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ナレッジマネジメントとは?意味や導入手順、AIの活用法まで徹底解説
ナレッジマネジメントは、情報を効率的に収集・共有するための重要なプロセスです。この記事では、基本から導入手順、AIの活用法、成功事例まで詳しく解説します。
Lauren Hakim
プロダクトマーケティング担当ディレクター
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメント(Knowledge Management、KM)とは、ビジネスに関する情報を収集・整理・更新し、顧客や従業員、パートナー企業と共有するプロセスです。ナレッジマネジメントツールを活用することで、これらのデータの保存・アクセス・更新を効率的に行えます。
こんな状況を想像してみてください。家の「なんでも引き出し」に、六角レンチや家電の取扱説明書、ペン、クリップ、その他便利な小物がぎっしり詰まっているものの、整理されておらず、目当てのものがなかなか見つからない。引き出しを閉めるのも一苦労で、役立つ道具が入っていると分かっていても、探すのが面倒で開けるのを避けてしまうーー。
これこそが、ナレッジマネジメントが機能していない組織の姿そのものです。業務の流れが滞り、顧客との関係にも悪影響を及ぼしかねません。チームメンバーは答えを探しながら手探りで問題に対処することになり、顧客満足度、生産性、そして利益の低下を招きます。
この記事では、ナレッジマネジメントの意味や重要性とともに、ツール、活用シーン、ベストプラクティスを解説し、顧客体験(CX)を向上させ、ビジネスの成功につなげるための戦略をお伝えします。
目次
- ナレッジマネジメントの基本
- ナレッジマネジメントで扱う5つのナレッジ
- ナレッジマネジメントのプロセス
- ナレッジマネジメントの主要ツール
- ナレッジマネジメントの活用シーン
- ナレッジマネジメントの7つのメリット
- AIによるナレッジマネジメントの改善
- うまくいかない典型パターン
- ナレッジマネジメント導入の7ステップ
- ナレッジマネージャーの役割
- ナレッジマネジメントのベストプラクティス
- ナレッジマネジメントの導入事例
- よくある質問
- Zendeskでナレッジマネジメントを強化
ナレッジマネジメントの基本
ナレッジマネジメントとナレッジベースの違い
ナレッジマネジメントとナレッジベースは混同されがちですが、両者は目的と役割が異なります。
ナレッジベースとは、FAQやマニュアル、トラブルシューティング記事など、知識を蓄積・整理し、利用者が参照できるようにするための仕組みを指します。問い合わせ対応の効率化や、顧客・従業員の自己解決を支援することが主な目的です。
一方、ナレッジマネジメントは、ナレッジベースを含むツールの導入だけでなく、ナレッジを継続的に作成・更新し、現場で活用され続けるための体制づくりや運用ルール、組織文化までを含めた取り組み全体を指します。
| 項目 | ナレッジマネジメント | ナレッジベース |
|---|---|---|
| 定義 | 知識を収集・整理・共有・活用するためのプロセス | 知識を蓄積・整理し、検索・参照できるようにする仕組み |
| 範囲 | 体制構築、運用ルール、組織文化を含む全社的な取り組み | ツール・システムとしての機能 |
| 目的 | 業務効率化、品質向上、競争力強化 | 情報の検索性向上、自己解決の促進 |
| 対象 | 形式知・暗黙知を含むあらゆる組織知識 | 文書化された形式知(FAQ、マニュアル等) |
| 関係性 | ナレッジベースを含む上位概念 | ナレッジマネジメントを実現する手段のひとつ |
DX時代にナレッジマネジメントが求められる背景
DXの進展による市場環境の急激な変化により、ナレッジマネジメントの重要性は一層高まっています。その背景には3つの要因があります。
データの戦略的活用の必要性
ビジネスを成功させるには、業務ノウハウの活用だけでは不十分です。顧客の購買履歴や問い合わせ内容、製品の利用状況、市場トレンド、過去のプロジェクト事例など、組織内外には膨大な情報が存在します。これらを統合して活用することで、より精度の高い意思決定や、顧客への価値提供が可能となります。
