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コールセンターで起こる燃え尽き症候群を防ぐには?

コールセンターで働くサポート担当者は、独特の試練にさらされます。このために、燃え尽きてしまう人も少なくありません。燃え尽き症候群の原因を理解しておけば、この先大きな問題に発展する前に手を打つことができます。

発行日: 2022年5月20日
更新日: 2022年5月20日

コールセンター業務はストレスの多い仕事です。オフィス勤務であれ在宅勤務であれ、コールセンターのサポート担当者は燃え尽き症候群(バーンアウト)になりやすい職業です。これは、顧客からの問い合わせに対応する人、企業から社外に電話をかける役割を担う人、両方に共通しています。

幸いなことに、燃え尽き症候群には対処法があります。しかし、対処法を学ぶ前に、まずは燃え尽き症候群がどんなもので、カスタマーサービス担当者にどんな影響を及ぼすのかを理解しておかなければなりません。

目次

  1. 燃え尽き症候群とは
  2. 燃え尽き症候群になりやすい人
  3. 燃え尽き症候群に気づく
  4. マネージャーのための燃え尽き症候群対策ガイド

燃え尽き症候群とは

Mayo Clinicによると、燃え尽き症候群とは「達成感の低下やアイデンティティの喪失を伴う身体的または感情的に消耗した状態」を指します。

簡単に言うと、燃え尽き症候群は長期間にわたって仕事に関係するストレスにさらされた人に起こります。重圧で押しつぶされそうな気持ち、無力感、不安などの形で現れることもあります。これは非常に大きな問題です。

慢性ストレスは鬱や不安症など、長期的な精神衛生上の問題を引き起こし、心臓疾患のような身体症状として現れる場合もあります。残念なことに、コールセンターのサポート担当者が燃え尽き症候群になるのはごく普通のことです。

カスタマーサービス業務は感情的に負担の大きい仕事です。ペースが速く、結果が重視されるコールセンターの業務についていくのが大変になってもおかしくありません。プロとはいえ、サポート担当者もやはり人なのです。

「こんな決まり切ったことなのに、どうして私はできないのか?それは、燃え尽きてしまったから。なぜ燃え尽きてしまったのか?それは、休まずに働くべきという考えを自分の中に取り込んでしまったから。なぜそんな考えを内面化してしまったのか?それは、私の人生の何もかも、誰も彼もがその考えを増幅しているから」

Anne Helen Peterson 『How Millennials Became The Burnout Generation(ミレニアル世代がバーンアウト世代になったのは)

燃え尽き症候群になりやすい人

燃え尽き症候群にかかる可能性は誰にでもあります。Gallupの調査によれば、労働者の76%は燃え尽きを感じることがあり、21%は非常に頻繁に燃え尽き症候群になるといいます。ニューノーマルの一環で、職場の条件が絶えず変化する中、通常よりも燃え尽きたような感覚に陥りやすいことは想像に難くありません。

call center burnout
出典: Gallup

多くの場合、燃え尽き症候群というと、学歴がある白人の健康なミレニアル世代を思い浮かべます。2019年の話題になったエッセイにも、ミレニアル世代が「バーンアウト世代」として宣言されています。しかし、燃え尽き症候群についての議論の中でしかるべき認識を得られていない人たちもいます。詩人であり、フィクション創作講座の教師でもあるTiana Clarkは、黒人女性や有色人種がこの議論から締め出されている点に注意を喚起しています。

「実のところ、自分には疲労を感じる資格がないように感じています。有色人種のミレニアル世代だからなのか、際限のないメールやSlackの通知に対処するのはもちろんですが、職場でも職場の外でも自分の人間性をわかってもらおうと努力し続けてしまうのです」とClarkは言います。

Amanda Roosa氏曰く、「顧客と話す時には、女性のほうが共感的なスクリプトを忠実に守りながら、個人に向けたコメントを盛り込むことに長けていることがわかっている」ため、コールセンターは世界的に女性の比重が非常に高い職場です。 多くの場合、業務のために感情をコントロールしなければならない感情労働である点が見逃され、それに見合った報酬が与えられないことも、燃え尽き症候群に寄与する場合があります。

