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2021年における卓越したCXデザインの特徴

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、2021年におけるビジネス戦略の1つのカギとされるようになってきました。では、どうすれば優れたCXデザインを生み出せるのでしょうか。

発行日: 2021年8月18日
更新日: 2022年5月17日

企業の間では、CX(カスタマーエクスペリエンス)を重要なアピールポイントにしようとする動きが加速しています。それには納得の理由があります。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」によると、顧客の75%が、高品質なCXを提供してくれる企業なら購入額を増やしてもかまわないと考えているのです。

優れたCXを実現するには、優れたCXデザインが欠かせません。では、CXデザインとはどのようなものなのでしょうか。

これを正しく理解するには、オムニチャネル対応のメリットを学ぶと共に、理想的なCXデザインを行っている企業の事例からヒントを得る必要があります。

CXデザインとは

CXデザインとは、顧客が企業との取引を行っている最中からその前後まで、各段階でのあらゆるやり取りを最適化し、統一を図るためのプロセスです。

CXデザインとUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインは混同されがちですが、両者には重要な違いがあります。

CXには、顧客との間で発生し得るすべてのタッチポイントが含まれます。マーケティング、営業、サポート、SNSなどにおけるあらゆるやり取りを網羅しているのがCXです。

これに対してUXが着目するのは、特定の製品やサービスを使用するときの顧客のエクスペリエンスです。そのため、UXはCXの一部に含まれているという見方ももちろんできますが、CXデザインで重点的に扱うものではありません。CXデザインでは、あくまで顧客との間で行われるやり取りに関心を払います。

ポイント:CXデザインとは、カスタマージャーニーのあらゆる段階・側面を含む、顧客と企業との関係の全体像を描くことです。

オムニチャネルエクスペリエンスを設計する重要性とは

omnichannel customer experience design matters

CXデザインの重要性がかつてないほど高まっているのは、CXがこれまで以上に重要になっているからです。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート」によると、世界中の顧客の50%が、1年前と比べてCXをより重視しています。また、カスタマーサービスで不快な対応を一度でも受けたら他社に乗り換えると回答した顧客の割合も、およそ半数となっています。

これに呼応するように、CXマネージャーの63%は、自社におけるCXの優先度が前年よりも高くなっていると回答しています。そうした中、最も成功を収めているのが、オムニチャネルのCXを提供している企業です。Zendeskの調査によると、オムニチャネルのCXデザインを採用している企業は、応答時間や顧客満足度などの重要なCX指標に関して軒並み最高レベルのパフォーマンスを見せています。

オムニチャネルのCXデザインとは

オムニチャネルのCXデザインでは、顧客がいつどのような方法で自社とコンタクトをとっても、スムーズで信頼の置けるやり取りを実現することを目指します。

単に複数のコミュニケーションチャネルがあるというだけでなく、それらが一体となって機能して初めて、オムニチャネルエクスペリエンスは成り立ちます。

オムニチャネルを重視したアプローチをとることで、カスタマージャーニー全体でシームレスで一貫したコミュニケーションが可能になります。

既に、Webサイト、モバイルアプリ、メール、電話、チャットといった複数のチャネルに対応している企業もあるでしょう。しかし、顧客がチャネルを移動しても会話を引き継げられるようになっていなければ、それは本当の意味でのオムニチャネルのCXデザインとは言えません。

たとえば、顧客が最初にセルフサービス型のサポートを利用していて、もっと詳しい情報が欲しいと思ったときに、チャットに簡単に切り替えて問い合わせできるようにする必要があります。

オムニチャネルのCXデザインでは、社内での情報共有も重要となってきます。そうすることで、カスタマージャーニーが一段とスムーズになります。チームの全員が、顧客の基本情報、バックグラウンド、過去の会話履歴を把握できていなければなりません。このような背景情報を参照できれば、顧客がチャネルを変えて別の担当者が対応を引き継いでも、同じ情報(顧客の種別や電話番号など)を何度も伝えてもらう必要がなくなります。

顧客が企業とやり取りする手段は、かつてないほど多様化しています。顧客は、どのチャネルからでも対応してくれて、できるだけ手間なく問い合わせできる企業を好むようになっています。

一貫性のあるCXを提供できれば、他社との違いを際立たせることができます。顧客は自社と頻繁にやり取りしていくうちに、これからサポートがどう進んでいくかを想定できるようになります。これは安心感につながり、今後も取引を継続したいと思ってくれるようになります。

実例から学ぶ、卓越したCXデザインに必要な4つのポイント

creating customer experience design

CXデザインが優れていると、カスタマーサービスの質は確実に高くなります。そして、それを支えているのが先を見据えた計画です。

顧客にはスムーズで快適なエクスペリエンスを提供するべきです。そのためには、顧客の新たなニーズやオムニチャネルの需要を想定し、それに対応する必要があります。

では、そうしたCXデザインは具体的にどういったものなのでしょうか。ここでは、理想的なオムニチャネルエクスペリエンスを構築している企業の成功例を紹介しながら、CXデザインのさまざまな側面について考えていきたいと思います。

  1. 感情に働きかける

    Freshlyは、数分温めるだけで食べられる調理済みのヘルシーな食品を顧客の元に届けています。同社は、多くの人にとって食は心を動かすものだと考えています。この考えは、商品そのものから、配送プロセス、問い合わせ対応まで、同社のあらゆるサービスに反映されています。

