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「ステイホーム」の影響によるメッセージチャネルの台頭

現在、WhatsAppやFacebook Messengerといったチャネルが急激に人気を集めています。顧客のニーズにどのような変化が起きているのでしょうか?

更新日 2024年2月22日

2020年、突然の激しい嵐が世界を襲い、多くの企業が足をすくわれています。運営体制、オフィス、そして顧客に関しても、企業を取り巻く状況は一変しました。

McKinseyの最近の調査によると、米国の消費者の75%以上が、買い物やサービスの利用、企業とのやり取りに関して、今までとは違う方法を試すようになっています。このような変化は、新型コロナウイルスが収束を迎えた後も、長く定着することになるでしょう。

カスタマーサービスに関して言えば、メッセージチャネルの利用率が急増しています。要因の一つとしては、サポート担当者が大量の問い合わせ対応に追われ、顧客の待ち時間が非常に長くなっていることが考えられます。とは言え、WhatsAppやFacebook Messengerといったメッセージチャネルは、必ずしも最速で問題を解決できる手段というわけではありません。また、ここ最近は問い合わせ件数が減ってきているものの、メッセージチャネルは依然多く利用されています。

こうした状況から、顧客の最新のニーズについてどんな傾向が見えてくるでしょうか?

Zendeskは、メッセージチャネルの利用増加と、それが企業や顧客に及ぼす影響について理解を深めるため、新型コロナウイルスの感染拡大後、世界の約23,000社のサポート業務を追跡したベンチマークスナップショットをまとめました

メッセージアプリの人気は高まるばかり

メッセージアプリがこれほど支持されているのには理由があります。直接話さなくても、近況を確認したり気軽にやり取りしたりできる手軽なツールだからです。ウイルス流行前の時点でも、2020年末には27億人がメッセージアプリを利用するようになるとの予測が立てられていました。

そして、外出自粛ムードが続いている現在、人々がスマートフォンを利用する時間(特にメッセージアプリを利用する時間)は急増しています。

メッセージアプリは友人や家族とのコミュニケーションに便利な手段ですが、企業と顧客とのやり取りではそれほど多く利用されてきませんでした。しかし、その状況は急速に変わってきています。

2月以降、チャット(+16%)、メール/Webフォーム(+8%)、電話(±0)から寄せられたチケット(問い合わせ)に関しては目立った変化がなかったものの、WhatsApp、Facebook Messenger、Twitterのダイレクトメッセージ、SMSといったチャネルからのチケットは50%近く増加しました。WhatsApp単体で見ると、150%を超える勢いです。

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人気のアプリは地域や個人の好みによって異なりますが、圧倒的な人気を獲得しているプラットフォームもあります。Zendeskのレポート「State of Messaging 2020(2020年のメッセージアプリ活用の現状)」によると、WhatsAppは、少なくとも112か国で最も人気の高いチャネルとなっています。また、いくつかの外れ値も見られました。たとえば米国では、SMSやAppleのiMessageが多く利用されていますが、ソーシャルメッセージアプリの利用も増えつつあります。

注:この情報マップには、米国のスマートフォンユーザーの45%が利用するSMSとiMessage(Appleのデフォルトテキストソリューション)は含まれていません。ソース:SimilarWeb

全体的にメッセージチャネルの利用が最も速いペースで進んでいるのは、米国とカナダですが(以前はあまり普及が進んでいなかったのでしょう)、各地域ではそれぞれ異なるトレンドがあるようです。

  • 北米

    Facebook MessengerとTwitterからの問い合わせ件数が124%と急激に増加した一方、テキストメッセージについては32%の増加にとどまりました。

  • ラテンアメリカ

    WhatsAppの利用が164%も増加した一方、テキストメッセージとFacebook Messenger/Twitterの利用はそれぞれ38%と21%減少しました。

  • ヨーロッパ

    テキストメッセージからの問い合わせ件数が138%増加した一方、FacebookとTwitterの利用は25%の増加にとどまりました。

  • アジア太平洋地域

    Facebook、Twitterのほか、この地域で好まれるLINEやWeChatなどに人気が集中していますが、WhatsAppの利用も14%増加しました。

人気の秘密は手軽さにあり

今日、多くの顧客は、友人や家族とやり取りするときと同じ手段でサポート担当者とも連絡したいと考えています。このことから、顧客はどちらかと言うと、スピードよりも利便性や使いやすさを重視していることがわかります。

メッセージチャネルを使ったサポートでは、問題解決までに比較的長い時間がかかることがデータから明らかになっていますが、これは、他のチャネルと違って最適な人員配置や運用の方法をまだ見つけられていないチームが多いためです。この傾向は、電話やチャットといったリアルタイム型のサポートと比較すると明白です。

  • メッセージアプリによる問い合わせの平均解決時間は11時間以上にのぼる一方、電話やチャットの場合は約30分で解決される。
  • メールやWebフォームによる問い合わせの場合はもう少し長く、11.5時間かかる。

