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顧客志向ガイド:顧客志向の定義、事例、実現のための5ステップを解説

顧客志向とは、企業のニーズよりも顧客のニーズを優先するといったビジネスの考え方です。

発行日: 2021年8月6日
更新日: 2021年8月6日

顧客に関して、だれもが耳にしたことのある決まり文句があります。

「お客様が第一です」

「お客様こそ正義です」

皆さんも、こうした言葉を一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。私はあります。企業の経営者ならだれしもがあると答えるでしょう。(こうしたフレーズが定着したのには理由があります)。

それにもかかわらず、非常に多くの企業が依然として、顧客にとって何が最善かを考えるよりも、自社の要望や欲求を優先しています。

これは、顧客のニーズよりも自社のニーズに焦点を合わせる方がはるかに簡単だからです。自社のニーズ(売上の拡大、コストの削減など)は、四六時中頭の中にあるものです。一方、顧客のニーズについては、1日のほとんどの時間を使って顧客と直接対話でもしない限り、それで頭がいっぱいになることは、おそらくあまりありません。

幸いなことに、他社も現時点では同じ過ちを犯している可能性があります。そうした企業は皆、顧客志向のビジネスアプローチをとっていません。

そんな中、顧客のニーズを第一に考える企業は、より多くの顧客を獲得し維持するチャンスを得られます。ここで重要となるのが、カスタマーサービスでのアプローチです。

キーワードは顧客志向です。

顧客志向とは

顧客志向とは、企業のニーズよりも顧客のニーズを優先するといったビジネスの考え方です。この考えの下では、顧客の目標に合わせて自社の目標を計画します。顧客志向の企業は、顧客=ビジネスということを認識していて、顧客重視の姿勢を絶えず追求しなければ、ビジネスは成長できないことを理解しています。

顧客志向の実践に必要なスキル

顧客志向の考え方は、カスタマーサービスだけにかかわるものではありませんが、サポート担当者は、まず主要なカスタマーサービススキルを身につける必要があります。

顧客志向のチームを目指すには、以下のようなスキルが求められます。

  • 共感力
  • 顧客データを理解し、それに基づいて行動できる能力
  • アジリティ(顧客志向の企業は顧客のニーズに即応する)
  • 効果的なコミュニケーション
  • アクティブリスニング
  • 問題解決能力
  • 顧客重視の姿勢

顧客志向がなぜコストの節約や収益の拡大につながるのか

ここからは、顧客志向のサービスが効果的である理由と、顧客と有意義な関係を築く方法について見ていきましょう。

顧客志向は、単に顧客のためだけを思って取り入れるのではありません。顧客志向を実践すれば、収益の拡大にもつながります。

既存顧客の維持は新規顧客の獲得よりも簡単

平均して、新規顧客の獲得には、既存顧客の維持よりも6~7倍多くのコストがかかります。どれだけマーケティングに手間をかけたとしても、Webサイトを訪問するのは一度きりという消費者がほとんどだからです。

一方、顧客の維持に関しては、維持率がわずか5%上がるだけで、企業の利益は25~95%も増加します。

もちろん、顧客獲得の面で成果を挙げて、自社を成長させることは可能です。しかし、ほとんどの場合、新規顧客を見つけるよりも、既存顧客を維持する方が簡単です。

そして、より多くの顧客を維持する最適な方法の1つとして挙げられるのが、迅速で卓越したカスタマーサービスの提供です。

優れたカスタマーサービスがロイヤルティにつながる理由

Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020」によると、顧客の57%が、ブランドへのロイヤルティを生み出す要素として質の高いカスタマーサービスを挙げています。

また、質の高いカスタマーサービスに最も欠かせないポイントは、「迅速に問題が解決されること」だということがわかりました。

逆に、顧客が最も不満を感じるポイントとして挙がったのは、「サポート担当者とのやり取りで長時間待たされること」でした。

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顧客は一刻も早い回答を求めています。顧客志向を実践するということは、カスタマーサービス志向を実践することとほぼイコールと考えて間違いありません。カスタマーサービスにまで広げて適用しない限り、顧客志向の考え方は、ビジネスにとって何のプラスにも働きません。

顧客志向を実現するための5ステップ

顧客を正しく理解できなければ、顧客の懸念を優先することはできません。

このため、カスタマーサービス志向のアプローチは、顧客のニーズを明らかにするところから始まります。それができてようやく、カスタマーサービスにおける「顧客」について改めて考えられるようになります。

