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ゲーム産業の新たなCXを確立するために。セガがZendesk SuiteとAssistサービスを導入した理由

株式会社セガは日本のゲームメーカーを代表する老舗の一つとして、国内外で根強い人気と支持を誇ってきた。同社は2018年にZendeskを導入し、2022年にはZendesk Assist サービスを活用しながら Suite Enterpriseに移行。顧客データのシームレスな活用や運用コストの削減、CXとEXの向上を追求し続けながら「感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに。~」というミッションをさらに具現化しようとしている。

株式会社セガ
「私たちはデータやVOCを迅速に開発スタジオに届けることで、即時の製品改善と顧客満足度の向上を目指してきました。しかし一方では、カスタマーサポートが実際的な顧客満足度につながっているかどうかを検証する、あるいは事業自体にいかに貢献できているかを数値化することも求められてきています。今後はZendeskをもっと活用しながら、これらの難しい課題をクリアしていくつもりです。それがお客様の喜びを膨らませ、ひいてはお客様の期待と想像の一歩先を行くことにつながると思うのです。」

岡田 淳良氏

グローバルプロダクトオペレーション本部 カスタマーサクセス部 部長 - 株式会社セガ

Zendesk ソリューション導入の背景と課題

「感動体験を創造し続ける」というミッションのもと、株式会社セガ(以下、セガ)は、家庭用ゲームやPCオンラインゲームやスマートデバイス向けゲームアプリなどの企画・開発・販売・運営を行うコンシューマ事業、ゲームセンター向け製品の企画・開発・販売などを手がけるアミューズメント事業を軸に、ゲームコンテンツ事業をグローバルに展開。創業以来、国内外で高い人気を博してきた。それを根底で支えてきたのが、良質なカスタマーサポートである。カスタマーサクセス部は、顧客の問題を解決するだけでなく、顧客と開発・運営部門を結びつけ、VOCをさまざまなゲームの開発や事業運営に反映する役割を担ってきた。

そんな同社は2010年代中盤に初めてCRMツールを導入したが、2018年にはZendeskへの移行を決断する。グローバルプロダクトオペレーション本部 カスタマーサクセス部 部長の岡田 淳良氏によれば、理由は明らかだった。

「セガはお客様との関係づくりを何より大切にしてきましたし、カスタマーサポート事業は全社的な経営戦略の点でも極めて重要な役割を担っています。ましてやゲーム産業は、求められるカスタマーサポートのレベルが高い。たとえば我が社では数百のゲームタイトルを提供していますが、それぞれに熱心なファンがついていますし、世界観もすべて違います。当然、私たちはお客様一人ひとりにきめ細かな対応を提供しなければなりませんが、コストを抑えながら膨大なデータを収集し、製品開発やカスタマーサポートの運営にフィードバックしていくことも不可欠になります。
最初のシステムもグループ会社全体のデータを効果的に集約し、事業に活用していくことを目指して導入されたものでした。しかし実際には運用コストもかさんでいましたし、私たちの部署のオペレーションに今ひとつ馴染まなかった。拡張性や部署間でのデータ共有、セキュリティ確保でも思ったほどの効果が得られなかったんです。ならば運用コストを抑えながら、自分たちにとって本当に使いやすく、拡張性も高いシステムに切り替えようと。そこで着目したのが、カスタマーサポートのツールとして定評のあるZendeskでした。」

わかりやすいアイコンも使用した、ユーザーフレンドリーなFAQサイト

わかりやすいアイコンも使用した、ユーザーフレンドリーなFAQサイト

Zendeskが選ばれた理由

導入の際には、顧客とのコミュニケーションを一元管理できること、FAQページや投稿フォームを、情報の漏洩を防ぎながら簡単に作れる点なども重視された。同社は顧客の問い合わせに対して24時間以内に95%以上の返信を行う、回答品質が悪い対応を5%未満に留める、FAQによる自己解決率を70%以上に高めるという明確なKPIを定めてきたが、Zendeskはこれらの要件を満たすものだった。カスタマーサクセス部 顧客サービス企画開発チームの笠井 玲奈氏は、Zendeskの特長を次のように解説する。

