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キーワードは「データドリブン」 情報の積極活用で進化するカスタマーサクセス戦略

先進のIT技術で国内外企業のDXを牽引してきたセゾン情報システムズは、情報の一元管理によるテクニカルサポートの品質向上と業務効率化のために、Zendeskをアジャイル型開発で実装。当日回答率やFAQアクセス数などの大幅な改善、受付処理の完全自動化にも成功。経営戦略と一体化したカスタマーサクセス戦略の下、同社はデータの積極活用を推進。AIを組み込んだ自動回答システム、利用状況に応じたプロアクティブなレコメンドまで提供できるカスタマーサービスの実現も見据えている。

株式会社セゾン情報システムズ
「お客様に真に満足していただき、契約更新につなげていくためには、データを蓄積・分析して、きめ細かなサポートや提案を行っていくことが、より一層求められます。Zendeskでデータを有効活用し、カスタマーサクセス戦略を展開していくことは、経営戦略と一体化していると言っても過言ではありません。」

吉原 淳 氏

執行役員 カスタマーサクセス本部 本部長
- 株式会社セゾン情報システムズ

Zendeskソリューション導入の背景と課題

「世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る。」というミッションを掲げる株式会社セゾン情報システムズ(以下、セゾン情報システムズ)は、HULFT(1993年)、DataSpider(2001年)、日本発iPaaS(クラウド型データ連携プラットフォーム)HULFT Square(2023年)といった先進的なソリューションを提供してきた日本のITベンダー。国内外の企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引し続け、今やセゾン情報システムズの製品群やサービスの導入企業は世界46カ国で約1万社、売上高は年間約239億円を誇る(2023年3月期連結)。

このDXを推進するために、同社が経営戦略の1つの柱に据えたのがCX(カスタマーエクスペリエンス)の向上である。顧客の事業発展のためには、先進的なソリューションを提供するだけでなく、顧客が製品を理解し、活用できるようにすることが必要だ。カスタマーサクセス本部でHULFT Squareにおけるカスタマーサクセスを担当する野見山 雅之氏は、次のように解説する。

「弊社の製品やサービスを安全安心にご利用いただき、価値向上に役立てていただくためには、テクニカルなお問い合わせに的確に対応する必要があります。また、プロアクティブ(積極的)に高品質なサポートを提供することが大前提となります。たとえば弊社ではシステム障害が発生した際、告知文章の公開や個別に対応するだけでなく、オンラインで説明会を実施することもあります。これらはお客様に寄り添い、サポートの品質を最大限に高めていく施策の一環です。」

ただし今日のように充実したサポート体制は、一朝一夕に確立されたわけではない。同社のIT運用サービスは電話、メール、Webフォームの3つのチャネルで提供されてきたが、Zendeskを導入するまでは、それぞれのチャネルが独自に顧客に対応。使用するツールも標準化されていなかったため、顧客からの問い合わせが一元管理できない、複数の部署が重複して対応する、煩雑なチェックが必要になるといった問題が発生していた。

同様に深刻だったのが、スタッフの負荷増大だ。もともとIT運用サービス業務はマンパワーに依存する傾向が強い。かつては依頼や問い合わせを受けた担当者が、紙のシートに手書きで内容を記入し、それを見ながら管理ツールに改めてデータを入力するという手順を踏んでいた。

最後の問題はデータの活用である。CXを向上させていくためには、問い合わせ内容や対応方法のノウハウを蓄積しつつ、業務の課題点をデータドリブンで洗い出していくことが重要になる。だが単一のプラットフォームが存在しないが故に、貴重なデータが蓄積できない状況が長らく続いていた。

Zendeskが選ばれた理由

これらの構造的な問題を解消し、データドリブンな体制を整えるために、同社は2019年、IT運用サービスにおける新たなプラットフォームとしてZendeskを導入する。CXの向上を図るべく、選定項目に定められていたのは、インターフェイスがわかりやすく利用しやすい、サービス提供のスピード向上が図れる、高品質なサービス提供が可能になる、という3つの要件。Zendeskはすべてを満たしていただけでなく、各チャネルの情報を一元管理できる、用途に応じた多角的な分析や視覚化ができる、容易かつ素早い導入で初期費用が安価に抑えられる、他の業務ツールやシステムとの連携による拡張性が高い、といった点でも優れていた。
セゾン情報システムズ執行役員で、カスタマーサクセス本部の本部長を務める吉原 淳氏は、次のように解説する。

「CXを向上させるためには、回答の品質とスピードを高めたり、業務を効率化したりすることが不可欠です。しかしお客様に真に満足していただき、契約更新につなげていくためには、データを蓄積・分析して、きめ細かなサポートや提案を行っていくことが、より一層求められます。Zendeskの採用に踏み切った理由は、まさにそこにあります。Zendeskでデータを有効活用し、カスタマーサクセス戦略を展開していくことは、全社的な経営戦略と一体化していると言っても過言ではありません。」

Zendeskの導入は、カスタマーサービスセンターをカスタマーサクセス本部に改称し、新たなカスタマーサクセス戦略を開始する基盤を確立するとともに、システム開発の新たなモデル提示においても一端を担っていた。同社は2022年、新製品HULFT Squareのサポートデスク構築においてもZendeskを採用したが、この際にはアジャイル型の開発を行い、検討から稼働までをわずか半年で完了している。カスタマーサクセス本部のITプラットフォーム統括部で実装を担当した上杉 俊介氏は、採用のメリットをこう明かす。

