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CRMの種類と選ぶポイント

CRMシステムは主に、コラボレーティブ、オペレーショナル、アナリティカルの3種類に分けられます。そのうち、皆様の企業に最適なCRMの選び方を解説します。

更新日: 2024年2月22日

良好な顧客関係を構築、維持することは、優れたビジネスモデルの根底を支えます。しかし、自社の顧客や顧客との関係性を常に把握し続けることは難しいものです。これは、顧客の数が100名ほどの小規模企業から、数十万にのぼる大規模企業まで、企業全般に当てはまります。

この課題に対処する最善の方法は、適切なツール(ここでは優れたCRM)を導入することです。しかし、CRM市場にまだ馴染みが薄い方にとっては、確認したいことがたくさんあるでしょう。まず、主要なCRMとしては、コラボレーティブ、オペレーショナル、アナリティカルの3種類があります。以下では、皆様が自社の状況を把握できるよう、CRMの定義、3種類のCRMの違い、そして自社に適したCRMの選び方を説明します。

CRMシステムとは?

CRMとは、customer relationship management(顧客関係管理)の略称です。顧客関係管理とは、顧客と取引を行ううえでの戦略を広く意味しますが、実際にCRMという略称が使われるときは、効果的な顧客関係管理を実現するための製品カテゴリを指していることがほとんどです。

CRMに関して最も重要な要素は、最初の「C」、customerです。CRMは、顧客への理解を深め、そこで得た情報を使用して最良のカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供できるものである必要があります。

これは近年、達成しづらい目標になっています。今や消費者は、メッセージング、メール、SNS、電話などのさまざまなチャネルを切り替えながら企業とやり取りしています。

また、消費者が製品を調査、購入する方法が多様化しており、バイヤージャーニーの複雑さも増しています。特に、多数のオーディエンスに向けて数多くの製品を販売している企業では、そのすべてを管理する難しさがいっそう浮き彫りになっています。CRMという製品カテゴリは、そうした課題に対処する必要性から誕生しました。

CRMの種類

こうした諸々の課題は、ほぼすべてのCRMである程度は対処できますが、CRMツールには大きなカテゴリが存在します。製品によって機能や重点分野はさまざまに異なりますが、CRMは主に3つのカテゴリに分けられます。

  1. コラボレーティブCRMシステム

  2. オペレーショナルCRMシステム

  3. アナリティカルCRMシステム

1. コラボレーティブCRMシステム

コラボレーティブCRMシステムが最も重きを置いているのは、サイロ化の解消です。マーケティング担当者、営業担当者、サポート担当者がそれぞれ別の部門に所属し、互いに連携できていないと感じることは珍しくありません。

特に大企業では、地域、サービスを提供するチャネル、担当の製品、専門スキルなどの要素に基づいて、各部門がさらに細かく分かれています。しかし、カスタマージャーニー全体でシームレスなエクスペリエンスを提供するには、リアルタイムで社内全体に情報を共有する手段が必要です。

コラボレーティブCRMを使えば、所属部門や対応チャネルに関係なく、すべてのチームが同じ最新の顧客データにアクセスできます。たとえば、マーケティングチームや営業チームが見込み客とやり取りした際に収集したあらゆる情報をサポート担当者が確認したり、メール経由での顧客対応で得られた最新のデータをコールセンターのオペレーターが入手したりできるようになります。

複数の部門およびチャネルが統合されることで、担当者が変わるたびに説明を求めて、顧客をうんざりさせるようなこともなくなります。各担当者は、顧客とのやり取りの履歴にすばやく簡単にアクセスして、関連情報を漏れなく参照、確認することができます。

2. オペレーショナルCRMシステム

オペレーショナルCRMは、顧客関係管理のプロセスの効率化を後押しします。カスタマージャーニー全体をわかりやすく可視化し、より効率的に進めていくためのツールであり、多数のタッチポイントが存在する場合にも有用です。見込み客が自社のWebサイト上で最初に問い合わせてきてから、営業パイプラインを移動し、顧客に転換した後も、オーディエンスの行動を一貫して追跡します。

オペレーショナルCRMシステムは通常、自動化機能を備えています。マーケティングオートメーション、セールスオートメーション、カスタマーサービスオートメーションによって、従業員が手動で対応しなければならない作業の一部が削減されます。

これにより、もっと従業員の創造性や個性が求められるような、人の介入が欠かせない業務に取り組む時間が確保されます。また、成長半ばの企業にとっては、各種自動化機能を使うと、高品質なサービスを提供し続けながら会社も拡大させることを容易に実現できます。

