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AIチャットボットをコールセンターに導入するメリットや選び方を解説

更新日: 2023年10月9日

コールセンターにおける顧客からの多様な問い合わせへの対応は、企業にとって重要な課題となっています。コールセンターで働くスタッフは、製品や業務に関する深い知識が求められます。一方で、作業負担が大きく、業務の性質上ストレスに晒されやすい環境でもあるため、コールセンターの離職率は他の業種と比較して高い傾向にあります。

また、近年では、人手不足や新規採用の難しさという課題が顕在化しています。ベテランスタッフによる属人的な対応が増えてしまうとナレッジの蓄積も進みません。また、対応の遅さが顧客満足を低下させ、顧客流出につながっている恐れもあります。

このようなコールセンターが直面する課題に対する解決策の一つが、AIチャットボットの導入です。AIチャットボットはコールセンターの業務負担を大幅に軽減し、スタッフの離職を防ぐ役割を果たします。加えて、チャットボットは顧客にスピーディな自己解決を支援し、その結果として顧客満足度の向上にも貢献します。

本記事では、コールセンターが抱える課題と、その解決策としてAIチャットボットを導入するメリットについて詳しく説明します。

コールセンターの現状と課題

主に顧客からの問い合わせ対応やサポートなどを行うコールセンターですが、近年は顧客満足の向上の観点から、その重要性が高まっています。

しかし、この業務には幅広い知識と経験が要求されるため、離職率が高いコールセンターでは人材の採用・育成が課題になりがちです。さらに、在宅・テレワークの増加に伴い、スタッフ間の連携が今まで以上に難しくなっている点も課題です。

このような環境下で、コールセンターは次のような課題を抱えています。

  • 他部署との連携不備による業務の非効率化
  • 採用の難易度および離職率の高さ
  • 社内のことや自社の製品に対する幅広く専門的な知識が要求されるため、人材の育成に時間がかかる
  • 一部のベテランによる属人的な業務が発生しがち
  • 回答の不足や対応の遅延により、顧客満足度を低下させる
  • 在宅・テレワークの導入により、スタッフ間の連携が一層困難に

コールセンターにおけるAIチャットボットの役割とは?

AIチャットボットとは、顧客が入力したテキストに応じて、システムがAIを活用して自動で返答したり、課題の解決につながるコンテンツへ誘導したりする仕組みです。

AIチャットボットをコールセンター業務に導入すれば、よくある質問に対してはチャットボットが自動で回答するため、より多くの疑問やトラブルを顧客が自己解決できるようになります。また、AIチャットボットの問い合わせ履歴や返答、それによって自己解決できたかどうかなど、さまざまなデータを入手してナレッジを蓄積することも可能です。

オペレーターとAIチャットボットの役割分担

オペレーターとAIチャットボットの役割分担を次のようにすることで、効率的かつ効果的にAIチャットボットをコールセンターに導入できます。

AIチャットボットよる対応に適した問い合わせの例

  • 情報提供だけで解決する単純な問い合わせ

    営業時間が知りたい、住所が知りたいなど、正しい答えが決まっている問い合わせに対しては、AIチャットボットの自動応答でも、顧客は必要な情報を得られます。

  • FAQ記事へ誘導するだけで解決する問い合わせ

    パスワードの変更方法が知りたい、配送料が知りたい、手数料の条件を確認したいなどといった質問に対しては、FAQへのリンクを共有するだけで対応が可能です。
    なお、FAQを充実させればAIチャットボットが回答できる問い合わせの範囲も増えるためので、まずはFAQを整備しておくことが重要になります。

  • 既存コンテンツを共有すれば解決する問い合わせ

    おすすめの旅行地が知りたい、ツールのメリット・デメリットを確認したいなど、記事や説明資料などの形のコンテンツにまとめてある内容に関する問い合わせは、そのコンテンツをAIチャットボットによってシェアすれば完結します。

オペレーターによる対応に適した問い合わせ

  • AIチャットボットでは難しい複雑な対応が求められる問い合わせ

    回答内容が画一的でなく、スタッフによる口頭説明やサポートが必要な問い合わせは、AIチャットボットではなくオペレーターが対応する必要があります。また、事情や前提など顧客の質問の意図が複雑で、機械的な場合分けでは処理できないときにも、オペレーターが顧客の状況に合わせて対応した方が適切です。

