 従業員数や端末数が増え、部門ごとに管理方法が分かれている
- テレワーク/ハイブリッドワークにより、端末の利用実態や所在が把握しづらい
- ISMSやプライバシーマークなどの認証取得を目指し、運用ルールと証跡の整備を進めたい
- SaaSの利用が増え、契約の重複や未利用アカウントが発生しやすい
- 拠点・子会社が複数あり、資産台帳を統一して管理したい
これらの状況では、棚卸しや監査対応、インシデント対応の負荷が増えやすく、資産情報を一元化するメリットが高まります。ツール導入の効果は、機能だけでなく、管理範囲の定義や運用ルールの整備とセットで高まりやすい点も押さえておくとよいでしょう。
IT資産管理ツールが求められる背景
DXやクラウド活用の進展により、管理対象は社内PC中心から、SaaSやモバイル、クラウド、各種契約情報へと急速に広がっています。各種調査でも、企業のSaaS契約数や利用範囲は拡大傾向にあるとされ、資産や契約が増えるほど「誰が」「何を」「どの条件で」利用しているかを把握しづらくなります。担当者の経験や手作業の台帳運用だけでは整合性を維持することが難しく、コストの過不足、セキュリティ上の見落とし、監査対応の負担につながります。
テレワーク・ハイブリッドワークの普及
テレワークやハイブリッドワークの定着により、端末が社外で利用される機会が増え、貸与端末の所在や利用状況の把握に加え、設定の統一、更新状況の確認が難しくなってきました。端末情報を継続的に把握できる状態を整えることは、端末管理(MDMなど)やセキュリティ運用を進めるうえでも前提になりやすい要素です。
あわせて、近年はゼロトラスト(社内外を問わず常に検証することを前提とするセキュリティ設計思想)の考え方が広がっています。利用者や端末の状態を継続的に確認しながらアクセスを制御するため、端末・アカウントの棚卸しと最新化が重要になります。
セキュリティリスクと「シャドーIT」の増加
許可されていないアプリや個人判断で導入されたSaaS、管理外の端末など、シャドーITの増加も、背景の一つです。利用実態が見えない状態では、退職者アカウントの残存や不要な管理者権限の付与、情報の持ち出しにつながるおそれがあります。
IT資産管理ツールで利用状況を可視化し、承認・調達の流れやアカウント運用のルールに落とし込めば、管理外の利用を減らすことができます。シャドーIT対策はツールだけで完結しないため、ID管理や社内ルール整備と組み合わせて進める必要があります。
コンプライアンス強化とライセンス監査の必要性が向上
IT資産管理ツールは、利用実態の把握と証跡の整備を支える基盤として活用できます。ソフトウェアメーカー等のライセンス監査に備えるには、インストール状況と契約状況の整合性を継続的に確認できる体制が重要です。
過不足ライセンスは是正コストの発生要因になり得るほか、取引先や社内監査への説明負担が増える場合があります。台帳、変更履歴、棚卸し結果を一定の粒度で残せる状態にしておくことが、運用面でも有効です。
IT資産管理ツールの主な機能
IT資産管理ツールは、資産台帳の作成・更新に加え、棚卸し、監査対応、セキュリティ運用で参照する情報を管理します。製品ごとに得意領域と搭載機能が異なるため、代表的な機能を紹介します。
資産台帳・ライフサイクル管理
資産ごとに、調達、配布、異動、返却、廃棄までの履歴を残し、利用者・保管場所・管理部門などをひも付けて管理する機能です。更新ルールを標準化でき、担当者が交代しても台帳と履歴情報を基に引き継げます。
ハードウェア・インベントリ管理
PCのスペックやOS、IPアドレス、シリアル番号、設置場所などの端末情報を自動収集し、台帳に反映する機能です。手入力の手間やミスを削減できるため、棚卸しの精度が向上します。端末の増減や入れ替えが起きても、簡単に差分を追えます。
ソフトウェア・ライセンス管理(SAM)
インストール済みソフトウェアを把握し、契約数との過不足、未使用ソフトの有無を確認する機能です。購入情報や契約条件(利用者数・端末数など)をひも付けられる製品では、監査対応の説明材料を整えやすくなります。契約の最適化にもつながります。
契約・更新管理(保守・保証、SaaS更新)
保守契約や保証期限、SaaSの更新日、費用、取引先といった契約情報を管理する機能です。更新期限の見落としを防ぎ、更新判断や予算化を進めやすくします。ライセンス管理と合わせて運用すると、契約と利用の整合性も確認しやすくなります。
