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会話型コマースによるカスタマーエクスペリエンスの変革

更新日 2024年2月22日

1994年8月、ある男性がNetMarketで友人にStingというバンドのCDを売ったことが、世界初のeコマース取引(電子商取引)でした。歴史的取引から四半世紀が経ち、非常に多くの変化がありましたが、eコマースは世界経済に欠かせない存在となり、AmazonやAlibabaのような巨大企業が台頭しました。現在、30年が経過し、eコマースは進化し続け、今、企業と顧客がメッセージでやり取りができるようになったため、新たな変化が生まれつつあります。

5人中4人の消費者がスマホで買い物し、スマホ所有者の87%がWhatsapp、 Facebook MessengerやWeChatなどのメッセージアプリを使用しているという、驚くべきデータがあります。 そして、小売業者はメッセージアプリを活用する重要性に気づき始めています。顧客に対してあらゆる接点で最適な購買体験を提供するという、いわゆるオムニチャネルの考え方を理解している企業は、顧客体験の向上を目的に会話形式で顧客とやり取りができるメッセージを既に活用し始めています。

以上のことを念頭に置き、会話形式でのメッセージのやり取りがeコマースやカスタマーエクスペリエンスをどう変えてきたのか、そしてあなたの事業でも注目すべき理由について詳しく見ていきましょう。

eコマースからcコマースへの移行

会話型コマース(WebサイトやSNSで企業が顧客とチャットなどで対話しながら商品を販売する手法、いわゆるcコマース)が、eコマースを完全にとって替わるというわけではありませんが、今後eコマースはより複雑な商品を購入する際に利用されるようになるでしょう。この傾向に疑いの余地はなく、実に83%もの消費者が製品について知るためにメッセージアプリで企業に連絡しており、そのうちの75%もの顧客が購入しているというデータがあります。これは、顧客がデスクトップやノートパソコンよりもモバイル端末を好む傾向にある事実を反映しており、WhatsApp、Google Business Messenger、Facebook MessengerやWeChatはこのトレンドを受けて顧客がアプリ内で商品を購入できるようにしています。

Facebookの発表によると、買い物客の65%がメッセージでやり取りできる企業から商品を購入し、買い物客の40%は会話型コマースがきっかけで買い物を始めたと言っています。このような数字が今後も増え続けることは疑いの余地がありません。

メッセージによるコミュニケーションが、持続的なオムニチャネルエクスペリエンスを提供

顧客は企業にサポートを求める際、自身が選んだチャネルに連絡して欲しいと思っていることは明らかですが、重要なのは、問い合わせ内容が解決するまで、チャネルを変えてもシームレスな対応を受け、何度も自分が言ったことを繰り返し言う必要がないということです。このようなニーズを満たすため、企業はコンテキスト(顧客の状況や過去のやり取り内容や状況)を見失うことなく、様々なチャネルで顧客とコミュニケーションできなければなりません。つまり、サポートチームは、顧客ごとに現在や過去の会話を表示できる管理画面を見る必要があります。ここで、従来のチャットと比較し、メッセージアプリがもたらすメリットをいくつかご紹介します。

  • 便利さ:

    cコマース(会話型コマース)は、商品のアップセル、新サービスの紹介や迅速かつ簡単にチェックアウトを行える新たな基盤となるでしょう。顧客は電話やチャットボックスの前で回答をじっと待つ代わりに、自分のペースでメッセージができます

  • 持続性:

    ビジネスは1回限りのチャット/対応から非同期な「常にオン」なコミュニケーションへと移行します

  • スピード:

    メッセージの送受信は迅速かつ確実で、誰かと話すまでの待ち時間がありません。

1-800-Flowersを例に挙げてみましょう。同社は顧客がどのチャネルからでも会話を開始でき、他のチャネルでも会話を継続できるようにしています。これは、会社がTwitter、Facebook、Instagram、iOS、Androidや自社webサイトを一つのプラットフォームに接続し、各顧客とのやり取りを一元的に把握できるようにしているのです。Pizza Hutでは、シェアが高いSNSやアプリ、Webチャットを通じて、顧客はピザを注文できます。お腹を空かした顧客にとっては、待ち時間もなく、電話に出たスタッフが注文を間違えるようなこともありません。

