- 実例から学ぶFAQページ(よくある質問)のデザインと作り方
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実例から学ぶFAQページ(よくある質問)のデザインと作り方
顧客が自ら疑問を解決するセルフサービス型サポートへの投資を検討しているのであれば、FAQページ(よくある質問)の作成にも力を入れなければなりません。ご参考として、ここでは海外の有名企業の優れたFAQページの実例をご紹介します。
更新日: 2023年11月13日

現在、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響で、多くの人がステイホームを余儀なくされる中、カスタマーサービスへのニーズが高まっています。Zendeskのベンチマーク調査によると、パンデミック以降、サポートリクエストの件数は16%も増加しました。
リクエストの増加に伴い、サポート担当者のストレスも増大しています。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」によると、業務量が増えて疲労を感じていると答えたサポート担当者の割合は、68%にのぼりました。担当者がストレスで疲れ切っていて、待ち時間も長いとなれば、確実に顧客満足度の低下につながってしまいます。
手に余るほどの量のチケット(問い合わせ)に対処するには、優れた企業にならい、セルフサービスによって顧客が自分で問題を解決できるようにしましょう。
前述のレポートでは、60%の企業が昨年一年でセルフサービスへの投資を増やしたと回答しています。その理由は明らかです。セルフサービスを導入すれば、顧客が自分で問題の解決策を探すことができ、サポート担当者に問い合わせる必要がなくなるためです。その結果、サポートチームに時間の余裕が生まれ、顧客が自力で解決できないような複雑な問題への対応に集中できるようになります。
セルフサービス用チャネルをこれから導入するという場合は、まずFAQページから作成するとよいでしょう。顧客の幅広いニーズに応えられるうえ、コストもそれほどかからず、すばやく実装できるからです。FAQは従来、基本的な質問と回答の羅列にすぎないと思われてきましたが、大規模なヘルプセンターの一部として組み込むという使い方もできます。
ヘルプセンターは包括的なナレッジベースで、顧客による問題の自己解決を後押しする場であり、ヘルプ記事を長期的に管理して、会社の成長と共に記事を増やしていくことができます。
秀逸なFAQページ8選
FAQページの作成を始める前に、まずはどのような要素を含める必要があるかを理解しておきましょう。ここでは、Zendeskが選んだユニークな特徴を持つFAQページの実例をご紹介します。いずれも、パーソナライゼーションや高度なセルフサービス機能によって、効果的で情報に富んだFAQページに仕上がっています。
1. AdEspresso
AdEspressoのFAQページでは、冒頭で別のリソースへのリンクを示すことで、顧客が問題を自己解決できるようにもうひと押ししています。画像出典:AdEspresso
広告キャンペーン会社のAdEspressoのFAQページでは、シンプルさが重視されており、記載されている質問はごく少数であるものの、高い効果を発揮しています。それぞれの質問をクリックすると、そのトピックに関する短い記事を閲覧でき、そこではさらに詳しい情報が載ったページへのリンクも貼られています。
I該当する質問がFAQページにない場合にも、ユーザーは別のリソースを簡単に見つけられます。ページ冒頭の文にあるリンクから直接、FacebookおよびGoogle向けの広告ガイドのほか、ツールやeBookなどを提供するAcademyページにアクセスできます。また、冒頭の文には、AdEspressoのお問い合わせページへのリンクも含まれています。
このように、AdEspressoのFAQページは直観的でわかりやすく、非常に有用であることから、あらゆるユーザーに好感を持たれるはずです。.
2. Airtable
Airtableの包括的なセルフサービスセンターには、ガイド、ウェビナー、ヘルプ記事、FAQへのリンクがまとめて記載されていて、高度な検索機能も提供されています。画像出典:Airtable
クラウドベースのコラボレーションサービスを展開するAirtableは、総合的なヘルプセンターの一部としてFAQを提供しています。こうすることで、顧客がサポート担当者に問い合わせることなく、自力で問題を解決できる可能性が大きく高まります。必要な答えがFAQセクションで見つからなかった場合にも、サイト訪問者はガイド、ウェビナー、ハウツー記事などのさまざまなリソースを参照することができます。
この方法は一見、顧客にとって手間がかかるように思えるかもしれませんが、AirtableはFAQをうまく活用して、顧客を適切な方向に誘導しています。FAQの回答にはおおむね、自社サイト内の役立つ記事や追加情報へのリンクが含まれているため、顧客は詳細情報をあちこち探し回る必要がありません。
3. Ancestry
AncestryのFAQページの特長は、顧客のアカウント情報やDNAの分析結果に基づいて、サポートエクスペリエンスをパーソナライズしている点にあります。画像出典:Ancestry
オンラインで遺伝子検査サービスを提供するAncestryは、DNAの分析を通じてユーザーのルーツを調査します。この点を踏まえると、同社のFAQページが高度にパーソナライズされていることも、驚くには当たらないでしょう。ユーザーがサインインした状態でFAQページを閲覧すると、アカウント情報や独自の遺伝子情報に基づいて、ユーザーごとに最適なリンクが表示されます。これは見事な戦略で、同社が顧客1人ひとりについてきちんと理解しているという印象にもつながっています。
4. DoggieLawn
