未来を支え続ける柔軟性を強みに 最良のエクスペリエンスを徹底追求

2016年の電力小売全面自由化を受け顧客獲得競争が激しくなるなか、東京電力エナジーパートナー株式会社が、電話チャネルのみで運用してきたカスタマーセンターの変革に乗り出した。オペレーションの効率化と高度化の両面から既存環境を見直し、ZendeskのAPI連携機能を駆使して、顧客に寄り添う最良のエクスペリエンスを追求し続けている。

東京電力エナジーパートナー株式会社

「Zendeskはすべての機能がAPIで操作できます。各領域に特化した優れた製品を取り込んでつなげることもできるし、さらに進化した製品が出てきたらつなぎ変えることもできます。いつでも変化できる柔軟な環境を維持しておくことが大切です。」

飯塚 孝高氏

DX推進室 - 東京電力エナジーパートナー株式会社

Zendeskソリューション導入の背景と課題

自由に電力会社を選べる時代。東京電力グループの小売電気事業会社である東京電力エナジーパートナーでは、より幅広い顧客に選ばれ続ける会社になるため、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、「販売力の強化」や「オペレーションの効率化」を全社規模で実現する動きが加速している。こうした取り組みを通じて、単に電気を安定的に届けるだけでなく、顧客にとことん寄り添い、ビジネスや暮らし、住まいの夢を叶える魅力的なエネルギーサービスの創出につなげていこうという考えだ。

顧客の求めるチャネルが多様化し、Webベースのインタラクションが重要性を増す中で、同社のカスタマーセンターも変革のときを迎えている。月間100万件もの膨大な問い合わせに電話チャネルだけで対応していては、オペレーションコストは膨らみ続けるばかり。コストを抑えるには、効果的なセルフサービスにより入電を抑制すること、入電後の応対を効率化することの2点が重要となるが、スクラッチで開発したシステムでは限界があった。東京電力エナジーパートナー株式会社 DX推進室の飯塚 孝高氏は、問題点をこう指摘する。

「お客様がFAQページで検索をかけても目的の情報がヒットせず、自己解決の手段がないのが1つ目の問題点。料金プランに応じて異なるシステムを使い分ける必要があり、入電後の処理が煩雑で長引いてしまうというのが2つ目の問題点です。かなりの頻度で発生するオペレーターからスーパーバイザーへのエスカレーションも、現場で挙手をして行うというアナログな方法で、お客様をお待たせする要因となっています。また、複数あるカスタマーセンターの拠点にナレッジが分散していて、効果的に活用できていない現状も認識していました。」

そこで、これらの問題解決に向けて、オペレーションの効率化をスピーディーに進めつつコストを圧縮していくこと、さらには電話以外のチャネル特性を活かしながらオムニチャネル化を進めることをミッションとして、カスタマーセンターにおけるDX推進プロジェクトが始動した。

Zendeskが選ばれた理由

新しい環境にふさわしい製品の選定にあたっては、リモートワークの可能性も考慮し、クラウド上で稼働することを条件とした。既存環境はオンプレミスのネットワークに接続する必要があり、災害時に顧客対応が滞るという苦い経験をしたからだ。

また、これまでどおりの運用を継続しつつ、既存環境とは別に小規模な検証環境を用意。オペレーションの高度化をプロジェクトの目的に据え、音声認識技術やチャットボットなどのAI技術の活用も見込んでいた同社は、各領域に特化した複数のサービスを連携してスピーディーに検証を進めるために、内製化が容易な製品であることを重視した。Zendeskが有力候補に挙がったのも、何より優れたAPI連携機能への期待からである。

「技術やサービスはどんどん進化していきます。製品単体の評価だけを基準に導入を決めるのではなく、柔軟に連携ができることを重視しました。そうすれば、今よりもっと理想的な選択肢が出てきたときに、つなぎ変えることもできます」と飯塚氏が説明するように、変化への対応を可能にするZendeskの柔軟性が同社のDXの思想にフィットしたことで、プロジェクトは一気に加速した。

検証環境へのZendesk導入が決まり、まずはZendeskを活用しFAQページの移行から着手。続いてZendeskのチャットの導入とLINE連携、最後に電話の受付体制の見直しと、チャネル単位で段階的に検証を進めていった。