「ZendeskにはJIRAアプリが標準搭載されているので使いやすい、実用的なAPIが揃っている、マーケットプレイス上にあるアプリで簡単に連携や機能拡張が図れるという特徴があります。現場で思いついたアイデアをノンプログラミングですぐに実現することができました。更に立ち上げた後は、習熟に時間をかけずに稼働できるという大きなメリットも得られます。開発の際には、Zendeskが世界基準のシステムであることも追い風になりました。HULFT Squareは海外展開も視野に入れています。セキュリティ面においてもZendeskは高い基準を満たしており、安心して開発を進めることができました。」

(写真左から)<br /> 執行役員 カスタマーサクセス本部 本部長 吉原 淳氏<br /> カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス統括部 野見山 雅之氏<br /> カスタマーサクセス本部 ITプラットフォーム統括部 上杉 俊介氏

(写真左から)
執行役員 カスタマーサクセス本部 本部長 吉原 淳氏
カスタマーサクセス本部 カスタマーサクセス統括部 野見山 雅之氏
カスタマーサクセス本部 ITプラットフォーム統括部 上杉 俊介氏

JIRA連携アプリを利用した、機能拡張テストの実施画面

JIRA連携アプリを利用した、機能拡張テストの実施画面

Zendesk導入の効果

Zendeskの導入を機に、業務フローも大幅に合理化される。各チャネルで受け付けた依頼は、Zendeskのチケット管理機能に集約されてチケットに変更。チーム全体で対応状況を確認しながら、確実に処理できる環境が生まれる。エスカレーションが必要な場合には、SlackやBacklog、メールと連携させて、通知やタスク管理が徹底される方法も確立された。このような変化は回答スピードの大幅な向上をもたらしている。HULFT Squareのテクニカルサポートにおける当日回答率は、立ち上げ当初約20%に留まっていたが、Zendeskの利活用により、50%以上にまで高められた。

Zendeskの導入は、コンテンツの充実によるCXの向上も実現している。質の高いサポートを提供するには、回答までのスピードを速めるだけでなく顧客が問い合わせを行わずに済む状況を作り出す。すなわち過去の事例をデータベース化し、自己解決のために参照できるFAQやナレッジを揃えていく方法が有効になる。Zendeskから収集したデータを基にコンテンツの拡充が進んだ結果、FAQのアクセス数は5倍に増え(2022年4月比)、一次回答時間も8倍向上した(同)。

Exploreを活用し、様々なKPIを継続的に分析(sample値)

Exploreを活用し、様々なKPIを継続的に分析(sample値)

また、問い合わせ受付業務の自動化によるスタッフの負荷軽減、柔軟な顧客対応の実現にも貢献した。自社プロダクトのDataSpider ServistaとZendeskのAPIを活用することにより、Webフォームでの申請受付から、必要なファイルの作成、外部連携先への転送、顧客への申請完了通知までを全自動化することに成功。顧客の入館申請処理は、前営業日の17時までに申請を受け付ける必要があったが、今では15分前までに申請すればパスやIDが発行されるようになり、より柔軟な接客が可能になった。

Zendesk APIを利用して、入館申請の自動処理を実現

Zendesk APIを利用して、入館申請の自動処理を実現

今後の展望

ただし、これらの効果にも増して意義深いのは、将来に向けてさらに本格的にデータを活用する端緒が開かれたことだろう。現在、同社ではコンタクトや製品の利用状況などに応じて、顧客を「安泰」から「注意」まで4つのカテゴリーに分類。きめ細かな顧客対応を行っているが、データを活用したCXの向上は、発展段階の途中だと吉原氏は指摘する。

「まさにデータの『奥』が見えてきたというか。たとえば『注意』に分類されるお客様も実情は様々で、使い方がわからない、あるいは問い合わせの連絡先が分からないなど、多岐に亘ることが明らかになってきました。私たちは弊社が掲げるミッション実現のため、『データドリブンプラットフォーム(データを積極的に活用していくプラットフォーム)』を構築しています。Zendeskでデータを活用すればするほど、CXが高められ、我々のビジネスチャンスを増やす可能性が無限に広がっていくと考えています。」

吉原氏は、データを活用したCX向上のために、次なる目標も見据えている。1つ目はZendeskとAIを組み合わせた、複数言語での自動回答システムの実現。2つ目は顧客がアクセスした時点で、最適なガイダンスや一歩踏み込んだレコメンド(提案)までが自動的に提供される、FAQサイトの構築である。これらの新機軸が実現すれば、カスタマーサクセスは顧客対応という従来の枠を超えて経営コンサルタント、もしくはビジネスアドバイザー的な役割さえ担い始めるに違いない。この巨大な変化をもたらし、CX向上から顧客獲得に至る新たなダイナミズムを生み出す触媒こそがZendeskなのである。

すべては顧客満足度の向上、そしてビジネスチャンスのさらなる増大のために。セゾン情報システムズはZendeskとデータを駆使し、CXの新たな地平を切り拓き続けている。