特にカスタマーサービスの分野では、スピードが重視される傾向が年々強まっています。ZendeskのCXトレンドレポート2026年版によると、58%の消費者が「サービス全体のスピードを、1年前より重要視するようになった」と回答しており、88%の消費者が「素早い応答時間に対する期待は、1年前と同じかそれ以上になっている」と答えています。こうした環境下では、担当者個人の経験や記憶に依存した対応では限界があり、過去の問い合わせ履歴や対応ノウハウを整理・共有するナレッジマネジメントが不可欠といえるでしょう。
人材流出によるナレッジの喪失
転職やジョブ型雇用の一般化により、人材の組織間移動が活発化しています。ベテラン社員の退職時に、長年培ってきた業務ノウハウや顧客との関係性が失われるリスクが高まっており、個人の頭の中にある知識をいかに組織の資産として定着させるかが課題となっています。
リモートワークの普及
働き方の多様化により、従来のオフィスでの「隣の席で聞く」「先輩の仕事を見て学ぶ」といった自然な知識の共有が困難になっています。場所や時間の制約を受けずにアクセスできるナレッジベースの整備が、リモート環境下での組織の生産性を左右する重要な要素となりつつあります。
ナレッジマネジメントで扱う5つのナレッジ
ナレッジには5つの種類があり、いずれも企業の効率的な運営に欠かせない役割を担っています。
- 形式知(Explicit knowledge)とは、体系化された具体的な情報であり、文書化、共有、学習が容易なものを指します。標準業務手順書(SOP)やマニュアルなどが代表例です。
- 実践知(Implicit knowledge)とは、習得した形式知を実際に応用することで身につく知識です。たとえば、Web会議ソフトの使い方を学んだ後、実際に顧客とのミーティングで活用するケースが該当します。
- 経験知(Tacit knowledge)とは、経験や直感を通じて得られる情報です。たとえば、ある顧客が注文前に野球の話をするのが好きだと把握しているような、言語化が難しい知識がこれにあたります。
- 宣言的知識(Declarative knowledge)とは、事実に関する情報や不変の原則を指します。会社の設立年月日などが該当します。
- 手続き的知識(Procedural knowledge)とは、何かの実行方法を説明する情報です。新しいデバイスでメールを設定する手順を解説したハウツー記事などが例として挙げられます。
効果的なナレッジマネジメントでは、特に言語化が難しい経験知(暗黙知)を形式知に変換し、組織全体で活用できる形に整備することが求められます。これらのナレッジを収集・体系化し、従業員や顧客と共有することがナレッジマネジメントの基盤となります。
ナレッジマネジメントの対象範囲
現代のナレッジマネジメントでは、社内向けだけではなく、社外の多様なステークホルダーを対象にナレッジの共有・活用を行います。
社内向け(従業員)の主なナレッジ:業務マニュアル、営業ノウハウ、成功事例・失敗事例、新人教育・スキル開発のための研修資料、社内の手続き・制度
社外向け(顧客)の主なナレッジ:製品マニュアル、FAQ、自己解決を支援するチャットボット
パートナー向け(協力会社・代理店)の主なナレッジ:販売マニュアル、技術仕様書・サポート手順、ブランドガイドラインやマーケティング資料
ナレッジマネジメントのプロセス
ナレッジマネジメントを全社的な文化として根付かせるには、まず正式なプロセスを構築する必要があります。以下に5つの主要ステップを示します。
- ナレッジの特定:組織全体でアクセス可能にすべき既存のナレッジと新規ナレッジを洗い出します。
- ナレッジの整理:体系化(コード化)とも呼ばれるこのステップでは、専門家へのヒアリング、情報のカテゴリ分け、既存のナレッジソースへのタグ付けなどを行います。
- ナレッジの保存:収集した情報の保存方法を決定します。ナレッジベースやイントラネットなどが選択肢として挙げられます。
- ナレッジの共有:情報の普及活動として、社内外でナレッジを流通させるステップです。データへのアクセス手段を整備し、関係者にその存在を周知する必要があります。
- ナレッジの更新:パーソナライゼーションを活用し、情報へのアクセスや配信をカスタマイズするステップです。
効果的なナレッジ共有プロセスを構築することで、利用者は価値あるナレッジにアクセスでき、全員が情報の充実と継続的な改善に貢献できるようになります。
ナレッジマネジメントの主要ツール
ナレッジマネジメントツールやプラットフォームには、顧客と従業員に必要な情報をスケーラブルかつ効率的に提供する機能が求められます。以下に、情報の収集・整理・保存を迅速かつ正確に行える主要ツールを紹介します。
