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カスタマーサクセスとは? 定義、仕組み、役割
カスタマーサクセスとは、顧客が目標を達成できるようにアシストする取り組みです。 カスタマーサクセス戦略を策定し、顧客維持率を高め、事業の成功を支えましょう。
著者: Teresa Anania, SVP Global Customer Success, Renewals and Customer Experience
更新日: 2024年2月14日
企業の成功は、他の誰かの成功にかかっていると言われたら、どう思いますか? この発言は事実に基づくものです。製品やサービスが顧客の目標達成に役立っていなければ、事業は成功しません。今日の顧客中心の市場において、トップの業績を上げている企業は、競合他社よりもカスタマーサクセス(顧客の成功)を優先しています。
カスタマーサクセスは顧客の幸福を高める最良の方法です。そして、幸せな顧客は、贔屓にする企業の長期的な成功を導きます。このガイドでは、カスタマーサクセスが重要である理由、カスタマーサクセス戦略の概要に加えて、カスタマーサクセスチームの職務、そして成功の秘訣についてご紹介します。
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスとは、顧客がソリューションを非常に気に入り、長期的に製品やサービスを購入し続けたいと思うようになることです。強固な関係を築き、顧客の目標を理解することが何よりも大切です。カスタマーサクセスとは、顧客とのやり取りの一つひとつが、より深く、有意義なエンゲージメントをもたらしている状態です。
カスタマーサクセスを実現するためには、カスタマーサクセスマネージャーとそのチームは、顧客のライフサイクル全体を通じて、積極的に顧客とやり取りを行う必要があります。
なぜカスタマーサクセスは重要なのでしょうか?
簡単に言うと、 カスタマーサクセスは、顧客がソリューションから価値を引き出し、その結果として望ましいROIを達成する上でプラスに働きます。カスタマーサクセスチームが顧客の目標達成に貢献した場合、その製品やサービスがユーザーに価値をもたらしていることは明白です。その結果、次のメリットを得られます。
関係の強化
信頼の構築
満足度の向上
また、カスタマーサクセスの取り組みによって、企業は、製品、マーケティング、セールスなど、組織全体に利益をもたらす貴重な顧客インサイトを集めることができます。チームが顧客とそのニーズについて深く理解できれば、カスタマーエクスペリエンスを改善し、より健全な顧客ライフサイクルを生み出すことができます。
ビジネスの成功は、売上、収益、そして顧客の維持など、顧客と密接に結びついています。幸せで忠誠心の高い顧客は、しばしばブランドの支持者となり、製品のレビュー、SNSへの投稿、口コミによる推薦を通じて、企業を絶賛してくれます。
カスタマーサクセス戦略を必要としている企業とは?
毎年顧客に契約を更新してもらう必要があるサブスクリプションベースの企業であれば、しっかりとしたカスタマーサクセス戦略を用意するべきです。特に競争が激化し、他の企業がこうした戦略を採用するようになると、カスタマーサクセス戦略は企業にとって大きな成長の原動力となります。
既存の顧客の忠誠心を維持することは極めて重要です。ソリューションから明確なROI(投資収益率)を得られるようにする必要があります。新規顧客の獲得は、顧客の維持よりも多くのコストがかかります。
カスタマーサービス、カスタマーエクスペリエンスとカスタマーサクセスの違い
いくつかの類似点や重複点はありますが、カスタマーサクセスをカスタマーサービスやカスタマーエクスペリエンスを扱う他のチームやグループと混同するべきではありません。
カスタマーエクスペリエンスのすべての役割は、顧客を満足させることに重点を置いていますが、オンボーディングや教育、質問や要望への対応、フィードバックに基づく新たな戦略の策定など、それぞれ特定の職務を担っています。これらの職務の違いについて、以下で詳しく説明します。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの主な役割は、顧客が自信を持ち、知識豊富なユーザーとなり、企業の製品やサービスを利用して目標を達成できるように支援することです。顧客の目標、長期的な成長、満足度のみに焦点を当てます。
- 主な職務:オンボーディング、教育、普及、価値の提供、カスタマーアドボカシー、積極的なやり取り、カスタマーサポート、顧客の維持、解約管理、クロスセル、アップセル。
