「また同じお客様から長時間の電話が入っている」「チャットで執拗な返信が続き、担当者が席を離れられない」「メールフォームから1日に何十件も罵倒が送られてくる」「SNSで担当者の名前が晒されている」、こうした状況は、多くのカスタマーサポート現場で発生しています。
顧客からの理不尽な要求や威圧的な言動、いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」は、電話だけでなくメール・チャット・SNSといった複数チャネルに広がり、特定の業種に限らず、あらゆる企業で起こり得る経営課題となっています。
さらに、2026年10月には改正労働施策総合推進法の施行により、事業主にカスハラ対策が義務づけられます。企業には、従業員を守るための体制整備と、適切な対応が求められる時代に入っています。
本記事では、カスハラ対応の基本的な考え方から、よくある課題、実務で使える対応フロー、そして企業が取り組むべき具体的な対策までを幅広く解説します。あわせて、Zendeskで実現できるカスハラ対応の仕組み化についても紹介します。
目次
カスハラとは?
カスハラとは、カスタマーハラスメントの略で、顧客や取引先、施設利用者などが、従業員に対して社会通念上許容される範囲を超えた言動を行い、従業員の就業環境を害する行為を指します。
カスハラと正当なクレームの見極め方
カスハラ対応を考えるうえで重要なのは、正当なクレームとカスハラを正しく見極めることです。ここでは、厚生労働省の定義をもとに、カスハラに該当する具体的な行為と、正当なクレームとの違いを整理します。
厚生労働省の定義とカスハラに該当する行為
厚生労働省が2022年に策定した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラを次のように説明しています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの引用:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(2022年2月)|厚生労働省
具体的には、以下のような行為がカスハラに該当する可能性があります。
暴言・侮辱:人格を否定する発言、大声での威圧、土下座の強要
執拗な言動:同じ要求を何度も繰り返す、長時間にわたる拘束
威圧的な態度:机を叩く、反社会的勢力とのつながりをほのめかす
過剰な要求:合理的根拠のない金銭要求、不当な値引きの強要
個人攻撃:SNSでの晒し行為、担当者の個人情報を調べる行為
正当なクレームとの違い
カスハラ対応を考えるうえで重要なのは、「正当なクレーム」との線引きです。
正当なクレームとは、商品やサービスに不備があり、その改善を求める合理的な申し出です。
カスハラかどうかは、次の2つの視点で判断できます。
両者の違いを整理すると、次の表のようになります。
判断軸
| 正当なクレーム
| カスハラ
|
要求内容
| 商品・サービスの不備に基づく合理的な改善要求
| 合理的な根拠がない、または過大・不当な要求
|
伝え方・態度
| 冷静な申し出、節度ある表現
| 暴言・威圧・脅迫、人格否定、土下座や過剰な謝罪文書の強要(対面・電話に加え、メール・チャット・SNSでの攻撃的投稿を含む)
|
やり取りのゴール
| 問題の解決・改善(返金、交換、再発防止など達成可能なゴールがある)
| 謝罪の強要・金銭獲得・攻撃そのものが目的化しており、対応してもゴールが移動し続ける
|
対応の負荷・時間
| 解決に必要な範囲で、通常の業務範囲内に収束する
| 1件あたりの長時間拘束や深夜・早朝の連絡、メール・チャットでの連投など、通常対応の範囲を著しく超える負荷を生じさせる
|
反復性・進展
| やり取りを重ねるごとに論点が整理され、合意・解決に向かって進展する
| 事実確認後も同じ要求を執拗に繰り返す、クローズ済みの案件を蒸し返す、担当者や窓口を変えて同じ主張を持ち込む
|
個人への影響
| 担当者個人の応対への指摘はあっても、人格否定や個人情報の詮索・公開には至らない
| 担当者個人の名前・情報を晒す、SNSで中傷する、個人への直接的な攻撃を行う
|
企業としての扱い
| 一次対応で解決・クローズし、必要に応じてVOCとして改善活動に活かす
| 社会通念上不相当と判断し、毅然と対応・必要に応じて打ち切る
|
なお、要求内容は妥当でも伝え方が攻撃的な場合や、最初は正当なクレームだったが途中からカスハラ化するケースなど、境界にあたる事案も少なくありません。判断に迷う場合は、上記2軸を基本としつつ、表の各観点も含めて総合的に評価することが重要です。厚生労働省の定義でも、要求内容が正当であっても、その手段・態様が社会通念上不相当であればカスハラに該当し得るとされています。
例えば、不良品の交換を求めるのは正当なクレームです。一方で、同じ状況で土下座を要求したり、個人を晒す行為はカスハラに該当する可能性があります。
カスハラの現状と法整備の動向
企業におけるカスハラの現状
厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」によると、過去3年間に「顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)」について相談があった企業は27.9%にのぼり、パワハラ(64.2%)、セクハラ(39.5%)に次ぐ状況です。およそ4社に1社がすでにカスハラに直面しています。
