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カスタマーデータプラットフォーム(CDP)とは?

更新日: 2023年9月7日

顧客データの収集や処理は複雑さを増すばかりです。既存のプラットフォームでは、企業がアクセスできる顧客の分析情報は限られているうえ、多くの場合、システム間で情報が一貫していません。顧客データ管理の基本的なベストプラクティスが存在しないため、企業は顧客の購買ジャーニーの全容を把握できずにいます。そこで今、カスタマーサービスチーム、営業チーム、マーケティングチームにとって重要な投資となるのが、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)です。Forbesの調査によると、CDPを効果的に使用している企業は顧客生涯価値が2.5倍高くなります。

購買ジャーニーでのタッチポイントがごく限られていた時代は、社内のチーム間で所有するデータが違っていても特に問題はありませんでした。ところが、新しいプラットフォームが登場して顧客へのアプローチ方法が増えると、顧客データに簡単にアクセスできることが強みとされるようになってきました。たとえば、顧客のニーズは何か、それにできるだけ短期間で応えるにはどうすればよいのかといったことをすばやく知る必要が出てきたのです。「CDP Report 2020」では、大企業の場合、データの送信先が中小企業と比べて20%多くなることがわかっていますが、CDPの導入率は、中小企業でも大企業でも同様に高い数値を示しています。ビジネスの成長に伴いデータが散在するようになっても、CDPを使用すれば重要なデータを統合できるのです。

消費者行動や購入履歴などの顧客データを追跡、収集できるようになれば、顧客のニーズを理解し、それに合わせてサービスを調整することもできます。たとえば、そうした顧客データの分析結果を参考に、パーソナライズされたサービスをタイミング良く提供すれば、売上の拡大やカスタマーエクスペリエンス全体の向上につながるでしょう。優れたCDPのメリットは、統合された顧客プロフィールにアクセスできることです。こうしたプロフィールには、社内のすべてのシステムに記録された最新の顧客データが反映されています。

この記事では、CDPの概要、顧客関係管理プラットフォームやデータ管理プラットフォームとの違い、そしてカスタマーサービスチーム、マーケティングチーム、営業チームに向けた活用方法をご紹介します。

カスタマーデータプラットフォームとは

カスタマーデータプラットフォーム(CDP)とは、包括的な顧客プロフィールを生成する管理システムで、これを使うことにより、営業チームからカスタマーサービスチームまで、社内全体が新しい顧客層をターゲットにしたり、既存顧客について理解を深めたり、カスタマーエクスペリエンスをパーソナライズしたりできます。

CDPは、複数のチャネルから取得した顧客データを単一のデータベースに記録して、それぞれの顧客の統合プロフィールを生成します。データは、自社のWebサイト、モバイルアプリ、SNSをはじめ、顧客とのあらゆる接点から収集されます。CDPの構造化データは、社内で利用している他のマーケティングツールに転送できるため、このデータを利用して、顧客ファーストの機能やターゲットを絞ったキャンペーンなどを提供し、顧客プログラムを改善することができます。

CDPとCRMの違い

CRMの機能

CRMは、顧客データ管理を効率化してくれるソリューションです。電話やメールの内容、連絡先といった顧客の情報をCRMに入力することで、顧客データを1か所にまとめて整理できます。また、CRMから入手した顧客インサイトを利用して、見込み客や既存顧客との会話をパーソナライズしたり、個別の営業およびマーケティングプログラミングを提供したりすることもできます。CRMは一部のタスクには役立ちますが、SNSやメッセージアプリなど、顧客とリアルタイムでコミュニケーションを取れる最新のチャネルについては、基本的な連絡先情報のようにデータが構造化されていないため、うまくデータを収集できません。

さらに、今日では扱われるデータ量がかつてないほど増えています。またCRMでは、あらゆるサポートチャネルと統合して真のオムニチャネルカスタマーエクスペリエンスを構築することは不可能です。こういった欠点が解消されたのがCDPです。CDPなら、貴重な顧客データを活用して、リッチな顧客ファーストのキャンペーンを先回りで策定できるようになります。

