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コールセンターにおけるKPI管理の重要性と効果的な管理方法

更新日: 2023年9月29日

ビジネスシーンで目標までの達成状況を可視化するために用いられる「KPI(重要業績評価指標)」は、コールセンターにおいても現状把握や業績向上に有効な指標です。
この記事ではコールセンターにおけるKPIを一覧形式で解説するとともに、それぞれの計測方法、効果的な追跡・管理方法を紹介します。

KPI(Key Performance Indicator)の役割

KPIはKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳される指標です。企業や組織の目標を達成するために設定する評価指標で、KPIを用いて達成状況を定点観測することで、目標達成に向けた組織パフォーマンスの動向把握が可能となります。

また、KPIと合わせて目標管理の指標として用いられるのが「KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)」です。KGIは最終的に目指すべきゴールそのものを客観的・定量的に示すのに対し、KPIは特定の期間で「何を」「どの程度」達成するかを数値として定め、中間目標として各社員が取るべき行動を明らかにすることを目的としています。

コールセンターにおけるKPI管理の重要性

KPIは管理することで以下のようなメリットがあるため、業界業種を問わず幅広いビジネスシーンで活用されています。

  • 目標の具体化と共有
  • 進捗モニタリング
  • パフォーマンスの公平な評価
  • アクションの修正と改善
  • リソースの最適化
  • 競争力の向上

KPIを設定することで、目標達成までの道筋が明確となり、実行すべきアクションや目指すべき成果が理解でき、着実な目標達成につなげられます。また、目標達成に対する社員の意思統一がなされるため、日々の業務に対するモチベーションが向上し、組織全体での相乗効果が生まれやすくなるのがメリットでしょう。

コールセンターでKPIを用いる目的は、「顧客満足度の向上」「応対品質の向上」「業務生産性の向上」といった最終目標に対して、目標達成までの取り組み内容を明確にして具体化することです。

各個人では具体的なアクションの計画を立てづらい最終目標であったとしても、コールセンターのスタッフが目指すべき具体的な数値指標をKPIとして設けることで、それぞれの個人が注力すべきアクション内容が明確になり、結果的にコールセンター全体での目標達成が実現します。

コールセンターにおける主なKPIと計測方法

コールセンターでの業績管理で使われるKPI指標を、「顧客満足度向上」「応対品質向上」「業務生産性向上」「組織マネジメント改善」の目的別に紹介します。

顧客満足度向上に関するKPI

コールセンターを利用する顧客の満足度アップにつながる主なKPI指標は以下のとおりです。

KPI概要計測方法・算出方法
顧客満足度(CS)自社製品やサービスに対して、どれほど顧客が満足しているかを示す指標顧客にアンケートを実施
顧客推奨度(NPS ®)企業やブランドに対する愛着度・信頼度を測るため、どの程度推奨したいかを示す指標(推奨者数-批判者数)÷アンケート回答者数
クレーム発生率顧客の不満度を測るための指標で、コールセンターの対応に対する不満件数の割合苦情件数÷全応答件数
Thanks Call発生件数顧客がどれほど満足したかの指標で、コールセンターの対応に対するお礼の電話・メール・手紙などの件数件数をカウント
カスタマーエフォートスコア(CES: 顧客努力指標)顧客が目的を達成(問題解決・購入・利用など)するのに要した「手間」や「労力」を測る指標顧客にアンケートを実施
カスタマーエフォートスコアについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

コールセンターは「会社の顔」として顧客対応を担う部門で、コールセンターの対応が企業全体の印象を左右します。顧客満足度や顧客推奨度などのKPI指標が高ければ、企業・ブランドイメージも高く、中長期的なリピーターとなり得る企業のファン獲得、企業収益の向上にもつながりやすい状況と言えるでしょう。

