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共感力のあるCX(顧客体験)にAIが欠かせない理由

人間を人間たらしめるのは共感です。もしそれをツールによって実現できれば、より豊かで、よりパーソナルなCXの大規模な展開が可能になります。

著者: Cristina Fonseca, ZendeskのAI責任者

更新日: 2023年9月7日

顧客はそれぞれ違う人間です。顧客が変われば対応も変わります。制御できるどうかにかかわらず、さまざまな要因が顧客の感じ方に影響を及ぼすため、顧客ごとに異なるアプローチが必要です。

ツールが共感を醸成できれば、顧客がどのような瞬間にどのように感じるかに応じて顧客の体験をより良く調整できます。このことは、顧客が問い合わせの際に好みのチャネルを使えることや、単なる製品ページの表示を超えたパーソナライゼーションにつながります。AIが共感する能力を得て顧客とのコミュニケーションを柔軟に変化させることができれば、カスタマーサービスの規模拡大を容易にでき、リアルタイムに適切な対応を実現できます。最終的には、顧客とのより深いつながりを築くためにAIを役立てることができます。

Zendeskの調査によると、消費者の71%は、AIがCXをより共感的にすると考えています。

より親切で、より丁寧な対応を機械に任せるなんておかしいと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、Zendeskの調査によると、AIがCXをより共感的にすると考える消費者の割合は71%にものぼります。ツールがいつ、どこで共感力を発揮すれば体験の質を向上させるのかを知ることが大事です。

意外な共感パートナー

共感力とAIは意外な組み合わせに見えるかもしれませんが、うまく使いこなせば、この技術はよりパーソナライズされた体験の提供に大きな影響を及ぼします。Zendeskの調査によれば、「自分の感情にもとづいてAIにはコミュニケーションや会話のトーンを調整して欲しい」と回答した消費者の割合は67%にのぼります。

ただし注意も必要です。顧客の感情を検知してそれに対応することは、実際に感情を把握することと同じではありません。いら立つCXがどのような体験なのかをAIが知っている必要はなく、知っているかのように振る舞うべきでもありません。AIが知る必要があるのは、いら立っている顧客と接する際にどうするべきかということです。

聞くことと感じることにはほとんど違いはありません

顧客は、AIが自分の話を聞いて問題を解決してくれることを求めているのであって、自分の体験を知っているかのように振る舞うことを求めているわけではありません。適切なやりとりと適切でないやりとりの例を以下に紹介しましょう。

顧客の声をよく聞いて解決策を提案するチャットボット:

「お怒りのことと存じます。ご不便をおかけして誠に申し訳ございません。なにかお役に立てることがあればお知らせください。返金手続きや、担当者による更なるサポートをご希望でいらっしゃいますか?」

顧客に同情の気持ちを表明しようとするチャットボット:

「お怒りはごもっともです。大切なご注文の品が時間通りに届かないなんて、ひどい話です」

Zendeskの調査では、消費者の約4人に3人がデジタルチャネルでは自分の気持ちが無視されることが多いと感じていることが明らかになっています。そこでツールによる共感が重要な役割を果たします。AIが顧客の行動の変化を検知して対応することで、企業はより能動的に顧客の声に耳を傾けて、状況に応じた解決策を提示したり、必要であれば人間の担当者に対応を引き継いだりすることができます。

消費者の約4人に3人がデジタルチャネルでは自分の気持ちが無視されることが多いと感じています。

顧客が何を考え、感じ、実行しようとしているかをより深く理解できれば、サポートチームは個々の顧客のリアルタイムのニーズに応えることができます。これによって、企業は、過去の取引関係を押し進めて、より深く親密な信頼関係を築くことができます。

人間に絶えず最新情報を伝えることが重要

より共感的な体験を促進するAIのプラスの効果については、これまでいくつもの調査結果が発表されています。ただし、AIにすべてを期待することはできず、期待すべきでもありません。AIが果たすべき役割を慎重に検討して限定しておけば、顧客に対して良くない結果をもたらすことはありません。

AIが直ちに人間の担当者へ引き継ぐ必要がある場面は常に存在します。そのため、サポート担当者は適切なトレーニングを受け、優れた対応力を維持する必要があります。モデルとなる人間の対応の質が落ちれば、それを学習するAIは顧客の感情のシグナルを読み違えるようになり、不正確または不適切な対応をする可能性が生じます。

AIに適した役割の例

AIは便利です。ただし使用方法を誤ると、よりパーソナライズされた共感的な体験を提供する能力を十分に発揮できなくなるおそれがあります。以下はAIの活用が相応しいケースとそうでないケースの例です。

  • 顧客心理をリアルタイムで検知する
  • 顧客の考え方や感じ方の変化に合わせて会話のトーンや回答内容を調整する
  • 不満を抱える顧客や複雑な問題を人間のサポート担当者に引き継ぐ
  • 顧客心理や問題の種類に応じた解決策を提供する
  • 企業が顧客の不満の原因となる問題やトピックを特定できるようにする

  • 人間の感情を再現したり、共有しているように振る舞ったりする
  • 複雑な問題や激怒している顧客に一方的な対応をする
  • 多様な人間の感情や顧客のニーズに対して、画一的な返答を自動的に行う

AIを利用することの効果は、そのAIが学習したデータの質や量で決まります。ZendeskのAIは、何十億もの実際のカスタマーサービスデータにもとづく顧客心理の堅牢なライブラリを使用した、学習済みのAIです。それでも、必要なときにいつでも人間の担当者に相談できる安心感に代わるものはありません。実際、「自分の感情の変化に応じて、AIから人間の担当者へ自動的に引き継いでもらいたい」と回答した顧客の割合は81%にのぼります。

AIが果たすべき役割を慎重に検討して限定しておけば、顧客に対して良くない結果をもたらすことはありません。

ZendeskのAIは顧客心理を分析することで、顧客の現在の感情(ポジティブまたはネガティブ)を正確に判断することができます。また顧客が使用する言語の種類や、メッセージに大文字や感嘆符(!)が複数用いられているかなどの重要な感情のシグナルを検知します。顧客が解決策を見い出すために何度も連絡を取ろうとしていることを示す言葉やフレーズは、人間のサポート担当者が介入する必要があることを示しているかもしれません。

どの場合でも、顧客は自分が必要とする回答を確実に得られれば、問題を速やかに解決できます。

パーソナライゼーションに欠かせない貴重なツール

顧客は人間です。どんなやりとりでもそれがどう進むかを予測することは難しいでしょう。しかし顧客に「自分は受け入れられている」「自分の声は相手に届いている」と感じてもらう能力は、顧客が対峙しているのが人間のサポート担当者であろうとボットであろうと、着実に上がっています。

顧客が今どのように感じているかをリアルタイムで確認することで、よりパーソナライズされた当意即妙の体験を提供できます。それは、より共感的で人間味のあるものです。それを可能にするツールが共感的ではなく人間味もなくても。

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