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対話型AIをカスタマーサポートの業務効率化に生かすために必要なテクノロジーは?

更新日: 2024年1月30日

ビジネス環境が不透明さを増すなか、カスタマーサポートの対応品質の高さは企業競争力を左右する要素の一つであり、決して軽視できません。しかし、必要な人材の確保が難しい状況下でカスタマーサポート部門はさらなる効率化を求められ、多くの企業が顧客満足度を高められる運営ができているとは言いづらい状況なのではないでしょうか。

本記事では業務の効率化を阻む障壁を紹介し、業務効率化を強力に推進できるテクノロジーとして、今世界中が注目している対話型AIについて解説します。

カスタマーサポートの業務効率化を阻む障壁

カスタマーサポートの業務効率化を阻む主な大きな障壁に、「複数のチャネル間や過去のやり取りに関するサポートシステムの未整備」「問い合わせ件数の多さ」「ナレッジの属人化」があります。

複数のチャネル間や過去のやり取りに関する問い合わせを支援するシステムがない

近年は、顧客からの問い合わせチャネルが電話やメール以外にWebの問い合わせフォーム、チャット、SNSなど多様化(オムニチャネル化)しています。その結果、例えば対応が電話から他のチャネルに変わったり、同じ問い合わせが同時に電話とメールなど複数のチャネルに入ったりすることも多くなっています。

この場合、チャネル間の連携ができるシステムがないと、対応履歴の把握が難しく、スムーズなサポートができなくて業務効率が低下します。それだけでなく顧客に同じ説明を何度も繰り返しお願いしなければならなくなります。また、サポート担当者が変わったり、過去の対応履歴が把握できなかったりすることで異なる対応や回答をしてしまうリスクも生じます。

サポートの遅延や顧客へ同じことの再三にわたる説明の要請は顧客満足度を低下させます。異なる対応や回答は企業への信用・信頼を失わせて顧客満足度の低下以上のダメージを企業に与え兼ねません。業務効率化を推進し、リスクを回避するには、複数チャネル間での顧客対応の一元管理が可能なオムニチャネル問い合わせ管理システムの導入が必要です。

システムの導入で顧客情報や過去の顧客対応履歴を担当者が把握できるので、チャネルをまたいだ問い合わせにも一貫した顧客対応ができます。同時に過去の対応履歴をチャネル別に探す手間も省け、複数のチャネルにまたがった問い合わせにも混乱せずにスムーズかつシームレスに同じサポートスタッフが対応できるため、業務の効率化にもつながります。

なお、Zendeskが世界20カ国99,000社以上の消費者やビジネスリーダーを対象にしたCXに関する年次調査CXトレンドレポート2023年版では、消費者の37%が「あらゆるシーンでスムーズな顧客体験を提供するブランドを優先的に利用したい」と回答しています。スムーズな顧客体験の提供に失敗すると、顧客を失うリスクが高くなります。

問い合わせの数に対して十分な対応ができない

カスタマーサポート部門は、顧客との重要な接点であり、継続的な購入や継続率、解約率に影響するプロフィットセンターとしての役割を担っています。しかし、一部では、いまだにコストセンターと捉えられていることもあります。

そのため人員に余裕のある運営が難しく、問い合わせ件数に対して処理能力が慢性的に不足しています。この状況を放置すれば、顧客満足度は低下の一途を辿ります。何かしらの対策が必要ですが、人件費の予算不足に加えて、近年は少子高齢化による労働力不足や人材の流動性の高まりもあり、人員を増やさずに顧客満足度の向上を実現するにはサポート業務の効率化が必要です。

ナレッジの属人化が生じる

カスタマーサポート業務は、一人ひとりが異なる人格を持つ顧客から多種多様な内容の問い合わせにスタッフが原則として各人で対応します。そのため、組織として制度やシステムが整っていなければ、幅広い質問に回答できる知識や、クレーム対応のノウハウノウハウなどのナレッジが属人化し、共有が進まないことがあります。ナレッジを効率的にサポート担当者全員で共有するには、システムやツールの活用が必要です。ナレッジの属人化は以下の弊害をもたらします。

