
社内問い合わせ対応業務を効率化するために社内FAQを設置したが、うまく社員に活用されずに思ったように問い合わせ件数が減少していないという問題が起きていませんか。この問題を解決しないと、社内からの問い合わせを受ける総務、経理、人事、労務、法務、社内ヘルプデスクといった、いわゆるバックオフィス部門の業務効率化が進みません。
なぜ社内FAQが活用されないのか、その課題・理由を確認し、社内FAQの活用で問い合わせ件数を減らすためにはどのように運用すべきかのポイントについて解説します。
社内FAQの活用が進まない課題と理由
社内FAQの活用が進まない大きな理由の1つに「作って終わり」にしていることが考えられます。社内FAQサイトが多くの社員に利用されるには、FAQを常に更新・追加して利用価値を高めるとともにFAQの価値の周知や利用の促進を図って、「まずFAQを見る」という文化を社内に根付かせる必要があります。FAQの存在が周知されて利用価値が高まれば自然に利用されていきますが、そこに持っていくまでの主な課題は以下です。
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社内FAQの目的や存在が社員に浸透していない
社内FAQの目的や存在が浸透していなければ利用されません。社内FAQは利用者の意見や要望、利用頻度などのフィードバックが多いほど、それを反映していくことで利用価値の高いFAQになっていきます。そのため、目的や意義を社員に伝え、利用を促進させることが必要です。
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自分で調べるより質問する方が楽で早いと思い込んでいる
社内FAQの目的や意義を浸透させないと、自ら調べるより「聞く方が簡単」という意識が芽生えて利用が進みません。また、「聞く方が簡単」という意識のままでは、聞かれる方の負荷が考慮されないため、企業全体としての業務効率化、生産性の向上がいつまでもできません。
その意識を改善するには、バックオフィス部門の問い合わせ対応業務の負荷が重くなれば全社的な損失につながるということを、社内全体に浸透させなければなりません。
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必要な情報を見つけにくい、見つけられない
FAQで必要な情報が見つからなければ、いくら社員の意識を高めてもFAQの利用は進みません。必要な情報を見つけにくい主な課題は、「情報はあるが見つけられない」と「そもそも必要な情報がない」の2つです。
「情報はあるが見つけられない」という課題は、以下に挙げるような検索性や操作性の悪さのせいで利用するモチベーションが高まらないことです。
・キーワード検索のヒット率が低いうえ、関連する適切な情報のサジェストもない
・カテゴリー分けができていない、または適切ではないので情報が見つけにくい
・直感的に操作できないが、操作するためにマニュアルをわざわざ読む気が起きない「そもそも必要な情報がない」という課題は、必要なFAQの追加、更新が進まないためで、その主な理由は以下です。
・追加、更新する作業者が曖昧になっている
・作業者を設置しても、追加、更新するプロセスやルールが定められていない
・その結果、FAQ利用結果の分析や利用者のフィードバックによる効果的な情報の追加、更新ができていない
・タイミングや頻度のルールが曖昧なために、追加、更新が遅れる
・作業が面倒なために追加、更新が遅れる「必要な情報を見つけにくい、見つけられない」という問題では、上記の2つの課題を解決しなければなりません。
従業員に定期的にFAQを更新してもらうためには、直感的に記事を作成できるFAQシステムが必要
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情報に抜けや漏れが多く役に立たない
必要な情報を見つけられても、その内容の品質が低いとFAQだけでは解決できないので、問い合わせは減少しません。検索されても、なぜ問題が解決しないのかを分析、把握して、必要な情報を加えて充実させなければなりません。また、検索しても適切な情報がヒットしないようであれば、情報の追加が必要です。
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新しい情報がなく、古い情報が残り続けている
時間の経過とともに情報が追加、更新されないと役に立たないだけでなく、問い合わせ者が間違った情報に基づく判断、行動をしてしまうリスクが高まります。また、古くて使えなくなった情報が残り続け、それが増えると検索しづらくなります。
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システムの機能が不足している
FAQサイトの構築、運用にはシステムの導入が必要ですが、機能が不足していると構築、運用の両方に課題が生じます。課題の残るFAQサイトは利用が進まず、FAQの充実を妨げます。FAQの追加、更新による充実が進まなければ、それが利用の低下につながるという悪循環が生まれて、いつまでもFAQは利用されないままになってしまいます。
社内FAQの活用を推進するために必要なポイント
FAQの活用を促進するためのポイントについて、すでにFAQを導入している場合とこれから導入する場合に分けて解説します。
すでにあるFAQを改善するポイントは以下のとおりです。
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FAQ利用状況の把握
上述の「社内FAQの活用が進まない課題・理由」に基づいて現状を把握します。
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調査・分析の実施
現状把握のために、アクセス解析をしてアクセス数、滞在時間、離脱率、問い合わせ全体に対するFAQの利用率や自己解決率、利用者の満足度などについて調査・分析を実施します。調査・分析は定期的に実施、継続的に改善を続けます。
ZendeskのFAQ分析レポートのサンプル
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FAQの利用を推進する体制づくり
