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「AIチャットの満足度は90%以上」 東京電力エナジーパートナーが顧客接点をデジタル変革した成果は?

発行日: 2021年6月16日
更新日: 2021年6月16日

コロナ禍で外出自粛が広がったことで、企業の顧客接点は急速にオンライン化が求められるようになった。それに伴って顧客のニーズも変化し、オンライン上でのCX(カスタマー・エクスペリエンス)を重視する傾向が現れている。

世界的なトレンド調査によると、新型コロナの流行を機に企業への問い合わせは週平均で20%上昇した。また、日本の顧客は一度でもCXに不満を感じると、61%は競合他社へ切り替えると回答。世界平均は50%なので、特に日本ではCXの不満が離脱に直結しやすいことが分かった。

しかし、「自社が1年前に比べてCXを優先した」と回答したCXマネジャーの割合は、世界平均が63%に対して日本はわずか約25%。調査対象国の中で圧倒的最下位だった。

電話やメールなどを使った従来のサポート体制のまま、現場の対応数を増やそうとするのは根性論であり、抜本的な解決にはならない。増加する問い合わせに対応できず待ち時間が伸びれば顧客満足度は低下し、ひいては顧客離れにつながる可能性は高いだろう。

顧客接点のオンライン化を最適化するには、デジタルを活用した顧客接点の設計が最重要課題だ。従来の手法の延長線ではなく、CX向上のための抜本的なCX設計を構築する必要がある。

そこで、一足先にCX改革を実行したのが東京電力エナジーパートナーだ。同社は電話のみで運用してきたカスタマーセンターをオムニチャネル化し、お客さまの利便性向上を目指した。その結果、顧客満足度や業務効率が大きく向上したという。同社DX推進室の飯塚孝高氏が取り組みを紹介する。

ゼロベースでオペレーション部門を業務変革

東京電力エナジーパートナーは東京電力グループの一事業会社で、電気・ガス小売事業を担う会社だ。2016年、電力の小売全面自由化により競争が激化し、同社も料金プランやサービスのさらなる充実が求められるようになった。

そこで、2019年7月にオペレーション部門の業務変革を推進する専門組織を発足。飯塚氏を含めてわずか3人という小規模な組織だったが、既存の見直しではなくゼロベースからの創造が求められた。また、従来のスクラッチ開発ではなく、先進的ソリューションを柔軟に組み合わせる手法が取られた。

「新たな環境をスピーディーに構築することで、既存の業務やシステム制約の影響を極小化する狙いがありました。そうやって既存環境から新環境へ、段階的に業務をシフトしていきました」

同年10月、スピーディーなCX変革のため、同社はクラウド型のカスタマーサポート・サービス管理システム「Zendesk」を導入した。20年4月には全社的なDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するDX推進室を社長直下に設立。販売力の強化やオペレーションのさらなる効率化の実現を目指している。

現在、同社がZendeskで扱うサポート件数は、AIによる自動応対を含むと月間数十万件にのぼる。2021年3月時点で、カスタマーセンター4拠点、チャットセンター2拠点、オペレーター数百人と大規模にZendeskを活用している状況だ。

しかし、以前はサポートチャネルが電話しかなく、オペレーターの要員以上のお問い合わせが入るとお客さまをお待たせしてしまっていた。また、対応業務は、自由化以降どんどん複雑になる一方、オペレーターの効率化に必要なシステムとの連携ができない状態だった。

そこで、Zendeskを中心としたカスタマーサポートシステムを1年かけて構築した。まず、電話以外にチャットやFAQページなどのサポートを用意しオムニチャネル化。電話は自社の電話設備から、Amazon Connectに切り替え、Zendeskを連携させ柔軟な対応を可能とした。さらに、ZendeskとIBM WatsonやGoogle Cloudの音声認識など先進的なAIサービスを連携し、全てをZendeskで統合管理するようにした。



「今やオムニチャネルの統合は当たり前になってきました。そのうえで、Zendeskの3つの優れたポイントを評価しています。具体的には、強力なAPI連携、直感的に操作できるユーザーインタフェース、複雑なビジネスロジックへの対応です」

これらのポイントは実際の業務でどのように活用されているのか、詳しい事例をもとに紹介しよう。

AIを活用したFAQ検索が大活躍

公式サイトのFAQページは、顧客のセルフサービスを支援するための重要なチャネルとなる。しかし、同社のサービスは複雑化しており、顧客が目的のFAQを見つけられないという課題があった。

そこで、FAQによるセルフサービスを拡大するため、検索機能をZendeskを経由してWatson DiscoveryとAPI連携。検索ワードの意図に対するFAQごとの関連性をAIが計算し、関連性が高い検索結果を表示できるようにした。その結果、現在東京電力エナジーパートナーのFAQページは月間100万回閲覧されるようになった上、検索結果の0件ヒット率が50%から10%にまで改善された。

ネクストステップは満足度の上昇に向けたFAQコンテンツの改善だ。Zendeskを使ってフィードバックコメント用のフォームを作成し、コメントが届けばリアルタイムでSlackに通知が届くよう設定。それを見た社員が迅速に改善対応できるようなフローを構築した。