  • 頻度が低くナレッジが蓄積していない問い合わせ

    これまであまり受けたことがなく、回答例や情報が蓄積していない問い合わせには、オペレーターが回答した方がよいでしょう。AIチャットボットは蓄積したナレッジやデータを参照して回答するのが得意なため、データのない質問については正しい回答を返せない恐れがあります。

  • 社内の別部署への問い合わせなど、コールセンターで完結できない問い合わせ

    コールセンターで完結できない問い合わせについても、オペレーターの方が適切に対応できます。
    例えば、マニュアルやナレッジに掲載がない細かい製品の構造については、回答内容を商品開発部門や技術部門と調整した方がよいでしょう。AIチャットボットに任せると、一般に公開されていない製品情報を返答してしまうなど、不適切な回答をする恐れがあります。

以上のように、ボットで対応できる問い合わせは AIチャットボットで対応し、AIチャットボットで対応できない質問が来た際は速やかに人間に引き継ぐ仕組みにすることで、AIチャットボットをコールセンター業務に有効活用できます。

コールセンターにチャットボットを導入するメリット

コールセンターにAIチャットボットを導入することで、現在のコールセンターが抱える多くの課題を解決できるでしょう。また、今後の営業活動や商品開発・改善に役立つナレッジの蓄積にも有効です。具体的に見ていきましょう。

  1. コスト削減
    人間のオペレーターに代わってAIチャットボットが一部の顧客対応を行うことで、人件費の削減が可能です。例えば、家事サービスを提供するHandy社の事例では、AIチャットボットの活用により顧客の自己解決力が向上し、コールセンターのコストが約60%削減されました。
  2. コールセンターの業務負担の軽減
    難易度の低い問い合わせをAIチャットボットが自動対応することで、コールセンター全体の作業負荷が減り、より少ない人数で運営ができます。オペレーターが対応するときも、AIチャットボットと顧客の対話ログを参照することで、よりスムーズに対応が可能です。スタッフ一人ひとりの負担も軽減され、離職率の低下にもつながります。

    さらに、AIチャットボットに簡単な問い合わせを任せることで、オペレーターはAIチャットボットでの解決が困難な、より複雑な問い合わせに集中して対応できます。難易度が高い問い合わせに集中的に対応するようになるため、難しい案件へのオペレーターの対応力が向上し、スキルアップにもつながるでしょう。

  3. 自己解決力と顧客満足の向上
    よくある問い合わせに対して、顧客はAIチャットボットとのやりとりだけで解決できるようになり、自己解決力が向上します。人間による対応よりも、スピーディーに顧客の課題解決ができるでしょう。
    また、オペレーターが難易度の高い問い合わせに集中することで、複雑な問い合わせへの対応速度や品質が向上します。顧客満足の向上にもつながるでしょう。

  4. 一貫性のある対応
    AIチャットボットはプログラムされた応答を行うため、人間のオペレーターによる応答よりも一貫性と品質を保つことができます。
    オペレーターの対応では、それぞれの知見や経験により、人によって回答内容にブレが生じる恐れがあります。また、経験不足なオペレーターが対応すると、不適切な回答や不備が発生するリスクもあります。その点、AIチャットボットであればどのような顧客に対しても均一化された対応や回答が可能です。
  5. 応答速度の向上
    AIチャットボットは即時に応答することができるため、顧客が問い合わせに対する回答を待つ時間を短縮します。オペレーターが対応すると、情報を参照したり、コールセンター内で確認を取ったりと、回答まで時間がかかることもしばしばあります。AIチャットボットであれば、あらかじめ蓄積されたデータやコンテンツを利用して、速やかな回答が可能です。
  6. 24時間365日対応
    AIチャットボットは休むことなく働き続けることが可能で、深夜や休日でも顧客の問い合わせに即時に対応できます。特に深夜帯や休日の顧客対応力が強化されるほか、休日対応のスタッフを配備する必要もなくなります。
  7. ナレッジやデータ収集と分析
    AIチャットボットは、すべての対話内容や回答内容、それによって顧客が自己解決できたか、解決できずに結局オペレーターにアクセスしたかなどのデータ分析が可能です。コールセンターのパフォーマンスを分析し、改善点を見つけることができます。
    さらに、頻繁に生じる疑問点や課題なども確認できるため、FAQの整備や、提案など営業活動における説明内容のブラッシュアップ、製品自体の開発や改善など、今後のさまざまな施策に役立てられます。