1. 顧客からのフィードバックを頻繁に収集する

顧客が自社のカスタマーサービスについてどう感じているかを突き止められれば、改善が必要な点が見えてきます。そのための手っ取り早い方法が、顧客満足度(CSAT)アンケートを送信することです。

Zendeskでは、シンプルな2択形式で、受けたサービスが「良かった」か「悪かった」かを顧客にたずねています。また、自由回答欄も設けて、顧客がサービスについて追加で意見を述べられるようにしています。

あるいは、顧客努力指標(CES)を使用してパフォーマンスを測定している企業もあります。これは、「非常に簡単だった」から「非常に困難だった」まで数段階ある選択肢を基に、担当者とのやり取りがどの程度スムーズだったかを顧客に評価してもらう手法です。回答の選択肢を増やすことで、顧客のエクスペリエンスについてより細かく把握できるようになります。

CSATとCESのどちらを使ってもかまいませんが、重要なのは、問題解決までに顧客がどれだけ困難を感じたかをきちんと測定することです。


2. フィードバックを基に目標を設定する

顧客からのフィードバックを確認すると、思うような成果が出ていない分野が見えてくるはずです。

それがわかったら、次はその分野に対処するための新しい目標を設定します。

たとえば、次のような具合です。

  • CSATアンケートで平均スコアよりも低い評価を受けたサポート担当者がいる場合は、その担当者の業務をモニタリングし、追加のトレーニングを実施して、スコアを改善できるように支援しましょう。
  • CESデータから、顧客がチャットでのサポートをメールよりもはるかに高く評価していることがわかった場合は、メールの応答時間の短縮に取り組みましょう。


3. SNSのフィードバックを追跡する

顧客が自社にどんな印象を抱いているのかを知る手段は、アンケートだけに限りません。SNSをチェックすると、他にも消費者が自社に対してどんな意見を持っているのかを把握できます。

以下のようなフィードバックがないかどうかを確認しましょう。

  • 多くの人が挙げている不満
  • よくある質問
  • サポートに関するその他の対処すべき問題

もしかしたら、同じ問題が繰り返し挙げられていることに気づく場合があるかもしれません。これはまたとないチャンスです。自社の製品やサービスが抱える根本的な課題や、混乱の元となっている主な要因を把握できるかもしれません。

また、SNSで顧客から質問や不満が寄せられた場合には、すばやく対応するようにしてください。次のような対応が望ましいでしょう。

  • 問題を正しく特定する
  • 詳細情報へのリンクを示す
  • 顧客に感謝を伝え、不便をかけたことを謝罪して、やり取りを締めくくる

SNSですばやく有益な回答を提供できれば、顧客関係を強化し修復できるようになります。


4. 顧客に寄り添う

カスタマーサービスに関してよくありがちなのが、通話時間やアンケート結果の改善といった面ばかりに注力して、それがすべてと考えてしまうことです。しかし、顧客対応では人間味が感じられることも重要です。

顧客志向とは、顧客の利益が自社の利益につながることに他なりません。顧客に負担を感じさせないことが大切です(人間のサポート担当者とのやり取りは有料にするといった対応は、絶対にあってはなりません)。

サポート担当者は以下の点に留意しましょう。

  • 顧客に共感を示す
  • 根気強く思いやりを持って顧客の不満に対処する

こうした共感力を軸にしたアプローチを推進するにあたっては、まず皆さん自身が手本を示すとよいでしょう。皆さんの従業員への接し方次第で、従業員の顧客への接し方も変わってきます。従業員を大切に思っていることを行動で示しましょう。


5. 営業とカスタマーサポートの連携を図る

カスタマーサポートチームと営業チームがうまく連携していれば、顧客は双方からより良いサービスを受けられるようになります。

チーム間の連携は必須です。実際、顧客の70%が、社内で情報が共有されていることを期待しています。

連携体制を維持できるよう、営業チームとカスタマーサポートチームは、共有の顧客管理プラットフォームを使用する必要があります。そうすれば、次のことが可能になります。

  • サポート担当者とやり取りしている顧客が新製品について知りたがっている場合に、その旨を営業担当者に簡単に知らせることができる
  • 営業担当者の元に技術的で難しい質問が寄せられた場合に、それに回答できる知識を備えたサポート担当者にすばやく取り次ぐことができる