セキュリティ管理・更新プログラム適用
OSやアプリの更新状況を把握し、脆弱性対策の抜け漏れを減らすための機能です。製品によっては、更新プログラムの配布やUSBなど外部機器の利用制御、設定(ポリシー)の適用まで対応します。端末管理(MDMなど)と連携して運用するケースも見られます。
利用ログ管理・状況確認
端末やアプリの利用状況、操作履歴などを記録し、内部不正の抑止やインシデント調査に活用するための機能です。すべてのIT資産管理ツールが詳細なログを扱うわけではないため、要件(保存期間・対象範囲・閲覧権限)を明確にしたうえで適合性を確認することが重要になります。社内規程やプライバシー配慮も重要になります。
棚卸支援・ラベル管理(バーコード/二次元コード)
現物確認を伴う棚卸しでは、台帳と現物の不一致が発生し、確認作業に時間を要します。資産ラベル(バーコード、QRコードなどの二次元コード)を読み取る運用を導入すると、照合手順が統一され、確認作業の速度と精度を高められ、棚卸し手順も標準化できます。
レポート・アラート機能(監査・コンプライアンス対応)
台帳の変更、未実施の更新対応、ライセンスの過不足などをレポートとして整理し、必要に応じて通知する機能です。監査対応では、資産台帳を資産単位で出力できることに加え、変更履歴(変更日時・変更者・変更内容)を変更単位で保存・抽出できると、報告資料の作成と根拠確認の工数を削減できます。アラートの条件や通知先(担当者・部門)を業務に合わせて設定できるかも確認ポイントです。
SaaS・クラウドサービスの利用状況可視化
SaaSの利用が広がると、未使用アカウント、退職者アカウントの残存、契約の重複が起きやすくなります。利用状況を可視化できると、シャドーITの把握やコストの適正化に取り組めます。SSO(シングルサインオン)や人事システム、クラウドの管理画面/APIと連携できるかは、運用負荷と把握精度に大きく影響します。
IT資産管理ツールを導入するメリット
IT資産管理ツールの導入効果は、管理作業の効率化にとどまりません。資産情報の可視化と運用手順の統一により、コスト管理の精度が高まり、セキュリティ運用の抜け漏れが減少し、監査対応も迅速になります。効果の程度は、管理対象の範囲設定と運用ルールの整備状況が大きく影響します。
台帳更新と棚卸しを効率化し、運用負担を抑えやすい
端末情報やソフトウェア情報を自動収集・更新できれば、Excel台帳への手入力や突合に要する作業を削減できます。異動・退職や端末の入れ替えが発生した場合も差分を把握でき、記載漏れや記載ミスを減らせます。担当者が交代しても、台帳と履歴情報を基に引き継ぎを行えます。
監査やISMS運用で求められる台帳情報、変更履歴、レポートを条件指定で出力できる製品では、突発的な確認依頼にも迅速に対応できます。結果として、情報システム部門は運用改善やセキュリティ施策の検討に時間を充てられます。
ライセンスと契約の過不足を把握し、ITコストを適正化できる
IT資産の利用状況を可視化できれば、未使用の端末やソフトウェア、契約数の過不足を把握できます。更新前に利用実態を点検し、契約内容と突合することで、不要な更新契約や重複購入を抑制できます。
資産のライフサイクルを管理すると、買い替え時期やリース期限、保守期限を把握できます。予算化を計画的に進められ、突発的な支出や慣例的な延長契約の抑制につながります。
内部統制とセキュリティ運用の強化に寄与する
パッチの適用状況や管理外端末の接続、未許可ソフトの利用状況を継続的に把握できれば、脆弱性対策の抜け漏れを抑制でき、インシデントが発生する前に対策を講じやすくなります。セキュリティ事故の多くは小さな管理漏れから生じるため、点検を定例業務として組み込み、検知から是正までの手順を明確化することが重要です。
操作ログや設定変更履歴を取得できるツールでは、内部不正の抑止に加え、インシデント発生時の原因確認と影響範囲の特定を迅速に行えます。再発防止策の検討に必要な根拠情報も残せるため、監査対応や説明責任の観点でも活用できます。
IT資産管理ツールのデメリット
IT資産管理ツールは有効な手段になり得る一方、導入すれば自動的に運用課題が解消するものではありません。管理対象や運用手順を整理せずに導入すると、かえって負担が増える場合があります。事前に想定されるデメリットを把握し、対策とセットで検討することが重要です。
