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- ナレッジセンターの構築で社内のナレッジを集約・共有し効果的な活用を実現
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- ナレッジのサイロ化を防ぐために重用な3つの視点
- 先行き不透明な世界におけるナレッジマネジメントの活用法
ナレッジマネジメントとは? 意味、手法、システムを解説
ナレッジマネジメントは、各部門が情報を収集、整理、共有するうえで役立つプロセスです。この記事では、ナレッジマネジメントが重要な理由と、その導入方法を説明します。
更新日: 2023年5月13日

皆さんの会社も、知らず知らずのうちに毎年多額の費用を無駄にしているかもしれません。「Panopto Workplace Knowledge and Productivity Report(Panoptoによる職場のナレッジおよび生産性に関するレポート)」によると、非効率的なナレッジ共有が原因で発生するコストは、270万~2億6,500万ドルにのぼります。これは主に、従業員への研修プロセスでナレッジを十分に共有できていないことに起因しており、従業員が業務に必要な情報を検索したり、情報を入手できるまで待機したりしなければならず、生産性の低下につながっています。
ナレッジマネジメントは生産性と利益に影響を及ぼすだけでなく、顧客やサポート担当者の満足度にも影響を与える可能性があります。したがって、企業は社内情報を共有するためのシステムを確実に導入する必要があります。ただし、運用を開始する前に、ナレッジマネジメントの定義、利用できるツールやソリューション、自社での適切なフレームワークの実装方法を理解しておく必要があります。
目次
- 個人も組織も意識したいナレッジマネジメントとは
- ナレッジマネジメントのメリット
- ナレッジマネジメントシステムの事例
- ナレッジマネジメントのベストプラクティス
- ナレッジマネジメントのプロセス
- ナレッジマネジメントのフレームワーク
個人も組織も意識したいナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、企業が情報を収集して整理し、顧客、従業員、ビジネスパートナーなどと共有する手法、およびこうしたすべての情報を参照、追加、更新できるようにするテクノロジーのことです。
日本でナレッジマネジメントが広まった背景
ナレッジマネジメント自体は1990年代から提唱されていますが、IT化が進んだことで再び注目を集めています。日本で広まった主な理由は、働き方の変化です。
日本の雇用モデルは新卒一括採用で土台をつくり、終身雇用するのが主流です。終身雇用は、長期にわたって人材を育てられるため、社内でさまざまな知見を得られます。しかし、労働人口の減少や不景気によるリストラの増加などが原因で、終身雇用が難しい社会へと変化しつつあります。
さらにフレックスタイム制やリモートワークの導入、副業の承認など時代の変化に合わせて働き方が多様化したことで、社内での情報共有は複雑化しています。また、ITの発展により知見のデータ化や効率よく情報を共有できる機会が増えました。企業内での知識の共有漏れを防ごうと、ナレッジマネジメントに取り組む日本企業は増加しています。
ナレッジマネジメントの考え方
まず、ナレッジマネジメントに取り組むうえで、共有する知識の種類を「形式知」と「暗黙知」の2つに区別できるということを理解しましょう。そもそも、「形式知」や「暗黙知」とはどういう意味なのか解説していきます。
言葉や文章で表現された「形式知」
形式知とは、言葉や文章、図、数式などによって客観的に理解できる知識を意味します。顧客情報や売上などのデータ以外にも、個人の経験やノウハウをマニュアルにすることで、その内容を正確に他者へ共有することが可能です。情報や知識の属人化を防ぎながら、コストを抑えて迅速な人材育成ができるメリットがあります。
個人に蓄積されてきた「暗黙知」
暗黙知とは、個人の経験から得て蓄積された知識や長年の勘のような、言葉や文章で伝えることが難しい知識を意味します。主観的な知識となるため、他者に伝えたとしても人によって物事の捉え方が違うことから、正確に知識を伝えるのが難しいという性質を持ちます。
暗黙知を他者と共有するためには、形式知に変換しなくてはなりません。企業内で共有できれば知的な成長を遂げられるでしょう。
ナレッジ(知的資産)の種類
企業は、顧客、従業員、社内業務に関する暗黙知と形式知の両方を管理する必要があります。