- 不可欠な理由: 顧客がソリューションに期待するROIの目標達成を支援することで、ロイヤルティの高い顧客を増やせるようになります。
カスタマーサービス
カスタマーサービスとは、顧客による製品やサービスの発見、使用、最適化、トラブルシューティングをサポートする取り組みを指します。サポート担当者は、製品の機能に関する質問への対応や短期的な問題の解決、技術的な問題に関する情報提供を主に担います。
カスタマーサクセスチームは、顧客のニーズを予測し、サポートに問い合わせる前に戦略的なアドバイスを提供することを目指します。
- 主要な職務: カスタマーサポート、顧客のペインポイント(問題点)への対応、顧客からの質問への回答、問い合わせの解決や円滑なエスカレーションを通じて、サポートに関する顧客との約束を守ります。
- 不可欠な理由: 企業が顧客を維持する上で貢献します。
カスタマーエクスペリエンス
カスタマーエクスペリエンス(CX)チームは、カスタマージャーニー上のタッチポイント(接点)に焦点を当てます。問題が生じている恐れがある接点や顧客とのインタラクションを最適化する方法を判断します。
一方のカスタマーサクセスチームは、カスタマージャーニーの結果に焦点を当て、望ましい結果をもたらし、クライアントの収益を増加させる取り組みに力を入れます。
- 主要な職務: 営業、カスタマーサクセス、プロフェッショナルサービス、カスタマーサポート、マーケティングなど、顧客と接するチーム全体で、すべての主要な顧客との接点でのコミュニケーションを可能にするエンドツーエンドのカスタマーエクスペリエンスを設計します。
- 不可欠な理由: 企業が顧客についてより深く理解し、ニーズを満たす上で貢献します。
カスタマーサクセスとアカウントマネジメントの比較
カスタマーサクセスやカスタマーサポートチームと同様に、アカウントマネージャーは、個別にサポートを求める顧客の支援に努めます。しかし、役割は異なります。
カスタマーサクセスの目標は、顧客の成熟度向上を支援して、ソリューションの価値を高めることです。これは、アカウントの拡大(クロスセルとアップセル)を推進するアカウントマネージャーの役割と調和します。多くの企業は、カスタマーサクセスをリードジェネレーションの手段として活用する一方で、商談に関してはアカウントマネージャー(または更新チーム)に任せています。
このように役割を明確にすることで、カスタマーサクセスは顧客の支持に集中でき、収益増加の取り組みからは距離を置きます。とはいえ、この2つのチームは最高の成果を得るために、足並みを揃えて、協力しなければなりません。
カスタマーサクセスチームの主な職務
カスタマーサクセスチームの役割は、企業の製品やサービスによって顧客が目標を達成できるように支えることです。その結果、カスタマーエクスペリエンスの改善と関係の強化が実現し、ビジネスの成長とさらなる経常収益につながります。以下に、カスタマーサクセスチームが影響力を発揮する上で有効な職務の一部を挙げていきます。
パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを提供する
カスタマーサクセスチームは、顧客と密接な関係を築き、パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスの提供を目指します。顧客をVIPのように扱い、目標達成のために戦略のカスタマイズ・策定を手助けすることで、顧客一人ひとりが大切にされていると感じようになり、顧客ロイヤルティの向上が期待できます。
Zendesk カスタマーエクスペリエンストレンドレポート2022年版によると、消費者の60%以上が、この1年で、より高いカスタマーサービスの基準を持つようになったこと、90%が、カスタマーサービスをパーソナライズしている企業に対して、より多くの支出をすることが明らかになっています。
答えは明白です。消費者は、オーダーメイドの最高品質のカスタマーエクスペリエンスを求め、それを得るためにはより多くの出費を厭わないのです。
顧客の維持を改善
カスタマーサクセス部門もまた、顧客維持率の向上に努めます。製品やサービスの価値を最大化し、長期的な目標を達成するための献身的なパートナーがいれば、顧客が解約する可能性は低くなります。
ガートナー社のレポートでは、「顧客が乗り換えの機会を提示されたとしても、価値を高めるサービスを受けた後では、(元々利用していた企業に)残る確率が平均82%」であったことが判明しています。