導入・運用コストが発生する
ライセンス費用(初期費用、月額・年額費用)に加え、導入支援、端末への設定作業、棚卸しや台帳整備にかかる社内工数も想定する必要があります。削減できる作業時間や監査対応の負担軽減、インシデントリスクの低減を含め、投資対効果(ROI)を見込んだうえで導入の判断をしましょう。対策としては、全社一斉導入ではなく特定部門・拠点を対象としたPoC(試験導入)から始め、削減工数や検知件数といった効果指標を可視化したうえで対象範囲を広げる進め方が有効です。
導入時に負荷が集中しやすい
導入初期は、管理対象の確定やデータ整備、権限設計、端末への設定などが同時に発生します。体制を定めないまま進めると、作業が特定の担当者に偏り、負荷が過大になりがちです。導入範囲を段階的に広げる、移行期間を設ける、棚卸しの時期を調整するなど、スケジュールと役割分担の設計が求められます。あわせて、資産IDの命名規則や人事システムとの突合キー(社員番号・メールアドレス等)を事前に統一しておくと、データ移行時の名寄せ作業が大幅に軽減されます。
従業員が抵抗感を抱くことがある
ログ取得や端末管理の機能は、受け止め方によっては「監視」と認識されるおそれがあります。目的がセキュリティ確保と業務継続にあること、取得する情報の範囲、閲覧できる担当者、保存期間、利用ルールを明確にし、社内規程や運用手順として周知することが重要です。必要に応じて、法務・労務部門とも連携しながら進めると、運用上の摩擦を抑えられます。導入前に労使協議や社内説明会の機会を設け、運用開始後は問い合わせ窓口(ヘルプデスク)を明示しておくと、現場の不安や疑問を早期に吸収しやすくなります。
IT資産管理ツールの選び方
選定時は「どこまで管理するか」と「その運用を継続できるか」を軸に検討します。機能の多さではなく、自社の課題と運用要件に適合するかを基準に選定することが重要です。
提供形態(クラウド型・オンプレミス型)
クラウド型は、自社でサーバーを調達・構築せずに利用できるため、初期費用を抑えられる傾向があります。拠点追加やテレワーク環境への展開でも、運用変更への追随性が高い点が特長です。
オンプレミス型は、ネットワーク分離や閉域網などの要件がある場合に採用されることがあります。データ保管場所やアクセス経路を自社側で厳格に設計できる一方、更新作業、バックアップ、障害対応など、基盤運用の負担は自社側に寄りやすくなります。
いずれの提供形態にも利点と留意点があるため、セキュリティ要件(データ保管場所、認証方式、暗号化など)と運用方針(更新作業、バックアップ、障害対応の担当範囲)を基に選択します。
対応デバイスとOS(Windows・Mac・モバイル)
Windows中心か、Macが混在するか、スマートフォンやタブレットも管理対象に含めるかで候補は変わります。特にモバイル端末は、IT資産管理ツール単体ではカバー範囲が限定される場合があるため、MDMとの連携や役割分担も含めて整理すると比較が容易になります。
情報収集の方式(エージェント/エージェントレス)
情報収集には、端末にエージェント(端末にインストールして情報を収集する常駐プログラム)を導入し、端末側から詳細情報を取得する方式と、端末にプログラムを追加せず、SSO・人事システム・MDM・クラウドサービスのAPIなど既存システムとの連携や、ネットワーク経由の取得によって情報を集める方式(エージェントレス)があります。両者で、取得できる情報の細かさ、社外端末への追随、導入時の作業量、ネットワーク要件が変わります。自社の利用形態(テレワークの有無、拠点構成、端末へのインストール制限)を踏まえ、どの方式が運用に適合するかを確認します。
必要な機能の範囲
資産台帳と棚卸しで足りるのか、ライセンス管理(SAM)まで必要か、更新状況の確認やデバイス制御、ログ取得まで含めるのかで選定軸が変わります。「必須」「あれば望ましい」「将来検討」の3区分で整理すると、過剰な投資を避けやすくなります。
連携のしやすさ(人事・SSO・MDM・ITSMなど)
入退社・異動に合わせたアカウント運用、申請・承認の流れ、チケット管理など、周辺システムとの連携があると運用が安定しやすくなります。SSO(認証基盤)や人事システム、MDM、ITサービス管理ツール(ITSM)など、既存の仕組みとどの程度連携できるかは確認しておくと安心です。
自社の規模と運用要件に対する適合性