コールセンターにおけるAIのさまざまな活用法

チャットボット以外にも、コールセンターで活用できるAIの機能はさまざまです。コールセンター向けのAIソリューション全てでこうした機能が利用可能というわけではありませんが、どういうことが現在、又は将来的にAIでできるようになるかを把握しておくと、AIを検討する材料の1つとなるでしょう。

  1. 自動での音声認識や文字起こし
    顧客およびオペレーターの対話内容を文字に起こして、参照しながら回答できます。また、回答ログを残して分析し、対応内容やFAQなどのブラッシュアップにも役立てることが可能です。
  2. 回答に役立つ情報や記事を自動表示
    顧客との対話内容をもとに、役に立つコンテンツを自動表示できます。オペレーターが記事をもとに回答することもできますし、必要に応じて顧客に記事を共有することも可能です。
  3. 問い合わせ内容・回答内容の自動共有
    問い合わせや回答を社内で自動共有することで、ほかのオペレーターが過去の内容を参考にしながら回答できます。回答の精度向上や均一化につながるでしょう。
  4. 対応内容をもとにした自動的なFAQ生成
    対応内容をもとに、AIがFAQのドラフトを生成してくれます。対応内容が増えるにつれ、豊富で洗練されたFAQが構築され、顧客の自己解決力や、オペレーターとAIチャットボット双方の対応品質が向上します。
  5. 問い合わせ件数や業務負荷に基づいた自動的なシフト配置
    AIによるシフト配置により、スタッフごとの業務負担の偏りを是正し、業務効率の向上が可能です。

以上のように、AIが対応できる機能は多岐にわたります。自社の状況に合わせて最適な機能を導入して、コールセンター業務の効率化を図りましょう。

コールセンター向けAIチャットボットの選び方


AIチャットボットを選ぶといっても有人対応がなくなるわけではないため、有人対応とのスムーズな切り替えは必須です。また、現場スタッフが使いやすいかどうかも重要です。機密情報を保護する観点からは、セキュリティにも着目する必要があります。

また、データ蓄積や分析の機能が充実していると、ナレッジが蓄積しやすく、それによりコールセンターの対応品質の向上などが可能となります。

  1. 有人対応とのスムーズな切り替え
    AIチャットボットによる回答が難しいときに、スムーズにオペレーターに引き継げるシステムである必要があります。さらに、オペレーターがチャットボットと顧客のやりとりを見ることができ、どのような問い合わせが来るのかひと目で把握できれば、オペレーター切り替え後の対応もスムーズになるため、さらに望ましいと言えます。
  2. 営業時間外や休業対応
    営業時間中と時間外、休日と平日で、対応をスムーズに分けられるとよいでしょう。例えば、営業時間外はオペレーターにつなぐのではなくメールや問い合わせフォームに誘導するなどの仕組みが考えられます。時間外のチャットでの対話履歴がデータとして残ることも重要です。
  3. スタッフが使いやすいか
    オペレーターやコールセンターの管理者が手間なく使用できるか、使いづらいポイントはないか、トラブル時にすぐに対応してくれるサポートは充実しているかなどに着目してください。AIチャットボットを最大限に活用するためには、FAQを充実させたり、カスタマージャーニーを考慮したシナリオの作成が求められたりします。

    また、実際のWebサイトに導入するまでに長期間のトレーニングが求められるAIの場合は、トレーニングにかかる期間やコストも加味した上で、導入に踏み切る必要があります。チャットボットのシステム提供企業のトレーニングやサポートが充実していたり、購入前に無料でトライアルができたりする、よりスムーズに新システムを導入できるでしょう。

  4. CX向上につながるか
    コールセンターを通じたCX(顧客体験)向上につながるシステムを選びましょう。例えば、次のように顧客視点でベネフィットのあるシステムが望ましいと言えます。

    ・顧客とチャットボットの対話が自然化か
    ・チャットボットのUIは顧客が使いやすいものか
    ・顧客が入力した質問を短時間で読み取り回答を返せるか
    ・顧客の問題を解決できる正確な情報を教えてくれるか
    ・チャットボットで解決できないときはオペレーターに適時に適切につないでくれるか

    CXについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

    CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)とは? 意味・戦略・測定・分析

  5. オムニチャネル化に寄与できるか
    顧客とのすべての接点をシームレスに管理する、顧客対応のオムニチャネル化に役立つシステムを選びましょう。オムニチャネルな顧客対応とは、顧客との1つ1つのやり取りを、継続的な全体のコミュニケーションの1つとして織り込み、チャネルを超えてシームレスで一貫した顧客体験を実現するアプローチです。