- ナレッジベース:企業はナレッジベースソフトツールを従業員向けと顧客向けに最適化でき、組織のナレッジへのアクセス、新規記事の作成、古くなったコンテンツのフラグ付け、顧客への記事レコメンドなどに活用できます。カテゴリやタグによる整理や全文検索に強みがあり、自己解決を促進します。
- 文書管理ストレージ(DMS):PDF、画像などのデジタル文書を安全な中央集約型ストレージに保存し、ユーザーアクセスを制御するシステムです。フォルダ階層での整理や詳細なアクセス権限の制御、バージョン・更新履歴の管理に強みがあります。
- コミュニティフォーラム:顧客と企業がオンライン上で交流し、情報を共有したり、質問を投稿したり、アドバイスやサポートを提供したりする場です。ユーザー同士の質問・回答を通じて自然とナレッジが形成され、過去の議論が資産として蓄積されます。
- イントラネット:従業員専用のアクセス環境で、顧客データの取得、インサイトの獲得、部門間での専門知識の共有、CXの向上を実現します。
ナレッジマネジメントツール選定のポイント
組織の規模や目的に合わせて、最適なナレッジマネジメントツールを選定することが重要です。以下の観点から総合的に評価するとよいでしょう。
- 必要な機能の有無:社内の情報共有、顧客向けFAQ、社員教育など、主な用途を明確にすることで、必要な機能が見えてきます。カスタマーサポート向けなら外部公開機能やCRM・チャットボット連携、社内向けなら権限管理やバージョン管理など、目的に応じて求められる機能は異なります。
- 使いやすさ:社員が積極的に活用できる直感的なインターフェースが重要です。
- セキュリティ機能:社外秘情報の管理に必要な権限設定やアクセス制限が可能かどうかを確認します。
- 拡張性:組織の成長に合わせて機能を拡張できるかどうかも重要な検討点です。
- AI・自動化機能:検索精度の向上やAIチャットボットなど、高度なナレッジ共有や活用を助ける機能が搭載されているかを確認します。AIによる自動応答や関連記事の提案機能は、顧客の自己解決率を大幅に向上させます。
ナレッジマネジメントの活用シーン
ナレッジマネジメントは、さまざまな業界や部門で多様な形で活用されています。以下に主な活用シーンを紹介します。
- カスタマーサポート:FAQページ、トラブルシューティングガイド、製品マニュアルを備えたセルフサービス型サポートコンテンツを提供することで、顧客が自ら問題を解決でき、問い合わせの削減につながります。AIチャットボットや自動応答など、AIが回答を生成するためのベースとしても活用できます。
- 従業員オンボーディング:新入社員および既存の従業員がSOPやその他の重要なトレーニング資料にいつでもアクセスできる環境を整備します。入社手続きや経費精算、休暇申請などの手順書を整備することで、早期戦力化に役立ちます。
- スキル開発:短時間で学べるモジュールやトレーニングリソースを全従業員に公開し、継続的な学習と成長を促進します。
- 営業活動:提案資料のテンプレート、業界別の導入事例、よくある質問への回答集、競合比較資料などを共有することで、経験の浅い営業担当者でもベテランと同等の提案が可能になります。成功した商談のポイントや失注理由の分析を蓄積することで、組織全体の営業力が底上げされます。
- 製品イノベーション:エンジニア、デザイナー、その他のステークホルダー間でナレッジ交換と共同創造を促進し、イノベーションの創出と製品開発サイクルの短縮を実現します。設計ノウハウ、過去のトラブル事例とその対処法を一元管理することで、同じ問題の再発を防止できます。
- 課題解決:類似の課題に対する実証済みのソリューションや成功事例を部門間で共有することで、ナレッジの再活用と根拠に基づく意思決定が可能になります。
各組織は、ナレッジ共有とコラボレーションがパフォーマンスに最も大きな影響を与える領域を特定し、独自の活用シーンを構築できます。
ナレッジマネジメントの7つのメリット
ナレッジマネジメントを導入することで、従業員と顧客の双方に以下のメリットがもたらされます。
- サービスの効率化:ナレッジマネジメントツールにより、サポート担当者は必要な情報を素早く見つけられるようになり、顧客のセルフサービスも容易になります。顧客が単純な問い合わせや繰り返し発生する質問を自己解決できるため、問い合さえの削減に寄与します。