「コールセンター業務は世界的に、離職率や欠勤率の高さ、社員の燃え尽き症候群や情緒的疲労感の多さで悪名高い仕事です。サポート担当者は、顧客の激しい怒りやセクハラ、あからさまな罵倒を受けるリスクに絶えずさらされています。影響力をほとんどもたずステータスも低い、低賃金でストレスの高いこの仕事に女性を追い込んでしまうと、有能な人を失うことになります。それだけではなく、コールセンター業務に適した能力を備えた、業務に意欲を感じる男性が差別される状況に発展しかねません。

Kristina Hultgren氏『 Emotional labor in the workplace(職場の感情労働)より』

世の中に数え切れないほどあるファーストフードや小売店、倉庫、カスタマーサービスで働く、現代の労働者階級の大きな部分を占めている人たちと同じく、コールセンターで働く人たちも、燃え尽き症候群の議論から締め出されています。これらの人たちの年齢はもう少し高いことが多く、 カスタマーサービス担当者の年齢の中央値も7歳と、家族を養う年齢層です。特にコールセンターはストレスの多い職場ともいえますが、燃え尽き症候群の議論の中でサポート担当者は十分な認識を受けていません。

コールセンターで燃え尽き症候群が起こる理由は他の職場と同じです。バーンアウトはストレス、不明瞭な期待事項、ワークライフバランスの欠如が理由で起こります。言うまでもなく、コールセンター業務は大変な仕事です。問い合わせてくる顧客はたいていの場合、不満を抱えています。自分で調べたりセルフサービス型サポートを用いたりすることを好む顧客が多いとはいえ、サポート担当者と直接話さなければ解決できない問題もあります。カスタマーサービスの新しいチャネルとしてメッセージングとチャットが注目を集めていますが、それでも 電話で話すことを好む人もまだまだたくさんいます。

燃え尽き症候群の兆候

安定した初めての仕事がコールセンター業務の人も少なくありません。コールセンターでの仕事は食品サービスなどのように肉体的にきつい仕事ではなく、多くの場合、最低賃金よりも高い収入を約束してくれます。しかし、人によっては、1日中電話に応答してメールを送る業務に、精神的な負担と不満の鬱積を感じる人もいます。満足感を得られず給与のためだけに仕事を続けているような状態では、燃え尽き症候群になってもおかしくありません。

一方、自分の業務や知識、時間を尊重してもらっているとサポート担当者が感じられるコールセンターでは、燃え尽き症候群になる可能性が低くなります。職場内で昇進するチャンスを実感できれば、なおさらバーンアウトしにくくなります。

Elissa Reggiardo氏は「サポート業務は単に電話やメールで顧客の怒りをなだめながら対応するだけのことではありません。解決策を見いだす、直感力と共感を発揮する、ブランド管理や時間管理を行うなど、非常に多くのことが必要な仕事です」とも述べています。 一人ひとりが自分の力を感じられるようにするためには、協力者やメンターを見つけて、サポート分野でのキャリアをどのように進めていきたいかを自分で考えられる環境を作り出すことが大切です。

しかし、環境を変えるだけでは十分ではないかもしれません。職場における燃え尽き症候群についての議論の促進に努めるMaylen Taraは、「仕事の中で燃え尽き症候群を経験している人はセラピーを検討するすべき」と考える実践的先駆者です。「燃え尽きた、あるいは燃え尽きそうだと感じている人には、まずセラピストに会いに行くことを勧めるようにしています。燃え尽き症候群に最も大きな助けになるのはセラピーです」とTaraは言います。

マネージャーのためのコールセンターでの燃え尽き症候群対策ガイド

1. 部下のバーンアウトに気づく方法

燃え尽きつつある部下に気づくためには、鋭い目と少しばかりの共感が必要です。Taraは次のように説明しています。「完全な燃え尽き症候群になる前に、数か月ほど兆候が見られるはずです。やる気が下がり、仕事に対してとにかく疲労感を覚えるようになるため、場合によっては業務の質が落ちることもあります」

燃え尽き症候群になる理由

  • 不当な扱いを受けている
  • 手に負えない業務量をこなさなければならない
  • 担当業務が明確ではない
  • マネージャーからのコミュニケーションが足りない
  • 理不尽な時間的制約を強いられている

