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顧客インサイト把握の重要性  ~顧客の声を拾って仮説を立てる

更新日: 2022年9月10日

マーケティング用語に「顧客インサイト」という言葉があります。今回は、顧客インサイトとはどういったものなのか、またカスタマーサポート部門での顧客インサイトのどうやって情報収集や分析、活用を行うべきなのかについて説明します。

生産性向上に寄与してきた情報共有化

顧客インサイトの「インサイト(insight)」は、英語で洞察、直観などの意味を指し、顧客(消費者)の気持ちを洞察、理解し、それに必要なものを発見することです。ニーズの把握というより深層心理の領域に立ち入ったものと考えられます。

古くからあるマーケティング用語に、ローランド・ホールが提唱した「AIDMA」というものがあります。購買行動に至るまでの顧客の心理状況を順番に解説したもので、「Attention(注意)」→「Interest(興味)」→「Desire(欲求)」→「Memory(記憶)」→「Action(行動)」という流れの頭文字を取ったものです。もし、顧客インサイトを正確に把握できれば、「Desire(欲求)」から「Action(行動)」へ変化させる要因を確定させることが可能となり、消費活動を促進させる商品開発・サービスを実施できるようになるでしょう。

顧客インサイト把握のために顧客の声を知る



顧客インサイトを計る方法はさまざまですが、なかでも重要なのは顧客の声を収集することです。この方法は大きく分けて2つあります。

1つ目は、アンケート調査やグループインタビュー、一対一でのインタビューなどにより直接顧客に問う方法です。商品やサービスに対して顧客が持っているイメージや不満に思っていることなどを直接収集します。回答が想定される質問を用意して、効率的に調査したり、顧客と交流できる機会にランダムに話を聞いて顧客の声を収集したりする場合もあります。そのほか、顧客同士のプライベートなコミュニティに参加する、顧客を招いたパネルディスカッションの場を用意する、SNSなどのバーチャルコミュニティで顧客にアプローチして質問する、といった方法も考えられるでしょう。

もう1つは顧客の声を間接的に収集する方法です。個人でもインターネットを使って情報を発信できる現在では、ネット上で話題になっている言葉の傾向を調査することで、顕在化していない顧客ニーズをつかむことができます。いわゆるソーシャルリスニングであり、SNSでつぶやかれた言葉をソーシャルリスニングツールで分析し、商品やサービスの評判を可視化しようとするものです。

  • 顧客の言葉そのものがインサイトではない

どちらにおいても重要なことは、顧客の言葉をそのまま受け取るのではなく、その背景や心理状態を考えることです。

例えば、即席ラーメンについての声を集めていて、購入しない理由として、「手抜きに思われるのが嫌だから」という声が上がったとします。そこで、CMで「即席ラーメンが食べたいのに、妻が健康や体裁を気にして食卓に並べてくれずに悲しんでいる夫」の姿を描きました。

言葉をそのまま受け取れば、作る工程を増やしたり、アレンジして手がかかっているように見せたりといった対処が考えられますが、「家族が喜んでくれるなら手抜きは問題じゃない」という、新しい視点を訴えたことがポイントです。

このように顧客の言葉行動を洞察し、深層にある顧客の感情が動くポイントを探ることが顧客インサイトの把握につながります。

カスタマーサポートはデータ収集拠点



顧客の声や行動を最もデータ化できる可能性がある部署はおそらく、ヘルプセンターなどを含めたカスタマーサポート部門ではないでしょうか。カスタマーサポート部門には、商品に対する問い合わせやクレームなど、多岐にわたる「顧客の声」が届いているはずです。

一昔前まで、カスタマーサポート部門は「苦情受付係」のように位置付けられていました。顧客からの質問やクレームが有効活用されるケースも少なかったといえます。顧客の声は、ネガティブなものであったとしても価値のあるものです。例えば「期待外れだった」というクレームがあった場合、その顧客は「どういう経緯で商品を購入し、何を期待していたのか」を知ることができます。顧客インサイトを計るうえで重要な要素になります。

  • 顧客の声の収集は全社で取り組む<

中小企業の場合、カスタマーサポート部門を設置していても、そこから得られる情報をデータベース化する対応が取られていないケースがあるようです。これでは顧客インサイトを把握できず、いずれ企業や商品のファンになってくれる潜在顧客を取り逃がす可能性があります。

まずはカスタマーサポート部門に集まるデータを収集することから始めてみてください。どう分析するかは後回しにし、とにかく顧客の声と行動のデータを蓄積するだけでも構わないでしょう。特に、ヘルプセンターでの顧客の音声録音や対応履歴も俗人的に管理するのではなく、データベース化して共有することが重要です。

こういったデータベース化は部門ごとではなく、会社全体として行うことが重要です。データベース化する際のカテゴリーひとつをとっても、部門ごとに分類方法がバラバラでは、仮説検証に生かすことが難しくなるでしょう。

理想は、電話やメール、SNSといったさまざまなチャネルから届く顧客の声を一元化し、統合的なデータベースを構築したうえで、顧客インサイトを分析するシステムを構築すべきです。将来的なデータベース活用の可能性を鑑みた、俯瞰的で長期的なビジョンが要求されるため、簡単なことではありません。早いうちからコンサルティング力のある専門家を関与させ、ヘルプセンターを顧客インサイト把握のための戦略的部門として位置付ける体制を推進する必要があります。

まとめ:顧客インサイト分析はマーケティングには不可欠

デジタル化やデータベースマーケティングの進展により、インターネットにおける顧客行動の把握・分析の水準は格段に向上しました。CRMの構築により、顧客の行動を可視化することも可能となっています。そのうえで、カスタマーサポート部門を戦略的に構築していくことが非常に重要になっています。顧客の声を拾い上げ、さまざまな仮説を立てて顧客インサイトを計ることが、マーケティング上、不可欠になってきているからです。

Zendeskは、顧客のさまざまな情報をクラウド上にデータベース化するサービスを提供しています。日本企業向けのローカライズを含め、きめ細やかなサポートが可能です。Zendesk独自の機能である「インサイトレポート・分析機能」は、顧客インサイトの収集や分析に役立てるのではないでしょうか。

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