    しかし、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響で発送や輸送に遅れが生じた際には、顧客が感情的になるケースも見られました。中には、高齢の親族に食事を用意するためにFreshlyを利用している顧客もいて、食品の配達が遅れておいしく食べられる状態でなくなってしまったときには、当然ながら苛立ちを示していました。遅れが生じるのはやむを得ないことではあるものの、同社は、そうした際に顧客の気持ちを察して共感する姿勢を持つことが大切だと気づきました。

    FreshlyのシニアトレーニングマネージャーであるJashana Copeman氏は、次のように話しています。「真のメッセージを汲み取るには、相手の感情に向き合い、罵詈雑言にも耳を傾けなければなりません」

    FreshlyはLessonlyを利用して、カスタマーサービスチームが声や文字でのやり取りを通じて顧客への深い共感を示せるよう、トレーニングを実施しました。また、担当者が声のトーンの重要性をよく理解できるように、顧客対応の模擬演習を何度も繰り返しました。

    Freshlyのグローバルオペレーション担当シニアディレクターのDan Medina氏は、こう説明します。「私たちは、当社が常にお客様と共にある企業であるということを知っていただくために、精いっぱい努力してきました。お客様も当社のサービスを信頼してくださっています。その期待に応えるべく、毎週欠かさず商品をお届けできるよう最善を尽くしています」

  2. クロスチャネルの課題に対処する

    シンガポールのCarousellは、新品や中古品の売買サービスを提供するECサイトです。同社は、複数のチャネルに加えて複数の言語で顧客をサポートする必要があり、チャット、メール、セルフサービス用チャネルを通じて、6つの言語に対応しています。

    自社のコンタクトセンターだけでは対応が追いつかないことから、Carousellは、各言語の母語話者を手配できるマレーシアのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)企業と提携を結びました。また、場合によってはサポート担当者の配置転換を行って、顧客の言語ニーズに対処できるようにしました。

    現在、マレーシアの拠点は、チャットなどの新しいチャネルの実験場としても機能しています。そこで綿密な準備とテストを行った後で、英語対応のコンタクトセンターでも新しいチャネルを導入する予定です。

    Carousellは、引き続きBPOの協力を得ながら、あらゆるコンテンツの多言語化に取り組んでいます。言語やチャネルを問わず同じメッセージを発信することで、顧客の居住地や問題の内容に関係なく、すべての顧客に一貫したサポートを提供しています。

  3. シームレスなエクスペリエンスをアピールする

    Plexus WorldwideのシームレスなCXの基盤となっているのが、充実したナレッジベースと適切に体系化されたセルフサービスです。同社は「半歩退く」アプローチによって、顧客が求めるものを先回りで提示しています。

    ライブチャネルを含むすべてのサポートチャネルは、Plexus WorldwideのWebサイトのトップページから直接アクセスできます。ただし、顧客とサポート担当者が直にやり取りするときも、ナレッジベースを軸に会話が進んでいきます。顧客が電話やチャットで問い合わせてきた場合、担当者側も顧客が使用しているのと同じナレッジベースを参照して、正確かつ最新の情報を提供しています。

    Plexus Worldwideのカスタマーサービス担当バイスプレジデントであるLouis Ross氏は、こう話しています。「優れたサービスを提供するには正確な情報が必要であることは周知の事実です。それでなくても、正確な情報はカスタマーサービスチームに欠かせないものです。

    したがって、だれでもアクセスできるクラウドベースのナレッジベースを導入するのがお勧めです」
    同社のパブリッシングチームは、1日に15~20本の記事を更新、編集、アーカイブしています。Ross氏はこれを「情報の川」と読んでいます。担当者はすべての情報を記憶する必要がない代わりに、どこから情報を収集すればよいかを知っておく必要があります。また、情報が間違っていたり古くなっていたりした場合には、積極的に報告することも重要です。

    このように、顧客とサポート担当者が同じナレッジベースにアクセスできれば、顧客がどのチャネルを選択してもシームレスなエクスペリエンスが実現します。

  4. 顧客の要望や需要の変化に備える

    Harry’sは、ユーザーを非常に大切にしている企業の1つです。社会的な責任を果たし、共感力を発揮すると共に、顧客や従業員に影響を与え得る時事問題にアンテナを張っています。そして、常に未来に目を向けて、変化に備え、必要に応じてすぐに機敏に対処できるようにしています。

    世界中の企業と同様に、Harry’sもまた、突然のパンデミックに足をすくわれました。それでも同社は、顧客の新しいニーズに応えようと、迅速に変化に適応する姿勢を貫きました。米国各地でロックダウンが実施されていた中、Harry’sは、パンデミックが顧客のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があると考えました。

    そこで、緊急対応専用の窓口を設置して、自社サイトのトップページや署名ブロックで通知し、顧客対応の際にも案内しました。メールやSNSでは、メンタルヘルス関連の非営利団体と連携していることも重点的に告知しました。

    同社では引き続き、テクノロジーへの投資やその他のCXの取り組みにも力を入れています。しかし、同社のCXデザインがひときわ優れているのは、共感を軸に即座に対応する行動力があってこそです。

包括的なCXデザインで顧客をサポート

オムニチャネルのCXデザインでは、さまざまな動的要素がかかわってくることは避けられません。しかし、優れたCXを提供することは必ずしも複雑ではありません。

すべてのチャネルを単一の作業画面に集約できれば、カスタマーサービスチームの負担を減らせます。顧客と従業員の両方にとってシームレスなエクスペリエンスをZendeskで構築しましょう。