サブスクリプションベースの言語学習アプリのLingopieがこの取り組みの効果を実証しています。顧客の成功に焦点を当て、顧客の声に耳を傾け、価値を提供することで、Lingopieは4か月後に79%の維持率を達成しました。この維持率はNetflixやDisney+のような他のサブスクリプションアプリよりも高い数値でした。
クロスセルとアップセルの機会を見つける
カスタマーサクセスチームは関係を築くことに重点を置いているため、クロスセルやアップセルを行う上で理想的な立場にいます。営業チームからの売り込みは押しつけがましいと思われがちですが、信頼できるカスタマーサクセス担当者からの推薦なら、解決策として検討してもらえるかもしれません。
ただし、顧客の課題を間違いなく解決できる、あるいは顧客の成長に役立つ場合にのみ、製品を提案するべきです。そのため、顧客の本当のニーズを特定する上で必要な戦略的思考スキルを、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)に理解してもらう必要があります。誠意をもって提案する方法を習得してもらいましょう。また、クロスセル・アップセルの「意思決定ツリー」を作成する手もあります。
フィードバックループでインサイトを共有する
カスタマーサクセスチームは、双方向のフィードバックループの一環として、顧客からのフィードバックやインサイトをチームに提供する役割を担います。チームがその情報を何に活用するつもりなのかを明示し、顧客がその計画を認識していることを裏付ける必要があります。
こうすることで、チームは顧客のニーズを満たす製品を計画できるだけでなく、自社のビジネスにおいて検討すらしていないかったイノベーションに目を向けられるようになります。
カスタマーサクセスの仕組み
具体的なアプローチは、企業の規模やリソース、目的に左右されますが、カスタマーサクセスプログラムを導入する企業が必ず実施しなければならないステップがいくつかあります。
ステップ 1: カスタマーサクセス戦略を立案する
戦略の立案は、顧客を成功に導き、顧客との長期に渡る関係を築く上で極めて重要です。また、カスタマーサクセスのライフサイクルを計画しておくと、ビジネスに適したモデルを構築する際に役立ちます。
戦略を立案する上で、何から手をつければよいのかわからない場合は、 以下の質問を活用しましょう。
顧客はどのコミュニケーションチャネルを好むのか?
顧客基盤はどのようなコンテンツを好むのか?
現在のカスタマーエクスペリエンスはどのようなものか?
カスタマーサクセスは、既存の顧客のカスタマーエクスペリエンスにどのような影響を与えるのか?
ステップ 2: CRMと連携するカスタマーサクセスソフトウェアを入手する
ユーザーのアクティビティと傾向を監視する必要があります。効果的なCRMソフトウェアは、データに基づいてレポートを作成し、顧客の行動を予測することで、問題が発生する前にチームが解決策を見出すことができるように支援します。
ステップ 3: 顧客関係構築の戦術を受動型から能動型に変更する
ユーザーに製品やサービスの価値を素早く示すと、ユーザーの関心を維持できます。そのためには、新規顧客に対してオンボーディングプロセスを実施し、提供する製品・サービスを効果的に導入してもらう必要があります。
ステップ4: カスタマーサクセスのスペシャリストを採用する
カスタマーサクセスチームには、カスタマーサービス経験のある人材が求められます。雇用するべきスペシャリストの人数は、企業の規模によって異なります。
事業の拡大に伴い、カスタマーサクセスチームも拡大し、顧客基盤に十分なサービスを提供できる体制を整えてください。
カスタマーサクセス戦略を構築するための6つのヒント
最高の結果を得るには、カスタマーサクセス戦略の策定が欠かせません。以下の6つのヒントを参考にして、戦略の立案と実行を進めましょう。
1. カスタマーサクセス業務専門のチームを結成する
カスタマーサクセスの取り組みは、顧客のために全力を尽くせる適切なチームを結成することから始まります。このチームは、カスタマーサービスやアカウントマネジメント、その他の類似する顧客中心の部門とは切り離す必要があります。
- 小規模企業の場合: 特別な訓練を受けたカスタマーサポート担当者を1名のみ戦略的に雇用し、カスタマーサクセス業務を一任することができます。