- 従業員の成長促進:すべてのチームメンバーがナレッジベースにアクセスし、特定の担当者や部門に頼ることなく必要な社内情報を入手できます。熟練社員の持つ暗黙知を誰もが活用できる形式知に変換できるため、新人の早期戦力化に役立ちます。
- 顧客オンボーディングの強化:KMツールを活用することで、顧客は製品やサービスの機能を最大限に引き出す方法を迅速に把握し、早い段階から価値を実感できます。
- 24時間対応サポート:顧客はAIエージェント、FAQページ、ヘルプセンターを通じて、いつでもセルフサービスサポートを利用でき、人間のエージェントを待たずに回答を得られます。
- 社内コラボレーションの活性化:チームメンバーが協力して社内ドキュメントを作成し、新製品を開発し、共通の目標に向けて足並みを揃えられます。
- データセキュリティの強化:高機能なナレッジマネジメントツールでは、データアクセス権限のカスタマイズや、社内外のナレッジ更新時の本人確認が可能です。
- 組織全体の問題解決力向上:成功事例や失敗からの学びを組織的に蓄積することで、同様の課題に対してより効果的な対応が可能になります。個人に依存しない強固な組織基盤を構築することで、人材の異動や退職による知識流出のリスクを最小限に抑えられます。
CXトレンドレポート2026年版によると、86%の顧客が「迅速で正確な対応は購入意欲に大きく影響する」と回答しており、ナレッジの活用が売上にも寄与することがわかります。また、73%のサポート担当者は「過去のやり取りを一目で把握できることで対応の質が向上する」と回答しており、蓄積されたナレッジの価値は現場で強く実感されています。
実際に得られるメリットは、ナレッジマネジメント施策の範囲と導入方法によって異なります。
AIによるナレッジマネジメントの改善
AI技術の進化により、ナレッジマネジメントの可能性は大きく広がっています。AIは以下の領域でナレッジマネジメントを改善します。
- タスクの自動化:ナレッジ記事の分類、タグ付け、古くなったコンテンツの検出など、手動で行っていた作業を自動化します。これにより、ナレッジの管理者(ナレッジマネージャー)はより戦略的な業務に集中できます。
- 検索精度の向上:自然言語処理(NLP)を活用することで、ユーザーが入力したキーワードだけでなく、意図や文脈を理解した検索結果を提供します。「問い合わせがうまくいかない」といった曖昧な検索でも、適切な記事を提示できます。
- パーソナライズされたレコメンド:ユーザーの閲覧履歴や役割、過去の問い合わせ内容に基づいて、関連性の高いナレッジを自動的に提案します。
- ナレッジギャップの特定:検索ログやユーザー行動を分析し、「検索されているのに該当記事がない」「閲覧数は多いが評価が低い」といったナレッジの不足や品質課題を可視化します。
- AIエージェントによる自動応答:AIエージェントがナレッジベースを学習し、顧客からの問い合わせに対して即座に適切な回答を生成します。24時間対応が可能となり、サポートチームはより複雑な課題解決に注力できます。
世界10万社以上が導入するZendesk AIは、これらのAI機能を統合したサポートソリューションです。AIエージェントが過去の対応履歴やナレッジベースを学習し、顧客からの問い合わせに対して即座に適切な回答を提供します。また、Copilotはサポート担当者の業務を支援し、既存のナレッジベースコンテンツを分析したり、完成度の高い記事を生成したり、多様な読者層に合わせて文体を調整したりできます。
うまくいかない典型パターン
ナレッジマネジメントでは、運用や設計の段階でつまずき、十分に活用されないまま形骸化してしまうケースも少なくありません。ここでは、よくある失敗パターンを紹介します。
ナレッジが増えない・更新されない
ナレッジマネジメントが定着しないケースとして多いのが、「記事がなかなか増えない」「作成後のナレッジが更新されない」という状態です。誰がナレッジを作成・更新するのかが曖昧なまま運用が始まったり、更新のタイミングや判断基準が共有されていなかったりすると、日常業務のなかでナレッジ作成が後回しにされやすくなります。その結果、情報が古くなり、「信用できない」と感じられてしまい、ナレッジ活用が進まない要因となります。
現場で「探しづらい・使いづらい」
ナレッジ自体は存在していても、現場から「どこに何があるか分からない」「検索しても見つからない」と感じられてしまうケースも少なくありません。カテゴリやタグの構成が実際の業務や利用者の言葉とずれていたり、検索されやすいキーワードと記事タイトルが合っていなかったりすると、必要な情報にたどり着けず、ナレッジが使われなくなっていきます。