暗黙知とは、形にしたり言葉にしたりするのが難しい情報(顧客1人ひとりに合わせたエクスペリエンスや、直観的にやり方を知っている業務など)のことです。形式知とは、簡単に文書化、共有、拡張できる情報(ハードデータや反復可能なプロセスなど)のことです。
企業は一般に、ビジネスの関係者全員(主に顧客、従業員、社内全体)から暗黙知と形式知を入手し、全体に共有しています。
社内の専門知識
従業員、製品エキスパート、外部パートナーから得たインサイトは、ヘルプセンターの記事を作成したり、顧客からのよくある問い合わせに対応したりするうえで欠かせません。また、そうしたインサイトは、担当者が顧客をサポートする際に参考情報として提示することもできます。
顧客インサイト
サポートチームは、顧客1人ひとりとの会話、アンケート、成功事例、SNSでのやり取り、サポートリクエストを通じて、社内の活動全般に役立つ情報を大量に得ています。消費者から得たインサイトは、マーケティング、営業、カスタマーサービス、製品開発などの改善に役立ちます。
全社的なナレッジ
製品の詳細や企業ポリシーなどの社全体にかかわるナレッジは、社内のチームと顧客の両方に影響を与えます。だれもが業務をそつなくこなし、製品を効率的に使用するには、必要な企業情報にアクセスできることが重要です。
ナレッジマネジメントが重要である理由
社内に関して言えば、企業はナレッジマネジメントを使用することで、部門を越えて専門知識や重要な情報を共有できます。ナレッジ共有の文化が社内で定着すると、すべての従業員が業務に役立つ社内のナレッジに平等にアクセスできるようになります。また、全員が何らかの形でナレッジに貢献できるようになります。
ナレッジマネジメントは、カスタマーエクスペリエンスの強化にも役立ちます。セルフサービス用チャネルを通じ、顧客は簡単な問題(パスワードの変更や返送用ラベルの印刷など)を自分で解決できます。これをうまく活用できれば、顧客満足度が改善されるだけでなく、サポート担当者の業務効率化と会社の収益向上につながります。
ナレッジマネジメントの主な手法
ナレッジマネジメントの主な手法として、経営資本・戦略策定型、顧客知識共有型、専門知識型、ベストプラクティス共有型の4つがあります。それぞれの手法がどのような特徴を持つのか、以下でわかりやすく解説します。
経営資本・戦略策定型
組織が持つ知識を多方面から経営戦略に反映させる手法です。この手法では自社以外にも競合他社の分析も行い、最終的な戦略を決めていきます。他社と比較して社内の業務プロセスをリストアップし、改めて自社の課題や弱みを改善していくことで業務効率を向上させます。
経営資本・戦略策定型では、管理するデータの量が膨大となります。そのため、複数のデータソースからデータを収集し分析することを可能にするDWH(データウェアハウス)の活用が一般的です。
顧客知識共有型
顧客から収集した意見やクレーム、応対の内容をデータとして管理・共有し、今後の対応策に活かす手法です。過去に発生したクレームやトラブルをだれもが参照できる状態にすることで、自分が経験したことのないトラブルに対しても、迅速かつ適切な対応をとれるというメリットがあります。顧客対応をする際に起こりうる社員ごとの認識の差をなくすことで、顧客との信頼関係悪化を防ぐことができ顧客満足度の向上へとつながります。
専門知識型
専門知識をデータ化し、検索や閲覧ができる状態にする手法です。問い合わせが殺到する部署では、専門知識を持つ社員が中心となって対応することになるため、その他の業務に集中できないケースがあります。しかし、専門知識をいつでも共有できる状態であれば、知識を持たない社員でも対応が可能となり、一部の社員に集中していた負担を軽減できます。
また、よくある問い合わせをFAQで公開することで、対応自体を減らし生産性を上げることもできるでしょう。
ベストプラクティス共有型
ベテランや優秀な成績を誇る社員が持つ暗黙知を、形式知に変換し共有する手法です。トップクラスの社員の思考や行動、ノウハウをだれもが共有できるので、組織全体の能力や技術の向上に期待できます。
ベストプラクティス共有型の懸念点は、社員がナレッジの共有を拒否する可能性があることです。共有が行われなければこの手法は成り立ちません。ナレッジの共有に納得してもらえるように、社員に対して何かメリットを与える工夫を考える必要があります。
組織の知識創造理論「SECIモデル」とは
SECIモデルとは、個人の経験や知識といった暗黙知を形式知に変え、組織全体で管理・共有を行い、新しい知識や発見を得るプロセスです。ナレッジマネジメントにおいてコアとなるフレームワークを意味します。このモデルには、「Socialization(共同化)」、「Externalization(表出化)」、「Combination(連結化)」、「Internalization(内面化)」の4つのプロセスがあり、絶えず繰り返すことでナレッジは洗練されていきます。
