コールセンターを「エクスペリエンスセンター」に転換する3つの方法

更新日: 2023年1月5日

「コールセンター」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか? 皆さんの抱くイメージは、カスタマージャーニーの欠かせない一部となったコールセンターの実態に即しているでしょうか?

家族や友人だけでなく、企業とコミュニケーションを取るにも、かつては存在しなかった多種多様な方法が使われるようになりました。コールセンターに電話をかけて、月並みな音楽を聞きながら(悪くない曲もありますが)オペレーターにつながるのを待ち、10回ほどたらい回しにされた後に、ようやく用件が終わる――それはもう過去の話です。

テクノロジーの発展によってビジネスの選択肢が広がり、企業は変化を目指すようになりました。コールセンターを、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供する「エクスペリエンスセンター」に転換したいとお考えなら、クラウド型のカスタマーサービスセンター、サポート業務の最適化、高度な自動化、人工知能(AI)といった新たに登場したテクノロジーが原動力となるはずです。

まだ変革への取り組みに着手していないなら、今すぐ以下の3つの方法を実践して、世界に通用するエクスペリエンスセンターを構築しましょう。

1. 新しい世代について理解を深める

皆さんやカスタマーサービスのリーダーは、サポート担当者がどのような働き方を望んでいるのか熟知しているでしょうか? 従来型のコールセンターでは、サポート担当者にとって何がベストか知っているとお考えのようですが、そう過信するのは間違いです。Saddletree Researchが2017年に実施した調査によると、ミレニアル世代が7,540万人と米国最大数を誇る世代となっており、2030年までに労働人口の75%を占めると予測されています。このテクノロジー志向のきわめて高いミレニアル世代がどのようなワークスタイルを求めているのかという視点が、ときどき見落とされているようです。

サポート担当者をいくつかのグループに分け、担当者自身が企業とどのようにコミュニケーションを取っているのか聞き取り調査を行い、チャット、メール、ソーシャルメディアなど、さまざまなサポートチャネルに対応するスキルを最適化するためにはどうしたらよいか、アイデアを募ります。そして、(異論があるかもしれませんが)スマートフォンの業務利用を認め、日常業務に有効活用する方法を見つけましょう。

ミレニアル世代(およびミレニアル世代でない人たちの相当数)は、職場に以下のような環境を求めています。

  • ワークライフバランスと柔軟なワークスタイルが尊重される環境
  • チームの一員として同僚と協力しながら、インスピレーションにあふれた刺激的なプロジェクトに取り組める環境
  • スマートフォンという現代社会の必須テクノロジーを業務に積極活用できる環境
  • リアルタイムの評価システムとゲーミフィケーションがあらゆる場面で積極採用される環境

2. 業績に関するデータを有効に活用する

最近は「ビッグデータ」という単語や「もっとたくさんのデータが欲しい」「データが多すぎる」「データが足りない」などのフレーズを耳にしたり口にしたりすることが急激に増えたように思います。確かに、現代の企業はかつてないほど大量のデータにアクセスできるようになりました。しかし、企業がそうしたデータを正しく活用して実際の行動につなげられているかと言えば、必ずしもそうではありません。データは、適切に利用すればとても強力な武器となりますが、分析に時間がかかりすぎてしまうというリスクも伴います。既存のデータを有効活用するための最善策を見つけ出し、カスタマージャーニーを改善できれば、エクスペリエンスセンターとして真の成果を収めることができるでしょう。

まず重要なのは、経営陣が必要とする月単位または四半期単位のレポートを作成することです。おそらく皆さんの会社内にもそのレポート作成を担当するチームが既に存在し、チャート、グラフ、主要業績評価指標(KPI)、トレンドなどをすべて経営陣に報告しているでしょう。そのレポートを踏まえて改善点を検討したり、主要なトレンドについて詳しい調査を実施したりしていると思います。その体制が整っているならすばらしいことです。今後もぜひ継続してください。