サイロ化する(部門ごとに別ツール・別管理)
部門ごとに異なるツールや管理方法でナレッジを保有していると、「どこを見ればよいのか分からない」「閲覧権限の違いで参照できない」といった状況が生まれやすくなります。こうしたナレッジのサイロ化が進むと、組織全体で知識を共有・活用することが難しくなり、ナレッジマネジメントそのものが形骸化してしまいます。
ナレッジマネジメント導入の7ステップ
ナレッジマネジメントを組織に導入するための手順を解説します。
Step 1:課題と目標・KPIの明確化
ナレッジマネジメントの導入にあたって、まず現状の課題を具体的に整理します。属人化による対応品質のばらつき、二重対応や手戻り、必要な情報が見つからないといった課題が典型的な例です。これらを踏まえ、導入の目標・KPIに落とし込みます。一次解決率や自己解決率の向上、対応時間の短縮、CSATの改善、問い合わせ件数の削減などがKPIとして挙げられます。
Step 2:推進体制の構築とルール設計
次に、運用を定着させるための体制構築とルール設計を行います。誰がナレッジの責任者になるのか、全社で管轄するチームを設けるのか、各部門に担当者を置くのかを明確にします。あわせて、ナレッジ作成・更新に関するルールも整理します。誰が起案し、誰がレビュー・承認するのか、どのフォーマットで書くのか、見直しの頻度はどうするかといった内容を検討します。
Step 3:ツールの選定
体制とルールを前提に、自社に合ったツールを選定します。社内向け・社外向けのどちらに対応するか、検索性の高さ、権限管理の柔軟性を確認します。既存システムとの連携や、将来的な拡張性(AI検索、チャットボット連携)も重要な観点です。
Step 4:ナレッジの収集・整理・公開
ツール選定後には、どこからナレッジを集めるかを整理します。既存のマニュアルやFAQ、社内のやり取り、問い合わせ履歴、ベテラン社員へのヒアリングなどが主な情報源です。すべてを一度に整備しようとせず、問い合わせ頻度の高いテーマから優先的に記事化していくのが現実的です。
また、ユーザーが「どう探すか」を起点に、情報構造を設計することも必要です。製品別・機能別といった大分類でカテゴリを作り、「トラブルシューティング」「設定方法」といった目的別のタグを付与することで、多様な検索ニーズに対応できます。
Step 5:パイロット運用とフィードバック収集
いきなり全社展開するのではなく、一部の部門やチャネルで試験運用を行います。パイロット期間中は、検索キーワードやよく見られている記事、現場からのフィードバックなどを確認します。これらをもとに、カテゴリ構成やタグ、記事の書き方を見直し、運用方法を改善していきます。
Step 6:全社展開と定着化
パイロットで得られた学びを反映しながら、対象部門や利用範囲を徐々に広げます。定着させるには、オンボーディングや研修でナレッジベースの使い方を案内することも必要です。「まずナレッジを検索する」という流れを業務プロセスに組み込むことで、利用が習慣化されます。
Step 7:利用状況の可視化と継続的な改善
全社展開後も、ナレッジは放置すると形骸化します。記事の閲覧数や検索数、自己解決率、低評価の記事などを定期的に確認します。「検索されているのに該当記事がない」キーワードがあれば新規記事を作成し、「閲覧数は多いが評価が低い」記事は内容を見直します。このような改善サイクルを回し続けることが、ナレッジマネジメントの定着には欠かせない取り組みです。
ナレッジマネージャーの役割
ナレッジマネージャーは、情報の流れを設計する存在であり、全員が適切なタイミングで適切なナレッジを入手できる環境を整える責任を担います。具体的な業務は以下のとおりです。
価値ある情報のキュレーションと整理
アクセス性の高いシステムの構築
個人と必要なナレッジをつなぐ橋渡し
ナレッジマネージャーの存在により、チームはより的確な意思決定を行い、組織のパフォーマンスと効率を高め、イノベーションを推進できるようになります。
ナレッジマネジメントのベストプラクティス
既存のナレッジを統合する場合でも、ナレッジマネジメントツールをゼロから構築する場合でも、以下のベストプラクティスを参考にしてください。
- 事前調査を行う:自社のナレッジマネジメントプロセスを導入する前に、ナレッジマネジメント施策を成功させた他社に連絡を取り、その経験やスタート時のポイントについて話を聞くことで、自社の行動計画を策定できます。