共同化は、同じ体験や経験を通して個人から個人へ暗黙知を伝達し、相互理解を図るプロセスです。ベテラン社員の仕事を見て覚える、同じ作業を一緒にする行為が当てはまります。
表出化は、暗黙知を形式知に変換させるプロセスです。上司や同僚への報告、業務をマニュアル化する行為が該当します。
連結化は、表出された知識と別の知識を組み合わせて、新しい知識やアイデアを発見するプロセスです。このプロセスを経て、個人の暗黙知は組織の知的財産に変わります。
内面化は、連結化で創出された新しい知識を形式知として共有し、個人の暗黙知へと変化させるプロセスです。
新たに得た知識は、個人の経験や認知を通じて新しい暗黙知を生み出すので、再び共同化のプロセスに移行して共有を図っていく必要があります。このプロセスを繰り返していくことで、ナレッジも蓄積されます。
ナレッジマネジメントのメリット
「知識は力なり」という言葉があるように、ナレッジマネジメントには多くのメリットがあります。ナレッジマネジメントによるメリットには、年中無休のカスタマーサービスの提供や社内業務の効率化などが挙げられます。
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24時間年中無休のカスタマーサービス
「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート」によると、一般的に、顧客は単純なタスクに関しては自分で解決することを好みます(2021年のデータ)。しかし、自力で問題を解決するには適切な情報にアクセスできる必要があります。
ボット、FAQページ、ヘルプセンターなどのセルフサービス形式でのナレッジマネジメントでは、体系的でわかりやすい方法で情報が提供されます。顧客はそうしたリソースに24時間年中無休でアクセスできるため、サポート担当者の対応を待つことなく、いつでも答えを見つけられます。
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社内業務の効率化
きちんと整理された情報にアクセスできれば、サポート担当者がすばやく効率的に業務をこなせるようにもなります。
セルフサービス用チャネルがあれば、顧客はナレッジを入手して、基本的な問題を自力で解決できます。これにより、担当者はもっと複雑な問題に専念できるうえ、適度な業務量を一定して維持できるようになります。
社内の従業員も、ナレッジマネジメントシステムを通じて業務上の疑問を解消できます。全従業員が社内で蓄積されたナレッジベースにアクセスできるため、特定のチームメンバーや部門を頼ることなく、必要な情報を見つけることができます。これにより、社内のサイロ化が解消され、一貫性が保たれると共に、迅速な意思決定が促進されます。
ナレッジマネジメントは、従業員の入社時や退職時にも欠かせません。新しいチームメンバーでも最初から重要な情報にアクセスできるため、社内Wikiやヘルプセンターなどのツールを有効活用できます。さらに、従業員が退職することになっても、そのノウハウは既に余すことなく文書化されているため、ナレッジは容易に引き継がれ、社外への「頭脳流出」を最小限に抑えられます。
ナレッジマネジメントシステムの事例
顧客と従業員の双方に、効率的かつ拡張可能な方法で必要な情報を提供できるナレッジマネジメントプラットフォームおよびツールを活用すれば、企業はより戦略的にナレッジマネジメントに取り組むことができます。続いて、ナレッジを具現化し、多くの人が利用できる環境にするための形態やシステムをご紹介します。
1. ヘルプセンター
ナレッジベースとも呼ばれるヘルプセンターでは、顧客や担当者がFAQ(よくある問い合わせ)、製品の詳細、企業ポリシーなどにアクセスできます。ヘルプセンターは、社内、社外、あるいはその両方に公開することが可能です。
Wikiや検索エンジンと同じように動作するため、従業員や顧客は求めている答えを簡単に見つけられます。従業員は必要に応じて新しい記事を速やかに作成したり、サポート担当者は顧客とやり取りをする際に関連するヘルプセンターの記事を回答で紹介し効率的に業務に取り組めたりすることができます。
ヘルプセンターの主なメリットは、一度に多数の従業員や顧客に情報を届けられることです。少人数でのトレーニングや1対1のメンタリングを実施する必要がないため、ナレッジ共有を無理なく継続できます。
株式会社ディー・エヌ・エーでは、社内ヘルプデスクにおけるお問い合わせ対応の負担軽減のため、ユーザーに自己解決の手段を提供すべくZendeskを活用してヘルプセンターを構築しました。困ったらまずヘルプセンターの画面を開き、FAQで自己解決できなければ問い合わせをするという流れが定着化させることにより、週次平均50件の問い合わせ件数削減に成功しています。