  • 迅速で質の高い正確な回答をサポート担当者の全員ができるとは限らない。
  • 回答の遅延と質の低い回答は処理件数の低下を招く。
  • スタッフによって回答の質・内容が異なる問題が発生する。
  • 顧客対応や回答で同じミスを繰り返す原因が解消できない。
  • 特定の優秀なスタッフへの負荷が高まり、チーム全体のパフォーマンスの低下を招く。
  • 優秀なスタッフの離職が離職する際に、ナレッジが継承できずに社内に残らない。
  • ナレッジをサポート担当者に教育するコストが増大する、あるいは教育ができない。

以上の弊害は業務効率や顧客満足度を低下させるため、ナレッジの属人化の防止が必要です。

カスタマーサポート業務の効率化に必要な対策

カスタマーサポートの業務を効率化できる有効な対策を紹介します。

問い合わせ管理システムやCRMによるデータの一元管理

問い合わせ管理システムやCRMを利用すると、顧客対応の履歴や進捗情報を組織で共有し、複数の問い合わせチャネルの情報を1つのシステムに集約して一元管理できます。また、問い合わせをカテゴリーや内容に応じて自動的に分類したり、サポート担当者に割り振ったりできるため、これらの作業を行う煩わしさを省けます。

Zendeskの問い合わせ対応画面利用例

その結果、優先度の高い問い合わせや複雑で高度な対応が求められるに問い合わせに集中しやすくなり、顧客ごとにパーソナライズされた対応を効率的に実現できます。問い合わせ管理システムは、顧客からの問い合わせやその対応、および進捗などの情報共有や一元管理を支援するツールです。CRMは、顧客の属性や購入履歴などの情報を適切に管理し、有効に活用して顧客との良好な関係を構築できるツールです。

FAQによる自己解決率の向上

顧客の自己解決率が向上すると、問い合わせ件数が減り、サポート担当者の負荷を軽減できます。これによりサポート担当者は、より複雑で難しい問い合わせ対応に集中できることから業務を効率化できます。一方、顧客は問い合わせの手間が省け、すぐに必要な回答を得られるため、満足度が向上します。

Zendeskで作成したFAQのサンプル

さらに、FAQによる自己解決率が高くなるとサポート部門の人件費の削減や、顧客の問題解決につながるFAQの内容が充実すれば、新しいサポート担当者が入社した際にFAQを通じてナレッジを習得できるので新人スタッフの教育費用の削減も可能です。

ナレッジベースによるナレッジ共有

ナレッジの属人化を防ぎ、組織全体でナレッジ共有を進めることで、スタッフ全員の知識や対応能力が向上し、均一で迅速かつ正確なサポートが可能になります。これにより、過去のナレッジを活用して複雑で高度な問い合わせにも、より早く正確に回答でき、顧客満足度を向上させられます。
また、ナレッジが蓄積されることで既存のナレッジから新しいナレッジを生み出せたり、既存のナレッジの質を高めたりすることにもつながります。

Zendeskの社内FAQの記事作成画面

対話型AIによるサポート業務の自動化

サポート業務の効率化に大きな期待が寄せられており、今注目を集めているテクノロジーの1つが対話型AIです。対話型AIは自然言語処理技術や機械学習技術を用いて顧客の問い合わせの内容を理解し、適切な回答を自動で提供できます。

例えば、顧客からの質問を理解してFAQに掲載されている回答を自動で返信したり、FAQ記事やサポートマニュアル、その他学習データをベースに顧客からの質問に自動的に解決策を提供できたりします。これにより、問い合わせ対応を自動化でき、業務効率化やコスト削減と顧客満足度の向上を両立させられます。