CRMにはないCDPのメリット

CDPは、大多数のCRMプラットフォームに不足している機能を補うように設計されており、通常のCRMツールの機能に加えて、以下のような機能も備えています。

単一の顧客データレコード:すべてのシステム間でレコードが一貫しており、所在地、IPアドレス、電話やメールの内容など、さまざまなデータポイントが収集されます。

幅広いデータ収集ポイント:通常のやり取りに関するデータだけでなく、さらに範囲を広げてSNSなどのソースからもデータが収集されます。

データ分析:手動で分析することも、ルールを作成してレポートを自動生成することも可能です。

マーケティングチャネルとの統合:メール、SNS、Webサイト、広告プラットフォームなど、マーケティングに使用しているあらゆるツールに簡単に連携できます。

チームの自律性の向上:さまざまなインテグレーションによって各システムからもれなくデータが収集されるため、チームは特別な知識がなくても独自に顧客データを分析できます。

人工知能:AIなどの新しいテクノロジーを使えば、CDPで顧客データのマイニングを行えます。Microsoftの製品管理ディレクターを務めるSatish Thomas氏は、「Futurum Tech Podcast」の中で、AIは顧客データを充実化すると述べています。「あらゆるデータを集約できることとは別に、この統合ビューを使ってAIを実行できるようにする必要があります。そうしたデータとCDPによって生成される統合ビューは、AIにとって基盤となる重要な要素になります」

UCRMとは異なり、CDPはあらゆる顧客情報をまとめて表示できるほか、マーケティングツールの自動化において重要な基本コンポーネントとなります。

CDPとDMPの違い

CDPとデータ管理プラットフォーム(DMP)は似ているものの、顧客データを収集、利用する方法が異なります。CDPは主にファーストパーティーデータを(場合によってはセカンドパーティーデータも)利用するのに対して、DMPは主にセカンドパーティーデータとサードパーティーデータを利用します。

DMPでは、匿名化された大量のデータセットが収集、管理されます。このデータセットはデータ販売企業から購入する場合もあれば、多数のユーザーから顧客データを収集して情報を匿名化している場合もあります。たとえば、FacebookやTwitterなどのSNSプラットフォームは、ユーザーデータにアクセスし、それを匿名化したうえで、SNS内で広告を展開したい広告事業者に販売しています。

CDPとDMPの使い分け

DMPは、新しい顧客層に向けた短期マーケティングキャンペーンを策定する場合に使うと効果的です。サードパーティーデータを利用することで、特定の条件(例:オンラインでの行動)では発見できなかった見込み客にブランドを売り込むチャンスが得られます。

CDPは、よりエシカルなアプローチでファーストパーティーデータを収集、整理、利用する場合に使用されます。また、既存顧客向けにパーソナライズされたマーケティングキャンペーンを策定する場合にも有効です。営業チーム、マーケティングチーム、カスタマーサービスチームが、直接的なものも間接的なものも含めて、顧客とのあらゆるやり取りから顧客データを直接入手できるようになります。
企業によっては、CDPでWebサイト訪問者の情報を追跡、収集したうえで、そのデータを基に、DMPで新しい顧客層向けの広告キャンペーンを策定するといったように、両方のプラットフォームをマーケティングに活用しているケースもあります。

CDPソフトウェアを活用して売上を伸ばす方法

見込み客をターゲットにして育成する方法としては、CRMを利用した営業戦略を構築して、営業チームの売上拡大、効率化、カスタマーエクスペリエンスの向上を図るといったやり方もあるでしょう。しかし、CDPを導入すれば、他にもさまざまな方法でカスタマーサービスチームの生産性を向上できます。

アカウントベースドセリング

アカウントベースドセリング(ABS)は、パーソナライゼーションを重視した営業アプローチです。営業チームとマーケティングチームが緊密に連携して、高価値な顧客が含まれるアカウントを成約に導きます。ABSプログラムの改善につながるCDPデータの活用方法は、主に3つあります。