株式会社ディー・エヌ・エーの導入事例はこちら
2. ユーザーコミュニティ
ユーザーコミュニティは、顧客が他のユーザーとやり取りし、インサイトの提供やサポートを行うオンラインの場です。
製品の使用頻度が高い顧客は、時にサポート担当者よりも問い合わせへの回答やトラブルシューティングを行うのに適していることがあります。ユーザーコミュニティでは、顧客が質問の投稿や回答を行えるため、サポートチームの負担がある程度軽減されます。企業は、必要に応じて会話に参加するモデレーターを割り当て、適切で的確なやり取りがなされているかどうかを、モデレーターを通じて管理することができます。
ユーザーコミュニティでは、自社の製品やサービスを軸とした仲間意識を顧客の間に育むことができます。また、顧客の製品およびサービスの使用状況や一般的な課題など、顧客に関する貴重なインサイトを引き出せる可能性もあります。
Khan Academyでも、ユーザーどうしのナレッジ共有はブランドの運営に欠かせません。同団体の提供するオンライン学習サービスでは、別の利用者にたずねるのが最適な質問(子供の数学嫌いを克服する方法など)が、利用者から投げかけられることが多いためです。
3. チャットボット
AI搭載のボットは、プログラミングに基づいて、各種プラットフォームでユーザーとやり取りし、質問やリクエストに対応します。
チャットボットは、顧客向けおよび担当者向けのツールとしてますます人気が高まっています。実際、ZendeskのAnswer Botで処理された問い合わせの数は、2020年の2月下旬から5月上旬にかけて95%増加しました。
ボットは特に、基本的な情報や関連するリンクを共有する際に便利です。適切なナレッジベースの記事をお勧めしたり、簡単な質問に回答したり、顧客が特定のタスクを実施するのを支援したりできます。
チャットボットもまた、サポートチームの負担を軽減します。ボットが基本的な問題を処理してくれれば、担当者がもっと複雑な問題に集中できるだけでなく、顧客を必要以上に待たせずに済みます。
障害物レースを開催する世界有数の企業のSpartan Raceは、よくある質問がチャットに大量に寄せられたことから、チャットボットを導入し、オペレーターによるサポートと併せてセルフサービス型サポートの提供を開始しました。ボットを導入して以来、同社ではチャットでのやり取りが9.5%減少し、その分、サポートチームがチャットに対応できる時間が1日あたり3時間増えました。
ナレッジマネジメントのベストプラクティス
以下では、各種ナレッジマネジメントプログラムにおけるベストプラクティスをご紹介します。
- 明快でシンプルな言葉を使う
- キーワードを含める
- レスポンシブデザインを実装する
- 明確なガイドラインを設定する
- モデレーターやコミュニティマネージャーを割り当てる
- 人気の投稿を取り上げる
- ボットの利用をオープンにする
- ボットを一貫して口語調にする
- 問い合わせを担当者に簡単にエスカレートできるようにする
ヘルプセンターを構築する場合
- 明快でシンプルな言葉を使う
- タイトルと本文にキーワードを含める
- レスポンシブデザインを実装する
- 明確なガイドラインを設定する
- モデレーターやコミュニティマネージャーを割り当てる
- 人気の投稿を取り上げる
- ボットの利用をオープンにする
- ボットを一貫して口語調にする
- 問い合わせを担当者に簡単にエスカレートできるようにする
社内および社外のどちらに共有する場合でも、コンテンツが利用、理解しやすくなります。
ナレッジベース内の検索性が上がり、探している情報をユーザーがすばやく見つけられるようになります。
スマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスでコンテンツの表示を最適化できます。スマートフォンの利用者数の増加に伴い、レスポンシブデザインは優れたユーザーエクスペリエンスに不可欠となっています。
ユーザーコミュニティを立ち上げる場合
コミュニティの規則を定めることで、荒らしを食い止め、コミュニケーションを前向きな方向へと導くことができます。暴言の禁止から投稿可能数の上限(スパムを最小限に抑えるため)に関するものまで、あらゆる規則が考えられます。
規則を適用し、ユーザーの発言が適切であることを確認する担当者が必要です。チーム内に適任がいなければ、ブランドの熱心なファンをコミュニティマネージャーとして割り当てると、優れた働きが期待できます。