ZendeskのAI搭載型ボットの利用例

サポート業務を対話型AIで自動化する具体的なメリットは以下のとおりです。

(1)24時間365日無休のサポート対応ができる
サポート担当者が不在でも対話型AIが自動で問い合わせに対応します。

(2)サポート担当者の負担を軽減する
単純な問い合わせへの対応は対話型AIが行い、問題を解決できなかった場合にサポート担当者に履歴とともに引き継げます。また、担当者が対応するときには、顧客が何を求めているかを対話型AIが分析し、解決に適したスキルや知識のある担当者にサポートをつなぐことも可能です。また、引き継ぎにあたって顧客の情報(属性や問い合わせのカテゴリーなど)は対話型AIが受け付けるため、問い合わせの分類や優先順位付け、および情報の入力の手間を軽減できます。

最新のAI技術を活用すれば、問い合わせ時の顧客の意図や抱いている感情、言語を識別し、問い合わせのルーティングや優先順位付けを自動的に行うこともできます(Zendeskのインテリジェントトリアージ機能)。また、対話型AIは、有人対応の担当者に質問への回答の参考にできるFAQや過去の似た問い合わせに参考になった記事を案内できるのでサポートを効率的に行えます。

(3)問い合わせ対応の場所を選ばない
対話型AIは、SNS、チャットなどのチャネルで利用できます。より多くの顧客をサポートできるため、顧客の利便性が向上します。

(4)複数の問い合わせに同時に自動で対応できる
サポート担当者による対応は、原則として各人がそれぞれの問い合わせに対応しますが、対話型AIは複数の問い合わせに同時対応ができ、問い合わせ件数が増加しても負荷を抑えた対応が可能です。

(5)問い合わせ対応の精度を高められる
問い合わせのデータや顧客からのフィードバックを蓄積し、分析することで、問い合わせの傾向や解決策のパターンを把握し、改善を繰り返せるので精度が高まっていきます。

(6)均一で質の高いサポートができる
問い合わせ対応で生じる人為的なミスやスタッフの回答品質のバラつきを防止し、均一な品質と精度で対応できます。

(7)売上促進の支援ができる
必要に応じて新製品や販売促進などの情報を提供し、顧客の購買意欲を喚起できます。

対話型AIをカスタマーサポートの業務効率にどう生かすか?

対話型AIはカスタマーサポート業務の効率化に大きく貢献しますが、その潜在能力を最大限に活用するためには、対話型AIの限界を理解し、使い方を工夫する必要があります。

対話型AIの限界

対話型AIの主な限界を紹介します。

(1)自然言語処理の限界
現在のAIの自然言語処理技術(人間が使う言語をコンピューターが処理するための技術)は、技術の進歩で言葉のニュアンスや多義性・多様性の理解がある程度までできるようになりました。しかし、人間が何を求めているのか意図を正確に理解した自然な対話までは、まだ完全にできるレベルには至っていません。特に、複雑な人間の感情やトーン、抽象的な概念、文化的な背景の違いなどの理解はまだ不完全です。

(2)教師データの不足による限界
機械学習のアルゴリズムをトレーニングするために必要な教師データが不足していると、対話型AIはトレーニングに使用されたデータに基づいて動作するので正しい対話ができません。質問に対して、データの不足や偏り、あるいは技術の進歩や法律の改正など反映しない古いデータに基づいて間違った回答を返してしまうことがあります。その場合、顧客が抱えている問題をさらに大きくする可能性があります。

より高度な対話型AIを構築するには正確で大量の教師データが必要です。しかし、教師データを用意するのも容易ではありません。例えば、障害が発生したときには緊急度の高い顧客対応が必要で、人間のような柔軟で素早い判断力や対応力が求められます。このような対応をAIが行うには、すべての障害について事前にデータを用意しなければなりませんが、事前にそのようなデータを準備することは現実としては困難なため、限界が生じます。

(3)継続的な学習による改善が適切に行われない限界
対話型 AIは定期的にデータを学習し、精度を改善していきますが、アルゴリズムやモデル、あるいはフィードバックの問題などで必ずしも適切に行われるとは限りません。その場合、精度が改善せず、効果が上がっていかない可能性があります。

