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初回解決率の正しい活用方法

初回解決率(FCR)は、賢く使えばカスタマーエクスペリエンスの向上につながる指標です。しかし、そこに落とし穴がないわけではありません。

発行日: 2022年6月17日
更新日: 2022年6月17日

初回解決率とは

初回解決率(FCR)は一次解決率または初回電話解決率(one-touch resolution)とも呼ばれ、サポート担当者が一度のやりとりで解決できた顧客からの電話や問い合わせの割合を示す指標です。つまり、電話やチャットであれば一度の会話、メールであれば一度の返信で解決できた問い合わせの割合を示します。

FCRの計算方法

FCRの計算はとても簡単です。メール、電話、チャットなど、チャネルを問わず一度のやりとりで解決できた顧客の問い合わせ件数を、同じ期間に受け付けた問い合わせの総数で割れば算出できます。多くの企業では、バグの報告への対応など、一度のやりとりのなかで解決できない問い合わせがあります。計算に含めるやりとりは、一度のやりとりで解決できるはずだと理論上考えられる問題に限定してもよいでしょう。

初回解決率が重要な理由

最初のやりとりで問題を解決できると、メリットがあることは明らかです。顧客の立場になって考えると、何度もやりとりしなくてもすむように問題をすばやく解決してほしい、と思っていることは容易に想像がつきます。サポート担当者も同じことを望んでいます。問題の迅速な解決は誰にとってもメリットのある、まさに「ウィンウィン」のアプローチです。

FCRを重視する利点を裏付けるデータがあります。Service Quality Measurement(SQM)グループの調査はよく引用されるので、ご存知の方もいるかもしれません。この調査によると、FCRが1%上がると、CSAT(顧客満足度)が1%向上する一方で、コンタクトセンターの運用コストが1%下がり、さらに従業員満足度は1~5%上がるといいます。また、ICMIが実施した別の調査には、12か月間にFCRが上昇した企業の75%で顧客満足度が向上しており、半数以上の企業では運用コストや従業員満足度にも改善が見られたことが示唆されています。

初回解決率を向上する方法

簡潔にまとめると、顧客やサポート担当者が折り返し連絡しなくてはならない理由を把握して、その原因を減らすよう努めればよいということになります。一般的には、次のような解決策が用いられます。

  • 特定のスクリプトに沿って顧客に対応するのではなく、サポート担当者が自分の直観やスキルを発揮できるようにする
  • サポート担当者としての成功に必要な研修とツールを提供する。有効に機能するナレッジベースの構築もこの点で有用です。
  • 顧客と担当者が何度もやりとりしなくてはならない状況の原因になっている製品やプロセスの問題の改善に取り組む。こちらの初回解決率についてのヒントもご覧ください。

FCRの欠点

初回解決率が低い場合は、上記にご紹介した方法に取り組めば、おそらく顧客満足度を高められるはずです。しかし、成功のための指標としてFCRに頼りすぎるのは問題です。FCRが高いと他の問題が隠れてしまうことがあります。一見うまくやっているように見えても、実は顧客が何度も、あるいは必要以上に連絡しなければならない事態に陥っている場合があります。次の点も考慮するようにしましょう。

  • 顧客側の問題: やりとりを終えた後で、顧客がサポート担当者から説明を受けた手順をうまく完了できない場合や、副作用として意図せず新たな問題が出てくる場合があります。この場合、企業にとっては2つの別の問題に見えるかもしれませんが、顧客にしてみればこれは密接に関連した1つの問題です。
  • 顧客のこだわり: たとえ適切な解決方法ではなくても、顧客が特定の方法にこだわることもあります。その方法がうまくいかなければ、顧客は再び企業に問い合わせることになります。先ほどの例と同様に、企業側では、一度のやりとりで”解決”できた2つの問題とみなすかもしれませんが、苛立ちを感じている顧客は、同じ問題のために2回も問い合わせなければならなかったと捉えます。
  • セルフサービス型サポートの不備: FCRが高いのは、ナレッジベースや製品のヘルプに、よくある質問に対する回答が含まれていない、または見つけにくいことが理由かもしれません。「そもそも問い合わせが必要な問題か」という視点で検討することも必要です。
  • 目先の報酬: サポート担当者を初回解決率で評価しているがために、サポート担当者が顧客の問題を掘り下げずに、顧客が口にした質問にだけ答えるようになっている可能性があります。

解決策

The Effortless Experience』の著者は、初回解決率ではなく、次に発生する課題の回避に注力することを推奨しています。「この問題をどうやって解決するか」ではなく、「どうすればこの顧客は二度めの問い合わせをしなくてすむか」を考えるのです。 「このあと、どんな質問が出てくるだろうか?」と質問を予想して、最初のやりとりのなかでそれに答えることができれば、やりとりを終えた後で出てくる質問はおのずと少なくなります。

その他のヒント

  • 説明した手順をあとで顧客が実施する時に遭遇するかもしれない問題を予測して、その問題を防ぐ、あるいはその問題を自分で解決できるようにするためのツールを提供するようにしましょう。例えば、ナレッジベースに関連記事へのリンクを含めるのもひとつの方法です。
  • 必ず顧客の質問の根底にあるニーズを念頭に置いて、顧客にも確認しながら対応するように、サポート担当者を指導しましょう。顧客がなぜその手順を踏もうとしているのかをサポート担当者が理解できれば、顧客が正しい方向に進んでいることを確認しながら、それ以降に顧客がどんな手順を踏むかを予測できます。
  • 一度のやりとりで解決した問題を分析して、セルフサービス型サポートでその質問を解決する方法を検討しましょう。ナレッジセンターサービス(KCS)プログラムに投資すると、ナレッジベースを強化できます。
  • FCRを算出する時は、顧客から受けたフォローアップの問い合わせを必ず計算対象に含める必要があります。一定期間内に顧客から再び問い合わせがあった場合は、理由に関係なくすべてフォローアップとみなして、最初のやりとりで解決した問い合わせにカウントしないようにします。そのうえで、フォローアップでどんな問題を扱ったのかを確認して、どうすればその問題を最初の問い合わせのなかで解決できるかを考えます。
  • 初回解決率を評価に用いる時は、顧客満足度、顧客努力、サポート担当者の満足度などの他の指標とバランスよく組み合わせましょう。

これらのヒントや注意点を踏まえて業務に取り組めば、顧客が電話をかけ直す回数だけではなく、問い合わせが必要になる回数も減らすことができ、顧客にとってよりよい体験を生み出せます。これは顧客にとっても、部門にとってもメリットのあることで、ひいては企業の売上にもポジティブな影響をもたらします。

カスタマーサービスに関する重要指標、ワークフロー、業務運用については、『エージェントエクスペリエンスに目を向ける理由とは?』に詳細に説明されています。こちらも、ぜひご覧ください。