Zendesk導入の効果

同社のZendesk活用は、AIや音声認識などの最新技術を積極的に取り込み、顧客やオペレーターに優れたエクスペリエンスを提供している点が特徴的だ。セルフサービス化を目指して最初に取り組んだFAQページは、あちこちに分散していたFAQをZendeskで構築したヘルプページで一括管理できるように集約。顧客の利便性はもちろん記事の運用効率も高まったが、それだけで終わらない。ZendeskとIBM Watson Discoveryを連携し検索の精度を向上。文字列の一致のみならず、AIが顧客の意図を汲み取って検索結果を返すことで、50%程度だった0件ヒット率が10%程度まで減少し大きく改善。FAQページの閲覧数も月間40万から100万ほどに増えた。

一方、新たなチャネルとしてZendeskのチャットを追加し、IBM Watson Assistantを活用して構築したAIチャットボットを連携。チャットボット経由でのチケット数が1日に約15,000件、オペレーターがチャットで受け取るチケット数が約1,500件と、チャットの利用が急増している。しかも顧客対応への満足度は90%以上と非常に高い。オペレーターの生産性も、電話の場合は1時間に3件が目安となるのに対し、チャットでは6件以上と倍もしくは倍以上。チャットが今後重要な顧客接点になることを予感させている。

Zendeskのチャットのパフォーマンスを分析

Zendeskのチャットのパフォーマンスを分析

さらに同社はLINEをZendeskのチャネルに追加し、ここでもAIチャットボットを活用。AIのシナリオの中で基幹システムとも連携しており、チャットやLINE上でヒアリングした内容をもとに契約情報を特定して顧客に返したり、AIだけで問題が解決しない場合には、オペレーターに契約情報を引き継いだりすることができる。もちろん、チャネルの違いに関係なく、顧客とのすべてのやりとりはZendeskのチケット管理システム上に集約される。

ZendeskとLINEを連携

ZendeskとLINEを連携

他のチャネルに遅れて着手した電話対応については、Zendesk とクラウド型コンタクトセンターサービスのAmazon Connectを連携。既存環境では通話録音データの管理と問い合わせ対応が完全に分断されていたため、テキストベースのメモを頼りに通話録音データを探していたが、Zendeskでは着信時にチケットが起票され通話録音データがチケット上に残るため、応対の振り返りや聞き直しもスムーズだ。現在は、音声自動応答サービスとの連携によるセルフサービス化の検証を進めており、実現すれば応対時間の短縮が期待できる。

この他、Slackとの連携も興味深い。オペレーターがZendeskの画面上からサイドカンバセーション機能を使ってSlack上の「教えて管理者チャンネル」に質問を投じると、管理者が即座に回答してくれるという。「オペレーターは顧客対応の文脈の中でシームレスに管理者に質問ができ、一方の管理者はSlackの画面だけ見ていればオペレーターの困りごとをいち早くキャッチできます。」(飯塚氏)今後は、SlackでのやりとりをWatsonに学習させ、より効率的にナレッジ管理を行うことも検討している。

ZendeskとSlackを連携させ、オペレーターと管理者のスムーズなやりとりを実現

ZendeskとSlackを連携させ、オペレーターと管理者のスムーズなやりとりを実現

FAQからのコメントをリアルタイムにSlack上に共有

FAQからのコメントをリアルタイムにSlack上に共有

これまで電話チャネルだけで対応してきた同社が、新たなチャネルを追加し、これだけの機能を次々と実装していく様子から、Zendeskが提供するAPI連携の優れた柔軟性が伺える。加えて、実装した機能を現場のオペレーターが速やかに使いこなせるのは、直感的でわかりやすいUIのなせる業だろう。オペレーターへのトレーニングも必要最低限で済んでいるという。

今後の展望

検証を通じて各チャネルでの効果が明らかになってきたことを受け、同社は新しい環境をスピーディーに拡大していく考えだ。今後計画していることとしては大きく2つある。1つは、セキュアに個人を特定するための顧客認証の仕組み。現在、オペレータ側のアカウント管理やライセンス管理は、クラウド対応のID認証基盤(IDaaS)とZendeskを連携して自動化しているが、「お客様側でも、アカウントが1つあればスムーズに情報を活用できる環境を実現したいですね。たとえば毎月の電気料金を知りたいお客様に対して、毎回同じ確認を繰り返す必要はなくなります」と飯塚氏。もう1つは、基幹システムとのより広範な連携である。これにより、有用な情報活用を促し、オペレーションの効率化と高度化をさらに推し進めることができる。

足りないものは何か、足りないものを補うために必要なものは何かを精査し、顧客にとっても、オペレーターにとっても、最良のエクスペリエンスの提供を追求する東京電力エナジーパートナー。顧客に寄り添い支え続けることで選ばれる会社へ、Zendeskと共にどこまでも進化していく。