「私たちの部署はデジタル技術と顧客データを活用し、エンドユーザーのCXと、サポート担当者のEXを向上させることを目指しています。しかし以前は、FAQの管理システムとメールツールが連動していない、問い合わせフォームを内製していたために開発の工数がかかるだけでなく、サイトのセキュリティ対策も自分たちで行わなければならない、といった課題を抱えていました。これらの問題を解決してくれたのがZendeskでした。ZendeskはUIがわかりやすいだけでなく、操作も簡単にできる。返信のトリガ機能や自動処理もノーコードで安心安全に実装できるので、構築や運用に要する時間をかなり削減できます。最初に導入したツールからの移行もすべて代行してくれましたので、切り替えも実にスムーズでした。」

(写真右から)<br /> グローバルプロダクトオペレーション本部  カスタマーサクセス部 部長 岡田 淳良氏<br /> カスタマーサクセス部 顧客サービス企画開発チーム 笠井 玲奈氏

(写真右から)
グローバルプロダクトオペレーション本部 カスタマーサクセス部 部長 岡田 淳良氏
カスタマーサクセス部 顧客サービス企画開発チーム 笠井 玲奈氏

かくして同社はZendeskを基盤システムに据え、PCオンラインゲーム、家庭用ゲーム、アーケードゲーム、SEGA IDという4つのサポートを統合。2020年からはスマートデバイス向けアプリゲームのサポート、2021年からは英語・中国語の繁体字でのサポートも追加するなど運用を拡大していく。

Zendeskの活用はこれに留まらなかった。2022年12月、セガは従来のプランからの大幅な機能拡大を伴う、Zendesk Suite Enterprise へのアップグレードを決定し、2023年4月から運用を開始した。背景となったのは2つの巨大な変化である。

まずゲーム産業では「デジタルシフト」と呼ばれる変化が加速。パッケージ製品を購入する方式に変わり、コンテンツをダウンロードするビジネスモデルやサブスクリプションモデル、無課金で遊べるゲームなどが主流になりつつある。この結果、ゲーム利用者から寄せられた反応や意見に対して、今まで以上に即座に対応することが必要になった。

構造的な変化は「グローバルシフト」も加速させている。セガは日本を代表するゲームメーカーの一つだが、今や顧客の分布はアメリカ、ヨーロッパ、アジア・オセアニア、ラテンアメリカなど世界数十か国に及ぶ。カスタマーサポートの担当部門には、さらに多くの言語や文化に対応しながら、以前とは比較にならないほど多くの人々に良質で的確、そして迅速なサポートを提供することが求められるようになった。

一方、セガの社内では、顧客の爆発的な増加やグローバルなニーズの拡大に適応すべく、業務の効率化や運営コストの削減が喫緊の課題として浮上。これらを解決すべく決定されたのが、Suite Enterpriseへの移行だった。笠井氏は Zendesk 側からの働きかけにも、背中を押されたという。

「たしかにZendeskは大きな効果をもたらしていましたが、機能を十分に使いきれておらず、自分たち独自のやり方で利用していた面がありました。またチャットボットとチャットサポートで、他社のツールを併用している弊害も徐々に出てきていました。そんな事態を重く見たZendeskのカスタマーサクセス担当の方が、現状の問題と解決案を詳細なレポートにまとめ、Suiteへの総合的な移行プランを提案してくれたんです。」

ゲームタイトルのサポートはスマホアプリでも幅広く提供

ゲームタイトルのサポートはスマホアプリでも幅広く提供

Zendesk 導入の効果

Suiteへのアップグレードでは、システム切り替えや機能のカスタマイズを行うZendesk Assist サービスも活用されている。セガのようにオンラインサービスを提供している企業では、システム移行中も業務を中断することは許されない。カスタマーサポートの担当スタッフには、新たに実装された機能をすぐに習熟することも求められる。Assist サービスのスタッフは、これらのハードルをクリアしながら移行作業を進めるべく、緻密な計画を立案。加えてUIのデザイン変更やスタッフ研修、効果測定の場も定期的に設けている。笠井氏はAssistサービスのサポートを「まさに同じゴールを目指すパートナーとして、”伴走”していただけたと感じています」と高く評価した。