小規模企業向けの手軽さを重視した製品もあれば、大規模運用を想定した製品もあります。管理対象台数、拠点数、権限設計、ログの保存期間、レポート出力の粒度など、自社要件に対して無理なく運用できるかを確認します。
サポート体制
導入支援や運用相談、障害時の対応、ナレッジ(手順書・FAQ)の充実度は、長期運用で差が出やすい要素です。日本語対応の有無、対応時間(24時間/平日日中など)、問い合わせ窓口の種類(電話・メール・チャット)、支援範囲(設定代行、定着支援、訪問対応の可否)、ユーザーコミュニティの有無など、自社の体制に必要なサポート水準を具体化したうえで比較すると判断しやすくなります。
IT資産管理ツールを選ぶ時の注意点
導入後のつまずきは、導入前の整理不足に起因するケースが少なくありません。目的・範囲・体制の3点を先に固め、運用イメージを持ったうえで選定を進めることが重要です。
自社の課題に対して優先順位を付ける
まず、現状の課題を具体的に洗い出します(例:台帳更新の遅れ、テレワーク端末の状況把握不足、ライセンス監査への不安、シャドーITの把握不足)。次に、コスト管理やセキュリティ運用、監査対応のうち、どこを優先するかを決めます。優先順位が定まると、比較項目が絞れ、必要以上に複雑な製品を選びにくくなります。
自社のIT環境に照らして「取得できる情報」を確認する
Windows/Mac、スマートフォン/タブレット、VDI、オンプレミス/クラウド、プロキシの有無、社外拠点やテレワーク、私物端末の業務利用(BYOD)の有無など、環境条件を整理します。そのうえで、ツールがどの範囲まで情報を収集できるか、収集できない領域を何で補うか(MDMや既存台帳、連携)を確認します。相性確認を省くと、一部端末の情報が取得できず、管理情報が不足した状態で運用が始まるおそれがあります。
運用体制と担当者の負荷を見積もる
IT資産管理ツールは、導入後の点検と更新が前提になります。台帳の更新責任者、レポート確認の頻度、棚卸しの実施時期、例外対応(端末紛失、緊急貸与)の扱いまで、最低限の運用手順を決めておくと定着しやすくなります。設定項目が多い製品は柔軟性がある反面、運用工数が増える場合があります。自社の体制で継続できる運用設計かを基準に選ぶことが現実的です。
IT資産管理ツールの種類・分類
IT資産管理ツールは、成り立ちの違いにより大きく3つのタイプに分類できます。自社の起点となる課題が業務プロセスの整備か、端末統制か、現物管理かによって、適合するタイプは大きく変わります。導入後に「機能が過剰で使いこなせない」「必要な機能が足りず別ツールを追加した」といった失敗を避けるためにも、各タイプの特性を理解したうえで自社要件に合うものを見極めることが重要です。
ITSMプラットフォーム型(Zendesk/Freshservice/ServiceNow)
ITSM(ITサービスマネジメント)の業務プロセスを起点に、IT資産管理機能を統合したタイプです。インシデント管理・問題管理・変更管理・構成管理といったITILプラクティスとIT資産情報が一体化しており、CMDB(構成管理データベース)を中核として、資産情報をサービス提供プロセス全体で活用できます。たとえば「特定の端末で発生したインシデント」と「その端末の構成情報・契約情報」を紐付けて管理できるため、原因分析や変更影響評価の精度が高まります。情シス部門がサービスデスクや変更管理プロセスを整備済みである、もしくは整備を予定している中堅・エンタープライズ企業に適しており、IT運用全体の標準化を進めたい組織と親和性が高いタイプといえます。
エンドポイント管理統合型(LANSCOPE/SS1/MaLionCloud/MCore)
端末管理・セキュリティ統制を起点に、IT資産管理機能へと拡張してきたタイプです。日本市場ではセキュリティインシデント対策や情報漏えい対策のニーズが先行して発展した経緯があり、PC操作ログの取得、デバイス制御、ソフトウェア配布、ライセンス管理などを一元的にカバーする製品が多く存在します。Excelや手作業で資産台帳を管理してきた情シス部門が「まずは現場の運用負荷を下げたい」「シャドーIT・無許可ソフトウェア利用を抑止したい」といった課題から導入するケースが大半です。中小〜中堅企業の情シス部門で広く採用されており、ITIL準拠のような厳格なプロセス整備を前提としない実務的なIT資産管理を実現したい場合に有力な選択肢となります。