    これにより、「チャネルによって担当者の回答が異なる」「チャネルを変えると同じ説明を担当者にしないといけない」など、顧客がストレスを感じる体験を防ぎ、正確かつ迅速な顧客対応が実現できます。

    AIチャットボットがWebサイトだけでなく、SNSやスマホアプリからの問い合わせにも対応し、対応履歴を一元して管理できれば、オムニチャネル化のさらなる進展が期待でき、顧客とのコミュニケーションの強化に役立ちます。

  6. セキュリティ
    問い合わせ内容や回答、表示する情報やチャットのログなどには機微情報が多数含まれます。顧客情報の保護、企業の機密保護の観点から、情報漏えいや不正アクセスのリスクを排除できるシステムを選んでください。
  7. データの蓄積や分析機能
    チャットのログや回答内容、効果について精緻かつ簡単に分析できるシステムを選択しましょう。今後の対応品質の強化や企業競争力の向上につながります。
  8. 外部システムやツールとの連携
    ナレッジマネジメントシステムやスタッフのコミュニケーションツール、シフト管理システムなどと連携していれば、さらなる業務効率の向上や精緻な業務管理に役立ちます。
  9. FAQとの連携
    AIチャットボットは、的確なFAQを参照することでより多くの回答に対応できるようになります。また、逆にAIチャットボットと顧客の対応内容をもとに、FAQの生成や改善などを行う機能があれば、FAQ管理の負担軽減にもなるため便利です。

    そのため、AIチャットボットとFAQを同じプラットフォームで管理・作成できるシステムであれば、よりスムーズかつ強力に両者を連携できます。それぞれを別のシステムで構築する場合は、拡張機能やAPIなどで連携できるかどうかを購入前に検討しましょう。

  10. カスタマイズ性
    コールセンター対応は企業によって異なるため、自社の体制に合わせてカスタマイズできるサービスが望ましいでしょう。例えば、営業時間内外での対応の違い、顧客から収集する情報の内容、オペレーターに引き継ぐタイミング、エスカレーションの設定など、コールセンターの希望に合わせてカスタマイズできる必要があります。

ZendeskのAIソリューションでコールセンター業務をさらに改善

AIチャットボットをコールセンターに導入すれば、コスト削減やオペレーターの負担軽減、顧客の自己解決力や満足度の向上につながります。ぜひ、AIチャットボットを活用したコールセンター業務の強化を検討してみてください。

Zendeskでは、CXに特化したAIを用いたカスタマーサービスソリューションを提供しています。このソリューションは、コールセンター業務の効率化や、顧客の自己解決の促進に大きな役割を果たします。主な特徴は以下のとおりです。

  1. AIが問い合わせに自動で回答
    AIボットが24時間年中無休で問い合わせに対応。解決できない問い合わせは自動的に最適な担当者を見つけ、対話履歴とともに引き継ぎます。ZendeskのAIなら顧客が入力した内容に応じて、解決に繋がるFAQ記事やシナリオに誘導します。

    チャットボットが回答する際に参照するFAQをZendesk上で作成できるため、チャットボットとFAQをスムーズに連携できます。また、ボットビルダーを使用すれば、チャットボットのシナリオをノーコードで簡単に作成できます。

    Zendeskならノーコードでボットを作成可能

  2. AIボットを短期間で導入可能
    ZendeskのチャットボットはFAQやシナリオを作成すれば数日で利用開始できます。ZendeskのAIは数十億件にもおよぶ実際のカスタマーサービスデータでトレーニングされているため、一人ひとりに最適化されたサポートを導入初日から低コストで実現できます。さらには業界ごとの特有の問い合わせを理解し、的確な回答を提供できるようにトレーニングされたボットも利用できます。
  3. AIが問い合わせを自動で分析
    お客様からの問い合わせ内容をAIが自動で分析し、それぞれの問い合わせに目的・言語・印象のタグを自動で付けてくれます。これによりサポート担当者が優先順位付けを行うためを削減し、ルーティングルールを適用すれば、ネガティブな感情を持っている顧客に対して自動で適切な担当者をアサインすることも可能です。

その他にも、ZendeskはOpen AIと連携しており、問い合わせの要約や回答の詳細化、トーン変更など、生成AIの機能を活用することが可能です。

コールセンター業務課題を解決するZendeskのAIソリューションについて、さらに詳しく知りたい方は、下記ページをご覧ください。

Zendesk AIとは?

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