Zendesk Suite Enterpriseへの移行は、セガのカスタマーサポートをさらに充実させる契機となった。
1つ目の効果は運用枠の拡大である。以前は国内向けサービスと海外向けサービスにブランドが二分され、その枠内でスマートデバイス向けアプリゲームや家庭用ゲーム、アーケードゲームなどのサポートが提供されていた。この結果、ヘルプページの利用状況がサービスごとに把握しきれない、FAQで、問い合わせ内容と関連性の低い他のサービスの検索ワードが表示されるといった問題が生じていた。しかしSuiteの導入によって、詳細に管理できるブランドの数は最大で300まで増加。ほぼすべての製品やサービスにおいて、緻密な利用状況の把握と的確なサポートの提供が可能になった。
2つ目はコミュニケーションの効率化だ。他社のツールで提供されていたチャットサービスもSuite に統合されたことにより、カスタマー対応はチャネルの違いを超えて完全に一本化。誰もが同一画面で、問い合わせ内容や顧客情報を閲覧できるようになったため、社内の情報共有もよりスムーズになった。これに並行して、従来は別個に提供されていたヘルプページ用の記事と、チャットボット用の記事も共用化され、記事作成に伴うコストと工数が大幅に削減されている。
3つ目は、さまざまなデータ(ヘルプページの利用状況や検索結果、初回回答時間など)を可視化して共有し、課題抽出から改善案の実施、そして効果測定というPDCAのサイクルを円滑に回していけるようになった点だ。これもまた業務効率化を通じたEX向上と、カスタマーサポートの品質改善によるCX向上に寄与する。

Zendeskで分析されたデータは社内で即座に共有され活用

Zendeskで分析されたデータは社内で即座に共有され活用

今後の展望

ただし岡田氏によれば、Suiteへの移行は、未来に向けた布石に過ぎないという。事実、岡田氏は今後の重点課題として、①他の顧客対応ツールとの連携強化、②社内のビッグデータ(顧客情報)の統合と活用、③AIの可能性を視野に入れた、多種多様な非構造データ(VOCなど)の解析・活用などを挙げている。これらはカスタマーサポート業務の在り方自体を見直し、費用対効果においても最適な運営を行っていく試みに他ならない。

「私たちはデータやVOCを迅速に開発スタジオに届けることで、即時の製品改善と顧客満足度の向上を目指してきました。製品志向と顧客志向の強さこそ、セガのセガたる所以だからです。ましてや最近では顧客志向が以前より強まり、お客様により満足していただけるサービスを提供することが重視されるようになってきました。しかし一方では、カスタマーサポートが実際的な顧客満足度につながっているかどうかを検証する、あるいは事業自体にいかに貢献できているかを数値化することも求められてきています。今後はZendeskをもっと活用しながら、これらの難しい課題をクリアしていく予定です。それがお客様の喜びを膨らませ、ひいてはお客様の期待と想像の一歩先を行くことにつながると思うのです。」

ゲーム産業は、今やグローバルでは数十兆円の事業規模を誇る巨大産業へと成長。多くの企業が、カスタマーサポートの在り方自体を模索するようになった。いずれの産業においてもカスタマーサポートは事業の成否を左右するが、ゲーム産業は他に類を見ないほど難易度の高いオペレーションが求められる。顧客の多様性と思い入れの強さ、問い合わせの多さ、期待される回答のスピード、緻密なコミュニケーションとコスト抑制の両立等々、数々の課題を抱えているからだ。
ゲーム産業において、カスタマーサポートの「価値」と「方法論」を新たに確立していくために。Zendeskを活用したセガの挑戦は、これからも続いていく。