現状把握のための調査・分析によって明らかになった課題を解決するための体制を整備します。また、運用のためのプロセス、ルールがない場合には、策定が必要です。
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情報のアップデートや追加でコンテンツを充実
FAQの利用促進には、まず情報の充実が必要です。テンプレートの活用で誰でも情報の追加、更新ができる仕組みを作って、情報のアップデートやコンテンツの充実を目指します。同時に、情報の内容についての改善も行います。
調査の分析結果や社員の意見を広く集め、内容を分かりやすい表現に変えて自己解決率の高いコンテンツになるように修正します。分析の結果に基づいて、利用頻度の高い情報から優先的に実施すると効果的です。
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コンテンツの整理
FAQが充実できても利用者が検索できなければ利用されないため、情報の適切なカテゴリー分け、検索性を高めるキーワードの設定などを分析結果から見直します。見直しは、使いやすさ、アクセスのしやすさ、画面の見やすさ、操作性など、利用者の視点からの意見を取り入れることが重要です。
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FAQシステムの見直し
現状利用しているシステムでは効果的なFAQサイトの構築、運用ができないという場合、システムの変更も視野にいれて検討する必要があります。
これから新たにFAQを立ち上げる際のポイントは以下のとおりです。
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FAQの導入目的の明確化
単純な問い合わせ件数の削減、幅広いナレッジ管理を意識した情報共有、社員の育成や指導の負担軽減など、主な目的を明確にします。これにより、推進体制や運用ルールの策定、システムの選定がしやすくなります。
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主な利用者の範囲を想定
FAQの導入目的によって、主な利用者、FAQの内容、問い合わせ件数や難易度、効率的な運用方法が変わる可能性があります。問い合わせ件数が多くなることが想定されるのであれば、問い合わせ管理やチャットボットとの連携をすることで、効果的に問い合わせ業務を効率化できます。
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導入目的や自社の規模に合ったシステムを導入
機能、コスト、運用・管理のしやすさ、チャットボットとの連携、情報の一元管理など、自社の導入目的や規模に合ったシステムを導入します。
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システム導入による成果指標を設定
問い合わせ件数の削減、自己解決率などの指標を設定し、現状把握のための調査の継続・分析で目標に対する評価を行い、PDCAサイクルを回してFAQを改善していきます。
社内FAQの活用で問い合わせ業務を効率化した企業の事例
Zendeskは世界10万社以上が利用するカスタマーサービスプラットフォームであり、社内FAQの構築ができる多彩な機能を有しています。Zendeskを利用して社内FAQを活用し、問い合わせ業務を効率化した事例をご紹介します。
株式会社エイチーム「グループ会社全体における社員からの問い合わせ対応の品質向上とスピードアップを推進」
株式会社Ateamは、インターネット・スマートデバイスをベースとしたサイトを企画・開発・運営する総合IT企業です。同社は、3つの柱の事業を展開しており、グループ全体の社員数が増えるとともに、社内での問い合わせ件数・種類が増加しています。
専任ヘルプデスクがない同社では、さまざまな問い合わせ先と問い合わせ手段(メール・チャット・口頭・電話など)があることによって、社員がどこにどの手段で問い合わせるべきか迷うということが発生していました。また、問い合わせの一元管理、進捗管理ができておらず、問い合わせ対応の抜け・漏れの発生や、増加する問い合わせ件数の削減ができない状況になっていました。
この状況を改善するため、「FAQサイトによる自己解決の促進」「問い合わせ窓口の一本化」および「問い合わせ状況の可視化・分析」を目標にZendeskを導入します。本格稼働が開始されたばかりで具体的な数値による効果は出ていませんが、同社は「問い合わせの自動振り分け」「問い合わせの件名の入力だけで関連するFAQ記事の提示」などの機能による効果を期待しています。
効率化のカギは自己解決率アップ 情報収集力に左右されないナレッジ活用の実現へ【株式会社DeNA】
株式会社DeNAは、ゲーム事業やEC事業を中心に事業を拡大している企業です。同社にはIT戦略部、人事部、総務部の3つの部門が連携して立ち上げた社内ヘルプデスクが存在しています。問い合わせ窓口の集約で、社員が問い合わせ先に迷うことは解決できました。
しかし、サポート業務の効率と質の両面に課題があり、メールベースでの問い合わせ対応にはかなりの手間が発生していました。その負荷の軽減には社員による自己解決を促していく必要があるとして、同社は既存のシステムに代えて社内向けにZendeskを選びました。
導入後、ヘルプセンター・FAQ構築機能を活用して問い合わせ管理をZendeskに一元化。疑問が生じたら、まずFAQを見て、自己解決できなければ問い合わせという流れが定着しつつあります。なお、Zendeskの導入直後に本社を移転した同社は、あらかじめ移転に関するFAQページを作成しました。
移転後の住所、セキュリティカードの扱い方、人事関係書類の申請など、想定されるFAQを50項目近く用意した結果、大半が自己解決されました。この結果から、FAQの強化による自己解決の促進で問い合わせが減ることを同社は実感しています。
社内FAQを改善して業務効率・生産性向上を実現
FAQを適切に活用すれば、問い合わせ件数を削減できると同時に利用者である社員もストレスなく業務を進められます。FAQをいかに活用できるかで、全社的な生産性の向上実現が左右されると言えるでしょう。社内FAQ活用のポイントは、現状の課題を正しく把握して、課題の改善を図りつつ、FAQの利用を継続的に推進していくことです。