- 専門チームを編成する:プロジェクトマネージャー、コンテンツマネージャー、テクニカルライターなど、ナレッジベースの更新や、必要に応じて各領域の専門家への執筆依頼を担当するチームを編成します。
- AIを活用する:AIエージェントやCopilotなどのAIツールを使用して、既存のナレッジベースコンテンツを分析したり、完成度の高い記事を生成したり、多様な読者層に合わせて文体を調整したりできます。
- 共有プロセスを確立する:誰もがナレッジマネジメントプロセスに貢献しやすい仕組みを整え、目的と目標を明文化したミッションステートメントを策定します。記事作成の負担を下げるためのテンプレート設計や、レビュー・承認フローを明確にしておくことが重要です。
- コンテンツを定期的に見直す:ナレッジマネジメントは一度設定すれば終わりではありません。製品やビジネスの進化に合わせてコンテンツが引き続き有効であるか、定期的に確認することが重要です。記事ごとの責任者の設定、更新の目安となるトリガー(期限、仕様変更、問い合わせの増加など)の設定、検索ログ・閲覧状況に基づく内容・構成の見直しを継続的に行いましょう。
- 経営層による推進体制を構築する:ナレッジマネジメントは、現場任せでは定着しにくい取り組みです。経営層が方針を示し、組織として取り組む姿勢を明確にする必要があります。
- 全社統一ツールでサイロ化を防止する:できるだけ共通のナレッジ基盤に集約し、役割に応じた権限管理を行いながら、ナレッジにアクセスしやすい状態を維持することが重要です。
ナレッジマネジメントの枠組みを構築する際には、ナレッジマネジメントコンテンツの継続的な改善を支えるツールやリソースへの投資も忘れずに行いましょう。
ナレッジマネジメントの導入事例/h2>
ナレッジマネジメントに取り組み、成果を上げている企業の事例を紹介します。NTTドコモ
NTTドコモは、メール中心の従来のコミュニケーション方式による情報共有の限界や、ナレッジの蓄積不足といった課題に直面していました。Zendeskの導入により、過去の問い合わせ内容や回答を体系的にアーカイブ化し、充実したFAQサイトを構築することに成功しました。その結果、社員の自己解決率が大幅に向上し、問い合わせ対応時間の短縮と回答品質の向上を実現しています。
【Zendesk導入事例/株式会社NTTドコモ】社内問い合わせ対応の効率化とナレッジの有効活用。Zendeskで脱メール化と新たな社内コミュニケーションによるEXを確立
Evernote
Evernoteは、優れたナレッジマネジメントを実践する企業のひとつです。検索バーを最も目立つ位置に配置し、顧客が必要な情報に素早くアクセスできる環境を整備しています。よく閲覧される記事を優先的に表示することで、自己解決を促しつつ、必要に応じて人的サポートへの誘導も適切に行うことで、顧客のスムーズな課題解決をサポートしています。
東京電力エナジーパートナー
東京電力エナジーパートナーでは、社内外のナレッジを効果的に活用し、カスタマーサービスの改革を実現しました。電話対応を中心とした従来の運用から、ナレッジベースを活用したマルチチャネルサポートへと転換を図りました。充実したFAQとAI検索の導入により顧客の自己解決を促進し、社内では問い合わせ対応のナレッジを一元管理することで、対応品質の向上と業務効率化の両立を実現しています。
【Zendesk導入事例/東京電力エナジーパートナー株式会社】未来を支え続ける柔軟性を強みに 最良のエクスペリエンスを徹底追求
よくある質問
Zendeskでナレッジマネジメントを強化
社内のナレッジマネジメントという名の「なんでも引き出し」は、整理・整頓し、継続的に改善すれば宝の山となります。ナレッジマネジメントを通じて社内の知識を一元管理すれば、顧客は自己解決しやすくなり、サポートチームの負担も軽減されます。対応品質の向上や従業員の早期戦力化といった具体的な成果をもたらすことから、企業の競争力を左右する重要な施策といえるでしょう。
近年ではAI技術の進化により、ナレッジマネジメントの可能性はさらに広がっています。世界10万社以上が導入するZendesk AIは、高度なナレッジマネジメントを実現するカスタマーサポートソリューションです。AIエージェントが過去の対応履歴やナレッジベースを学習し、顧客からの問い合わせに対して即座に適切な回答を提供します。直感的な操作性と強力な自動化機能によって、導入後すぐに効果を実感いただけます。
