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自動化率97%のその先へ。待たせないインシデント対応、24時間365日体制の現場を支える運用基盤の進化

クラウドに特化したマネージドサービスプロバイダーのスカイ365は、24時間365日体制で障害監視・インシデント対応を提供している。2021年の事例取材時に達成していた自動対応率97%を土台に、同社はその後もZendeskを軸とした自動化基盤を拡張し続けてきた。顧客セルフサービスの実現、自社AIとの連携、分析機能の本格活用を通じて、顧客数が増加する中でも月間チケット数を50,000件から40,000件に削減。体制を増員せず安定運用を維持している。

株式会社スカイ365
「色々なシステムと連携して自動化を積み重ねてきた結果、Zendeskはなくてはならない基盤になっています。これを自社開発しようとすると大変なコストがかかる。Zendeskを使い倒していきたい」

東澤 琢磨 氏

MSP部 部長 - 株式会社スカイ365

20%削減

月間チケット数(2021年から)

約3%

有人で対応しているチケットの割合

192件

運用するマクロ

Zendeskソリューション導入の背景と課題

株式会社スカイ365は、クラウドに特化したマネージドサービスプロバイダー(MSP)として、AWS、Microsoft Azure、SaaSを含むマルチクラウド環境の保守運用を24時間365日体制で提供している。「クラウド活用の保守運用を安心して任せていただける企業」をビジョンに掲げ、資格保有エンジニアが常駐し、障害監視から問い合わせ対応までを一貫して担う。

同社のZendesk活用歴は長い。2014年の設立時に親会社の株式会社サーバーワークスから移管され、以来、サーバー監視システムとの連携を軸にアラート対応業務の自動化を推し進めてきた。東澤氏は「導入当初からお客様とのコミュニケーションとインシデント管理という目標は達成できていたが、運用していく中で有人での作業が増え、運用負荷が高くなった。そこをZendeskの機能を使って日々改善し、負荷を下げてきたのが現状」と話す。2021年の事例取材時には月50,000件に及ぶアラートの97%を自動処理する体制を確立し、SlackやSLA監視ツールとの独自連携も構築済みであった。一方で当時はエンジニアが本業に忙しく改善にまで手が回らないという課題も率直に語られており、自動架電の実現、高度な分析、ITSM運用へのZendesk組み込み、CRMの拡充が今後の課題として挙げられていた。

本番稼働から数年が経った現在、当時の展望の多くは実運用に落とし込まれている。東澤氏によれば、Zendeskの分析機能を活用したSLA計測やプロジェクト単位の稼働負荷分析はすでに定着し、改善サイクルの一部として機能しているという。新たなシステムとの連携時にはAPI連携を必ず活用する運用が標準化され、自動架電も自動電話通報システムとして稼働を開始した。

さらに、2021年取材当時には想定されていなかった進化も生まれている。東澤氏が「一番変わったところ」として挙げるのが、自社開発のオーダーマネジメントシステムだ。顧客自身が運用できるセルフサービス型のツールで、ZendeskのSSO(シングルサインオン)を活用してログインするだけで自社システムにもアクセスできる仕組みを実現した。もともとは顧客から依頼を受けて同社が設定変更を行い完了を報告するフローだったが、顧客が直接設定変更できる形へと転換。当時掲げていたCRM拡充の構想が自社サービスとして具現化した格好であり、顧客からの評価も高く、チケットそのものの削減にも寄与している。


(左から)
株式会社スカイ365
MSP部 クラウド運用・サポートグループ Zendeskチーム リーダー 櫟岡 康平 氏
MSP部 部長 東澤 琢磨 氏
MSP部 クラウド運用・サポートグループ Zendeskチーム 工藤 日依梨 氏

Zendesk導入の効果

2021年に月間50,000件だったチケット数は、顧客数が増加しているにもかかわらず現在約40,000件にまで減少した。有人で対応しているチケットは月間1000件程度、全体の約3%にとどまり、有人対応数は横ばいのまま体制の増員も行っていない状態で維持できている現状に、生産性の向上を実感していると東澤氏は語る。

こうした成果の裏側には、Zendeskの複数の機能を組み合わせた運用体制がある。同部 クラウド運用・サポートグループの工藤 日依梨氏は「お客様だけでなく業務委託元や社内など、色々な立場でやり取りが発生するため、本来であれば複雑化するところを、Zendeskのお陰でスムーズなコミュニケーションが取れている」と語る。