応対品質向上に関するKPI

コールセンターの接続品質やオペレーター応対レベルなど、応対品質を測るためのKPI指標です。ここでは代表的なものを紹介します。

KPI概要計測方法・算出方法
応答率「電話のつながりやすさ」を示す指標で、入電総件数に占める実応答件数の割合オペレーターが対応できた受電数 ÷ 総着信数
放棄率(放棄呼率)オペレーターにつながる前に顧客が電話を切ってしまった、システム的に切断したなど、オペレーターで対応できなかった件数の割合放棄呼数 ÷ 総着信数
サービスレベル(SL)「○○秒以内に入電に対応する」とあらかじめ定義した応対レベルを満たした件数の割合(基準内応答率)設定時間内に受電した数 ÷ 総着信数×100
平均応答速度(ASA)電話をかけてからオペレーターにつながるまでの平均時間オペレーターが応答するまでの時間合計 ÷ 総着信数
初回解決率(ファーストコール解決率、FCR)最初の入電でコールリーズン(問い合わせ理由)が解決した件数の割合初回のコンタクトで解決した件数÷総着信件数
初回解決率(FCR)について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
モニタリングスコアオペレーターの業務遂行力や言葉遣い、共感力などの応対レベルを測る指標複数の観点を用意したモニタリングシートで採点
ミス発生率顧客への誤回答など対応業務中に発生したミスの件数各コールセンターで対象とするミスや測定方法を定義
当日回答率問い合わせ当日に回答できた件数の割合当日回答できた件数÷ 総着信数
一次回答時間電話応答から一次的な回答をするまでにかかった平均時間問い合わせ時刻と初回回答時刻の差の平均

応答品質の高さが顧客満足度や顧客推奨度につながりやすいので、コールセンターの運用上、応対品質に関する指標は重要視したい指標です。また、紹介したKPI指標を使うことで管理者やSVによる主観を入れず数値で状況把握ができるため、正確かつ納得感のある評価ができます。

業務生産性向上に関するKPI

コールセンターの業務を効率化できているかを評価するための指標です。代表的なKPI指標を紹介します。

KPI概要計測方法・算出方法
稼働率オペレーターの勤務時間のうち、顧客対応(顧客との通話応対、後処理、待機など)にかけられる時間の割合顧客対応時間÷勤務時間
平均処理時間(AHT)通話や後処理など、顧客の対応にかけた時間の平均平均通話時間(ATT)+平均処理時間(ACW)
平均処理時間(AHT)について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
平均通話時間(ATT)顧客との通話にかけた時間の平均(通話時間のみに特化した指標)通話時間の合計÷総コール数(対応件数)
平均後処理時間(ACW)通話後の処理(対応履歴の記入、システム登録など)にかかる時間の平均後処理時間の合計÷対応件数
コール・パー・アワー(CPH)1人のオペレーターが1時間内に対応できる処理件数総処理件数 ÷ 総稼働時間
コスト・パー・コール(CPC)1件当たりの電話対応にかかるコスト(人件費や設備費など)コールセンターの総コスト÷処理件数(対応件数)
自己解決率自動応答システムやFAQなどを利用して顧客が自分で問題を解決した割合顧客が自己解決した問い合わせの件数 ÷ 総問い合わせ件数)
自己解決率について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
FAQアクセス数FAQページへのアクセス件数特定期間でのFAQページへの総アクセス件数

コールセンターの対応業務や、扱っているサービス・製品特性、オペレーターの応対レベルなどによって目指すべき指標値が異なるため、統一基準はありません。

より短い時間・小コストで対応できていれば、その分多くの件数に対応できるので、センター全体として良い状況だと判断できます。コールセンターの過去実績などを参考に目標値を設定しましょう。

組織マネジメント改善に関するKPI

管理者やSVが、コールセンター機能を維持・改善するために活用したい指標もあります。ここでは代表的なKPI指標を紹介します。

KPI概要計測方法・算出方法
欠勤率オペレーターの勤務予定日数のうち、欠勤した日数の割合欠勤日数÷予定勤務日数
離職率一定期間内に離職したオペレーターの割合離職者数÷労働者数

これらの指標が悪化すると、職場環境が悪化しており、オペレーターの心身不調を招きやすい状況であると判断できます。コールセンタースタッフのモチベーションが上がりづらく、人材定着もしにくくなるので、待遇や職場環境の改善に取り組むことが重要です。

KPIの効果的な追跡・管理方法とは

KPIの適切な設定と追跡・管理を通じて、具体的な数値目標を設定し、目標達成の可能性を高めることが可能です。以下では、KPIを最大限に活用し、そのパフォーマンスを効果的に管理するために重要な「SMART」というフレームワークを紹介します。

SMARTを意識する

KPIを効果的に管理・活用するためには、達成したいKGI(最終目標)を意識した適切な指標値の設定が重要です。そのためには、「SMART(スマート)」という目標設定と管理のフレームワークを用いてKPIを設定することが効果的です。