また、その内容も深刻化しています。実際にカスハラに該当すると判断された事案のうち、
「継続的・執拗な言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)」が72.1%
「威圧的な言動(大声で責める、反社会的な者とのつながりをほのめかす等)」が52.2%
「精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の要求等)」が44.7%
と報告されており、長時間拘束や精神的な圧迫を伴うケースが多い状況が見られます。
カスハラ対応に関する法令・指針
このようなカスハラの深刻な状況を受け、近年は法整備も急速に進んでいます。
特に大きな転換点となるのが、2026年10月に施行される改正労働施策総合推進法です。この改正により、カスハラはパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントと同様に、事業主が講ずべき「雇用管理上の措置義務」として位置づけられました。
さらに、2026年2月には厚生労働省から具体的な指針が公表され、企業は施行日までに体制を整備することが求められています。
出典:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(2026年2月)|厚生労働省
企業には具体的に、以下のような対応が求められます。
カスハラに対する方針の明確化と社内周知
相談窓口の設置および体制整備
発生時の迅速かつ適切な対応
再発防止に向けた取り組み
義務化後は、企業に対して体制整備が求められるため、対応の遅れや不備は行政上の指導対象となる可能性があります。
また、東京都では2025年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されるなど、自治体レベルでも対策が進んでいます。
出典:カスハラ防止指針(ガイドライン)を策定|12月|都庁総合ホームページ
ただし、カスハラ対応が求められる理由は法改正だけではありません。企業経営の観点からも、無視できないリスクがあります。
カスハラ対応が企業に求められる理由
法改正への対応だけでなく、カスハラを放置するリスクは無視できない状況です。それは、以下の理由からです。
従業員の保護
カスハラは、暴言や威圧的な言動、長時間の拘束などを伴うことが多く、対応する従業員に大きな精神的負担を与えます。こうした状況が続くと、体調不良やモチベーションの低下を招き、休職や離職につながるおそれがあります。
このような従業員への影響を踏まえ、企業には適切な対策を講じる責任があります。労働契約法第5条では安全配慮義務が定められており、カスハラ被害を放置することは義務違反とみなされる可能性があります。
また、カスハラを原因とする精神疾患が労災認定されるケースもあり、対応を怠れば企業の法的責任が問われるリスクもあります。
離職・人材流出の防止
カスハラ対応の負担が蓄積すると、従業員の精神的疲弊が進み、離職につながるリスクが高まります。特にコールセンターなどの顧客対応部門では、その影響が顕著です。
人材の流出は、採用・教育コストの増加だけでなく、対応ノウハウの喪失にも直結します。経験豊富な担当者が抜けることで応対品質のばらつきが生じやすくなり、現場の対応力低下を招きます。
さらに、「カスハラ対策が不十分な職場」という評判は採用にも影響を及ぼします。従業員を守る姿勢を示せるかどうかは、企業の採用競争力にも関わる重要な要素です。
通常業務・顧客体験への影響
カスハラ対応に追われることで、本来対応すべき他の業務や顧客への対応が後回しになりやすくなります。
その結果、待ち時間の増加や応対品質の低下が生じ、カスハラとは無関係な一般顧客の顧客体験(CX)まで損なわれることになります。さらに、対応リソースが偏ることで、全体のサービス提供体制にもゆがみが生じます。
ZendeskのCXトレンドレポート2026年版によると、消費者の72%が「たった一度の悪いサービス経験で競合他社に乗り換える」と回答しており、一般顧客への影響は即座にブランド離反につながるリスクとなります。
このように、カスハラは特定の顧客対応にとどまらず、業務全体の効率やサービス品質に影響を与える構造的な問題といえます。
ストレス蓄積による「逆カスハラ」のリスク
カスハラ対応で蓄積した精神的負荷は、対応した担当者本人にとどまらず、別の顧客対応にも影響を及ぼします。心理的な余裕を失った担当者が、次に対応する一般顧客に対して無意識に冷たい口調や事務的な応対を取ってしまう、「逆カスハラ」とも呼ばれる現象が現場で指摘されています。
これは、本来カスハラとは無関係な顧客の体験を損ない、企業ブランドの毀損や新たなクレームの発生につながる二次的なリスクです。一人の担当者の心理状態が他の顧客対応の品質を左右する構造を踏まえると、従業員のメンタルケアは単なる福利厚生ではなく、顧客対応品質そのものを守るための投資と位置づけられます。
カスハラ対応のよくある課題
カスハラへの組織的な対応の必要性は認識されつつあるものの、多くの企業では体制整備が十分に進んでいないのが実情です。カスハラ対応の体制整備にあたっては、次のような課題が存在します。
対応が属人化しやすい
