新しい技術が進化する中で、特に人工知能(AI) や業務をより簡単かつ効率的にする自動化ツールの分野では、人々の興味や関心が一層高まっています。しかし、たとえ革新的な技術が次々と登場しても、企業はその導入に対して慎重になることがあります。特に最初の一歩や二歩目を踏み出すことにためらいを感じる企業も多いことでしょう。
しかし、そうした変化に抵抗したとしても、従業員が秘密裏にAIを使用することを必ずしも回避できるわけではありません。これは、Microsoft Copilot、ChatGPT、Claudeなどのツールにより、技術職以外の従業員がこのテクノロジーを利用しやすくなっていることが主な理由です。これはシャドウAIと呼ばれ、さまざまな業界で拡大している現象です。
この記事では、シャドウAI、CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)やその他の業界におけるシャドウAIの拡大、そのリスクと対策について解説します。
目次
シャドウAIとは? シャドウAIとは、会社が把握していない、またはITチームによる監視がない状態で、未承認または認可されていない外部AIツールを使用することを指します。さまざまな業界で、従業員は次のようなシャドウAIに依存しています。
信用リスクまたは不正リスクを分析するためのリスク評価ツール
また、ZendeskのCXトレンドレポート によると、カスタマーサポート担当者の約50%がシャドウAIを使用しています。
AIをカスタマーサービス やその他の業界に導入する意思がない、または導入できない企業では、シャドウAIの拡大がよく見られます。
シャドウAIとシャドウIT シャドウAIとシャドウITはどちらも、組織内の未承認のテクノロジーの使用を指しますが、使用されるテクノロジーのタイプと潜在的なリスクに、最大の違いがあります。
シャドウITのリスクは、未承認のツールを使用しているチームやメンバーに限定されますが、シャドウAIのリスクは組織全体で発生する可能性があります。
シャドウAIとシャドウITの違い
シャドウAI シャドウIT 定義 ITまたはデータガバナンスチームの承認を得ずにAIツールとAIテクノロジーを使用すること 企業ネットワーク上で未承認のITソフトウェア、ハードウェア、またはインフラストラクチャを使用すること 普及 生産性とツールの利便性を向上させたいと考える個々の従業員に間で普及 ITの課題にリアルタイムで対処する必要のある従業員やチームの間で普及 ガバナンスとコンプライアンス ITチームまたはデータチームによる監督と管理が欠如している ITチームまたは組織によるより大規模な監督が欠如している リスク 文化的影響 イノベーションが奨励される一方で、データの使用と意思決定における一貫性を損なうリスクがある アジリティ(俊敏性)が高まる一方で、IT環境の断片化とデータの散在のリスクがある 例 カスタマーサポートチームが未承認のAIツールを使用して顧客感情を分析している 従業員が未承認のストレージサービスを使用して、作業ファイルを保存および共有している
シャドウAIの拡大 AI技術(生成AIや対話型AI など)の爆発的な成長により、現場レベルでの導入が広がっています。専門的な知識がほとんど、あるいはまったく不要な消費者向けのAIツールが身近になったこと、そして公式なAIガバナンスが欠如していることにより、従業員が検証されていないAIソリューションを自ら探し、利用するケースが発生しています。
ZendeskのCXトレンドレポートによると、一部の業界ではシャドウAIの使用が前年比で250%も増加しており、企業は大きなリスクにさらされています。このような状況は、データセキュリティやコンプライアンス、ビジネス倫理において深刻な影響を及ぼす可能性があります。それにもかかわらず、多くの従業員が、承認された業務用ソリューションではなくシャドウAIを選ぶ理由として、以下のような点が挙げられます。
個人が導入・利用可能なAIツールが手軽にアクセスして操作できる環境にある。