3. アナリティカルCRMシステム

アナリティカルCRMは、企業が顧客データを分析して重要なインサイトを得られるようにすることを主なねらいとしています。今日では、デジタルのツールおよびプラットフォームを使用して、大量のデータを容易に収集できるようになりましたが、そのデータを分析し、データを自社にとって有益なものに変えるという作業は、だれにでも簡単にできることではありません。事実、企業が所有しているデータの半分以上はまったく活用されていないという推定もあります。

これでは宝の持ち腐れです。アナリティカルCRMでは、収集したデータを利用して、顧客の行動に関するトレンドを把握できます。企業はその情報を基に、売上に最もつながりやすいステップ、顧客維持率を押し上げている要因、顧客から特に多く寄せられる問題について理解を深めることができます。

自社に最適なCRMの選び方

自社にはCRMが必要だと認識しているものの、まだ調査段階だという場合には、その段階で3種類のCRMシステムの違いについても理解することが重要です。

3種類のCRMには重複する部分もかなりありますが、多くの場合、それぞれが特定の目的や機能に注力しています。

コラボレーティブCRMの特長

コラボレーティブCRMの主な目的は、次の2つです。

  • 部門や場所の垣根を越え、同じプラットフォームを介して従業員全員が最新の情報を共有できるようにする
  • ユーザーが必要なときに必要な情報を簡単に見つけられるようにする

他の種類のCRMと比べて、コラボレーティブCRMは、売上よりも顧客維持や顧客満足度に力点を置いている傾向にあります。一方で、コラボレーティブCRMは、営業、マーケティング、カスタマーサービスの各チームにとって、データのサイロ化という従来からある課題を解決するうえで格好のツールでもあります。

情報共有を促進する手段が整っていなければ、営業およびマーケティングチームが見込み客について得た知識を、カスタマーサービスチームが有効活用することはできません。同様に、カスタマーサービスチームが得たインサイトを、営業およびマーケティングチームにフィードバックすることも不可能です。

コラボレーティブCRMには、主に次のような機能があります。

  • コミュニケーションの管理:コラボレーティブCRMでは、チャネルを問わず、顧客または見込み客と自社とのあらゆるやり取りを簡単に追跡できます。CRM内の情報は、電話、メール、SNS、メッセージングアプリ、対面でのミーティングなど、顧客がどのような手段で接触してきた場合でも、随時更新されます。サポート担当者は、問い合わせの内容と解決方法を記録すると共に、別の担当者が後々その顧客に対応する場合に知っておくべき重要事項も書き残すことができます。
  • チャネルの管理:顧客は、企業が多くのチャネルに対応していることを期待するようになっています。顧客の好むチャネルを理解すると共に、そこでやり取りする最善の方法を検討することが重要です。コラボレーティブCRMでは、問い合わせの内容に応じて顧客がチャネルを変更しても、見失うことなく追跡できるため、顧客が必要なときに好きなチャネルでサポートを利用できるようになります。
  • ドキュメントの管理: 一部のコラボレーティブCRMは、顧客に関する重要なドキュメントの保存場所を統合できる機能も備えています。これは、顧客への対応中に顧客の契約書や提案書にアクセスしなければならなくなった場合に便利な機能です。

コラボレーティブCRMが適している企業

多くの部門を抱え、社内全体で情報を共有するのに苦労している企業にお勧めです。とりわけ、多数の拠点を持ち、オムニチャネル対応のサポートを提供している企業に適しています。顧客から、「複数の部門をたらい回しにされた挙句、再度同じ説明を求められた」と苦情が寄せられたことのある場合、コラボレーティブCRMは検討の価値があります。

オペレーショナルCRMの特長

オペレーショナルCRMには通常、コラボレーティブCRMと共通する機能も含まれますが、他の機能は、顧客ライフサイクル全体の追跡、管理、改善により焦点を当てています。コラボレーティブCRMでは、どちらかと言うと顧客の維持や満足度向上が重視されるのに対し、オペレーショナルCRMでは、見込み客が企業について最初に知る手段や、顧客に至るまでの各ステップに注意が向けられています。

オペレーショナルCRMでは、自動化機能もいっそう充実しています。顧客関係管理に関連する諸々のプロセスを大幅に効率化するため、多くのオペレーショナルCRMには、セールスオートメーション、マーケティングオートメーション、カスタマーサービスオートメーションの機能が含まれています。