カスハラ対応は、特定の担当者の経験や判断に依存しやすく属人化に陥りやすい傾向があります。明確な対応方針や基準が整備されていない場合、対応方法は担当者ごとにばらつきが生じます。
その結果、対応品質が安定せず、特定の担当者に負担が集中する構造が生まれやすくなります。担当者の離職や異動が発生すると、対応力そのものが低下するリスクもあります。
対応履歴の一元管理が難しい
カスハラ対応においては、対応履歴の記録と共有が重要になりますが、実際には十分に管理されていないケースも多く見られます。対応内容を継続的に記録・共有することは、現場にとって大きな負担です。
電話・メール・チャットなど複数のチャネルで対応が行われる場合もあり、一元的に管理するのは容易ではありません。対応履歴が断片的にしか残らず、過去の経緯が把握できないまま対応が繰り返される状況が生まれます。
同じ説明の繰り返しや対応の不整合は、顧客の不満をさらに増幅させる要因となります。CXトレンドレポートによると、消費者の69%が「同じ情報を繰り返し伝えさせられることに強いストレスを感じる」と回答しています。
また、サポート担当者の73%が「全チャネルでの顧客とのやり取りを一元的に確認できれば、業務の質が向上する」と回答しており、対応履歴の一元管理は、顧客体験と業務効率の両面で重要な要素といえます。
こうした情報が十分に蓄積・共有されない場合、カスハラに該当する顧客の傾向を把握できず、問題が長期化・複雑化するケースも少なくありません。
同一顧客が複数チャネル横断で攻撃してくる
最近の現場で特に厄介なのが、電話で対応を打ち切られた顧客がメールで連投し、さらにSNSの公式アカウントに書き込み、問い合わせフォームからも連絡してくるという、チャネル横断の粘着行為です。
チャネルごとに担当部署やシステムが分かれていると、顧客プロファイル単位で攻撃行為を捕捉できず、各チャネルの担当者はそれぞれ「初回の問い合わせ」として対応してしまいます。その結果、組織としては同一顧客に対して何度も異なる回答を返してしまい、顧客の要求がさらにエスカレートする要因となります。
「正当なクレーム」と「カスハラ」のグレーゾーン判断
現場で最も悩ましいのは、明確にカスハラと断定できるケースよりも、グレーゾーンの判断です。要求内容自体は妥当でも、伝え方が威圧的な場合や、長時間拘束を伴う場合など、2軸で単純に線引きできない事案が大半を占めます。
さらに、現場を疲弊させているのは、明確な暴言や脅迫だけではありません。低い地声、深いため息、せっかちな口調、嫌味な言い回しなど、悪意の有無を判断しづらい「敵意の兆候」もまた、担当者に大きな心理的負担を生み出します。一つひとつは言葉の暴力として線引きしづらいものの、累積することで「次に何を言われるかわからない」という恐怖や焦りにつながり、グレーゾーン判断をさらに困難にします。
こうした判断を個々の担当者に委ねると、対応にばらつきが生じ、後々のトラブルにもつながります。事前の社内判断基準と、迷ったときにすぐ相談できる体制の両輪が不可欠です。
在宅オペレーター・BPO委託先での対応難易度
在宅勤務やBPO委託が広がる中、カスハラ対応の難易度も変化しています。在宅環境では、SVが物理的に近くにおらず、挙手から即時介入までの動線が弱くなります。担当者が一人で抱え込みやすく、精神的な孤立も起こりやすい状況です。
また、BPOベンダーに業務委託している場合、発注元企業にもカスハラ対策の配慮義務が及ぶ可能性があります。委託先オペレーターの保護方針や、エスカレーション時の連携フローは、契約書レベルで明記しておくことが求められます。
エスカレーションの基準が曖昧
カスハラ対応においては、「どの時点で上位者へ引き継ぐか」「どこまで対応を継続するか」といったエスカレーションの判断が重要になります。しかし、これらの基準が明確でない場合、担当者が対応を抱え込みやすくなります。
また、エスカレーション基準のルール化が進む一方で、SVの判断で「対応を打ち切る(切電する)」権限を現場に明確に与えている企業は依然として限定的というのが実情です。「電話を切ってよいかどうか」の最終判断が組織として整理されていない現場では、担当者が長時間の拘束を一人で抱え込む構造が温存されてしまいます。
加えて、顧客対応に対する要求は年々厳しさを増しており、CXトレンドレポートによると、CXリーダーの81%が「チャネルを問わず、初回問い合わせで問題を解決できないブランドからは顧客が離れる」と回答しています。つまり、正当なクレームには一次解決レベルの迅速対応が求められる一方、カスハラには毅然とした打ち切りや組織的対応が求められるという、相反する判断を現場は同時に迫られます。
このような背景からも、正当なクレームとカスハラを見極め、迅速かつ適切に判断できるエスカレーション体制の整備と、必要に応じて対応を終了する権限の明示は、顧客対応における重要な要素といえます。
精神的負担が大きい
カスハラ対応は、通常の業務と比較して精神的負担が大きい業務です。暴言や威圧的な言動への対応が繰り返されることで、従業員のストレスは継続的に蓄積されます。
適切なケアやサポート体制がない場合、モチベーションの低下や体調不良につながり、最終的には休職・離職のリスクを高めます。
カスハラ対応の基本フロー
カスハラ対応の課題を解決するためには、対応手順を明確にし、組織として統一した対応を行うことが重要です。ここでは、基本的な対応フローを紹介します。
ステップ1|初期対応:まずは「受け止める」