重要な投稿やコミュニティ内で多数のエンゲージメントを獲得した投稿を目立たせましょう。雑多なコンテンツの中で重要な情報が見落とされることがなくなり、多くのユーザーの目に留まるようになります。
チャットボットを実装する場合
企業はAIの使用に関して透明性を確保し、顧客の不満を防ぐ必要があります。優れたチャットボットとは、あくまでボットとしての役割に徹し、必要になれば身を引いて、顧客が人間の担当者と話せるようにするものです。
顧客に対応するのがロボットだからといって、口調までロボットらしくする必要はありません。人間の担当者のように、自然で親しみやすい調子でコミュニケーションできるようにボットをプログラミングしましょう。
ボットが問い合わせに回答したり、問題を解決したりできなくても、そのこと自体は問題ありませんが、顧客が必要に応じて、簡単かつシームレスに人間の担当者とやり取りできるようにすることは重要です。その際には、顧客が説明を繰り返さなくて済むように、ボットが入手済みのすべての情報(氏名や問い合わせの種類など)を担当者に伝達できるようにすることも肝心です。
ナレッジマネジメントのプロセス
下記が、ナレッジマネジメントプロセスにおける主要な5つのステップです。
- ロールモデルとなる企業を見つける
- 重要なスキルを持つ従業員を特定する
- テクノロジーを活用する
- プロセスを共有する
- プロセスを反復する
1. 社を挙げてナレッジ共有に取り組む、ロールモデルとなる企業を見つける
そうした企業を徹底的に調査しましょう。人脈をたどり、その企業の従業員からナレッジマネジメントの経験や導入方法について話を聞くと、自社に適したツールを見つけられる可能性があります。
2. 重要なスキルを持つ従業員を特定する
カギとなるのは、プロジェクト管理、コンテンツ管理、テクニカルライティングのスキルです。コンテンツを作成、更新するうえでは、これらの作業を担う担当者の協力を仰ぎましょう。
3. テクノロジーを活用する
スマートなナレッジマネジメントソフトウェアおよびナレッジベースソリューションは、検索クエリに応じて自動的に関連記事を提供します。また、機械学習を搭載したナレッジベースソフトウェアソリューションなら、時間と共に精度が上がり、AIが提供する自動応答の質が改善されます。この他にも、ナレッジベースの保守と維持を効率化するテクノロジーを使用すれば、ナレッジを投稿した従業員に、記事の更新、社内のナレッジ不足の解消、正確性および関連性の検証を行うように促すことができます。
検索を利用するのが顧客でも、社内のビジネスパートナーでも、適切な情報を見つけるまでにかかった時間を測定、追跡するようにしましょう。
4. 社内全体でプロセスを共有する方法を検討する
行動指針を定め、関係者を特定したうえで、その指針に沿って動き始めます。
5. 継続的に反復する
ナレッジマネジメントは、一度導入したらそれで終わりではありません。定期的にナレッジを精査し、製品やビジネスの進化に合わせてナレッジが適切かどうかを確認する必要があります。実際、Zendeskの調査によると、ナレッジマネジメントに関して機敏な対応をし、コンテンツの着実な保守と改善に努めてきたサポートチームは、主要なセルフサービスの分析で全体的に高いパフォーマンスを達成しています。ナレッジを入手できるツールと共に、ヘルプ記事を追加、更新できるツールを担当者に提供することが大切です。
効果的なナレッジマネジメントのフレームワークを構築、実装する方法
どんな業務にも当てはまるように、新しい戦略を実施するには、専門知識、時間、リソースが必要です。ここでは、効果的なナレッジマネジメントのフレームワークを構築するための4つのヒントをご紹介します。
- ナレッジマネジメントを担当するチームのメンバーを採用または指名する
- ナレッジの監査を実施する
- KPIを特定する
- 変更点をチームに伝える
1. 新たな担当チームを編成
社内でナレッジマネジメントの担当チームを編成しましょう。
このチームのメンバーは適宜、ナレッジベースの更新や、ナレッジの投稿者および各分野のエキスパートへの委任を行います。また、ヘルプセンター、ボット、その他のナレッジマネジメントシステムで共有される顧客向けのコンテンツが、自社のブランド戦略やトーンに沿っていることを確認する必要もあります。
チームメンバーの所属部門や経歴は問いません。歓迎されるスキルとしては、プロジェクト管理、コンテンツ制作、テクニカルライティング、ITなどが挙げられます。
2. ナレッジの監査を実施する
監査を実施して、現状のナレッジの課題と、リソースを追加する必要があると思われる分野を特定しましょう。
まずは、既存のプロセス、ツール、リソースを調査します。具体的には、それぞれのさまざまなメリットとデメリット、複数のソリューションで重複する要素、コストや使い勝手などの重要な観点について検討します。
