カスタマーエクスペリエンスの未来予測
2030年までにカスタマーエクスペリエンスに何が起こるのか?Relateに参加して、Zendeskの5大予測をチェックしましょう。
更新日: 2023年1月5日

パンデミックで先行きが不透明になり、見通しが立たない状況になってから、しばらく経ちました。 2018年にカスタマーエクスペリエンス(顧客体験、CX)の未来についていくつかの予測を立てましたが、あれ以来多くのことが変化しました。
未来科学者ロイ・アマラ氏の言葉に 「テクノロジーの影響を短期的には過大評価し、長期的には過小評価する傾向がある」という、テクノロジーの評価について述べたものがあります。
過去2年間に発生したいくつかの困難が、結果的にテクノロジーを急速かつクリエイティブに進化させました。 短期的には多くの意味においてカスタマーエクスペリエンスの未来はそれほど不確かなものではなく、2025年までに起こることの多くは恐らく現在起きていることの延長線上となるでしょう。
しかし2030年までの展望となると、話は異なります。テクノロジーが私たちの予想をはるかに超えるスピードで進化し、カスタマーエクスペリエンスの概念を根本的に変えてしまう可能性すらあるのです。
テクノロジーは2030年までに私たちの予想をはるかに超えるスピードで進化し、カスタマーエクスペリエンスの展望を根本的に変える可能性があります。
詳しい予測はZendeskの年に1度のユーザーカンファレンス「Relate」で発表しますが、それまでの間、Zendeskの最高技術責任者(CTO)を務める私、エイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)より、私自身が現在考えていること、そしてすべての企業が今考えておくべきことの一部を、ご紹介します。
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会話型コミュニケーションが主流に
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カスタマーサービスのやり取りの主体がAIに
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高度に専門化されたサービスの到来
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適切なデータの活用が成功のカギに
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ノーコードの普及による開発の促進
カスタマーサービスチャネルの好みは世代や地域により異なり、時間が経てば変化することもあります。ただし一つ確かなことは、多くの人がスマートフォンを使用し、一日の大半肌身離さず持ち歩いているという事実です。
このことが、すべてを変えました。 人々のコミュニケーション方法が変わり、かつその頻度が高まりました。 家族が世界のどこにいようと、LINEやFacebook Messengerなどのメッセージアプリがあればいつでもメッセージを交わすことができます。こうしたやり取りが通常の連絡手段となり、電話をかけるのは緊急事態の場合だけになりました。
これは必ずしも、従来のコミュニケーション手段が使われなくなったという意味ではありません。ただその使われ方が、変わってきたのです。 マッチングアプリの閲覧から銀行振込、食料品の注文まで、さまざまな分野でオンライン処理が当たり前になりました。 サービスと人の距離を簡単に縮められるようになった今日、企業は顧客へのアプローチ方法を見直し、最適なコミュニケーションルートを検討すべきでしょう。
メッセージングはもはや「新しく生まれたサービス」ではありません。この認識は、私たちの予測とも一致しているはずです。 今や既存手段を脅かす競合チャネルであり、むしろその普及スピードに備える必要があるのです。
業績の高い企業は、何らかの形でメッセージングをすでに導入している割合が6.8倍も高いことが、Zendeskの調査で明らかになっています。
つまり業績の高い企業は、カスタマージャーニー全体でより充実した会話型カスタマーエクスペリエンスを、より積極的に実践しているといえます。 メッセージングが今後どの程度支配的なチャネルになるかが、注目されます。