- サービスとしてのソフトウェア(SaaS)企業、大手企業、またはサブスクリプションベースのビジネスの場合: 特定の顧客企業を専門に担当するチームメンバーを擁する、より大きなカスタマーサクセスの部署が必要です。また、チームをリードし、製品やサービスから長期的にメリットを得られるように顧客を支援する業務の責任者として、CSM(カスタマーサクセスマネージャー)も必要です。
あらゆる面において、多様性のあるチームを用意することが重要です。経歴や経験の異なるメンバーをチームに迎えることで、異なるスキルセットや視点がチームにもたらされます。このような多様性のあるチームを結成すると、CSMはより斬新で、クリエイティブに顧客の支援に臨めるようになります。
2. 顧客の問題点を分析し、成功を再現する
オールスターチームを結成したら、テクノロジーを活用して、顧客が成功していること、および顧客の成功を妨げている問題点を特定します。問題箇所を特定すれば、個別の解決策を提示できるようになります。
強みと改善点を見極めるために、以下の取り組みを行いましょう。
- 顧客からの苦情を確認する: サポート担当者やその他の顧客対応部門に、顧客とのやり取りに加え、顧客からの一般的なクレームや不満を記録するよう要請します。ここで役に立つのがCRMです。CRMでは、リアルタイムでのインタラクションの追跡、チーム間での情報共有などが可能です。
- データを分析する: 繰り返し発生する問題が、必ずしも製品やサービスと関係があるとは限りません。また、比較的単純な問題であっても、顧客は大きな迷惑を被っている可能性もあります (請求時に毎回発生する問題など)。
- 成功した顧客から重要な情報を得る: 成果を上げている顧客の成功の要因を解明しましょう。カスタマーサクセス業務を通じて顧客の得意分野に磨きをかけ、常に再現することを目指しましょう。
得手不得手を把握すれば、チームはこの情報を基に強力なカスタマーサクセス戦略を立案できます。
3. 社員全員にカスタマーサクセスのプロセスを理解してもらう
カスタマーサクセスには会社が一致団結して取り組む必要があります。そのための最も効果的な方法は、上層部から顧客中心のカルチャーを育むアプローチです。
経営幹部や各部門の責任者からの支持を確保するために重要なことは、顧客中心の取り組みのメリットを定期的に共有することです。会社の収益に直接影響することを目の当たりにすれば、幹部はカスタマーサクセスの取り組みを無視することはできないでしょう。
経営層からの支持を得ることができれば、他の社員に参加してもらうことは遥かに簡単です。以下に、チームリーダーが推進できる取り組みの例を挙げていきます。
カスタマーサクセスの取り組み
新しいポリシーの承認
カスタマーエクスペリエンスの向上に役立つ製品変更
このような顧客中心の考え方は、会社の他の部門にも自然に広がっていきます。
4. オンボーディングプロセスを積極的に行う
各種の学習コンテンツを用いてオンボーディングプロセスを実施することで、新規顧客は良いスタートを切り、事業や製品、サービスに関する有益な情報を受け取れるようになります。盤石なオンボーディングプロセスにより、顧客は製品やサービスがどのように自分たちに利益をもたらすか、あるいは自分たちのニーズに合うかをすぐに理解し、その効果的な使い方を学べます。
たとえば、以下のようなオンボーディングを提案できます。
製品・サービスを購入した顧客を歓迎するビデオ通話
無料トライアルに登録した顧客向けのアプリ内チェックリスト形式のオンボーディング
ただし、大量の情報を顧客に詰め込むのではなく、処理できる量を考慮した上で有益な情報を提供することを心掛けましょう。
5. 顧客を選別する
カスタマーサクセス戦略では、すべての潜在顧客をターゲットにするのではなく、顧客を厳選して対応するべきです。サービスや製品を利用する準備ができている顧客の中から、成功する可能性が高い顧客を探しましょう。
顧客基盤を厳選することで、当該の顧客に合わせてメッセージを調整し、ニーズにより適切に対応できるようになります。
6. 紹介プログラムを開始する
既存の顧客と良好な関係を築いているのであれば、その関係を活かして新規の顧客を獲得しましょう。たとえば、既存顧客が新規顧客を1人紹介するごとに、無料トライアルや1ヶ月の無料サービスを提供するなど、ビジネスを支えてくれる顧客に見返りを与える紹介プログラムを開始できます。
顧客の成功はビジネスの成功につながります。
組織の長期的な成長には、顧客の成功が不可欠です。ビジネスにおける顧客の成功を定義し、顧客の幸福を会社の目標に掲げることが、最初のステップとして最も重要です。適切なカスタマーサービスソリューションを用いて、次のステップに進み、今度はビジネスの成長を目指しましょう。