機能活用の一例として挙げられたのがヘルプセンター機能である。提供するサービスごとに独立した窓口を設定できるブランド機能を活用して顧客のニーズ増加にも柔軟に対応できていることに加え、カスタマイズのしやすさや直感的な操作性も評価されている。また蓄積されたナレッジの活用という面では、顧客環境で不要なアラートが増えた場合に改善を提案してチケットの発生自体を抑え、過去の類似チケット検索で対応時間を短縮するなど日常的な運用改善に役立てている。

同社が重視しているのはエンジニアによる有人の運用支援であり、セルフサービスや自動化はエンジニアが品質の高い対応に集中できるよう負担を軽減するための手段として位置づけている。引き継ぎにはタグとフィルターで構築した専用ビューを活用して対応漏れを防止、1日3回のシフト交代でもスムーズに情報が連携できるような体制を整えている。チケット内に時系列で蓄積される履歴のおかげで担当者が代わっても経緯を簡単に把握できるといい、パブリック返信と社内メモの使い分けによる可視化も非常に役立っているという。

対応品質の面では自動化やトリガといった効率向上の機能に加え、192件にものぼるマクロをカテゴリ分けして複数のテンプレートを運用することで誤字脱字を防止し文章作成にかかる時間を短縮している。東澤氏は「プルダウンとカテゴリ分けで簡単に選べるので、これぐらいの数があっても運用できている」と語る。

また同社は顧客の機密情報を取り扱う関係上、自社環境でAIシステムを構築しZendeskとAPI連携させている。チケットの要約生成や類似チケット検索に活用しており、情報管理要件を満たしながらAIを実務に組み込んでいる。

数値に表れない変化も見逃せない。セルフサービスや自動化で生まれた時間を、エンジニアは改善活動や技術研鑽に充てられるようになった。同部 クラウド運用・サポートグループ Zendeskチーム リーダーの櫟岡 康平氏は「稼働の負担を減らすことで、キャッチアップやスキルの向上に時間を使えるようになっている」と語る。24時間体制の現場では学習時間が後回しになりがちだが、クラウド市場はサービスの拡大が早く対応領域は常に広がっている。自動化による時間の創出は短期的な効率化にとどまらず、中長期的なサービス品質の維持にも直結している。

今後の展望

同社が次に見据えるのは、活用領域のさらなる拡大だ。直近ではZendeskのアプリビルダーに注目している。AIとの対話でアプリケーションを設計できるローコード開発ツールで、プログラミングの知識がないメンバーでも顧客ニーズに応じたアプリを構築できる。これまでスキルを持ったメンバーへの依頼が必要だった開発を現場が自ら担える体制へ移行していく狙いだ。

認証基盤の拡張にも期待を寄せている。2026年4月にリリースされたZendeskの新たなIDプロバイダー機能によって、SAMLやOpenID Connectといった認証規格に対応できるようになれば、現在実現しているシステム間の接続をさらに多様なクラウドサービスへと広げられる。複数のクラウドサービスを横断的に管理する同社にとって、認証の選択肢が広がることは事業そのものの幅を広げる鍵となるはずだ。

AI活用の方向性も明確だ。東澤氏は「弊社の主な業務は問い合わせ対応というよりも、お客様の環境で発生した障害への対応がメインで、調査が必要になる。AIを使った自動応答でカバーするのはなかなか難しい」と話す。

今後は、障害検知から対応までを自律的に行うAIOps(エーアイオプス)によるサービス提供も検討しているが、多様なシステムとの連携はZendesk中心に集約し、Zendesk機能の活用による実現を目指している。

長年積み重ねてきた運用ノウハウを活かしながら顧客の要件に応じて最適な対応形態を提供するために、「最新のAIや自動化を積極的に取り入れながら、お客様がもっと手軽にクラウド運用を行えるようなサービスを提供していきたい」と工藤氏は語る。業務の自動化を目標としつつ、クラウドのプロフェッショナルとして人材力を活かした運用支援の追求を目指す。その上で、自動化と有人対応のどちらを選ぶかを顧客自身に委ねるというこの構想は、24時間365日の障害対応を手がけてきた同社ならではの現実に根ざしたビジョンである。顧客のクラウド環境を「安心して任せられる」状態に保ち続けるために、同社の進化は止まらない。