特定領域特化型(Jamf Pro/Assetment Neo)
特定の領域に絞って深い機能を提供するタイプであり、メインのIT資産管理ツールと併用する設計が前提となります。Jamf ProはApple端末(macOS/iOS)の管理に特化しており、Apple Business Managerとの連携やゼロタッチデプロイなど、汎用ツールでは実現しにくい運用を可能にします。Assetment Neoは「現物資産管理」に特化しており、QRコード・バーコードを活用した棚卸し業務や、什器・備品を含む幅広い物品の管理に強みを持ちます。クリエイティブ職場でMacが多い企業、製造業や研究機関で物理資産の管理ニーズが大きい企業など、汎用型では対応しきれない領域を補完する用途に適したタイプです。
おすすめのIT資産管理ツール9選
以下では、比較検討で候補に挙がりやすいIT資産管理ツール9製品を解説します。各製品は、概要、機能、料金プラン、無料トライアルの有無の順に整理しています。
製品名 | 特徴 | 無料トライアル | 料金 |
サービスデスク・チケットシステム・ITアセット管理を統合した従業員サービス基盤 | あり | Suite Team:$29〜 | |
PC・スマホをクラウドで一元管理する統合型IT資産管理・MDMツール | あり | 月額:300円/台(税抜)〜 | |
現物管理(物品管理)と台帳管理に特化、IT資産管理ツールと併用する補完型 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | |
Freddy AIと自動更新CMDBを備えたクラウド型ITSMプラットフォーム | あり | Starter:$19〜 | |
IT資産管理・ログ管理・労務管理を幅広くカバーする国産ツール、Excel調の管理画面が特徴 | あり | 要問い合わせ | |
ServiceNow AI Platformを基盤とするエンタープライズ向けITAMソリューション | 要問い合わせ | 要問い合わせ | |
Apple製デバイス管理に特化したMDM/IT資産管理プラットフォーム | あり | 要問い合わせ | |
PC・スマホ管理をオールインワンで実現、情報漏洩対策・MDM・労務管理を統合 | あり | 要問い合わせ | |
オンプレミス/クラウド両対応、20年以上の実績を持つIT資産管理・セキュリティ統合システム | 要問い合わせ | 規模・目的に応じた個別見積もり |
1. Zendesk(ゼンデスク)
Zendeskは、従業員向けサポート(社内ヘルプデスク)やITサービス管理(ITSM)の基盤として活用される従業員サービスプラットフォームです。問い合わせ内容(インシデント・依頼・変更申請など)と資産情報を結び付けて運用する用途に適し、「誰が」「どの端末で」「どのような事象が起きているか」を1画面で把握できます。Suite Growthプラン以降ではITアセット管理機能が提供されており、サービスカタログ・セルフサービス従業員ポータル・SLA管理と組み合わせて、社内ヘルプデスクとIT資産情報を一体で運用できます。AIエージェントや生成AIによる返信、ナレッジビルダーといった機能で対応支援・効率化を図れる点も特徴です。IT資産の網羅的な収集・棚卸し・ライセンス監査を主目的とする場合は、LANSCOPEやSS1、ServiceNow ITAMといった専用ツールと連携・組み合わせて運用するのが現実的です。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
従業員からの問い合わせ管理と資産情報のひも付け | Suite Team:$29 | あり |
2. LANSCOPE(ランスコープ)
LANSCOPEは、PCやスマートフォンといったエンドポイントをクラウド上で一元管理できる、統合型のIT資産管理・MDMツールです。端末管理とセキュリティ管理を別々の製品で行うのではなく、ひとつの管理画面に集約できる点が特徴で、情シス部門の運用負荷を抑えながら統制を強めたい企業で導入が進んでいます。Excelでの資産台帳管理やPC・スマホ管理が分断されている状態から脱却したい企業に適したツールです。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
PC管理 | 月額300円/台(税抜)〜 | あり |
出典: LANSCOPE