DoggieLawnのFAQページでは、月曜から金曜にかけてリアルタイムのチャットサポートを提供しており、顧客が必要なときにすばやく問い合わせることができます。画像出典:DoggieLawn
DoggieLawnは、本物の芝生を使った、環境に優しい犬用トイレを販売している企業です。同社のFAQページは一見、何の変哲もないように思えます。しかし、それぞれの質問をクリックしてみると、自社サイト内の別のページやYouTubeの動画など、他のリソースへのリンクが含まれています。
DoggieLawnのFAQページで特にすばらしいのが、チャット機能に対応している点です。平日の5時から24時(太平洋標準時)の間はチャットボックスが表示され、サポート担当者にリアルタイムで質問することができます。FAQページで必要な答えを得られず、次のステップに進まなければならない顧客にとって、これは非常に優れた仕組みです。また、FAQページにチャット機能が用意されていれば、顧客は別のページに移動しなくても問題を解決できるようになります。
5. Fabletics
FableticsのFAQページでは、1つひとつの回答にアンケートと問い合わせ先の情報が含まれていて、顧客が必要に応じて簡単に次のステップに進めるようにしています。画像出典:Fabletics
Fableticsは、フィットネスやスポーツ用のウェアを扱うサブスクリプション型eコマースです。同社のFAQページの特長は、それぞれの回答に「この記事は役に立ちましたか?」といった顧客へのアンケートを添えている点です。また、その記事を役に立ったと答えたユーザーの人数も確認できるようになっています。さらに、FAQセクションのサブページにはいずれも同じフッターが使用されていて、サポート窓口の連絡先情報へのリンクが貼られています。そのため、最終的にサポートチームへの問い合わせが必要になった場合でも、顧客はページを移動せずに次のステップに進むことができます。
FableticsのFAQページのもう1つの特長は、検索バーが大きくて目立つことです。また、その下にある大きなボタンからは、カテゴリー別にFAQを閲覧できます。カテゴリーと質問を選択すると、回答を含む短い記事が表示され、そこから詳細な回答にもアクセスできるほか、サイドバーにはお勧めの関連情報へのリンクも表示されます
6. Vrbo
VrboのFAQページはすっきりとしたデザインが特徴的で、検索ボックスに文字を入力すると関連記事の候補が表示されるほか(インクリメンタルサーチ)、絞り込み機能を使うと、ユーザーのタイプに合わせて表示される内容がカスタマイズされます。画像出典:Vrbo
Vrbo(バーボ)は、バケーション用途の民泊予約サイトです。同社のFAQセクションは、顧客から特に多く寄せられる質問に基づいて定期的に変更されています。そうした質問は、「おすすめのコンテンツ」としてFAQページ中央の目立つ場所に表示されます。さらに訪問者は、検索の際にユーザーのタイプ(トラベラー、オーナー、物件管理会社)に基づく絞り込み機能を利用できます。
この機能を使用することで、各ユーザーに適した検索結果が表示されます。また、FAQページの一番下にある[お問い合わせ]ボタンに関しても、ユーザーのタイプを指定することができます。こうしたパーソナライゼーションによって、顧客ごとに適したサポートエクスペリエンスを提供でき、顧客が支援を必要としている場合にも、適切なサポート担当者を割り当てられるようになります。
7. Wandering Bear
Wandering BearのFAQセクションはユーモアにあふれ、顧客からの質問に対し、一貫して味のある回答を提供しています。画像出典:Wandering Bear
水出しコーヒーを扱う小売業者のWandering Bearは、ユーモアを交えつつ、必要な情報を漏れなく詳細に提供することで、個性の光るFAQページを実現しています。どこか風変わりなブランドイメージを持つ同社にとって、FAQページでもユーモアを発揮するのは良い戦略と言えます。会社の個性をアピールできるだけでなく、問題の解決策を探し回ってイライラしている顧客の気持ちを和ませる効果も期待できます。
8. Wistia
WistiaのFAQページは、フローティングフッターを使用したデザインが特徴的です。ページをスクロールするのに疲れたら、フッターから目的の情報を検索したり、サポート担当者に問い合わせたりできます。画像出典:Wistia
Wistiaは、動画コンテンツのホスティングプラットフォームを提供する企業です。同社のFAQページの特長は、フローティングフッター(ページ下部の固定メニュー)によって、ページをスクロールしても常に、ページ下部にメニューが表示される点にあります。このフッターには、ページ冒頭にもある検索バーのほか、サポートチケットを簡単に送信できるボタンが配置されています。このため、サイト訪問者はページ内を自由に見て回れる一方で、もしも答えを探すのに疲れてしまったら、フローティングフッターからすばやく情報の検索やチケットの送信を行えます。
効果的なFAQページを作成する方法
顧客にとって有用なFAQセクションを作成するには、基本的な質問と回答を書き連ねるだけでは十分ではありません。どの質問を含めるべきかを吟味し、だれがどのような方法で回答するかを考えると共に、顧客が探している質問が記載されていなかったケースも考慮して、その場合の次に進むべき道筋も示す必要があります。
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データを基に適切な質問を選ぶ
顧客にとって真に有益な情報を提供するには、自社のCRMデータを有効活用し、特によく寄せられる質問を全チャネルにわたって見極めたうえで、それぞれを適切なカテゴリーに分類する必要があります。
また、担当者が顧客への電話対応で非常に有意義な解決策を提供できた場合には、その回答内容を記録してもらうようにします。そんなに複雑なものでなければ、それを質問と共にFAQページに追加するとよいでしょう。.