マーケティングオートメーションを使用してメールキャンペーンを作成すると、顧客の特定の行動に基づいて関連するメールを自動送信でき、手動での作業を減らして、マーケティングチームの時間を節約できます。

同様に、マーケティングオートメーションを使用すれば、見込み客のジャーニーの段階に応じ、自社のWebサイト上で相手に合わせてカスタマイズされたコンテンツを推奨することも可能です。つまり、マーケティングチームの負担が軽減されると同時に、高度にパーソナライズされた適切なエクスペリエンスを見込み客に提供できるようになります。

セールスオートメーションには、リードスコアリングを自動化して見込み客の管理を簡素化できる機能があり、優先すべき見込み客を簡単に特定できます。オペレーショナルCRMでは、優先度に応じて最適なタスクを自動的に判断して営業担当者に割り当てたり、見込み客が営業パイプラインを進むように促すための具体的な手順を自動通知したりすることも可能です。

そして、カスタマーサービスオートメーションでは、オペレーショナルCRM内に蓄積された顧客の状況に関する情報の中から、顧客を迅速かつ効果的に支援するうえで最も重要な詳細情報が抽出されます。顧客へのアンケート送信も自動化できるため、顧客満足度を測定し、そこからチームのパフォーマンスを把握することができます。

オペレーショナルCRMが適している企業

顧客情報をもっと有効に活用すると共に、従業員の作業プロセスを効率化したいと考えている企業や、顧客ライフサイクル全体を俯瞰的に把握すると共に、顧客に接する部門全体のプロセスの改善方法を特定したいと考えている企業にお勧めです。

アナリティカルCRMの特長

他の2つのCRMは一般に、見込み客や顧客に日常的に対応している従業員が頻繁に使用するツールと言えますが、アナリティカルCRMは、大局的な戦略の策定に大きく役立ちます。データ分析とは、これまでに蓄積された顧客情報を漏れなく手元に集め、それを使って問題に対する答えを導き出す手法です。

アナリティカルCRMには、以下の点を把握するのに役立つレポート機能があります。

  • 多くの見込み客を獲得したマーケティングキャンペーン
  • 最も売上につながった見込み客のタイプ
  • 購入につながった営業活動のタイプ
  • 顧客生涯価値が最も高い顧客のタイプ
  • 顧客から最も頻繁に寄せられている問題
  • 顧客から最も頻繁に寄せられているクレーム
  • 顧客の使用頻度および人気が最も高い機能とリソース
  • カスタマーサービスチームが顧客の問題を解決する際の効率性
  • 顧客の問題を解決するスピード

こうした情報は、現在のアプローチの弱点を特定し、パフォーマンスを向上させるために何を変更するべきかを突き止めるうえで重要です。その際、データマイニング(大規模なデータセットを分析し、トレンドを見つけ出す技術的なプロセス)を実施してくれるという点で、アナリティカルCRMは有用です。こうした処理は、テクノロジーの方が人間よりもはるかに得意です。所有するデータの量が増えるほど、それは顕著になります。

アナリティカルCRMが適している企業

大量の顧客データを所有しているものの、それを有効活用する方法がわからないという企業にお勧めです。

3種類のCRMのいずれにも関心がある場合

自社にはどの種類のCRMが必要なのか、あるいは3つのCRMすべてに投資した方がメリットが得られるのかは、具体的なビジネスニーズによって異なります。

事業を始めたばかりで、顧客データがまだそれほど蓄積されていない場合、アナリティカルCRMを導入しても、機能を持て余してしまうおそれがあります。コラボレーティブCRMが最も活きるのは、部門や拠点の数が多く、従業員全員が常に情報を共有できるようにするための効率的な方法を必要としている場合です。オペレーショナルCRMは、顧客ライフサイクル全体に関連したプロセスの改善を検討している企業や、自動化を取り入れて効率化を図りたい企業にとって非常に重要なツールとなります。

実際のところ、世に出回っている人気のCRMシステムの多くは、別の種類のCRMと一部の機能が重複しています。

CRMで特に重視すべき要素

大切なのは、どの種類のCRMが適しているかを吟味する前に、自社の顧客関係管理に関する戦略を明確にすることです。現在抱えている主な課題や、達成したい主な目標について整理しましょう。そうすれば、ニーズを理解したうえで、CRMシステムを検討することができます。

