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ソーシャルリスニングとは? 手法、やり方、活用法、ツール

ソーシャルメディアからアクションにつながる実用的なインサイトを得る方法とは

更新日: 2024年2月22日

マヨネーズとケチャップを混ぜ合わせたソース「マヨチャップ」をご存知でしょうか。フライと相性抜群だと感じる人もいれば、悪趣味なつぎはぎ調味料でまるでフランケンシュタインだ、90年代の風刺ビデオは時代を先取りしていて見事だったなど、受ける印象は人によってさまざまでしょう。

賛否両論はあれど、マヨチャップがここまで知られるようになったのは、Kraft Heinzによるソーシャルリスニングが勝因であることには間違いありません。

対極的なケチャップとマヨネーズを組み合わせたこのソースは、もともとは中東のみで販売されていました。しかし、このソースを知った英国の消費者たちが、そのすばらしさについてソーシャルメディア上で議論し始めたのです。そうした投稿を目にしたKraft Heinzは、中東以外の地域でも受け入れられる素地があるのではと考えました。

Mayochup tweet

そこで同社は、Twitterの投票機能を利用して、米国の顧客を対象にマヨチャップを国内でも販売してほしいかどうかアンケートをとりました。その結果、販売を希望する声の方が多かっただけでなく、投票そのものもさまざまなプラットフォームを通じて3億回以上のインプレッションを獲得しました

このキャンペーンによって、Kraft Heinzは顧客のニーズを測れただけでなく、製品の認知度も高めることができたのです。

Twitterでのインタラクションに励んでも、常にこのような良い結果が出るとは限りません。しかし、ソーシャルリスニングは自社に対する顧客の声を聞き、その声に対応するための効果的な方法となり得ます。

ソーシャルリスニングとは

ソーシャルメディア上で自社のブランド、製品、競合他社、業界に対する声を収集し、分析するプロセスを指します。

顧客ベースや自社への印象について、アクションにつながる実用的なインサイトを得ることを目的としています。

具体的には、多くのリードや顧客が使用しているTwitter、Facebook、Instagramなどのソーシャルチャネルを定期的に追跡するとよいでしょう。ただし、自社の投稿や発言だけに注意すればよいわけではありません。ソーシャルリスニングとは、自社に関連するあらゆる声に耳を澄ませることなのです。

ソーシャルリスニングとソーシャルモニタリングの違い

この2つの言葉は、時に同じもののように扱われることがあります。しかし、モニタリングが自社に対する声を収集するのに対して、リスニングはその裏に隠された感情まで詳細に分析するのが特徴です。

前者は表層的な事実を捉えるだけですが、後者は一歩進んでその要因まで明らかにします。

ソーシャルマネジメントプラットフォームSprout Socialのソーシャルメディアマネージャーを務めるRachael Samuels氏は、次のように話します。「単にソーシャルメディア上でのアクションを分析するのではなく、それが意味しているところを分析するのです。より定性的で対象も幅広い分析であり、その結果を活用すれば、企業は先回りで適切な対応をとれるようになります」

モニタリングで見えてくるのは問題そのものですが、リスニングからは、その対処に必要となる要因に関するインサイトが得られます。さらに視野を広げて競合他社や業界全体を対象とした場合も、同じような取り組みを行うことで、一定のインサイトを引き出せます。

そのため、自社の投稿のパフォーマンスを追跡するだけでなく、関連する話題についてのさまざまな投稿にも目を向けることが大切です。

「ソーシャルリスニングとは、自社の状況だけでなく、その周囲の状況も把握することなのです」(Samuels氏)

ソーシャルリスニングの重要性

ソーシャルリスニングは、顧客の考えや姿勢を探るうえで役立ちます。そうした情報は、自社のマーケティングや営業に関する意思決定に欠かせません。また、ソーシャルリスニングは、製品やカスタマーサービスの改善につながる情報を得るための有効な手段でもあります。

ソーシャルメディア上での見込み客やリードの声を収集すれば、消費者にリーチするための最適な方法が明らかになります。同時に、製品の検索方法や課題、競合他社が選ばれる理由なども知ることができます。

Samuels氏は、次のように話します。「Samsungでは一時期、ターゲットオーディエンスを取り込む方法や、iPhoneに劣らぬコンテンツを開発する方法を探るため、ソーシャルリスニングを活用していました。最初に何を行ったかと言うと、Appleのコンテンツについてユーザーがどんな意見を上げているのか、また、どうして大きな人気を集めているのかを調査し、分析したのです」

その結果、Samsungは、iPhoneのカメラ機能、特に動画のスローモーション設定が好評を得ていることに気づきました。それを踏まえ、同社は、スローモーション設定を強調したGalaxyの動画キャンペーンを打ち出したのです。