予算、知識、あるいは社内のサポート不足といった理由でAIソリューションの開発を後回しにすれば、CXにおける伝統的な企業と先進的な企業との間のギャップは今後さらに広がっていくでしょう。しかし、多くの組織がこの新たな現実に直面する中で、CXの先進企業は、AIエージェント やCXの自動化(CXA) といった承認済みのAIソリューションを活用しつつ、必要な監視とバランスを維持し続けています。
シャドウAIのリスク シャドウAIが適切に管理されていない、または十分なリスク対策が講じられていない場合、シャドウAIは以下のような重大な組織リスクをもたらします。
セキュリティの脆弱性: シャドウAIは、一般的なセキュリティ対策を無視することが多く、無防備なデータアクセスやデータ漏えいを引き起こし、企業をサイバー攻撃のリスクにさらします。
情報の完全性: シャドウAIは監視やセキュリティプロトコルの精査が少ないため、ビジネスデータが侵害されたり、改ざんされるリスクがあります。
コンプライアンスの課題: 従業員が会社の許可や把握なしに機密データをサードパーティ製AIプラットフォームと共有すると、法令や秘密保持契約(NDA)に違反する可能性が高くなります。
サイバーセキュリティの脅威: 未承認のツールや未検証のツールを使用すると、バグ、マルウェア、または欠陥コードが業務プロセスに侵入するリスクがあります。
品質の一貫性の欠如: 分離された、相互運用できないAIソリューションのアウトプットには、一貫性や信頼性が欠如している可能性があります。こうしたソリューションの運用は、
顧客関係 や従業員の評判を損なうリスクにつながります。
従業員がシャドウAIを導入して効率化を実現したとしても、リソースの利用、プロジェクトのスケーリング、顧客データのプライバシー に悪影響を与える可能性があります。
シャドウAIの管理と対策 職場でのAI活用 は今後も続くため、組織全体のソリューションを採用する計画を立てずにシャドウAIを排除することはほぼ不可能です。以下に、変革に向けて取り組む際に留意すべき管理と対策のベストプラクティスをご紹介します。
認可済みAIツール: シャドウAIの利用を軽減するには、従業員が使用できる合理的で有用なツールを提供しましょう。多くの場合、認可済みツールには、セキュリティ強化に特化したエンタープライズライセンスがあります。
明確なAI使用ガイドラインを設定する。 AI使用に関する貴社の期待事項について概説した、明確なガイドラインを作成しましょう。サービス業のブランドであれば、
CXにおけるAI倫理 のベストプラクティスに従うことも重要です。
AIガバナンスのフレームワークを開発する。 AIシステムの活用と導入を導くためのポリシーや運用ルールを策定する際には、偏見や文化的背景にも配慮しながら協働して取り組むことが重要です。
AIセンターオブエクセレンス(CoE)を作成する。 この公平かつ多様性のあるチームまたは部門が、企業のAI施策を管理および推進します。
AIの教育とトレーニングを優先する。 これらのプログラムは、AIの使用のリスクと結果、および特定のツールやソリューションの使用方法を網羅する必要があります。
AIを安全に使用する文化を醸成する。 ガバナンスを基盤にしながら、
AIナレッジベース のようなAIツールを積極的に活用し、社内でのAI利用が正式に支援されていることをチームに伝えましょう。
ビジネスとITの連携を支援する。 AIツールが業務上のニーズに対応し、セキュリティやコンプライアンス、パフォーマンスの基準を満たしていることを確保することが重要です。
安全に実験できる環境を提供する。 実験用に指定された環境を構築し、チームが安全で監視された空間で新しいAIアプリケーションを探索できるようにします。
AIの透明性 を奨励する。 チームに対して、承認されたAIソリューションの責任ある導入と活用の重要性を共有し、AIツールがどのように機能し、どのようにデータを活用するのかを説明することで、オープンな姿勢を保つことが大切です。
品質管理(QA) およびモニタリングツールを使用する。 チームの業務の一貫性や状態をもとに、シャドウAIの使用が行われていないかどうかを判断するために、