「直属の部下の業務の質が落ちている」「頻繁な遅刻や長すぎる休憩がある」「不満を抱えているように見える」「けんか腰で議論をふっかける様子が見られる」――ストレスの多い職場環境で、こうした特徴がひとつでも認められれば、燃え尽き症候群の兆候かもしれません。

コールセンターで起こる燃え尽き症候群について覚えておかなければならない重要な点は、バーンアウトはその人のせいではないという事実です。マネージャーは直属の部下が燃え尽き症候群に苦しんでいる時に手を差し伸べる重要な役割を担います。

その一方で、マネージャーがバーンアウトの原因になることもあります。不当な扱いを受けたり、事細かに管理されたりする、あるいは達成不能なことを求められるような職場では、燃え尽き症候群を心配するだけではすみません。

労働条件の悪いコールセンターでは、勤務者の減少率が上がり、研修に要する費用が増加するだけでなく、職場の評判が損なわれることにもなりかねません。

2. マイクロマネージメントを避けながら、部下にサポートを提供する

コールセンターではカスタマーエクスペリエンスやサポート担当者の業務に関係する指標を追跡しなければならないため、通話時間や平均処理時間(AHT)などのデータを収集する必要があります。このため、サポート担当者は勤務中、頻繁に監視されています。

マネージャーがサポート担当者の休憩やスケジュール、休暇など、エンプロイーエクスペリエンス(従業員体験)を追跡しなければならない職場では、有能な社員が正当な評価を受けていないと感じるような状況を生み出しかねません。それでも、日々KPIを追跡することは企業にとって非常に重要な業務です。どうすれば企業と社員両方のニーズを満たせるでしょうか?

微に入り細に入りコントロールするマネージャーは、善意からそうしているのかもしれませんが、これは効果的なリーダーシップのスタイルではありません。Gallupによると、 マイクロネージャーかどうかを判断するためには、「社員が顧客のことだけを考えているか、上司のことで頭がいっぱいか」を見ればよいといいます。

マイクロマネージメントとは、マネージャーが部下の業務を細かく監視してコントロールする管理の仕方です。コールセンターはKPIの追跡に大きく依存しているため、マネージャーは関連するKPIを超える部分にまで細かく監視の目を光らせてしまうという間違いを犯しがちです。こうなると、部下は押しつぶされるような気持ちになってしまいます。さすがに重箱の隅をほじくるような管理を好む人はいません。

マネージャーとして、部下をサポートするためにできることは非常にたくさんあります。例えば、コールセンターのサポート担当者が精神疲労回復のための休暇を取れるようにすることもひとつの方法です。 そのうえで、この休暇を取る人を問題視しないようにすれば、社員にとっていっそう働きやすい職場環境になります。同様に、社員が最適な状態で仕事に励めるように、シフト交代時にリラックスのための時間を設けるのも良いでしょう。

批判ではなく大切な点をフィードバックする機会を設けると、部下は行き詰るのではなく、自分の価値が認められていると感じるようになります。前後関係をしっかりと把握したうえで思いやりのあるフィードバックやサポート、アドバイスをすることは、マイクロマネージメントのフィードバックとは対極のものです。この種のフィードバックは効果的で、マネージャーが求める最終的な成果の促進につながる可能性も大いにあります。先日の記事でも触れたように、KPIは理由を明確にしたうえで使用する必要があります。

3. 優れたコールセンターテクノロジーに投資する

コールセンターで使用されているテクノロジーが古かったり、組織で使用している他のソフトウェアと連動していなかったりすると、カスタマーサービス担当者に苦労を強いることになりかねません。関連する情報を表示しながら直感的な操作で使用でき、部門の枠を超えた協力を可能にするコールセンターソフトウェアを導入できるかどうかで、社員が能力を遺憾なく発揮できると感じるか、働きにくいと感じるかが決まります。

現代のビジネス環境に即していない旧式のソフトウェアのままだと、サポート担当者どうしで協力しにくいだけでなく、関係のない指標が表示されたり、通話データの横に関連する顧客情報が表示されなかったりします。これでは、サポート担当者のエンプロイーエクスペリエンスが高くなるわけはありません。