1.リアルタイムのアラート通知

CDPは、顧客のオンラインでの行動を追跡して、アカウントが特定の条件を満たしていて購入の意思が強いと判断した場合には、営業担当者にアラートを自動通知します。

たとえば、ユーザーが自社のWebサイト上で以下のような行動を取った場合に、アラートを通知します。

  • 料金ページをクリックした場合
  • 一定期間内に何度も製品ページにアクセスした場合
  • 無料トライアルまたはデモに申し込んだ場合

2. 顧客との会話に役立つ情報の入手

通常、顧客へのアプローチに利用される情報は、営業チームとマーケティングチームがそれぞれ独自に所有しており、場合によっては整合性が取れていないこともあります。そうした顧客データをチーム間で共有できれば、どちらのチームも見込み客と適切かつ効果的にやり取りできるようになります。

CDPを使用すれば、営業チームとマーケティングチームが使用しているすべてのシステムのデータを集約して、売上の拡大につなげることができます。集約できるデータには、以下のようなものがあります。

  • 1つのアカウント内でマーケティングコンテンツを閲覧しているユーザーの数と、ユーザーが閲覧しているコンテンツ
  • 無料トライアルを申し込んだユーザーの連絡先と申込日
  • 既に営業担当者とやり取りしているアカウント内の連絡先(エンゲージメントやメッセージの重複を回避するため)

3.アカウントやリードの正確な見極め

CDPのデータを利用すれば、自社のWebサイトを頻繁に閲覧しているものの、コンバージョンに至っていないユーザーを特定できます。こういった情報を利用して、営業チームはターゲットにしたい顧客の詳細を確認できます。

アカウントの見極めと見込み客の獲得を効果的に行うには、以下のような方法があります。

  • 有望なWebサイト訪問者を特定し、自動送信ニュースレターやその他のメールマーケティングキャンペーンへの申し込みを促進するなどしてアプローチする
  • トライアルやデモに申し込んだ顧客が、営業担当者からの連絡を待たずに自らミーティングを予約できるようにする
  • ユーザーが閲覧したページに基づいて、ユーザーのニーズを特定する
  • キャンペーンを自動化し、カスタマイズされたメッセージやサービスを提供する

CDPソフトウェアを活用してカスタマーエクスペリエンスを改善する方法

テクノロジーの進化に合わせて、顧客はどんどん賢くなっています。今日の顧客が企業に期待しているのは、すべてのデジタルプラットフォームでシームレスかつ一貫性のあるユーザーエクスペリエンスを提供してくれることです。

CDPを使って、FacebookからZendesk Sellまで、さまざまなプラットフォームから収集したデータを統合、整理、保護すれば、一貫性があって満足度の高いカスタマーエクスペリエンスを構築できます。このデータを基に、顧客のニーズ、趣味、購入傾向、利用メディアなど、企業はあらゆる角度から顧客を理解できます。

また、CDPのルール作成機能を使用すれば、データを分析、整理して見込み客をセグメント化したうえで、プッシュ通知の作成、キャンペーンのパーソナライゼーション、シンジケーションなどを行うことができます。これにより、新しい顧客層に合わせてマーケティング戦略を調整、カスタマイズすれば、高い成果を上げることができます。

まとめ

大量のデータが手に入る今日なら、顧客データを有効に活用することで、売上の拡大やカスタマーエクスペリエンスの向上を実現できます。CRM(顧客データを1か所に集約、整理)や、DMP(大量のサードパーティーユーザーデータを処理、分析し、ターゲットを絞った広告キャンペーンの策定に利用)など、他のデータプラットフォームとCDPを組み合わせれば、営業プログラムやマーケティングプログラムを大きな成功に導くことができます。

ユーザーがWebサイトやSNSを訪問してきたら、それは見込み客について理解を深める貴重なチャンスです。優れたCDPを導入すれば、そうした見込み客に関する情報を収集できるだけでなく、すべてのチームにその情報を伝達し、社内一丸となって顧客にアプローチできます。貴重な顧客インサイトを簡単に入手して、顧客のニーズに迅速に対応できれば、長期にわたって有意義な顧客関係を築くことができるでしょう。

自社独自の顧客データベースを構築したい場合は、Zendeskのプラットフォーム製品についてご確認ください。

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