3. Assetment Neo(アセットメント ネオ)
Assetment Neoは、IT資産管理ツールや固定資産管理システムと連携・補完して使う、現物管理(物品管理)と台帳管理(情報管理)の双方に特化したクラウド型の社内資産管理サービスです。社内にあるさまざまな資産にラベルを貼り、台帳を一元管理できる仕組みを備えており、対象は情報システム部門のPCや周辺機器に限らず、経理の固定資産から総務の什器や備品、現場で移動する貸出物、リース契約、点検が必要な測定器まで幅広く想定されます。IT資産管理ツールが得意とするインベントリ収集やソフトウェアライセンス管理というより、現物が今どこにあるかを把握する物品管理と棚卸に強みがあります。IT資産管理ツールや固定資産管理システムだけでは把握し切れない現物情報を補完しつつ、必要に応じて連携すると管理がしやすくなります。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
資産台帳の一元管理 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
出典: Assetment Neo
4. Freshservice(フレッシュサービス)
Freshservice(フレッシュサービス)は、IT部門とビジネス部門が連携しながら、従業員向けのITサポートやサービス提供を効率化するクラウド型ITSMプラットフォームです。シンプルで直感的な画面設計と、Freddy AIを活用した自動化機能を組み合わせており、日々の問い合わせ対応から障害対応、資産管理までを一括して運用できます。例えば、自動更新されるCMDBにより、インシデントチケットに該当端末の資産情報(OS・インストール済みソフト・保守契約等)が紐付くため、原因調査や影響範囲の特定を迅速に行えます。Dependency Mappingでアプリ・サービス・インフラの依存関係を可視化できる点も、ITサービス管理(ITSM)と資産管理を統合したい企業に向く理由です。小規模チームから大規模組織まで対応できる4段階のプラン構成が用意されています。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
ITサービス管理(インシデント/ナレッジ/SLA管理等) | Starter:$19/エージェント/月(年払い) | あり |
出典: Freshservice
5. SS1(エスエスワン)
SS1(エスエスワン)は、IT資産管理を中心に、セキュリティ対策やログ管理、労務管理まで幅広くカバーする国産のIT資産管理ツールです。運用者の使いやすさを重視して設計されており、Excel調の管理画面や、必要な機能だけを選べる柔軟な構成が特徴です。導入前後のサポート体制として、電話やメール、リモート対応、訪問サポートが用意されているため、専任担当者が少ない企業でも導入・運用を進めやすい設計となっています。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
IT資産管理 | 詳しくは要問い合わせ | あり |
出典: SS1
6. ServiceNow(サービスナウ)
ServiceNow IT Asset Management(ITAM)は、ハードウェアやソフトウェア、SaaS、クラウドを含むIT資産を単一プラットフォームで一元管理する、エンタープライズ向けのIT資産管理ソリューションです。IT資産の調達から利用、更新、廃棄までのライフサイクル全体を自動化し、コスト最適化とコンプライアンス強化を同時に実現できる点が大きな特徴です。ServiceNow AI Platform を基盤としており、資産の使用状況や契約、ライセンスのリスクを可視化しながら、ワークフローを通じて実務に落とし込めます。エグゼクティブ向けダッシュボードも備えており、経営層がIT資産の状況を俯瞰して把握できる点も、他のIT資産管理ツールとの大きな違いです。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
IT資産ライフサイクル管理 | 詳しくは要問い合わせ | 要問い合わせ |
出典: ServiceNow
7. Jamf Pro(ジャムフ プロ)
