効率化のカギは自己解決率アップ 情報収集力に左右されないナレッジ活用の実現へ

社会の変化とテクノロジーの進化を背景に多彩なインターネットサービスを生み出しているDeNAは、社内ヘルプデスク業務にZendeskを採用。問い合わせの管理を一元化すると共に、ナレッジを活用してユーザーによる自己解決を促進し、属人化しつつあったサポート業務の効率化と質の向上を両輪で進めている。

株式会社ディー・エヌ・エー

「最終的にチケット起票に至る問い合わせは、解決の難易度の高いものが増えている印象です。困ったらまずヘルプセンターを開くという流れが定着化しつつあり、簡単な問題はFAQページを通じて自己解決できるようになったということでしょう。」

渡辺 浩行氏

システム本部 IT統括部 IT戦略部ユーザーサポートグループ
グループマネージャー
- 株式会社ディー・エヌ・エー

Zendeskソリューション導入の背景と課題

1999年の創業以来、主力のゲーム事業やEC事業を中心に事業を拡大してきた株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、インターネットやAIを自在に駆使しながら、一人ひとりの人生を豊かにするエンターテインメント領域と、日々の生活を営む空間と時間をより快適にする社会課題領域の両軸で事業を展開。ライブ配信サービス「Pococha(ポコチャ)」で注目を集めるライブストリーミング事業のほか、ヘルスケア、スポーツ、オートモーティブなどの分野にも参入し、事業の幅を広げている。2019年に迎えた20周年を機に改めてDeNAのあり方を問い直し、2021年春にコーポレートミッション、ビジョン、バリューを刷新。「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」届けるために、DeNAならではの着眼点やノウハウで挑戦し続けることを誓う。

そんな同社には、従業員の働く環境をワンチームで支える組織がある。2018年に、IT戦略部、人事部、総務部の3つの部門が連携して立ち上げた社内ヘルプデスクだ。ただ、部門ごとに分散していた問い合わせ窓口を一つに集約したことで、従業員が問い合わせ先を迷うことはなくなったものの、サポート業務の効率と質の両面に課題を残していた。

株式会社ディー・エヌ・エー システム本部 IT統括部 IT戦略部ユーザーサポートグループの瀬戸 太輔氏は、こう振り返る。
「メールベースでの問い合わせ対応にはかなりの手間が発生していて、負荷を軽減するにはユーザーによる自己解決を促していく必要があると感じていました。情報の収集力には個人差があるので、調べればわかるような問題もチケットの起票につながってしまいます。既存のサービスデスクツールには、セルフサービス機能やナレッジを一元的に蓄積する場所がなかったこともあり、メールで届く問い合わせに愚直に回答するということを長年続けてきたわけです。」

株式会社ディー・エヌ・エー システム本部 IT統括部 IT戦略部 ユーザーサポートグループ グループマネージャーの渡辺 浩行氏も、「社内Wikiや社内ポータルでFAQを展開したり、各部門で独自に必要な情報を提供したりはしていましたが、ナレッジが散在していて、それらを横断的に検索できる仕組みがありませんでした。エージェント側も対応の質にどうしてもバラつきが出てしまい、属人化は避けられませんでした」と続ける。

(写真左から)<br />
システム本部 IT統括部 IT戦略部ユーザーサポートグループ グループマネージャー<br />渡辺 浩行氏<br />
システム本部 IT統括部 IT戦略部ユーザーサポートグループ<br />瀬戸 太輔氏

(写真左から)
システム本部 IT統括部 IT戦略部ユーザーサポートグループ グループマネージャー
渡辺 浩行氏
システム本部 IT統括部 IT戦略部ユーザーサポートグループ
瀬戸 太輔氏

Zendeskが選ばれた理由

リプレイスの話が出始めた頃、既存ツールに代わる有力候補の一つに挙がったのがZendeskだった。同社では、いくつかの事業部でお客様対応にすでにZendeskが活用されているが、社内向けの利用を検討するのは初めてのことである。他社ツールとの比較を経て最終的にZendeskの導入を決めたのは、シンプルでわかりやすいユーザーインターフェイスと、ナレッジベースの構築のしやすさだった。現行の社内ヘルプデスクをさらに進化させ、より有効に機能させていくためのツールとして期待されたのである。