それに加えて、サポート担当者にもデータを提供することをお勧めします。十分な情報提供とトレーニングを行い、協力体制を築くことで、サポート担当者は企業の運営方法についての知識を身に付けられ、結果としてカスタマージャーニーを改善できるようになります。

手始めに、どのようなKPIをサポート担当者と共有しているのか確認してみましょう。サポート担当者に毎週のバランススコアカードを提供していますか? サポート担当者は、対応待ちコールの数や平均処理時間(AHT)だけでなく、KPIもほぼリアルタイムに確認できますか? コールセンター全体の指標を掲示するのに、もう壁掛けディスプレイやホワイトボードを使用してはいませんよね? こうしたポイントについて確認したうえで、エクスペリエンスセンターで以下の取り組みを実施することをお勧めします。

  • トレーニングプログラムを通じて、自社のKPIの重要性を説明する(数字ばかり並べても退屈なので、楽しい内容にしてください)。この記事をお読みの皆さんはNet Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)の重要性を理解していると思いますが、サポート担当者はどうでしょうか?
  • サポート担当者のデスクトップに、指標やKPIをリアルタイムに報告するツールを組み込む。
  • 平均処理時間(AHT)を測定するよりも、初回解決率(FCR)に注目する。
  • 壁掛けディスプレイを使用していて、だれも目を向けない状態なら、豆知識などの小ネタを表示させてみる。
  • 社内の全員と高い頻度でデータを共有し、成果を評価する。

3. 新しいテクノロジーを探す

多くのコールセンターのマネージャーにとって、新しいテクノロジーを探し求めることは、目新しい任務ではないはずです。変革を目指す企業なら、次世代ソリューションを構築してエクスペリエンスセンター運営の効率化を図るために、社内のITチーム、リーダー、ネットワークシステムの欠陥を調査する専門チームが一丸となって、新しいテクノロジーの導入を絶えず検討していると思います。理想的なテクノロジーが見つかることもあれば、なかなか見つからず、早く切り上げて次のもっとわかりやすい目標に飛びつきたくなることもあるでしょう。

私の経験から言うと、全社を挙げて取り組む中核的な目標を設定していないケースや、再調整しないケースは少なくありません。可能な限り最適なソリューションを実装するには、目標を定め、それを達成するためのテクノロジーやテクノロジースタックを活用することが重要です。

今後、エクスペリエンスセンターに導入するテクノロジーを検討するときには、以下のポイントを考慮してください。

  • サポート担当者のエクスペリエンスを改善できるか? 業務の妨げとなるようなら困りものです。担当者のデスクトップの一元管理、アプリケーションの統合、ワークフローの合理化に役立つテクノロジーに重点を置いたうえで、サポート担当者の利便性も忘れずに確認しましょう。
  • ボットを使用してどういった業務を自動化できるか? 昨今、こうした機能は急速に発展していますが、私たち人間の仕事が奪われる心配はありません。
  • 現在提携しているベンダーは業界の最先端を走っているか?
  • クラウドを活用したテクノロジーか? そうでないなら、クラウド型を採用することをお勧めします。
  • ミレニアル世代の望むコミュニケーション方法に対応した適切なテクノロジーを採用しているか?

私たちのよく知っているコールセンターは既に存在せず、もう何年も前に新しい姿に生まれ変わっています。多くのコールセンターが、世界の変化に適応するという大仕事をやってのけていますが、その変化は目まぐるしく続いており、これからの変化に備えておかなくてはなりません。私がコールセンターのオペレーターとしてキャリアを積んでいたころの上司はこう言っていました。「柔軟という程度ではまだ硬すぎる、流動的でなければならない」私はこの言葉についてたびたび考えますが、時を経た今もまったく色あせていないように思います。さあ、変化を受け入れ、コールセンターをエクスペリエンスセンターへと転換させましょう。