記事

CXチャンピオンになるためのベストプラクティス

ESG Research社の調査結果から、CX成熟度の明暗を分ける要因が明らかになりました。

By Andrew Lawson, Zendesk EMEA地域担当シニア・バイス・プレジデント

発行日: 2020年10月7日
更新日: 2020年11月12日

企業のカスタマーエクスペリエンス(CX)運用も、人やキャリア、ワインのように成熟させることができます。ただし、その目標を達成するには、大きな投資と優先順位付けが必要になります。

CXの成熟度を高めていく過程では、過ちを重ね、うまくいかない要因を突き止めながら、試行錯誤を繰り返さなければなりません。企業のリーダーは、自社の現在のCX成熟度をおおよそは把握しているはずで、明確に把握できていると考えるリーダーも少なくないでしょう。

とは言え、それを客観的に把握できているかどうかは確かではありません。そこでZendeskは、リーダーが自社の現状を適切に理解できるよう、ESG Research社と共同で調査を行い、CXの成功とCX成熟度に関するフレームワークを構築しました。

世界中の1,000名以上のCXリーダーを対象に実施したこの調査では、各企業のCX成熟度が3つのレベルに分類できることがわかりました。成熟度の高い順にチャンピオン(Champion:リーダーレベル)、ライザー(Riser:平均レベル)、そしてスターター(Starter:遅れをとる可能性があるレベル)です。この調査結果により、CX成熟度を高め、大きな成果を上げて、ビジネスを長期的な成功につなげるためのカギとなる要素を特定できました。

成熟度レベルや業界にかかわらず、大多数(89%)のリーダーは、CXの停滞がビジネス上のリスクにつながることを認識しています。とは言え、大きな悩みどころとなるのが、時間やリソースをどういった分野に投資すべきかという点です。以下で詳しく触れていきましょう。

CX成熟度の主要指標

ESG Research社の調査結果では、CXチャンピオンに特有の共通点が明らかになっています。

具体的には、CX成熟度の高い企業ほど、カスタマーサービスのKPIを改善できている、品質に絶大な自信を持っている、ビジネス全体で高い成果を収めているといった傾向が見られます。また、顧客からの問い合わせに迅速に応答し、スムーズに問題を解決して、顧客にかかる負担を最小限に抑えています(顧客の負担が増えるほど、顧客離れは加速してしまうのです)。

経営陣、そして社内全体が、カスタマーサービスチームを重要視し、CXの取り組みにおいて重要な役割を担っていると認識しているのも特徴です。これにより、チャンピオン企業は、不安定で不確実な業務環境にもスムーズに順応できると共に、そうした状況が長期的に続いても乗り越えられる自信を持っています。

ESG Research社の調査結果によると、チャンピオン企業は次の7つの点で秀でています。

チャンピオン企業の強み

  1. カスタマーサービスチームにスキルアップの機会を提供している
  2. 常に適切な人員数を維持している
  3. 顧客からのフィードバックに基づいて柔軟に方針を変えられる
  4. 顧客からのフィードバックに基づいてスピーディに方針を変えられる
  5. サポートのパフォーマンスに関するデータや視覚情報が充実している
  6. サポートのパフォーマンスに関するデータをリアルタイムで入手できる
  7. サポート担当者に質の高いテクノロジーを提供している

この7つの点に投資することで、チャンピオン企業は、次の3つのポイントを実現しています。

  • 顧客の期待に応える
  • サポート担当者が高い成果を達成できる環境を整える
  • アジャイル型のアプローチでビジネスを推進する

これらの項目について、チャンピオン企業がどのようなアプローチをとっているのか、詳しく見ていきましょう。

顧客の期待に応える

顧客の期待に応えるには、迅速で簡潔なカスタマーエクスペリエンスを提供すること、そして多様なチャネルでサポートを提供することの2つが重要です。

チャンピオン企業は、問題解決までの時間が短いのが特徴です。1時間未満に解決できる割合が、スターター企業の2倍以上となっています。初回応答時間の平均がスターター企業より1時間早い点にも注目です。

そして重要なことに、チャンピオン企業は、CX成熟度を高めることが他社との差別化につながると捉えています。CXへの投資に積極的であり、顧客維持の能力にも自信を持っています。一方のスターター企業は、問題解決に7時間以上かかるケースもあり、顧客維持にも自信がありません。