チームメンバーへのヒアリングは、既存のツールやプロセスについてフィードバックを得て、社内全体でナレッジが不足していると思われる分野を的確に判断するうえで非常に有効です。サポートチームと営業チームの担当者に、顧客向けFAQの作成を依頼しましょう。そうした質問への回答には、顧客と従業員の両方が容易にアクセスできるようにする必要があります。
顧客や従業員にアンケートを送信するのもよいでしょう。情報の見つけやすさ、使用したいツール、その他の課題に関して、たくさんのフィードバックを得ることができます。
こうした取り組みを行うことで、効果的なシステムの導入準備を着々と進められます。収集したフィードバックは、自社に最適と思われるツール、設定する目標のほか、作成、更新、共有するコンテンツの種類を決めるうえで役立ちます。
3. KPIを特定する
他のあらゆる取り組みと同じように、戦略的な目標を設定し、主要業績指標(KPI)を確認して成果を測定しましょう。
目標は定量的にも定性的にも評価できます。どの企業にも万能のアプローチはありません。ナレッジマネジメントシステムの導入で何を達成したいかにより、アプローチは大きく変わってきます。
たとえば、目標がチケットの解決率および効率の向上だとしましょう。その場合、評価対象となる指標としては、一つにチケット削減率が挙げられます。導入したセルフサービスソリューションがうまく機能している場合、顧客は問い合わせる前に必要な情報を入手できるため、チケットの数が少なくなっているはずです。問題の解決時間も確認するとよいでしょう。探している情報に従業員が簡単にアクセスできれば、解決までの時間も短縮されているはずです。
あるいは、研修プロセスでのナレッジ共有の改善を目標としている場合は、それを測定するために、研修のさまざまな段階で、新しいメンバーからのアンケートの回答を参照するとよいでしょう。また、新しいサポート担当者と先輩の担当者の解決までの時間を比較追跡するのも効果的です。CRMシステムを通じて、新人担当者が早く仕事に慣れるために必要な情報とノウハウを入手できるようにする必要があります。
4. 変更点をチームに伝える
監査の実行後に適用された変更とポリシーを従業員に周知しましょう。
変更点、変更の理由、新しいツールの使用方法、リソースや更新のリクエストの送信方法を詳しく説明するようにします。変更の規模によっては、会議やトレーニングイベントの開催が必要です。
変更点の説明が終わったら、全従業員がシステムを適切に使用できるようになるまで見届ける必要があります。必要なリンク、ログイン情報、不明点がある場合の問い合わせ先を従業員に知らせましょう。
今後の更新や改善に向けて、チームにフィードバックを求めることも大切です。ナレッジマネジメントは継続的なプロセスのため、導入するシステムが従業員にとって効果的に機能し、ビジネスに合わせて拡張できることをしっかり確認するようお勧めします。
さあ、次の一歩を踏み出す準備はできましたか? こちらのブログ記事では、ナレッジマネジメントシステムの優れた事例をご紹介しています。自社で導入したくなるナレッジマネジメントソリューションがきっと見つかるはずです。
ナレッジマネジメント関連の資料・データベース
個人が持つ情報やノウハウは、なかなか社内で共有されないことがあります。しかし、隠れた知識を企業が社員に共有できれば企業全体の生産性を向上することが可能です。
現在は人材の出入りが激しく、またリモートワークなど働き方の多様化により、ナレッジの蓄積や共有が複雑化しています。業務の属人化を防ぎ、イノベーション創出を目指すのにナレッジマネジメントは重要な取り組みといえます。ナレッジマネジメントをより詳しく知りたい方は、下記の関連資料・データベースも参考にしてみてください。
参照:優れたナレッジマネジメントの3つの事例
参照:ナレッジマネジメントシステムで社内の知識をより多くの人が使える知識へ
参照:ナレッジベースとは?意味・メリット・ツール
参照:ガートナー調査レポートに見る、ナレッジマネジメントの重要性
参照:ナレッジマネジメントのベストプラクティス
まとめ
企業が収集した情報を、顧客や従業員、ビジネスパートナーと共有することで、業務改善やカスタマーエクスペリエンス強化などのメリットが見込めます。ナレッジマネジメントを成功させるには、従業員や顧客との拡張可能なプラットフォームの構築が理想です。Zendeskが蓄積してきたナレッジマネジメントの資料やデータベースを参考に、ナレッジマネジメントのフレームワークをぜひ構築してみてください。
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