また、FAQは顧客だけでなく社内のオペレーターも必要になる。そこで、顧客向けFAQと社内FAQのナレッジマニュアルを統合しまとめて運用することで、オペレーターは全ての情報の中から、AIによる検索結果を確認できるようになった。検索結果に対しては、役に立ったかどうかのフィードバックができる機能をZendesk上に作成することで、検索精度を継続的に向上させていく仕組みを構築した。


FAQ以外には、電話に代わるチャネルとしてチャットを採用し、Webサイト上に表示するウィジェット形式のチャットとアプリでのチャットを導入した。顧客の契約情報に基づいた対応をするため社内システムと連携し、対話はAIのWatson Assistantが行う。AIとオペレーターのシームレスな切り替えや、1人のオペレーターが同時に複数対応する環境を構築したため、スピーディーな受け付け対応ができるようになった。

その結果、電話受け付けと比較するとオペレーション効率は2倍に、顧客満足度は1.3倍に向上し、90%を超えるようになった。


効率化の背景には、Zendeskの機能をフル活用した面も大きい。例えば、ショートカット(定型文)機能による短文化だ。チャット機能を導入する際、電話のスクリプトをチャットにも流用しがちだが、飯塚氏は「誰もチャットの小さい画面で、電話と同じボリュームの長文を読みたくないですよね」と話す。

「チャットは小さな画面でメッセージをやりとりするため、少しでも文字数を減らす必要があります。その結果フランクなメッセージになり、お客さま満足度が低下する懸念がありましたが、検証の結果、なんとお客さま満足度が上昇したのです」

短文化によってチャット1件あたりの処理時間は5%短縮した。顧客にとっても気楽に返信しやすい雰囲気が生まれ、企業側だけでなく顧客側が送るメッセージも短文化できたことでお客さま満足度が上昇したと考えられる。

他にも、Zendeskのサイドカンバセーション機能を活用し、Slack上に「#教えて管理者」というチャンネルを作成。オペレーターがサポート対応中にZendesk上で、Slackを通して直接管理者へ質問できるようにした。

管理者は複数のオペレーターからの質問に同時に対応できるため、社員とマネジャー間のQA対応の迅速化につながった。将来的には蓄積されたQAを分析し、ナレッジ化して回答を自動化する試みも検討している。

顧客接点を重要視する企業こそZendeskを選択

東京電力エナジーパートナーはコロナ禍以降、緊急的にZendeskのチャットを追加していき、さらなる効率化を目指した。Zendeskを活用してオペレーターの定型的な処理を自動化したり、サポートリクエストの属性ごとに担当者を自動アサインしたりして、さまざまな自動化を推進した。飯塚氏は「開発不要で複雑なビジネスロジックを柔軟に実装できるのでとても便利」と話す。

Amazon ConnectやAIによる自動音声応答システムなど、顧客との対話のための各種AIを全て連携した電話受けも進めた。AIが音声認識による自動応答で定型的な項目を事前に確認し、Zendesk上でシームレスにオペレーターに引き継ぐようにしたのだ。AIと人間のオペレーターが協力するとはさながらSF映画のようだが、すでにそんな近未来の仕組みはZendeskで実現するのである。


このように、東京電力エナジーパートナーはZendeskをサポートシステムのハブとして中心に置き、実現したいあらゆる環境をゼロベースから構築した。飯塚氏はZendeskによって「スピード感を持ってアジャイルで実践できた」と手応えを見せる。 

「今後もZendeskといろいろなサービスを柔軟に連携し、お客さまに寄り添った新しい価値を提供していくことが重要です。お客さまとのチャネルやオペレーターを支援するAIなど、新しいサービスは次々と登場しています。それらを見極めながらスピーディーに連携してお客さまにより良い価値を提供することが、さらなるCX向上に必要不可欠だと考えています」

コロナ禍以降、顧客は商品やサービスを購入する際に企業のCXをより重視するようになったことで、CXはビジネス戦略上の重要な鍵を握るファクターになった。今や高齢者も子どもや孫とのやりとりでスマートフォンを使うケースは多く、デジタルに不慣れな高齢者を顧客に持つ企業にもサポートのオンライン対応は求められている。

東京電力エナジーパートナーも例外ではなく、優れたCXを提供するためのコミュニケーション基盤としてZendeskを採用した。事例にあったようにSlackや各種AIといった他社製アプリ・ソフトウェアとの連携にも対応するため、ニーズに応じて柔軟な設定が可能だ。ZendeskのAPI連携ならAIチャットボットやAIエンジンとの連携もスムーズに行える。

顧客管理から対応、分析までをまとめて管理でき、CXのスムーズ化、問い合わせ対応チームのサポート、ビジネス視点での運用管理、これら全ての領域を包括的にカバーするソリューションがZendeskなのである。顧客接点を重要だと捉えており、ゼロベースから新しいサポート環境を構築したいと考えている企業には、Zendeskが有力な選択肢になるはずだ。

(ITmedia ビジネスオンラインより転載)

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