AIの用途の中には、問題解決の簡易化や質問に対する回答の迅速化といった、日常生活のちょっとしたことをより便利にするという、目立たない機能もあります。 しかしその一方で、訓練された人間の目よりも正確にX線で悪性腫瘍を検出したり、熟練ドライバーがいなくても車やトラックを運転して遠くの目的地まで人や物を運んだりと、機械が人間に取って代わるに値する、見逃せない重大な機能を果たすこともあります。
こういった進歩にともない私たちが本当に議論すべきなのは、AIを採用すべきかどうかではなく、AIをどう活用するかです。 カスタマーエクスペリエンスの世界におけるAIは、自動化、推奨、予測機能との相性が抜群です。技術が進化すればするほど、AIはカスタマージャーニー全体にわたって、ますます多くの、より複雑なタスクをこなせるようになるでしょう。
AIは当初、人間が暗記や反復、時間のかかるタスクではなく、より人間的知性を要求されるタスクに集中できるよう開発が進められました。しかし現在は、人間がもはや望まない、あるいは従来の技術ではこれ以上スピードを上げることができない多くの分野で、重要な役割を果たす可能性が期待されています。
もしこれが本当なら、離職率が高く、従業員満足度が低いカスタマーサービス業界に、大きなメリットをもたらします。 問題は、自動化するインタラクションと人間が処理するインタラクションの数のバランスです。
この業界では、「お客様は神さま」がほぼ常識です。 これは、顧客に何かを指摘された際、企業は必ず善意を示して間違いを認め、自らそれを正そうとするというコンセプトです。 一見顧客寄りの概念に見えますが、実際に顧客への対応方法を決めているのは企業とそのカスタマーサービスチーム、つまりサービスを提供する側にあります。
しかし、もし逆に、顧客が自ら望むサービスを正確に定義して企業に提示し、企業がこれに応えるための指標を得ることができたら、どうでしょうか。 Zendeskの最新の調査レポートによると、たった一度でも不愉快な経験があれば他社に乗り換えると回答する消費者の割合は61%にのぼり、さらにそれが2回重なると、その割合は76%まで上昇します。つまりリピーターを獲得できるかどうかは、カスタマーエクスペリエンスの質にかかっているのです。
消費者は自らが望み、期待している具体的なサポートの内容を、すでにその場で発信しています。そしてこれを続ければ続けるほど、消費者のニーズはより具体的にかつ多様になります。 パーソナライズされた上質なカスタマーサービスの提供は簡単ではないかもしれません。しかし消費者がそれを購買の決め手としていることもまた、事実なのです。
企業はこれまで、不完全な情報、分断されバラバラに機能するシステムやデータソース、データの精度や清浄度の問題に悩まされ続けてきました。 しかし近年、データインテグレーションの面では大きな改善が見られるようになっています。 今日の企業の課題はデータ不足ではなく、膨大な顧客情報をどう整理し、活用できる状態にするか、ということにあります。
顧客の特徴を個別に認識するには、適切なデータソースや主要なインサイトを活用し、それぞれの顧客がその時々に何を必要としているかを理解する必要があります。 問題は、データは常に移り変わる、ということです。 私たちは、今日欲しいものを3日後も同じように欲しいとは限りません。
データはダイナミックに移り変わるものであり、顧客が自身のプライバシーやデータ所有権を保護しながら共有または差し控えるものであることに、私たちはいま気付き始めたのです。 これにより企業が適切なタイミングで適切なインサイトを得ることは非常に困難になりました。今後、この課題の解決が重要となります。
テクノロジーの進化は目覚ましく、今日、開発者の需要は非常に高まっています。 しかし適切な人材が不足しているため、すべての業界で一斉に技術を進歩させることは、困難といえるでしょう。 人材不足については、コロナ禍を機に発生したサプライチェーンのボトルネックが原因にも思われます。しかしこれも、低コード・ノーコード革命が急速に普及すれば、実際は解消できる可能性が高いのです。
ガートナー社は、2025年までに企業が開発する新しいアプリケーションの70%が、低コードもしくはノーコード技術によるものになると指摘しています。つまりドラッグ&ドロップやポイント&クリックなどの簡単な操作で高度な開発に匹敵する機能を誰でも実装できるようになる、ということです。
さらに、コンポーザビリティ(構成可能性)の向上により、コードの再利用の幅が広がります。 何倍もの効果を提供するコードのモジュラーパッケージが今後の主流となり、システムの開発を容易にします。ベースラインとして既に存在するものを活用することで驚異的な成長を可能にするオプションが増えるでしょう。