メッセージチャネルはまだ新しく、多くの企業は自社のサポート戦略にどう取り入れるかを模索している段階です。それを手助けするのが、Zendesk Supportの機能「ソーシャルメッセージングアドオン」です。とは言え、多少の障害があっても、WhatsAppやSMSの人気は順調に伸び続けています。

その理由は、電話と違ってリアルタイムで会話する必要がなく、作業を中断せずに自分のペースでやり取りできるからでしょう。犬を散歩に連れて行ったり、子どもに朝食を作ったり、ごみ出しに行ったりしている間に、問題が解決されるのです。また、チャットだと一度やり取りが終わると会話履歴が消えてしまいますが、メッセージチャネルではすべての履歴が残ります。

メッセージチャネルを使ったサポートは問題解決までに時間がかかる傾向にある。これは、他のチャネルと違って最適な人員配置や運用の方法をまだ見つけられていないチームが多いからだ。

メッセージチャネルはスピードの面ではやや遅れを取っていますが、いまだに大量の問い合わせが届いている中でも、レスポンスや問題解決のスピードは上がってきています。問い合わせへの応答時間は、ウイルス流行前よりも平均しておよそ1時間短縮し、問題解決までの時間も約30分短縮しました。

大企業での利用も急増

ますます人気の高まるメッセージチャネルに、大企業からも注目が集まっています。メッセージチャネルでのチケットトラフィックの増加率は、小規模企業では10%にとどまっていますが、大企業では80%にも達しました。また、ここ数か月間で、SamsungCathay Pacificといった企業がインドでWhatsAppによるサポートを開始することを発表しており、こうした動きは他の企業にも広がっていく見込みです。

eコマース企業でも、メッセージチャネルを使ったサポートが拡大しています。チャネル全体では486%も利用が増加し、あらゆる企業の中で最高の値を記録しています。中でも、FacebookとTwitterのダイレクトメッセージの利用は、550%近く増加しています。また、問い合わせの急増により、3~4月の問題解決時間は2倍以上になったものの、顧客満足度スコアは上昇しています。やはりメッセージアプリを利用する顧客は、スピード以外の要素を重視しているのでしょう。

チャネル別のトレンド

  • WhatsApp

    フードデリバリー企業では、テキストメッセージに代わりWhatsAppが多く利用されるようになりました。WhatsAppの利用は平均して110%増加した一方、SMSについては63%低下しています。他にも、オンラインヘルスケア(+583%)、ゲーム(+299%)、小売(+182%)などの業界で利用が増えています。

  • Facebook MessengerとTwitterのダイレクトメッセージ

    食料品会社では、FacebookとTwitterのダイレクトメッセージの利用が増えており、126%の増加を記録しました。旅行・ホテル業界でも34%増加しており、その一方でWhatsAppについては26%減少しています。また、航空(+65%)、エンターテイメント(+57%)などの業界でも増加傾向にあります。

  • SMS

    フィットネス業界では、テキストメッセージによる問い合わせが300%余り増加したほか、エンターテイメント(+194%)、リモートワークおよび学習プラットフォーム(+170%)、航空(+33%)などの業界でも高い増加率が見られました。

今後の展望

他のチャネルに比べて成長が目立っているとは言え、メッセージチャネルは、まだ主要なサポートチャネルと呼べる段階にはありません。しかし、対面で顧客をサポートする機会が激減し、人と人とのつながりが重視されている今、多くのサポートチームにとってメッセージチャネルは重要な役割を担っていくことになるでしょう。

大企業は、既にメッセージチャネルによる新たなサポートの可能性を模索しています。オランダの航空会社KLMが、Facebook Messenger、Twitter、WhatsApp、WeChatを使って24時間年中無休のサービスを展開しているほか、インドの衛星サービス事業者Tata Skyは、WhatsAppを通してチャンネルパッケージの追加やアカウント残高の確認ができるサービスを提供しています。

GoogleとAppleは、ユーザーが認証済み企業と直接メッセージをやり取りできるチャット機能を、AndroidとiOSでそれぞれリリースしました。また、規制とのすり合わせが必要ではあるものの、WhatsApp Payでは、メッセージプラットフォーム上ですべての取引を完結できる可能性も見えてきました。

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人と人とのつながりが重視されている今、多くのサポートチームにとってメッセージチャネルは重要な役割を担っていくことになるでしょう

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顧客は積極的に新しいことを試そうとしています。企業との関係の在り方が急速に変化している今、その傾向は特に強くなっているようです。カスタマーエクスペリエンスの大部分がオンラインに移行する中、企業はメッセージチャネルを利用することで、自動応答やデータセキュリティの強化といったメリットを感じることができるでしょう。しかし、メッセージチャネルを活用する最大のメリットは、顧客によりパーソナライズされたエクスペリエンスを届けられることなのです。

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