前述のとおり、負担の少ないCXは簡潔で、顧客にポジティブな印象を与えます。次のアクションが明確で、必要な情報を得るためにあちこち探し回る必要がありません。つまり、カスタマージャーニーでのあらゆるタッチポイントが明快であり、ナレッジベースの記事で詳細を調べたり、コミュニティフォーラムで質問をしたり、セルフサービス型のサポートから担当者によるサポートに切り替えたりと、顧客はそのつどベストな方法でサポートを得ることができます。

負担の少ないCXを構築するには、多様なチャネルでサポートを提供することが欠かせません。製品に関するサポートを得たり、質問をしたりするのに多大な労力が要るようでは、顧客は離れていってしまいます。

サポート担当者が高い成果を達成できる環境を整える

サポート担当者はCX運用の最前線に立ち、通常、顧客と最初に接点を持つ立場にあります。ESG Research社の調査結果では、CX成熟度が最も高い企業は、複数の方法でサポート担当者を成功に導いていることがわかりました。

優れたカスタマーサービスチームは、CXの成熟度とその成功の両方にプラスの影響を与えます。

カスタマーサービスのプロセスを効率化すると、サポート担当者のエクスペリエンスが向上します。具体的には、担当者が業務をスムーズに遂行できるよう、トレーニングの機会やテクノロジーなどのツールを提供します。サポート担当者を個々の問題の解決者としてではなく、戦略的なパートナーとして捉えれば、担当者自身はもちろん、顧客、ひいてはビジネスにポジティブな影響がもたらされます。チャンピオン企業では、担当者の離職率が低いうえ、より効率的にサポート業務を行っていることがわかっています。

チャンピオン企業のサポート担当者は、スターター企業のおよそ2倍の問い合わせを処理しています。

チャンピオン企業では、全体解決時間がスターター企業よりも平均34%(約3時間)短く、当初の目標を超える顧客満足度(CSAT)を達成する割合も6倍高くなっています。このように効率性に優れているのは、チャンピオン企業が以下に取り組んでいるためです。

  • 教育とトレーニングの強化
  • 多様なサポートチャネルに対応するためのテクノロジーへの投資
  • 定期的なデータ分析と、分析結果に基づいたアクションの実行

アジャイル型のアプローチでビジネスを推進する

チャンピオン企業は、ESG Research社が言うところの「顧客の動きに合わせたアジリティ」にも長けています。つまり、顧客ファーストの視点で、サポート、人員配置、製品に関する意思決定を行っているということです。チャンピオン企業は、顧客の声によく耳を傾け、顧客のニーズに合わせて経営方針を決めています。

たとえば、食事宅配サービスを提供するFreshlyは、質の高いコンテンツを作成し、検索性を上げることで、セルフサービスを利用する顧客のエクスペリエンス全体を改善することに成功しました。ここで重要なのは、単に新しいチャネル(セルフサービス)を追加しただけで満足せずに、コンテンツの関連性や検索性を高め、自社の顧客層に合わせて使いやすさを追求するなど、さらなる投資を行ったことです。

データの分析なくして、アジリティと適応力を高めることはできません。多くの企業は、そもそも自分たちが何を理解できていないのかが理解できていません。そうなるとビジネスにも悪影響が及ぶことは、ESG Research社の調査結果からも明らかです。多くのスターター企業は、CX指標を定期的に確認していない一方、チャンピオン企業の約半数は毎日モニタリングしています。

CXへの包括的なアプローチ

ご紹介してきた3つのキーポイントのうち、1つの項目だけに投資して残りを後回しにしてしまうと、CX成熟度は高まりません。3つすべてに取り組み、真のCX基盤を構築することが重要です。実際、1つの項目に取り組んだところでなかなか成果は現れません。

ESG Research社の調査結果によると、企業は不況の年ほど、コストの削減より付加価値の提供に力を入れる(もしくはその両方に少しずつ対応する)ことがわかっています。とは言え、これは小規模企業にとっては、言うほど簡単な取り組みではありません。しかし、CXは長い目で見ることが重要で、長期的な戦略と包括的なアプローチが求められます。そして、その努力は必ず報われるのです。現に、チャンピオン企業の78%は、自社の将来に明るい展望を抱いています。