利用を開始するにあたっては、Zendeskへのアクセス権を付与できるライトエージェント機能が重宝した。既存ツールでは、ヘルプデスクチームのメンバー全員をエージェントとして登録していたが、利用頻度の少ないエージェントをライトエージェントに設定したのである。利用できるメンバーの数を減らすことなく、コストを抑えられる点は大きなメリットになった。

社内ヘルプデスクへの問い合わせフォーム

社内ヘルプデスクへの問い合わせフォーム

Zendesk導入の効果

Zendesk導入後は、ヘルプセンター・FAQ構築機能を活用して問い合わせ管理をZendeskに一元化。既存ツールからの移行は特に混乱もなくスムーズに進み、第一段階として、困ったらまずヘルプセンターの画面を開き、FAQで自己解決できなければ問い合わせをするという流れが定着化しつつある。「今はまだナレッジベースの構築段階にあり、社内Wikiや社内ポータルなど、あちこちに散在しているナレッジのリファレンスを促す形で記事を作成していますが、ひとまずユーザーには、検索すると問題解決に必要なナレッジがヒットするという体験をしてもらうことが重要と考えています」と渡辺氏。

Zendeskで構築したFAQページ

Zendeskで構築したFAQページ

ナレッジベースの構築を進める中で、FAQページの重要性が試される場面もあった。導入直後のタイミングで本社を移転した同社は、あらかじめ移転に関するFAQページを作成。移転後の住所、セキュリティカードの扱い方、人事関係書類の申請、新システムの概要など、想定される問い合わせを精査した上で80項目近いFAQを用意した。結果として、検索の頻度は増えたものの、その大半がチケット起票されることなく自己解決されたという。

一時的に問い合わせの急増が予測される場合には、あらかじめ関連するFAQを強化することで、自己解決を促し問い合わせを減らせるということを実感した体験だった。導入前に週次250件ほどだった問題解決数が平均して約200件に減ったのも、自己解決率が上がった影響と捉えることができる。その証拠に、問い合わせ内容の傾向として、自己解決できないような難易度の高い内容が増えている。

今後の展望

ナレッジベースの構築とメンテナンスは引き続き今後の課題である。「一度公開された記事に対して、その後の更新作業が進んでおらず、運用のルール決めはこれからしていきます。記事の本数も増やしていきたいですし、陳腐化を防ぐ取り組みが必要です。そのためには、Zendeskをしっかり使いこなして、ナレッジの分析にも力を注いでいきたいと考えています。我々が目指すのは、たとえエージェントが代わってもユーザーに影響が及ばないような体制づくりです。あらゆるケースにナレッジベースで対応できる状況を作るのが目標です」と瀬戸氏は語る。

また、Slackだけで業務が完結するほど、メールに代わる社内のコミュニケーションツールとしてすっかり浸透しているSlackとの連携は、ユーザーから実現を望む声も高い。将来的には、SlackからダイレクトにZendesk Supportのチケットを起票できるようにしたい考えだ。具体的には、Slackからチケット起票すると、人工知能を搭載した「Answer Bot」が推奨記事を提示し、ユーザーによる自己解決を促すイメージである。逆に、ユーザーから緊急度の高いチケットが起票された場合に、Slackチャンネルを通じてしかるべきエージェントに通知するといった使い方も想定される。Slackとの連携は、問題の効率的な解決と、解決時間の短縮にも力を発揮するに違いない。

「コロナ禍の影響で、これまで有人で対応してきたヘルプデスクカウンターも閉鎖中です。また、入社直後から在宅勤務が続いている従業員も多い中で、これからのサポートのあり方を考えると、ナレッジを活用して自己解決できる環境を整備できたことは、むしろ良かったのかもしれません。それだけZendeskが重要な役割を担っていると言えます。」(渡辺氏)

とはいえ、同社にとってのZendesk活用はまだまだ過渡期にある。ユーザーの満足度を評価しながら、より優れたサポート体験へと磨き上げ、ビジネス変革を担う従業員の手となり足となって日々の業務を支えていく。