Jamf Pro(ジャムフ プロ)は、Mac、iPhone、iPad、Apple Watch、Apple TV、Vision Proなど、Apple製デバイスの管理とセキュリティに特化したMDM/IT資産管理プラットフォームです。Appleデバイスを業務で活用する企業や教育機関向けに設計されており、小規模導入から大規模環境まで対応できる拡張性を備えています。Microsoft EntraやGoogle Workspace、Oktaなど既存のIDプラットフォームと連携可能で、Windows/Mac混在環境のMac側管理を担う選択肢としても有効です。AppleのOSアップデートに同日対応する体制や、20年以上にわたるApple管理の実績が強みで、最新のAppleエコシステムに追随しながら安定した運用を実現可能です。MDMを中核としつつ、セキュリティ対策やアプリ管理、構成管理を自動化することで、IT部門の負担を抑えながらエンドユーザーの生産性向上を支援します。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
Appleデバイス一元管理 | 要問い合わせ | あり |
出典: Jamf Pro
8. MaLionCloud(マリオンクラウド)
MaLionCloud(マリオンクラウド)は、PCとスマートフォンの管理をオールインワンで実現する、クラウド型のIT資産管理・情報漏洩対策・MDMサービスです。WindowsやMacのPC管理を中心に、iPhoneやAndroidなどのモバイルデバイス管理(MDM)にも対応しており、中堅企業から大企業まで幅広い規模で導入されています。特徴は、IT資産管理にとどまらず、情報漏洩対策、MDM、労務管理、AIレポート、リモートコントロールなどを横断的にカバーできる点です。インターネット経由での柔軟な運用に適しており、クラウドの利便性を生かしながら社内PC・スマホ管理を一元化したい企業に向いています。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
情報漏洩対策 | 要問い合わせ | あり |
出典: MaLionCloud
9. MCore(エムコア)
MCore(エムコア)は、20年以上の実績を持つIT資産管理/セキュリティ管理統合システムです。オンプレミスとクラウドの両方に対応しており、AWSやAzure環境にも対応しているため、自社のセキュリティ要件や運用体制に合わせた導入形態を選べます。PCやサーバー、ソフトウェアといったIT資産を正確に把握し、パッチ管理やソフトウェア資産管理、ログ管理、デバイス管理、ネットワーク検疫まで、セキュリティ対策からコンプライアンス強化まで一貫して支援できる点が特徴です。グローバル環境での利用にも対応しており、多言語環境にも対応します。
機能と特徴 | 料金 | 無料トライアル |
パッチ管理 | サーバーライセンス+エージェント追加ライセンスの構成 | 要問い合わせ |
出典: MCore
IT資産管理ツール導入のステップ
IT資産管理ツールの運用を定着させるには、製品比較に入る前に「何を管理対象とするか」「どの程度の詳細で情報を把握するか」「誰がどの役割を担うか」を明確にしておくことが重要です。以下では、導入準備から本番運用、改善までの5ステップを紹介します。
Step1 現状整理:資産・契約・管理ルール・台帳の不整合を把握
最初に、現状の管理対象と管理方法を棚卸しし、台帳の不足や不整合がどこで起きているかを把握します。対象は端末だけでなく、ソフトウェアライセンス、SaaSアカウント、保守・更新契約まで含めて整理すると精度が上がります。確認観点の例は以下のとおりです。
- 資産が一覧化されているか(端末、ソフト、SaaS、契約)
- 台帳の更新ルールが定まっているか(誰が、いつ、何を更新するか)
- 台帳と現物・契約の不一致がどの程度あるか(所在不明、重複、未更新など)
- 退職者アカウント、未使用ライセンス、管理外端末の兆候がないか
Step2 目的/範囲/体制の確定:優先順位、役割分担、例外(BYOD等)の扱いを決める
次に、導入目的の優先順位を決めます。監査対応、セキュリティ運用、コスト管理のうち、どこを最優先にするかで要件が変わります。あわせて、管理対象の範囲と例外を明確にします。
検討事項の例は以下のとおりです。
- 対象範囲:社給PCのみ/モバイルも含む/SaaSアカウントまで管理する、など
- 例外対応:BYODを許容する条件、管理の方法、できない場合の代替策