しかも、最終的には顧客に大きなしわよせが及びます。仕事をうまくこなして、顧客に満足してもらえる対応をすることは、サポート担当者の望みでもあります。現代的なソフトウェアを導入すると、サポート担当者がこの対応を実現しやすくなります。

社員が目の前の作業に集中できるようにして、可能な限り最良のカスタマーサービスを提供できる環境を整えること、そしていたずらに業務に関係ない大局的なデータを見せてストレスを与えないようにすることを目指しましょう。

今の時代、もはや利益を最大の関心事にするわけにはいきません。顧客ロイヤルティを生み出すような顧客体験を作り出すことが企業の成功の鍵を握ります。エンプロイーエクスペリエンスとカスタマーエクスペリエンス(CX)の間には密接な関連性があります。顧客コミュニケーションに取り組むうえで、コールセンターで働くサポート担当者の燃え尽き症候群を防ぐための取り組みを軽視することはできないのです。

4. 不当な扱いを改める

残念ながら、何が不当な扱いかはきわめて主観的なことで、人によって違います。職場での衝突に人事部門に介入してもらうのか、何もしないでおくのかなど、マネージャーには様々な決定を下しながら、最大限に安全で健全な職場環境を整える義務があります。良好な職場環境は生産性を向上させて、そこで働く人たちの満足度を高めます。簡単なことではありませんが、マネージャーの手腕しだいで大きな違いをもたらすことができます。

まずは「共感」を企業の優先目標として掲げることから始められれば非常に効果的ですが、これはコールセンターのマネージャー1人の力でできることではありません。企業全体の取り組みにはできなくても、 共感に焦点を当てた研修でアクティブリスニング(傾聴力)とEQ(心の知能指数)のスキルを高めれば、マネージャーも部下も、互いに相手に理解されていると感じられることが増えるはずです。

5. 手に負えない業務量と法外な要求を見極める

部下が対応しきれないと感じている業務量になっている場合は、作業量を減らすことを検討すべきかもしれません。成果を重視する職場環境で、あえて期待値を下げるのは直感に反するように思えるかもしれませんが、カスタマーサービスの担当者も人間であることを忘れてはなりません。

業界の経験やノウハウをもつ有能なサポート担当者を採用すれば、この分野の仕事を始めたばかりの人とのバランスが取れる場合もあります。業界経験者は難なく高い生産性で働けるだけでなく、業務に苦戦している社員をサポートすることもできます。

すでに触れたとおり、コールセンターでどのソフトウェアを使用するかによって、業務の質は大きく変わります。現代的なソフトウェアには、メールや電話に加えて、メッセージングやチャットなど新しいチャネルも含まれています。

顧客がチャネルを選択でき、より満足のいくサポートを提供できるというメリットがあるだけでなく、サポート担当者の業務効率も上がります。サポート担当者が複数の方法で働けるようにすると、エンプロイーエクスペリエンスが向上します。単調さが問題の場合は、なおさら効果の高い施策です。

また、チャットボットや自動化、セルフサービス型サポートなどの現代的なアドオンを導入すれば、簡単な内容の問い合わせにサポート担当者が対応しなくてもよくなるため、サポート部門の業務量を軽減できます。

さらに、アナリティクスツールを利用できるようにすれば、サポート担当者が自己監視できるようになります。そうすれば、マネージャーを自分の席に呼んで逐一指示を仰がなくても、サポート担当者が自主的にKPI達成に向けて取り組めるようになります。

6. 役割を明確にしてコミュニケーションを改善する

職場のストレスの原因として、役割が明確ではない点が挙げられることが少なくありません。役割が明確になっていると、マネージャーに対する満足度が上がり、サポート担当者の生産性が向上するとともに、勤続年数も長くなる傾向があります。

役割が明確に理解されていない場合は、一貫性のあるフィードバックを徹底することもひとつの対処法になります。短期目標を確認する日々の立ちミーティング、定期的な1対1のミーティング、そうしたすべての接点で一貫性のあるフィードバックと方向性を示すと、ストレスを感じている部下にも何を大切にすればよいかが伝わります。

たいていの人はフィードバックを望んでいます。ストレスにさらされている時でさえ、フィードバックを歓迎します。定期的なフィードバックがまだコールセンターの文化に根付いていない場合は、ぜひ試してみてください。