顧客から強い言動があった場合、最初のステップは「冷静に受け止める」ことです。
この段階では、相手の話を遮らず、まず言い分を傾聴します。ただし、「受け止める」ことと「すべて受け入れる」ことは異なります。事実確認ができていない段階で安易な謝罪や約束をしないことが重要です。
初期対応のポイント
なお、チャネルによって初期対応の設計は異なります。電話はリアルタイム性が高く担当者が単独で判断を迫られやすい一方、メール・チャットは一次回答テンプレートで時間を確保し、組織で判断する余地があります。チャネル別の初期対応方針をあらかじめ整理しておくと、現場の迷いを減らせます。
ステップ2|状況判断:「クレーム」か「カスハラ」か
初期対応を行いながら、その言動が「正当なクレーム」なのか「カスハラに該当するもの」なのかを判断します。
判断基準の例を以下に示します。
実際の現場では、判断に迷うケースも少なくありません。たとえば、要求自体は合理的でも、長時間の拘束や威圧的な言動を伴う場合などです。こうした場合は、要求の正当性だけでなく、手段が社会通念上相当かどうかを踏まえて判断する必要があります。
あらかじめ「カスハラに該当する行為の具体例」を社内で整理しておくと、現場での判断がスムーズになります。厚生労働省のマニュアルを参考に、自社に合わせて基準を整備しておくとよいでしょう。
ステップ3|エスカレーション:組織として対応する
カスハラと判断された場合、担当者個人で対応を完結させず、上位者や専門部署へエスカレーションします。
エスカレーション時に共有すべき情報
顧客情報(氏名、連絡先、過去の対応履歴)
今回の要求内容
カスハラに該当すると判断した根拠
現在の状況
エスカレーションを機能させるうえで重要なのは、担当者が一人で抱え込まない環境づくりです。現場では「自分の対応力不足ではないか」「上司の手を煩わせたくない」といった心理から、対応が長引くケースも少なくありません。
そのため、エスカレーションは「対応の失敗」ではなく「組織として適切に対応するためのプロセス」であるという認識を社内で共有しておくことが重要です。
また、「どのような場合に・誰へ報告するか」をマニュアルで明確化しておくことも欠かせません。悪質なケースでは、弁護士や警察など外部機関との連携も視野に入れ、対応基準を整備しておきましょう。
エスカレーション基準の具体例
コールセンターのようにリアルタイム対応が中心の現場では、SV(スーパーバイザー)による即時介入の仕組みも不可欠です。担当者が挙手(ヘルプランプやチャット通知)するとSVがモニタリング(通話を聞く機能)で状況を把握し、必要に応じてウィスパリング(オペレーターにのみ声を届ける機能)でサポートしたり、通話を引き継いだりといった動線を整備しておきます。
電話対応における切電3段階フレーズ:
カスハラ対応を打ち切る場合は、担当者個人の判断ではなく、以下のような3段階の定型文を組織として整備しておきます。
予告:「お客様、このままではご対応を続けることが難しくなります」
警告:「今後同様の発言が続く場合、通話を終了させていただきます」
切電宣言:「本通話を終了いたします。失礼いたします」
切電後は、SV承認付きの対応記録を必ず残します。
ステップ4|記録と共有:再発防止につなげる
カスハラへの対応が終わったら、必ず対応内容を記録し、組織内で共有します。
記録すべき項目
これらの記録は、同一顧客から再度連絡があった際に、過去の経緯を踏まえた一貫した対応を行うための基盤となります。また、法的トラブルに発展した場合には、対応の正当性を示す証拠としても活用できます。
さらに、記録を蓄積・分析することで、クレームの発生傾向を把握し、事前の対策にもつなげられます。
企業が取り組むべきカスハラ対策7選
カスハラ対応は、個々の担当者の経験や判断に委ねるのではなく、組織として仕組み化することが重要です。ここでは、企業が取り組むべき具体的な対策について解説します。
1. 基本姿勢の明確化とサポートポリシーの外部公開
企業としてカスハラにどう向き合うかを明確にし、社内外に示すことが第一歩です。特に「従業員を守る」という方針を打ち出すことで、対応の軸がぶれなくなります。カスハラの定義や対応方針を明文化し、判断基準を統一しましょう。経営層がトップメッセージとして発信することで、組織全体の意識改革にもつながります。
また、利用規約やサポートポリシーに「カスハラ該当行為があった場合、サービス提供をお断りする場合がある」旨を明記し、自社Webサイトで公開しておくことも有効です。これにより、顧客に対して適切な利用を促す抑止効果が期待できるだけでなく、現場の担当者が会社方針を盾に毅然とした対応を取れるようになります。後述のfreee社の事例は、この取り組みの好例です。
2. 相談窓口の設置
被害を受けた従業員が速やかに相談できる窓口を整備し、周知することが不可欠です。メールやチャットなど相談手段を複数用意し、機密性を確保することで、安心して声を上げられる環境をつくります。匿名での相談を受け付ける仕組みを設けることも、心理的ハードルを下げるうえで効果的です。窓口が明確であれば、問題の早期把握と迅速な対応につながり、被害の拡大を未然に防ぐことができます。
3. 対応フローとマニュアルの整備
カスハラ対応を属人化させないためには、対応フローを定めるとともに、判断基準や顧客への伝え方を具体化したマニュアルの整備が重要です。特に、エスカレーションや対応打ち切りの基準を明確にしておくことで、担当者が迷わず対応できるようになります。