- 体制:情シス、総務、購買、人事、内部監査(必要に応じて法務・労務)の役割分担
- ルール:資産番号・ラベル運用、命名規則、権限設計、閲覧範囲、更新頻度
Step3 要件定義と比較・試行導入:対応OS、テレワーク、連携(人事・SSO・MDM等)を確認
Step2の決定事項を要件として文書化し、比較検討に移ります。特に「情報をどう収集するか」「既存の仕組みとどうつなぐか」が運用負担を左右しやすいため、早い段階で確認します。確認観点の例は以下のとおりです。
- 対応OS/デバイス:Windows、Mac、スマートフォン、タブレット、VDIの扱い
- 社外利用:テレワーク端末の情報収集、オフライン端末への追従
- 収集方式:エージェント導入の可否、ネットワーク要件、取得できる情報の粒度
- 連携:人事(入退社・異動)、SSO(認証基盤)、MDM、ITSM、購買データとの連動
候補が絞れた段階で、トライアルやPoCを実施し、取得データの妥当性、レポートの出力内容、運用担当者の作業量を確認します。例外ケース(社外端末、権限の分離、部門ごとの運用差)も評価対象に含めると、導入後の手戻りを減らしやすくなります。
Step4 本番導入と移行:台帳移行、初期設定、初回棚卸し、運用手順の確定
本番導入では、移行・初期設定・初回棚卸しを計画的に実施します。旧台帳の品質(重複、欠落、表記ゆれ)を整えたうえで移行し、初回の一斉収集(スキャン)と突合を行います。あわせて、運用を回すための手順を確定します。
- 更新ルール:異動、退職、端末入替、廃棄時の手順と責任者
- 権限:閲覧・編集権限、監査向け出力権限、作業の分離
- 点検:レポート確認の頻度、例外処理の承認フロー
- 棚卸し:実施時期、方法(現物確認、ラベル運用)、差分の是正手順
Step5 定着化と改善:レポート点検、定期棚卸し、ルール見直し、監査対応の手順化
導入後は、定期的な点検と棚卸しを運用に組み込み、台帳情報を最新の状態に維持します。運用の成果は「出力できること」ではなく「更新され続けること」で評価されるため、点検と是正を繰り返せる形に整えることが重要です。
具体的には、次の項目を運用手順として定め、実施頻度と担当を明確にします。
- レポート点検:未更新、ライセンス過不足、管理外端末の兆候などの確認
- 定期棚卸し:現物・契約・台帳の突合、差分の是正
- ルール見直し:例外対応(BYOD等)の再評価、権限設計の調整
- 監査対応:提出資料の出力手順、証跡の保存方法、説明責任の整理
運用を定着させることで、コスト管理、セキュリティ運用、監査対応を継続的に向上させられます。
IT資産管理ツールに関するよくある質問
IT資産管理ツールは、資産台帳の整合性を保ち、監査対応やセキュリティ運用を進めるうえで有効な手段の一つです。導入時に論点になりやすい事項を、よくある質問として整理します。
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Zendeskは、社内の問い合わせ・申請・インシデント対応を統合して運用するITSM/社内ヘルプデスク基盤(従業員サービスプラットフォーム)として活用できます。Suite Growthプラン以降ではITアセット管理機能が提供されており、サービスカタログやセルフサービス従業員ポータル、SLA管理、承認ワークフローと組み合わせて、資産情報を業務フローの中で活用しながら運用できる点が特徴です。「誰が、どの端末を、どのような契約で利用しているか」と「現在発生している問い合わせ」を1画面で結び付けて把握できます。
たとえば、PC不具合の問い合わせを受けた際に、対象端末の機種・購入時期・保守契約・利用ライセンスを即座に参照できるため、初動対応や手配の判断を迅速化できます。退職・異動時には、社内ヘルプデスク窓口を起点としたアカウント停止・端末返却のワークフローを標準化でき、対応漏れの抑制に寄与します。ライセンス追加申請や端末交換依頼といった資産関連の手続きも、申請フォームと承認フローで定型化できます。さらに、AIによる類似問い合わせの自動分類やナレッジ参照、応答ドラフトの提案により、担当者の負荷軽減にもつながります。メール・チャット・フォームなど多チャネルでの受付に対応し、レポート機能では一次解決率・対応時間・満足度といったKPIを可視化できます。
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