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市民の声を拾い上げる仕組みをデジタル化、より良い市政の実現へ各課の連携を強化

岐阜県南東部に位置する恵那市では、ICT活用推進計画に基づきさまざまな取り組みを進めている。Zendesk導入もその一環であり、市政や事業に関して市民から届く意見や要望、提案への対応状況を一元管理する仕組みを目指した。導入後は課の垣根を越えて関係者と情報を共有できるようになり、市政への反映に向けて連携を強めている。

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恵那市
「これまでは各課に直接届いていた市民からの意見や要望、提案を庁内で共有する仕組みがありませんでした。Zendeskの導入を機に市民の声がリアルタイムに可視化され、市政反映にどう生かしていくか、課をまたいで議論できる環境が整いました。」

山田 英正氏

総務部 総務課 広報広聴係 課長補佐兼係長
- 恵那市

Zendeskソリューション導入の背景と課題

2004年10月、旧恵那市と恵那郡の5つの町村が新設合併して誕生した恵那市は、岐阜県南東部に位置し、愛知県と長野県に隣接した山紫水明の豊かな自然に恵まれた地域である。

木曽川中流の渓谷「恵那峡」をはじめ、江戸から数えて46番目の宿場町「中山道大井宿」、日本の棚田百選に認定された「坂折棚田」、日本三大山城の一つ「岩村城跡」、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の舞台としても注目を集めた「岩村町」、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公である明智光秀の生誕地といわれる「明智町」など、年間を通して多くの観光客が訪れる。2021年東京オリンピック・パラリンピック競技大会ではホストタウンに登録し、ポーランド共和国のカヌーチームが事前合宿を行った。

そんな恵那市では、快適な生活環境の実現と市内経済の活性化を目指して2019年に策定したICT活用推進計画に基づき、さまざまな取り組みを進めている。県内では4番目に面積が広いうえ人口密度が高くないため、ICTは距離的・物理的ハンディキャップを埋める重要なツールである。広報活動だけでなく、市民からの意見や要望、提案を幅広く収集する「広聴」においても、業務のデジタル化、データベース化は課題となっていた。

恵那市に寄せられる市民からの意見や要望、提案は、2020年実績で年間約300件。電話やメール、市のWebサイトのほか、「広報えな」に折り込む広報直通便はがき、2020年11月にスタートした恵那市公式アプリ「え~なび」など、複数のチャネル経由でばらばらに届く。恵那市 総務部総務課 広報広聴係 担当係長の大内 鉄平氏は、こう説明する。

「これまでは、届いたものから順にExcelに転記した上で、担当課にメールで回答作成を依頼していました。担当課から回答が届いたら広報広聴係から市民に回答する、という流れです。市として統一感のある発信を行うべく広報広聴係を通して回答しているため、どうしても時間がかかってしまいます。担当者が常に席にいるとは限りませんし、さらにその上長が不在となると承認がおりず、半日以内に回答したいところを一日以上かかってしまうことも少なくありませんでした。進捗状況の管理が煩雑で難しかったことも、回答の遅延や漏れにつながっていたと思います。」

Zendeskが選ばれた理由

Excelデータを使った個別のやりとりでは、今どこの誰からどんな意見や要望が届いていて、どの課の誰が対応中なのか、市民への回答は済んだのかといったことが把握しにくい。そこで、タスク管理が行えるソフトウェアの検討を開始したところ、Zendeskに出会ったという。

「タスク管理や進行管理はもちろん、関係者と迅速に情報共有が行える環境を整えること。これがZendesk導入の目的でした。Zendeskは検索機能も充実しているので、必要に応じて過去の対応履歴を確認できれば、リスク管理にもつながります。実際、同じ方からご意見をいただくことは非常に多いので、過去にどんな意見や要望が寄せられていて、どんな回答をしたのかを確認できれば、市の方針に沿ってブレのない対応を実現できます。

少し極端な例を挙げると、執拗に苦情を繰り返す人が、いつものA課ではなくB課に意見を送付した場合、B課ではその人が苦情を繰り返していることを認識していないため、警戒心なく対応を始めてしまうでしょう。認識できていれば、より慎重に対応することができます。」(恵那市 総務部総務課 広報広聴係 課長補佐兼係長の山田 英正氏)

また、進捗状況から時間を要すると判断した場合は、回答が遅れる理由を先回りして伝えることもできる。業務の効率化にとどまらず、こうした市民エクスペリエンスの改善を見越してのZendesk導入だったのだ。

Zendesk導入の効果

Zendesk導入後は、広報広聴係に寄せられる市民の声はすべてZendeskに集約。内容に応じて担当課に振り分けたあとも、最終的に広報広聴係が回答するまでのプロセスをすべてZendesk上で一元管理できるようになった。

「背景を調査したり現場確認が必要だったり、もともと即答できるケースは少ないのですが、対応状況を一元管理できるようになったことで、無駄に時間を消費することがなくなりました。ヌケモレの心配もありません。これまでは各課で処理してしまい共有されることがなかったような市民の何気ないご意見もZendesk上に蓄積され、課をまたいで情報を共有できるようになりました」と山田氏。今後の市政運営において改善のヒントとなる内容を取りこぼすことなく、リアルタイムに可視化できるようになったのは大きな変化である。

どんな内容の意見や要望に、何課の誰が対応中なのか、回答は済んだのか、簡単に把握できる<br />

どんな内容の意見や要望に、何課の誰が対応中なのか、回答は済んだのか、簡単に把握できる

Zendesk上の情報は、ライトエージェント機能を使って市長や部長級管理職も閲覧できるほか、庁内のコミュニケーションに使用しているビジネスチャットツール Slackとの連携により、チケット化された市民の声をいち早く確認できる仕組みも実現した。
「ZendeskにアクセスしなくてもSlack上で簡単に見られるのは便利だと好評です。Slackで真っ先に確認した人から、対応に関する具体的な指示や、回答の趣旨が違うといった指摘が飛んでくることもあります。これもZendeskで可視化されたことによるメリットです。このような形で課をまたいだ庁内の情報共有が進むことで、具体的な施策への反映に向けて、市民一人ひとりの声をこれまで以上に丁寧に拾い上げていけるのではないかと期待しています」と大内氏は語る。

ZendeskとSlackを連携

ZendeskとSlackを連携

今後の展望

導入から一年。「現在は、市民から寄せられる意見や要望、提案を分類した上で情報を共有し、市の方針に基づいて適切に回答することに注力しており、まだまだZendeskを使いこなす域には達していません。Zendesk上に蓄積された貴重なデータをどう活用していくかは、次のステップで考えていきたいと思っています」と山田氏。一方で、大内氏は災害時の対応にも目を向ける。

「新型コロナウイルス感染症が広がり始めたときもそうでしたが、災害が発生すると同じような内容の問い合わせが殺到します。これまではその都度コールセンターを立ち上げ、オペレーターが問い合わせの内容をデータベースソフトウェアに手入力していました。Zendeskなら自動的にチケット化されるだけでなく一元的に可視化されるため、迅速で効率的な対応が可能になります。今後はこうしたヘルプデスクとしての活用も見込まれます。」

市民とのコミュニケーションの窓口を担うZendesk。恵那市におけるデジタル化の進展が今後市民エクスペリエンスの質の向上にどのように結びついていくのか、細かく拾い上げられた市民の声がどのように市政に生かされていくのか。市民の視点に立った自治体DXを推進する事例としても注目が集まる。