マニュアルには、カスハラに該当する行為の具体例、初期対応時の推奨フレーズとNG表現、エスカレーション先と連絡手順、対応打ち切りの基準と伝え方などを盛り込みます。「このような発言があった場合は上席へ引き継ぐ」「対応が一定時間を超えた場合は区切る」といったように、現場で判断できるレベルまで具体化することが重要です。
あわせて、「冒頭の受け止め」「事実確認依頼」「再要求への拒否」「打ち切り宣言」といった頻出シーンの定型文をテンプレート化し、ヘルプデスクシステムのマクロ機能などですぐに呼び出せる体制を整えておくと、属人化の解消と応対品質の均質化に直結します。
また、フローやマニュアルは一度整備して終わりではなく、実際の対応事例をもとに定期的に見直し、継続的に改善していくことも欠かせません。
4. クレーム情報の共有体制と認定フラグ運用
クレームや対応履歴を担当者個人にとどめず、組織全体で共有できる仕組みを整えることが重要です。対応の経緯を可視化することで、一貫した対応や重複対応の防止につながります。
情報が共有されていない場合、担当者ごとに対応が異なり、顧客の要求がエスカレートするリスクがあります。こうした対応のブレを防ぐには、過去の経緯や対応方針を誰でもすぐに確認できる状態にしておくことが不可欠です。
あわせて、カスハラと判断された顧客を「要注意顧客」としてシステム上でフラグ管理する運用も有効です。該当顧客から着信・問い合わせがあった際に、SVが先に対応する、通話録音の該当箇所に「要注意」タグを自動付与する、経験豊富な担当者へ自動で振り分けるといった運用が可能になります。ただし、フラグ運用は個人情報保護や差別的取り扱いにつながらないよう、運用ルールと社内承認プロセスを整備したうえで導入する必要があります。
こうした共有体制の整備には、電話・メール・チャットなど複数チャネルにまたがる情報を一元管理できるツールやシステムの導入が欠かせません。蓄積された対応データを分析することで、カスハラの傾向やパターンを把握し、事前の対策にも生かすことができます。
5. 外部専門家との連携体制の整備
悪質なカスハラに備え、弁護士や警察など外部の専門家と連携できる体制をあらかじめ整えておきましょう。問題が発生してから相談先を探すのでは対応が遅れます。顧問弁護士との契約や、所轄警察署との事前相談など、平時から関係を構築しておくことが、迅速な対応につながります。「どのような場合に外部へ相談するか」の基準は、対応ルールとして定めておくことが大切です。
6. 従業員への教育研修
フローやマニュアルを整備しても、現場で使いこなせなければ意味がありません。カスハラの判断基準や対応手順を学ぶ研修を定期的に実施することが重要です。ロールプレイングを取り入れることで、実践的な対応力を身につけることができます。
研修では、「カスハラと正当なクレームの線引き」と「自分を守るための対応スキル」を重点的に扱うとよいでしょう。前者では、要求内容と手段を分けて評価する考え方を事例とともに学び、判断のばらつきを防ぎます。後者では、感情的に巻き込まれないための言い回しや、対応を中断する際の伝え方など、実務で使えるコミュニケーションを習得します。
あわせて、「予防」の観点も欠かせません。カスハラの一部は、担当者の何気ない言葉づかいや事務的な応対が顧客の感情を逆撫でし、エスカレートしてしまうケースから生じます。クッション言葉や共感を示すフレーズ、相手の状況を確認する質問の仕方など、安心感を与える接遇スキルの教育は、クレームの発生そのものを未然に抑える効果も期待できます。
また、管理職向けには、エスカレーション時の判断や部下のフォローに関する研修も有効です。
7. 被害を受けた従業員へのケア
カスハラ対応後は、担当した従業員へのフォローも重要です。特に対応直後は精神的な負荷が大きいため、SVが5〜10分程度のデブリーフ(振り返り会話)をその場で行うことが有効です。「対応内容を肯定する」「事実を一緒に確認する」「次の対応可否を判断する」という3ステップで、担当者の心理的な安定と組織としての判断共有を同時に進められます。
コールセンターでは、カスハラ対応直後の担当者を次のコールに直ちに出さず、専用の離席コード(AUXコード/ノンプロダクティブタイム)でクールダウン時間を確保する運用が効果的です。その時間は稼働率KPI(生産性指標)から除外することで、現場が「離席しづらい」と感じる心理的ハードルを下げられます。
さらに、上司やメンタルヘルス担当者による面談や、必要に応じた業務調整を行うことも有効です。産業医やカウンセラーと連携できる体制を整えておくことで、深刻なストレスにも早期に対応できます。
あわせて、研修や日常のコミュニケーションを通じて「心の分離」という考え方を浸透させることも、長期的なケアにつながります。顧客の理不尽な言動を「自分個人への攻撃」ではなく「業務上、組織として受け取った感情」と切り分けて捉える考え方を共有することで、担当者が一人で抱え込みすぎず、健やかに業務を継続できる土台が整います。
こうしたケア体制の整備は、従業員の安心感を高め、離職防止にもつながります。
テクノロジーによる従業員保護の最新動向
カスハラ対策のテクノロジー活用は、対応フローや履歴管理の効率化だけにとどまりません。近年は、担当者の心理的負荷そのものを軽減する「AI音声変換(感情フィルター)」という新しいアプローチも登場しています。