メッセージなら対話型で近代的なユーザー体験を提供

メッセージアプリと他のチャネルとの違いを1つだけ挙げるとしたら、会話の中で顧客がより直接的に多くのことができ、顧客に対して主体性や権限のようなものを提供している点でしょう。とはいえ、メッセージアプリにより、企業ができることも増え、個人に合わせておすすめ情報を送信したり、画像やリンクを活用したリッチなメッセージやカルーセル、その他の販売オプションを使用し、事業を展開する機会も広がっています。

その結果、どうなったでしょうか? 消費者はより少ない手順で、より簡単に商品を購入できるようになりました。例えば、とあるオンラインの小売業者は、顧客がファッションスタイリストとチャットでき、そのまま購入できるアプリを開発しました。スタイリストは様々な洋服の画像をカルーセル形式で共有し、顧客は拡張機能を利用してインタラクティブに洋服を組み合わせて購入できます。

ボットやAIによりeコマース企業は高品質なセルフサービス型サポートを実現

メッセージアプリは、今や顧客のパーソナルアシスタントになっています。2022年までに顧客とのやり取りの70%にチャットボットや機械学習、モバイルメッセージのような新しいツールが関わってくるようになり、商品購入の際により多くの消費者がチャットボットを受け入れるようになると、Gartnerは予測しています。さらに、現在では10億以上のデバイスが音声アシスタントにアクセスすることができ、音声アシスタントは情報やガイダンスの提供だけでなく、商品を購入する際にも利用されています。こうしたバーチャルアシスタントは顧客情報や購入履歴、趣味・嗜好等のデータをもとに顧客に応じた対応ができることに加えて、人間のように感じられる対応ができるという利点もあります。

メイクアップ製品を扱うSephoraでは、Google homeとバーチャルアーティストアプリを組み合わせ、顧客がモデルを使ってパソコンやスマホで製品をテストできるようにしています。最先端の技術に敏感な消費者はAmazonのAlexaを使用し食料品を注文し、スターバックスの音声入力対応アプリを使ってコーヒーを注文し、kik(メッセージアプリ)上でボットを使ってH&Mで洋服を購入しています。興味深いことに、H&Mのkikのボットは顧客の様々な購買行動にも影響しています。消費者が特定の衣料品について問い合わせると、ボットがその人物の購入履歴を検索し、人間のスタイリストと繋ぎます。さらにマーケティングにもデータを共有し、マーケティングチームは追加で商品を購入してもらえるように、この顧客をターゲットにして似たような製品を紹介するキャンペーンを実施することもできます。

メッセージの活用でプロアクティブなカスタマーサポートを実現

ZendeskのCXトレンドレポートによると、ほぼ1/4の企業が、問題が起きるのを未然に防ぐための、いわゆるプロアクティブなサポートは良好なカスタマーエクスペリエンスを実現する要素の1つと考えています。85%の顧客が企業からの積極的なコミュニケーションを受けることに関心があり、90%の企業が期日までに対応しなければならないことがあるときに事前にリマインドを送ってくれる企業と喜んで仕事をしたいと答えていることから、この数字は今後も確実に増え続けるでしょう。

企業はエンゲージメントとロイヤルティを促進するために、顧客の問題を未然に防ぐ方法をを見つけなければなりません。プロアクティブにメッセージアプリを活用し、顧客に購入に関するあらゆる情報を更新し続ければカスタマーエクスペリエンスを強化できます。Amazonが顧客に注文状況を知らせ、マーケティングチームが顧客の好みに基づいた新製品やサービスを紹介する取り組みなどもプロアクティブなカスタマーサポートの一例です。

会話型コマース時代の到来

顧客の需要が増えたことにより、ますます多くの企業が顧客とメッセージのやり取りをする手法を拡張する取り組みを行っています。この急速な変化は、顧客が企業とメッセージアプリを用いてコミュニケーションを行うことを肯定的に捉えているトレンドとも合致しています。Zendeskのベンチマークレポートによると、メッセージアプリでのやり取りは、電話やチャットよりも高い98%という顧客満足度を獲得しています。メッセージの活用は既にeコマースに革命を起こしており、今後もさらなる変化が起こる兆しがあります。

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