Samsungでは他にも、ソーシャルリスニングを活用して、iPhoneユーザーがiPhoneについて不満に思っている点を突き止めた例もあります。画面サイズやバッテリー寿命など、具体的な不満がいくつか見つかりましたが、いずれの点でもSamsungはAppleに勝っていました。そこで、キャンペーンではこれらの点を強調し、大々的にアピールするようにしました。

カスタマーサービスでも、ソーシャルリスニングを活用して製品の問題点を把握することで、事態が悪化する前にすばやくアクションをとれるようになります。

顧客の3人に1人は、企業に質問したり、ちょっとしたやり取りをしたいときに、ソーシャルメディアを利用しています。企業は製品に関する顧客の声を分析することで、リアルタイムで問題を発見できます。

実際、ある飲料メーカーがブランド認知度についてのトピックを作成したところ、製品に関するいくつかの投稿で「ガラス」という言葉が使われていることがわかりました。詳しく調べてみると、ボトル内にときどきガラスが混入しているという不満の声が見つかったのです。

「その後、メーカー側は、どの時期にそうした投稿が多かったかをすばやく突き止めることができました。具体的には、どの出荷分に対する意見なのか、他の人から送られたツイートが何人のユーザーに届いたのかを特定できました。結果的には、それを基に正面から問題に取り組んだことで、顧客との関係を改善できたのです」(Samuels氏)

ソーシャルリスニングツールの活用方法

オンライン上でどれだけ長い時間を費やしても、企業に関連するキーワードをあらゆるソーシャルメディアチャネル上で漏れなく検索するというのは不可能でしょう。

しかし、Sprout Socialのようなソーシャルリスニングツールを使えば、関連するユーザーの声を自動的に追跡し、トレンドやインタラクションをすくい上げることが可能です。

リスニングを始めるには、関連するトピックやキーワードをソーシャルメディア上で追跡できるよう、ソフトウェアを適切に設定する必要があります。そうした設定により、以下に言及した投稿を漏れなく追跡できます。

  • 自社のブランド名、ソーシャルメディアでのハンドルネーム、製品名
  • 競合他社のブランド名、ハンドルネーム、製品名
  • 自社のスローガン、ブランドハッシュタグ、キャンペーン名
  • 競合他社のスローガン、ブランドハッシュタグ、キャンペーン名
  • 業界特有の用語やハッシュタグ

この際、名前やフレーズについては、よくある書き間違いも追跡対象に含めておきましょう。顧客の誤字脱字が多いからと言って、インサイトを拾い損ねることがあってはなりません。

Social listening example - Sprout Coffee

チャネルとトピックを設定すると、ソーシャルリスニングツールは、それぞれについて以下を含む重要な指標をレポート化します。

  • ボリューム:トピックに関する投稿数
  • 潜在的インプレッション:トピックが表示された回数
  • 総エンゲージメント:投稿に何らかの反応をしたユーザーの数
  • センチメント:否定的な声に対する肯定的な声の割合
  • デモグラフィック:自社に関する投稿に関与したユーザーのプロフィール名、使用デバイス、位置情報

さらに、ソーシャルリスニングツールとカスタマーサービスプラットフォームを統合させれば、カスタマーサービスを改善することも可能です。この2つを統合させることで、ソーシャルメディアマネージャーは自社のサポートの問題点を特定し、それをカスタマーサービスチームと共有できるようになります。

Samuels氏は、次のように話します。「Sprout Socialをはじめとした多くのソーシャルリスニングツールでは、アプリ内で別のメンバーにタスクやメッセージを割り当てることができます。重要な投稿をカスタマーサービスに関する問題点として委任したり、注意が必要な投稿をフラグ付けしたりできるのです」

そうした共同作業が可能になるSprout Socialとのインテグレーションを提供しているのが、Zendesk Supportです。Zendesk Supportなら、カスタマーサービスチームとソーシャルメディアマネージャーが、ソーシャルメディアチャネル上でサポートチケット(問い合わせ)を作成して共有できるほか、Sprout SocialとZendesk間でのメッセージのやり取り、割り当てられたタスクの追跡、そして顧客への迅速な対応が可能になります

変わり続ける世界で顧客の声に耳を傾ける

世界が不確実性を増していく中、企業はアジリティの重要性を強く認識しています。ソーシャルリスニングを活用すれば、次々と変化する顧客の好みもリアルタイムで把握できます。

「方向転換や臨機応変な対応が求められているとき、多くの企業は、重要な顧客層にすばやく簡潔にリーチできる方法を知りたいと考えるはずです。そんなときに効果的なのが、ソーシャルリスニングです」(Samuels氏)

ソーシャルメディアから得られるインサイトが多いほど、顧客へのサービスの質も向上します。カスタマーエクスペリエンス改善に早速取りかかるには、Zendeskの無料トライアルをお試しください。

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