これは、顧客の怒声や威圧的な声色をAIがリアルタイムに検知し、会話の内容はそのままに「穏やかな声色」へ変換して担当者の耳に届ける技術です。代表的なソリューションとして、ソフトバンクが提供する「SoftVoice」などが挙げられます。独自開発された「AI声質変換モデル」による怒りの抑制機能に加え、警告メッセージの発出や緊急回避機能も備わっており、担当者自身が状況に応じて自衛できる仕組みも提供されています。カスハラ対応の最前線で従業員の精神的負担を軽減する選択肢として、こうした技術が注目を集めています。
Zendeskで実現できるカスハラ対応の仕組み化
カスタマーサービスプラットフォーム「Zendesk」は、ここまで整理してきたカスハラ対応の課題を、ひとつのプラットフォーム上で解決する仕組みとして提供します。ここでは、現場の具体的な悩みごとに、Zendeskがどう応えられるかを整理します。
同一顧客の複数チャネル攻撃を1画面で捕捉する
「電話で言っていたクレームの続きが、今度はメールで来た」「公式SNSにも書き込まれている」──チャネルごとに対応履歴が分断されている現場では、同一顧客の粘着行為が組織として捕捉できず、各担当者が初回対応として応じてしまうことで顧客の要求がさらにエスカレートします。
Zendeskでは、電話・メール・チャット・SNSなどあらゆるチャネルからの問い合わせが「チケット」として顧客プロファイル単位で一元管理されます。過去のやり取りがすべて紐づいて記録されるため、担当者が交代しても対応経緯を即座に把握でき、チャネルをまたいだ一貫した対応が可能です。
こうしたすべてのチャネルで一貫したやり取りを行う「オムニチャネル対応」により、電話の通話録音とテキスト履歴を1画面で参照しながら対応できる環境が整います。
さらに、AIによる要約機能で長いやり取りも短時間で把握でき、引き継ぎ時の負担を軽減します。過去の類似チケットを参照できるため、対応事例をもとに経験に依存しない判断が可能になります。「カスハラ注意」などのタグ付与や、要注意顧客フラグの運用にもそのまま活用できます。
エスカレーション判断を個人の経験に委ねない
「どの時点で上位者へ引き継ぐか」は現場が最も悩むポイントです。担当者個人の判断に委ねると、対応が長引いたり、逆に過剰エスカレーションが起きたりします。
Zendeskのトリガーや自動化機能を活用することで、特定の条件に応じたエスカレーションを仕組みとして整備できます。たとえば、カスハラ対応が必要な問い合わせを経験豊富な担当者へ自動で振り分けたり、一定時間未対応のチケットをマネージャーへ通知したり、一定期間内に同一顧客から複数チャネルで連投があった際にトリガー設計によりSVへ自動通知するといった運用を設計できます。
さらに、AIが問い合わせ内容や顧客のトーンを分析して攻撃的な文面を検知し、担当者へ警告を出したり、自動エスカレーションの提案を行うことも可能です。優先度の高い案件を適切に判断し、迅速に対応することで、担当者保護と対応品質の両立につながります。
なお、リアルタイム通話中のSV即時介入はCTI側のモニタリング・ウィスパリング機能が主役となります。Zendeskの通知設計と組み合わせることで、SVによる即時介入の動線を設計できます。
対応品質をAIで可視化し、カスハラ対応を管理者が早期に把握する
カスハラ対応は発生件数が多くなるほど、すべてをマネージャーが手動で確認することが難しくなります。対応のばらつきや、担当者が抱え込んでいるケースを見逃すリスクが高まります。
品質管理機能「Zendesk QA」は、通話録音・メール・チャットログをAIで自動評価し、カスハラに該当しうるやり取りや注意が必要なケースを自動で抽出します。管理者は対象ケースを効率的にレビューでき、対応品質の維持と問題の未然防止につながります。
CXトレンドレポートによると、CXリーダーの80%が「今後1年で、人とAIのすべてのやり取りに対する100%の品質管理を実現することは中〜高い優先度である」と回答しており、対応品質の全件可視化は経営課題として位置づけられつつあります。
経験豊富な担当者への優先振り分けで負担を分散する
経験の浅い担当者がカスハラ案件に当たってしまうと、対応が長期化しやすく、担当者自身の心理的負担が大きくなります。こうした人員の配置や稼働状況を最適化する手法を「WFM(ワークフォースマネジメント)」といいます。
ワークフォースマネジメント機能「Zendesk WFM」は、過去の問い合わせデータをもとに、問い合わせ量の傾向やピーク時間帯をAIが予測します。これにより、難易度の高い問い合わせが多い時間帯や繁忙期を踏まえたシフト計画の土台が整い、経験豊富な担当者を重点的に配置する設計がしやすくなります。応答率・サービスレベル・稼働率といったコールセンターKPIの改善に寄与し、あわせて経験者の適切な配置を通じてAHT(平均処理時間)の安定化も期待できます。
テンプレートとナレッジで応対品質を標準化する
属人化を解消するには、対応テンプレートと判断基準を組織全体で共有できる環境が不可欠です。Zendeskでは、カスハラ対応マニュアルやエスカレーション基準、お詫び・事実確認・打ち切り宣言等のテンプレートをナレッジベースとして一元的に蓄積し、組織全体でナレッジ共有できます。マクロ機能を使えば、定型文をワンクリックで呼び出せるため、対応品質の均質化につながります。