顧客が適切な担当者に割り当てられるのが早いほど、問題解決までの時間が短縮され、顧客満足度も向上します。

顧客志向を実践している企業の事例

ご存じのとおり、顧客志向について語るうえでZapposの話題は避けて通れません。同社がカスタマーサービスをブランドの中心に据えてきたことは、よく知られた話です。顧客志向の企業として、これ以上の好例はないと言えるでしょう。しかし、ここでもその事例をご紹介しては、何の目新しさもありません。そこで今回は、新たな気づきを得ていただけるよう、その他の企業の事例を取り上げます。

以下の企業は、顧客志向をビジネスの中核に組み込んでいます。

1. Nordstrom

この巨大小売企業は、優れたカスタマーエクスペリエンスを実現していることで有名です。

同社の就業規則は1つで、「あらゆる状況で適切な判断をすること」とだけ定められています(実質、他にも規則はありますが、それを見てもNordstromが顧客を非常に重視していることは明らかです)。

Nordstromの顧客に対する懸命な取り組みについて、さらに詳しくご確認ください。

2. Amazon

Amazonは、カスタマーエクスペリエンスに心血を注いでおり、労を惜しまず、顧客満足度の向上に取り組んでいます。

同社の信条である「Our Leadership Principles」では、「リーダーはお客様を起点に考え行動します」と定められています。事実、CEOのジェフ・ベゾス氏が、顧客からの苦情のメールに目を通すこともあります

この顧客志向のアプローチによって、同社はかなりの成果を挙げていると言ってよいでしょう。


3. Netflix

Netflixは、定量調査と定性調査を組み合わせて実施することで、顧客のニーズに応え、絶大な支持を得ています。

同社は長年にわたってこのアプローチを採用し、次のことを実現しました。

  • 物流拠点を増やしてDVDの配送時間を短縮
  • 言葉遣いの面でもユーザーフレンドリーなインターフェイスを実現
  • 映画の質を向上すると共に、お勧めの作品を表示

もちろん、こうした顧客志向の考え方は同社のカスタマーサービスにも及んでいます。顧客とのチャットでの笑えるやり取りをぜひご覧ください。

4. REI

REIは、ライバルの多いアウトドア用品業界で突出した存在です。顧客の視点に立ち、顧客の心が動くポイントを理解しているからこそ、同社はそこまでの存在になることができました。

ここで、REIが顧客をよく理解していることがわかるエピソードをご紹介しましょう。同社は、2015年のブラックフライデーに全店舗を休業しました。1年で最もにぎわう書き入れ時であるにもかかわらずです。

なぜそんなことをしたのでしょうか。

REIのCEOであるJerry Stritzke氏は、こう語っています。「私たちは優れたアウトドア用品に目がありませんが、それ以上に夢中になれるのが、そうしたアイテムを活用してアウトドアを楽しんでいる時間です」

それはREIの顧客も同じです。同社が発信した「#OptOutside(アウトドアに出かけよう)」のメッセージとそれに伴うキャンペーンは、顧客深い共感を呼びました。この取り組みは現在も継続中で、数百万人が参加する毎年恒例のイベントになっています。

#OptOutsideを開始して以来、REIの会員数と収益は着実に伸びており、ほとんどの企業が突拍子もないと考えるようなアイデアで、これだけの見返りを得ることができました。

顧客志向の企業を作り上げる方法

重要なのは、顧客志向が特定のチームにだけ関係するものではないということです。最高の成果を挙げるには、全社一丸となって顧客志向を実現する必要があります。

ここでは、企業のあらゆる活動に顧客志向を織り込む方法をいくつかご紹介します。

  • 優れたカスタマーサービスを自社のミッションの中心に据えましょう。顧客ファーストを掲げて、社内全体の連携を強化してください。
  • 顧客のデータや事例を社内全体で共有しましょう。あらゆる従業員が顧客の視点から自社を俯瞰できるようになります。
  • カスタマーエクスペリエンスを従業員が身近に感じられるようにしましょう。そのためには、たとえば1、2週間だけでもかまわないので、各従業員がカスタマーサービスに従事する時間をとれるようにします。

何よりも大切なのは、カスタマーサービスと他の部門との連携を促進することです。

顧客と触れ合う時間が最も多いサポート担当者以上に、カスタマーエクスペリエンスをよく理解できる人はいません。社内のあらゆるチームが顧客のニーズを常に優先できるようにするには、サポート担当者の協力が不可欠です。

顧客志向を社内全体の優先事項とすれば、顧客に一貫して優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになります。そうなれば、顧客がリピーターになってくれる見込みが高まり、さらには周囲にも自社を薦めてくれるようになるでしょう。

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