(4)高度または複雑な問い合わせに対する限界
対話型AIはかつてないほど進歩して高い実用性がありますが、上記の問題を抱えているため、高度で複雑な内容の問い合わせには一定の限界があります。その結果、カスタマーサポートにおいては顧客対応を完全にAIに任せると、機械的な対応による顧客の感情の逆なでや、間違った回答を教えてしまい顧客の問題をさらに大きくするなどの事態が生じる可能性があります。AIのメリットを最大限に生かしつつ、AIによって生じる問題の防止に有人の担当者のサポートは現時点では必須と言えるでしょう。

人間と対話型AIの分業による対応


対話型AIの限界を認識したうえで、その限界を人間が補いつつ、対話型AIの人間よりも優れた部分の能力を生かすことを考えて、サポート業務の効率化を目指すことが必要です。

シンプルな問題の問い合わせを対話型AIに任せて自動化を進め、サポート担当者は複雑な問題の問い合わせやクレーム対応に専念することで、サポート業務全体の効率化が実現できます。具体的な分業方法は下記のとおりです。

(1)対話型AIは簡単な問い合わせに対応し、人間は複雑で難しい問い合わせに集中
ECサイトでの配送状況、サービスや商品ブランドでの仕様の確認や初歩的な技術上の問い合わせなど、顧客が知りたい情報を提供すれば解決できる問い合わせは対話型AIに対応を任せ、顧客が解決できなかったときに人間が引き継いで対応します。

例えば、単一の解決策を提供することが難しい、または内容が高度で複雑な問い合わせや、顧客の感情を読み取って対話する必要があるクレーム対応などは、対話型AIでは適切に問題を処理できない可能性が高く、人間が対応したほうがよいでしょう。

(2)対話型AIが得意な業務を行って人間はそれを利用して効率を上げる
顧客からの質問や対応履歴を要約したり、質問内容に応じた回答案をFAQやマニュアル、その他の資料などから検索して作成したりすること対話型AIが得意とする分野です。人間は対話型AIに指示を行い、もしくは自動で出力された成果を利用して効率的に業務に取り組めます。

(3)問い合わせが急増すると予測されるときに対話型AIで対応し負荷を分散させる
注目されている新製品の発売時や待たれていた新機能のソフトウェアのリリース、業態によっては連休の時期には、問い合わせが急増すると予測できます。こうした際には、想定される質問に対して対話型AI自動応答できるように準備することで、人間は通常の問い合わせ対応に専念できます。

(4)カスタマーサポート部門のプロフィットセンター化に活用する
カスタマーサポート部門のプロフィットセンター化は多くの企業が目指しています。しかし、サポート部門が顧客対応時に、顧客に適した製品やサービスの推奨や営業との連携といったアップセル・クロスセルの活動に時間を割いてしまうと、本来求められている迅速で正確な問題解決に支障が出てしまいます。

対話型AIは、営業やマーケティングに活用できるデータの収集や分析に活用できるため、これらの作業は対話型AIの能力を活用して、サポート部門の担当者は問い合わせ対応に専念できます。

(5)カスタマーサポート業務の課題や改善点、問題点を把握し業務の品質向上に活用する
対話型AIは利用者のフィードバックを受け取り、分析して、サポート業務の改善案を作成できます。例えば、顧客からニーズが多いFAQ記事の作成や効率的なオペレーション体制の提案などがあげられます。分析と提案はまさにAIが得意とする領域で、人間はAIの提案を検討し、効果的だと思えば実行し、必要に応じて修正することで、業務の品質向上に効率よく取り組めます。

進化するAIテクノロジーを利用してカスタマーサポート業務の効率化を実現する

カスタマーサポート業務は、顧客とサポート担当者が個別に対応する労働集約型業務で、効率化が今までは簡単にできませんでした。しかし、近年の技術の進歩により、その精度の高さやできることの幅の広がりから注目を集めているAIテクノロジーを活用した対話型AIをサポート業務に利用することで、業務効率を大きく向上させられます。

カスタマーサポート業務の効率化、質の向上は企業競争力に直結します。慢性的な人間手不足やサポート担当者の入れ替わりの激しく効率化ができていない状況を打破するには、対話型AIの活用は欠かせません。ぜひ、Zendeskで対話型AIの導入・検討を検討してみてください。

ZendeskのAIソリューションとは?

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