以下に、優れたCRMシステムを探すうえで考慮すべき、特に重要な要素をいくつか挙げていきます。

1. セットアップと習得のしやすさ

CRMシステムの中には、インストールや設定が難しかったり、システム管理の人員を継続的に確保しなくてはならなかったりするものもあります。小規模企業では、習得に時間がかかりすぎるシステムに投資しても、コストに見合った価値は得られないでしょう。大規模企業に関しても、迅速に導入できるCRMを見つけるに越したことはありません。そうすれば、特別なトレーニングを受けなくても、従業員が初日から利用を開始できます。

2. 他の製品との連携

長期的な顧客関係の構築を目標としている場合、営業、マーケティング、カスタマーサービスのチーム間のコラボレーションは考慮すべき重要な一要素です。顧客と接するすべての従業員が、顧客とやり取りする際に常に最新のデータを利用できるようにするには、単一のプラットフォームを介して全員が連携できるようにするCRMが必要です。

3. 部門間の連携

長期的な顧客関係の構築を目標としている場合、営業、マーケティング、カスタマーサービスのチーム間のコラボレーションは考慮すべき重要な一要素です。顧客と接するすべての従業員が、顧客とやり取りする際に常に最新のデータを利用できるようにするには、単一のプラットフォームを介して全員が連携できるようにするCRMが必要です。

4. 料金体系

最も一般的なのが、サブスクリプションモデルを採用したクラウドベースのCRMです。一方で、オンプレミスのCRM製品もあります。これは、一定数のユーザーライセンスを購入して、ローカルデバイスにダウンロードする買い切り型です。後者の方がシンプルな支払い方法に思えるかもしれませんが、従業員の増員に応じてCRMを拡張することが難しく、製品の更新に関しても制約があります。どのCRMを選ぶにしても、必ず料金体系を確認し、予算に合ったオプションを見極めましょう。

5. レポート機能

データの分析情報にアクセスできると、データに基づくインサイトを活用して、ビジネスの戦略を改善できます。強力ながらも直感的なレポート機能を備えたCRMなら、CRM内にあるデータからトレンドやインサイトを引き出すことが可能です。

6. セキュリティ機能

顧客データの取り扱いには注意が必要です。顧客データは、企業にとって価値がある一方で、悪意ある者の手に渡れば、瞬く間にトラブルの元になります。データを安全に保ち、顧客の信頼を失わずに済むように、CRMを検討する際には、最高レベルのセキュリティを保証していることを必ず確認しましょう。

7. 拡張性

近い将来にビジネスの成長が見込まれる場合は、今のうちから、拡張性が高いかどうかも考慮してCRMを検討する必要があります。顧客や従業員の数が増えても、簡単に追加することはできるのか、将来的に業務プロセスにテクノロジー製品を追加するという場合に、手間なく連携することはできるのかといった点を考えてみてください。

導入したCRMが会社の成長に対応しきれなくなったがために、振り出しに戻るといったことにならないよう、将来的に生じる可能性のあるニーズについて、今から検討しておきましょう。

CRMシステムのパフォーマンスを測定する方法

CRMでは、自社の顧客関係管理に関する取り組みの成果を測定できますが、CRMシステムそのもののパフォーマンスも測定することをお勧めします。

顧客関係管理に関する戦略を検討するうえでは、CRMの使用に際してどんな設定を目標すべきかも考えてください。たとえば、次のような点に目を向けましょう。

  • 関係部門におけるCRMの使用率。最初から使おうとする姿勢すら示さない従業員がいないかどうかを確かめます。
  • 頻繁に使用されているCRMの機能と、あまり使用されていない機能
  • CRMの導入後、売上が増加しているかどうか
  • 顧客の問題解決時間や満足度(CSAT)スコアの変化
  • 顧客維持率が向上したかどうか

このうち、どの指標で成功を測るべきかは、自社の目標によって異なります。しかし、CRM製品に投資することを考えているのなら(高価な製品である場合は特に)、想定したとおりのメリットが得られそうかどうかを確認しておきましょう。そうしないと、近いうちにまた、新しいCRMを再検討しなくてはならなくなるかもしれません。

最適なCRMシステム

本当に優れたカスタマーエクスペリエンスを提供したいと考えているのなら、真心だけあっても十分ではありません。社内の顧客情報すべてを整理し、効果的に使用するための手段が必要です。適切なCRMを使えば、きわめて質の高いパーソナライズされたカスタマーサービスを提供できます。

また、顧客への理解を深められるため、顧客のニーズと好みに合わせて顧客関係管理に関する戦略を調整できます。多くのCRMシステムプロバイダーは無料トライアルも提供しているため、まずは無料のCRMを試用して、自社に合っているかどうかを確かめることもできます。

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