SMARTは、ジョージ・T・ドランが1981年の論文で初めて提唱したものであり、その考え方はドラッカーが提唱した「目標による管理」の概念と深い関連性があります。SMARTでは、目標を設定する際に満たすべきである5つの要素を示します。

  • Specific (具体的)
  • Measurable (測定可能)
  • Achievable (達成可能)
  • Realistic (現実的)
  • Time-bound (期限がある)

コールセンターとして、目標を設定する際は、上記のそれぞれの要素を踏まえた上で、きちんと機能するKPIを設定しましょう。とはいえ、目標によっては、5つの要素を全て満たすことが難しい場合もあります。

会社がコールセンターに求める役割や機能を踏まえた上で、それぞれのコールセンターに最適なKPIを設定しましょう。 SMARTを意識したKPIは、KGIから逆算されて設定されているため、目標達成に向けた意味のある指標です。やるべきアクションを効率的に進められるため、スピーディーな目標達成が期待できるでしょう。 参考:George T. Doran. (1981). There’s a S.M.A.R.T. way to write management goals and objectives

定期的に集計・分析しPDCAサイクルを回す

KPIは一度設定したら終わりではなく、週次や月次などで定期的に進捗状況を追跡・分析しながらPDCAサイクルを回すことが重要です。

KPIの設計・設定はあくまでもPDCAサイクルのPlan(計画)にあたるので、その後にDo(実行)、Check(評価)、Action(改善)が伴わなければ、着実な効果は得られません。 このとき、各KPI指標の達成状況は逐次組織内で共有しましょう。目標達成に向けた一体感や協力関係が生まれやすくなります。

システム・ツールを活用する

KPIの追跡・管理は、Excelやスプレッドシートでも可能ではありますが、所属するオペレーター数・スタッフ数が多い場合は管理が煩雑となり、現実的ではありません。

また、手作業で管理するとなると、KPI算出に必要な情報を収集するためにソースコードの埋め込みやデータベースからの抽出等の作業も必要になるので、プログラミングやITスキルなどが必要となり、技術的なハードルの高さを感じる管理者も多いでしょう。

そのため、効率的にKPIを追跡・管理するのであれば、データ収集・分析用のシステムやツールを活用するのがおすすめです。システムやツールを活用することで、KPIとして設定した指標の算出に必要なデータを顧客対応記録などから自動で収集し、分かりやすい管理レポートとして出力できるので、管理者の管理負荷を大きく削減することが可能となります。 例えば、世界11万社以上が導入するZendeskのカスタマーサービスソリューションは、カスタマーサポートの業務効率化やFAQサイトの改善といった施策の策定に必要な分析レポートを搭載しており、瞬時にレポートで具体的な指標の数字を確認できます。ほかにも、顧客一人ひとりに合わせたサポートを提供するための充実した機能を備えており、CX向上につなげることができます。

Zendesk導入事例

旅行モバイル通信サービスのリーディングカンパニーであるテレコムスクエアは、複数の問い合わせチャネルを一元管理するためZendeskを導入しました。

従来4つのツールを使って問い合わせ管理していたところを、Zendesk Supportをはじめ、Zendeskのチャット、コールセンターシステム、ヘルプセンター構築、レポーティング&分析といった機能をフル活用しながら、Zendeskに統合しています。

【Zendesk導入事例】
株式会社テレコムスクエア

Zendesk Supportの画面を開けば、すべてのチャネルからの問い合わせを一覧で参照できたり、月1回の経営報告の際にパソコン画面を操作しながら説明でき、必要に応じてドリルダウンできたりと、業務効率化の効果が実感されています。 Zendeskの問い合わせ対応画面 また、Zendesk SupportにはFAQページ内の最適な記事へのリンクをワンクリックでチケットに挿入する機能もあり、あらかじめFAQページのリンクを含めた回答内容を用意しておくことで、エクスペリエンスを高めつつ、工数も削減できると、オペレーターにも好評です。

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効果的にKPIを活用しコールセンター業務を改善しよう

コールセンターにおけるKPI管理は、効率的な業務運営と顧客満足度向上に欠かせない要素です。適切なKPIの設定と管理は、リアルタイムでの業績モニタリング、問題の早期発見、チームのモチベーション向上に貢献します。

正しいアプローチとツールを用いてKPIを管理することで、コールセンターはより効果的かつ競争力のある運営が可能となるでしょう。

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