品質モニタリング の結果を定期的に振り返り、評価することが重要です。
危険信号を探す。 異常なデータパターンや説明のつかない生産性の急上昇、応答やドキュメントの不整合、標準とは異なる業務成果(良し悪しを問わず)などに目を光らせておくことが重要です。
潜在的な使用を評価する。 ネットワーク監視ツールや匿名の従業員アンケート、および経費分析を使用して、使用中のツールとシャドウAIの使用の可能性に関するフィードバックを取得しましょう。
イノベーションを認識し、統合する。 有益なシャドウAIの活用を見極め、そうしたイノベーションを自社のシステムに統合しましょう。これにより、承認されたアプリケーション内での継続的な創造性が促されます。
アクセス制御を強化する。 従業員がシャドーAIを使用している場合でも、機密データへのアクセスを手動で選択して有効化し、安全
に顧客データを管理 します。
これからの時代は、AIの進化を受け入れていくことが重要です。ZendeskのCXトレンドレポート2026年版では、CX先進企業の93%が、「承認されたAIツールの活用は、従業員がAIやその高度な活用方法に慣れるうえで効果的であり、非公認でリスクの高い代替手段に頼らせないためにも重要である」と回答しました。
よくある質問 シャドウAIは、従業員やチームが生産性の向上や反復作業の自動化を試みる際に、ITまたはデータガバナンスチームから承認を求める前に(または得ることなく)、AIツールやAIソリューションを導入することで発生します。
カスタマーサクセス分野から小売業界まで、さまざまな業種の従業員がリスクを承知のうえでシャドウAIを活用する理由は、次のような点にあります。
イノベーションの強化: シャドウAIを使用することで、ユーザーは新しいAIツールを試したり、アイデアやアプローチを独自に検証したり、IT制御の枠を超えた最新技術に触れたりすることができます。
生産性の向上: シャドウAIが最適、あるいは高性能なツールであると判断した場合に、それを使用することで問題解決やワークフローの見直し、タスクの完了を効率よく行うことができます。
自律性の向上: シャドウAIは、従業員が自分のニーズに固有のAIツールを研究し、自律的に選択できるようにし、
従業員エンゲージメント を高めます。
機会の特定: シャドウAIの利用を通じて、自社が提供するツールに足りない機能や、承認されたAIの改善余地が明らかになることがあります。
ソリューションのカスタマイズ制性: シャドウAIを使用することで、従業員はAIソリューションを目標や特定のニーズに合わせてカスタマイズでき、ITチームがサポートすることが多い万能ツールよりも、自分にとって最適なソリューションを見つけやすくなります。
シャドウAIには多くのデータセキュリティ上のリスクがあるものの、その利用を防ぐにはいくつかの課題も存在します。たとえば、以下のような点が挙げられます。
AIを利用したツールを使用してチーム全体のリソースを無駄にする
こうした課題はあるものの、シャドウAIを適切に管理および軽減することのメリットはそれを大きく上回るため、無視せずに意識しておくべきポイントです。
以下を含む、あらゆるタイプの未承認または未検証のAIアプリケーションはシャドウAIと見なされる可能性があります。
組織がシャドウAIとその承認済みのAIの両面に向き合う中で、成功の鍵となるは、テクノロジーのガバナンスと従業員の主体性を重視した積極的なマネジメントです。
承認および検証済みのツールとソリューションを通じて優れた従業員サポートを提供する包括的な戦略により、企業はシャドウAIの課題をイノベーションと成長のチャンスに変えることができます。Zendesk AI Copilot のようなAIを搭載したツールやソフトウェアを認可することで、返答文の提案やリアルタイムのインサイト、パーソナライゼーションの推奨事項を上手く活用しながら従業員のパフォーマンスを支えることもできます。
最新技術を備えた安全かつ認可済みのAI搭載型従業員サービスソリューション を使用することで、適切なシャドウAI対策を講じ、チームのAI活用を成功に導きましょう。