FAQページで記載すべき質問を見極める際には、外国語を母国語とするユーザーを対象に、自社のWebサイトや製品のパイロットテストを行うのも効果的です。わかりづらい点がなかったかどうかをテストの参加者に質問することで、ブランドについて知り尽くしている社内の関係者には気づけない、客観的な意見を得ることができます。
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回答方法に関して明確なルールを決める
よく寄せられる質問が特定できたら、そうした質問にだれが答え、どのように回答するかを決定する必要があります。
この点に関するベストプラクティスは企業ごとに異なります。一部には、静的なページに一般的な質問をまとめて記載している企業もあります。前述のWandering BearやDoggieLawnは、このパターンに当てはまります。あるいはZendeskのように、自社のヘルプセンターで使用しているナレッジマネジメント用ソフトウェアとAIテクノロジーを組み合わせて、顧客のサポートに利用することも可能です。どのような回答方法にすべきかは、主に質問の解決策がどれだけ複雑かによって決まります。
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複数の解決策を提供する
質問への回答は、1、2文ほどの説明だけで終わらせずに、顧客にとってさらに有意義な情報を提供できるように工夫しましょう。チュートリアル、記事、Webサイトへのリンクを回答に含めると、関連するリソースを顧客が簡単に見つけられるようになります。
また、前述のFableticsのように、回答の最後に「この記事は役に立ちましたか?」というアンケートを添えるのも一案です。顧客が[いいえ]を選択した場合には、問題の解決に役立ちそうな類似の質問に誘導するようにします。
顧客の質問がFAQのリストに含まれていない場合には、速やかに別のサポート手段を提供する必要があります。ページ内に検索バーを配置しておくと、顧客がキーワードを使用してサイト内を閲覧し、関連情報を見つけられるようになります。
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FAQページの効果を追跡する
質問と回答をほんの少し公開しただけで、FAQページに見向きもしなくなるようではいけません。定期的に回答を充実させるための方法を考えると共に、顧客のニーズに合わせて質問の見直しを行いましょう。
回答の最後に簡単なアンケートを添えれば、回答を役に立った(または役に立たなかった)と評価したユーザーの数を確認できます。大半の人が「役に立たなかった」と評価している回答に関しては、関連リソースへのリンクを増やし、回答内容を改善する方法を検討してください。別の質問を新たに追加して、不足している情報を補うのも1つの方法です。
また、CRMの測定指標を基に、FAQページに関する目標が達成されているかどうかを確かめることもできます。FAQページが顧客の問題解決に役立っているのなら、電話による問い合わせが減少して、FAQページへのトラフィックが増えているはずです。こうした変化が見られた場合には、顧客がサポート担当者に問い合わせることなく、セルフサービスで問題を解決できているということになります。
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FAQページを見つけやすくする
顧客にFAQページを利用してもらうには、自社サイトおよび外部サイトの両方からページにアクセスしやすくする必要があります。
まずはSEO対策を行い、検索エンジンを意識してコンテンツを最適化しましょう。そうすれば、顧客が自社サイトではなく、検索エンジンから製品に関する疑問点について検索した場合でも、適切なFAQページにたどり着けるようになります。
一方、自社サイトを直接訪問した顧客への対策としては、FAQページやサポートページへのリンクを目立つ場所に配置しておくようにします。具体的には、ページ上部のナビゲーションバーに配置するのがよいでしょう。こうしておくと、担当者に問い合わせたり、チケットを発行したりする前に、顧客がFAQに目を通してくれる可能性が高まります。
FAQページそのものに関しては、FAQをわかりやすく整理し、直感的に探せるようにすることが重要です。大切なのは、顧客自身で問題を解決してもらうことであり、そのためには、シンプルで使いやすい構成にする必要があります。また、FAQの数が20を超える場合には、検索バーを追加するようにしましょう。
FAQを活用してサポート業務を効率化
優れたFAQページを作成することは、セルフサービスソリューションの実現に向けた第一歩です。FAQを最大限に活用するには、チケット用のマクロを作成して、顧客からのチャットに自動的に応答できるようにするとよいでしょう。
また、FAQページの他にも、トレーニング用の動画、コミュニティフォーラム、ハウツー記事を作成することをお勧めします。そして、複数のセルフサービス用チャネルを提供できるようになったら、次は包括的なヘルプセンターの構築に着手して、顧客による問題の自己解決を後押ししましょう。
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