さらに、AI搭載のアシスタント機能「Copilot」が、ナレッジをもとに最適な回答案や関連情報を提示するほか、カスハラ対応中に適切な言い回しや対応方針をその場で提案します。経験の浅い担当者でも一定品質の対応を迅速に行える環境が整います。
問い合わせ総量を減らし、現場のリソースに余力を作る
カスハラの温床となるのは、そもそも顧客が疑問や不満を早期に解消できない状況です。Zendeskでは、顧客にもサポート担当者にも使いやすいFAQサイトを構築でき、自己解決できる環境を整えることで、サポート担当者の負担を減らせます。
加えて、「AIエージェント」をヘルプセンターやFAQなどのナレッジベースに接続することで、問い合わせ対応を自動化できるチャットボットも比較的容易に実装できます。ブランド独自のトーンで正確な返答を迅速に提供するため、顧客体験を損なうことなく問い合わせ件数を抑制でき、現場のリソースをカスハラ対応を含む難易度の高いケースに集中できます。
結果として、問題のエスカレーションやクレームの長期化、カスハラへの発展を未然に抑える効果も期待できます。
カスハラ記録を経営改善のデータ資産に変える
蓄積されたカスハラ対応データは、守りの記録にとどめず、攻めのデータ資産として活用できます。Zendeskのダッシュボード機能を使えば、カスハラの発生傾向・頻発する問い合わせ起点(特定機能の使い勝手、特定の説明ページ等)を可視化し、プロダクト・マーケ・オペレーション部門の改善につなげられます。
FAQの利用状況や検索データとあわせて分析することで、顧客がつまずきやすいポイントを事前に改善し、カスハラの発生そのものを減らす取り組みにも活用できます。
カスハラ対策の取り組み事例
ここでは、厚生労働省が運営する総合的なハラスメント対策のポータルサイト「あかるい職場応援団」に掲載されている事例をもとに、業種の異なる3社のカスハラ対策の取り組みを紹介します。
ヤマト運輸株式会社(運送業)
ヤマト運輸では、コールセンターのオペレーターの約8割がカスハラ被害に遭っていた実態を受け、「カスハラ発言リスト」や対応時の「文言集」を盛り込んだ独自のマニュアルを作成しました。同マニュアルでは、一度でも発言があればカスハラと判断する用語・フレーズ(例:「死ね」「殺すぞ」等)を明示し、該当発言があれば即座に管理者へ交代、繰り返しの暴言には段階的に対応するなど、現場の判断基準を明確化しています。さらに、対応レポートを全社データベースで共有し、全国どのコールセンターでも一貫した対応ができる体制を構築しました。こうした取り組みにより、社員が必要以上に自分を責めることなく、カスハラに対して毅然と対応できる意識が社内に浸透しつつあります。
出典:社員の健全な業務を守るため、カスハラ対策の取組を始動 | あかるい職場応援団
タリーズコーヒージャパン株式会社(飲食・サービス業)
店舗スタッフがネームプレートの名前をもとにSNSでつきまとわれるトラブルが発生したことをきっかけに、カスハラ対策に着手しました。ネームプレートをイニシャル表記に変更し、レシートの担当者欄も社員番号に切り替えることで、従業員の個人情報を保護する仕組みを整備しています。悪質なクレーム発生時には、店舗・エリア営業担当者・本社のお客様相談室の三者で事実確認を行い、組織として対応する体制を構築しました。これらの取り組みにより、つきまとい被害はほぼゼロになり、スタッフやその家族から「安心して働ける」との声が寄せられています。
出典:取組のきっかけはSNSでのつきまとい行為 | あかるい職場応援団
フリー株式会社(IT・サービス業)
クラウド会計ソフト「freee会計」を手掛けるフリー株式会社では、サポートデスクへの40分以上にわたる脅迫的なクレームをきっかけに、法務部と連携してカスハラ対策プロジェクトを立ち上げました。厚生労働省のマニュアルを参考に、カスハラの定義や判断基準を具体的に言語化したガイドラインを作成し、専門チームの設置や被害者へのメンタリング体制も整備しています。また、「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」を自社HPで公開し、該当行為にはサービス提供をお断りする場合がある旨を社外にも明示しました。プロジェクト立ち上げから約6か月で公開に至り、従業員からは「安心感につながる」、顧客からも賛同の声が寄せられています。
出典:カスタマーハラスメントへの取組により従業員の安心感を獲得! | あかるい職場応援団
よくある質問(FAQ)
正当なクレームとは、商品やサービスの不備について合理的な改善を求める行為です。これは企業にとって有益なフィードバックであり、適切に対応すべきものです。
一方、カスハラは「要求内容に合理的な根拠がない」か、「要求の手段が社会通念上不相当(暴言、脅迫、長時間拘束など)」な場合に該当します。要求内容が正当であっても、その伝え方が暴力的・威圧的であれば、カスハラに該当する可能性があります。
カスハラを一律に直接処罰する単独の法律があるわけではありません。ただし、行為の内容によっては、暴行罪、脅迫罪、侮辱罪、名誉毀損罪、不退去罪、威力業務妨害罪など、既存の法令に該当する可能性があります。「カスハラだから違法」というよりも、「カスハラの中に違法行為が含まれうる」という理解が適切です。
はい、一定の条件のもとで対応を打ち切ることは可能です。
