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IoTデータをCX向上に有効活用するためのヒント

更新日: 2024年2月22日

電動のスマートキックボードに乗って街を移動し、会議中はApple Watchでテキストメッセージをこっそり読み、音楽を聴きたくなったらAmazon Alexaのスマートスピーカーに曲名やアーティスト名を伝える――これらはいずれもモノのインターネット(IoT)と呼ばれる仕組みの一部であり、消費者が日々の生活で使用しているコネクテッドデバイスの数は着実に増えてきています。そして、これは人と機械が密接につながった社会のほんの一角を映し出しているにすぎません。

IDC(International Data Corporation)の試算によると、2025年にはコネクテッドデバイスの数が416億台に達すると言われています。同じ2025年に世界人口が81億人に達する見込みであることを踏まえると、地球上のすべての人が平均約5台のスマートデバイスを利用する計算になります。

IDCの予測によると、この416億台のコネクテッドデバイスから生成されるデータの量は、79.4ZB(ゼタバイト)にまで膨れ上がります。自社の製品としてIoTデバイスを販売している企業では、既にリアルタイム分析を利用して製品の状態をチェックしており、今後数年以内には、IoTデバイスのデータをさらに活用して、製品の利用状況や使用中に発生した問題を把握するようになると考えられます。

この記事では、自社のIoTデバイスから送信されるデータを分析して、カスタマーエクスペリエンスの向上を図るための方法を3つご紹介します。

IoTデバイスを顧客と見なす

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IoTデータを有効活用するには、まず自社の「顧客」という言葉の指す範囲を広げて、コネクテッドデバイスも「顧客」として捉える必要があります。というのも、コネクテッドデバイスに搭載されたセンサーからは、そのデバイスの状態に関するリアルタイムデータが生成されており、このデータを活用すれば、あらかじめサポートチケットを作成して、顧客が問題にぶつかる前に対処できるからです。

デバイスから送信されるシグナルの数は増加の一途をたどる見込みであり、Gartnerの試算では、「2023年には、サポート担当者が対応するケースのうち、コネクテッドデバイスのエコシステムで検知されたシグナルやセンチメントに由来するものの割合は40%に達する1」という予測が出ています。

つまり、IoTデバイスを使ったサポートでは、まずコネクテッドデバイスが問題の発生を検知し、企業はコネクテッドデバイスのデータを活用して先回りでサポートを提供できるようになります。

プロアクティブなカスタマーサービスの重要性は、業種を問わず高まっていますが、特にIoTの場合は事情が異なります。IoTでは、ユーザーがリアルタイムでサポートを必要とすることが多いので、ダウンタイムやシステム障害によるカスタマーエクスペリエンスへの影響がさらに大きくなる可能性があるのです。

たとえば、コネクテッドカーでの通勤中にバッテリーが故障した場合、サポート窓口に電話して、担当者が来るまで待たざるを得なくなれば、コストだけでなくストレスの原因にもなります。しかし、サポートが必要になったタイミングで自動車がシグナルを送信すれば、サポート担当者はすぐに代車を確保できるため、顧客の予約の手間を省くことができます。

コネクテッドデバイスのデータを接続する

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カスタマーサービスに求められる水準がかつてないほど高くなっているのは、IoTについても例外ではありません。消費者は問題が簡単かつスピーディに解決されることを望んでいます。実際、何度も繰り返し情報を伝えなくても済むように、企業内の各部門が連携することを期待している顧客は69%に及んでいます。

IoTデバイスを製品として提供している企業の場合、そこで必要になるのは、カスタマージャーニーの他のタッチポイントから得たデータをIoTデータと(多くの場合リアルタイムで)接続することです。そのためには、データ接続のための新しい手法を導入し、チャネルやデバイス、サポートのリクエストを問わず、担当者が顧客のデータを1つの画面でまとめて把握できる必要があります。

保存されている場所を問わず、社内のあらゆる顧客データを接続して把握することは、よりシームレスで優れたエクスペリエンスを構築するうえで不可欠ですが、コネクテッドデバイス自体から送信されるデータ(製品の利用状況や使用中に発生した問題など)が増えれば、顧客の問い合わせへの対応に役立つインサイトも増えるという副次的なメリットが得られる場合があります。

たとえば、IoTエアコンのバッテリーの故障について顧客からの問い合わせがあった場合、顧客が既に再起動を試したという情報を、エアコンが自動的に伝えてくれるケースが考えられます。この場合、サポート担当者は顧客が既に実行した方法をもう一度行うよう依頼せずに済むので、どちらにとっても時間の節約になります。また、先ほど説明した新しいデータ接続の手法を活用すれば、問題の解決に必要な他の情報(顧客の氏名や他に利用している製品など)を何度も尋ねる必要がなくなります。

さらに、顧客との過去のやり取りを1つの画面で把握できるようにすれば、ロイヤルティの向上につながる対応を促進できます。たとえば、先ほどのバッテリー故障の例で言えば、顧客がVIP会員や長年のお得意様であることを確認し、迷惑をかけたお詫びとして割引特典を提供するといった対応を実現できるようになります。

フィードバックループを促進する

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スマートデバイスから生成されるデータには、フィードバックループの構築を促す効果があり、各企業はスマートデバイスのデータを基に製品を改善する必要があります。たとえば、製品の状態に関する新しい情報を得るために、デバイスに問題が発生するタイミングや状況のパターンを特定するという方法が挙げられます。また、特定したパターンに関する情報をカスタマーサービス部門から製品開発部門に共有することで、顧客志向の製品改良を促進するという方法も考えられます。

さらに、デバイスから取得したデータをこれまでに入手した顧客のデータと組み合わせれば、デバイスのフィードバックループを強化することができます。そこで、先ほどのデータ接続の新しい手法が再び重要になります。というのも、顧客の状況を把握できれば、1人ひとりのニーズに合わせてカスタマーエクスペリエンスをパーソナライズして、より多くの価値を提供することが可能になるからです。

たとえば、先ほどのIoTエアコンのブランドで、寒冷地では使用開始から2年経つとバッテリーの故障がたびたび発生するというパターンを特定したとします。この場合、寒冷地に住む顧客に対して、気候の厳しい環境でバッテリーの寿命を長持ちさせるためのヒントを、カスタマーサービスチームからあらかじめ紹介しておくことが考えられます。あるいは、顧客が旧型モデルを使用していることが判明している場合は、最新モデルを勧めることもできます。

IoTは、企業が顧客と関係を構築する方法をこれからも変え続けていくことでしょう。IoTデバイスから送信されるデータに注目すれば、顧客との関係性を深めると共に、カスタマーエクスペリエンスの向上が実現します。

Zendesk Sunshineを利用してIoTデータを接続し、優れたカスタマーエクスペリエンスを構築する方法については、こちらのウェビナーをご覧ください。

1Gartner、「2019 Strategic Roadmap for Customer Service and Support Technologies」、著者複数、2019年5月7日