厚生労働省の指針でも、社会通念上許容される範囲を超えた言動に対しては、毅然とした対応を取ることが求められています。具体的には、「これ以上のご対応は致しかねます」と明確に伝え、対応を終了することは正当な行為です。
ただし、打ち切りの判断を現場の担当者個人に委ねるのではなく、「どのような場合に打ち切ってよいか」を社内ルールとして事前に定めておくことが重要です。対応打ち切りの経緯は必ず記録に残しましょう。
業務上の目的で通話を録音すること自体は、法律上禁止されていません。「お客様対応品質向上のため、通話を録音させていただきます」といった案内を事前に行うのが一般的です。
録音データは、カスハラの事実確認や証拠保全、さらには社内の対応改善に活用できます。録音を事前告知すること自体が、カスハラの抑止効果を持つケースもあります。
社内で録音に関するルール(保存期間、アクセス権限、利用目的など)を定めておくことが望ましいでしょう。
以下のようなケースでは、社内対応にとどめず、速やかに警察や弁護士への相談を検討すべきです。
弁護士への相談は、内容証明郵便の送付や法的措置の検討が必要な段階で行います。日頃から顧問弁護士にカスハラ関連の相談ができる体制を整えておくと、いざという時にスムーズに対応できます。
いずれの場合も、対応の記録(日時、内容、対応者など)を正確に残しておくことが必要です。
メール・チャットでのカスハラも、通話録音と同じく事実確認・証拠保全・対応改善の観点から記録を残すことが重要です。エンタープライズ向けのヘルプデスクシステムやチャットツールは、やり取りがチケットやログとしてデータベースに保管されるため、原本ログを正として扱うのが基本です。一方、SNSのDMや口コミサイト等、チャネル側の仕様によっては履歴が後から確認しにくくなるケースもあるため、必要に応じてPDFやスクリーンショットで補助的に保全する運用を検討します。
一元管理できるヘルプデスクシステムであれば、メール・チャット・SNSのログを顧客プロファイル単位で自動的に紐付けて保管できるため、後からの検索・分析が容易になります。保存期間、アクセス権限、利用目的などの社内ルールを定めておきましょう。
改正労働施策総合推進法における「雇用管理上の措置義務」は、直接雇用する労働者に対して課されるものです。一方で、厚生労働省が2026年2月に公表した指針では、他の事業主が雇用する労働者等からの相談に応じる努力についても言及されており、業務委託先のオペレーターであっても、発注元企業の業務に起因してカスハラ被害が生じる場合には、発注元が対応方針の提示・情報共有・エスカレーション時の連携などに配慮することが望ましいと考えられます。
実務上は、BPO契約書において、カスハラ該当時の対応方針、対応打ち切り基準、エスカレーションフロー、対応ログの共有範囲などを明記しておくことが推奨されます。委託先任せにせず、発注元としての責任範囲を明確にしておくことが、法対応とオペレーター保護の両面で重要です。
カスハラ対策は「入れて終わり」ではなく、効果測定と継続改善が重要です。主な測定指標としては、以下のようなものが挙げられます。
これらを定期的にダッシュボードで可視化し、経営層へ報告することで、カスハラ対策を経営課題として継続的に改善していく土台になります。
2026年10月に施行される改正労働施策総合推進法により、カスハラ対策は事業主が講ずべき「雇用管理上の措置義務」として位置づけられました。パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントと同様の枠組みで義務化されるため、すべての事業主に対して、方針の明確化と社内周知、相談窓口の設置、発生時の迅速な対応、再発防止に向けた取り組みが求められます。
施行日までに、社内方針の明確化、相談窓口の設置、対応マニュアルの整備を進めておく必要があります。義務化以降は、対応の遅れや不備が行政上の指導対象となる可能性もあります。
地方自治体レベルでも、東京都が2025年4月に「カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行するなど、対策の動きが広がっています。所在地の自治体条例もあわせて確認しておくと安心です。
まとめ:カスハラ対策は仕組み化することで現場と企業を守る
カスハラは、個人の対応力や忍耐力で乗り越えるべき問題ではありません。組織として向き合い、仕組みとして対応する必要があります。法改正の施行まで残り約5か月となりました。今この時点で体制づくりに着手することが、現場を守り、企業を守る最も確実な方法です。
カスハラ対策で重要なのは、担当者の我慢に頼らず、判断基準・記録・共有・エスカレーションを仕組みとして整えることです。これにより、法対応だけでなく、離職防止や顧客対応品質の維持にもつながります。
そのうえで、複数チャネルの履歴管理や対応の標準化を進めるには、Zendeskのようなツールの活用も有効です。対応の一元管理や自動化、ナレッジ共有を同じ基盤で運用できるため、属人化の解消と応対品質の安定化を後押しします。
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出典
法令・公的指針
自治体(条例・指針)
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