メインコンテンツへスキップ

記事

大企業でもパーソナライズされたサービスを提供する方法

大企業は、多くの場合、サービスのパーソナライゼーションという面ではあまり良い評価を受けていません。しかし、努力次第でそれを覆すこともできます。

更新日 2024年2月22日

洋服店で、自身の系統にそぐわない洋服を勧められたことはありませんか?

まさに求めていたようなTシャツを持ってきてくれはしないだろうかと内心期待していたところで、もしそんな的はずれな提案をされたら、困惑、不満、苛立ちといったさまざまな感情が込み上げてくるはずです。ご察しのとおり、この場合、店員は単にそのブランドが売り出したい商品を勧めているだけで、顧客1人ひとりのスタイルにまったく配慮していません。

それができないのは、顧客のことをよく理解していないからです。

このような場面に遭遇したことがあるのは、何も皆さんだけではありません。消費者の71%が、買い物の際にあまりにも画一的な対応を受け不快に感じたと答えています。

購入先の企業が数億円、数百億円規模の大企業であった場合、顧客のそうした感情は増幅されます。ただでさえ規模が大きく、段違いの売上を上げている大企業が、自分個人のことなど気に留めてくれるはずがないと顧客は考えてしまうのです。

しかし、そのような見方を甘んじて受け入れる必要はありません。大企業でも、それぞれの顧客に自分が特別な存在だと感じてもらうことは可能です。顧客に疎外感を与えないようにするには、パーソナライズされたサービスを提供し、常に顧客1人ひとりのニーズと向き合うことが重要です。

パーソナライズされたサービスとは

パーソナライズされたサービスとは、顧客に合わせてカスタマーエクスペリエンス(CX)をカスタマイズすることです。そこでは、顧客1人ひとりのニーズを考慮に入れることが求められます。

パーソナライズされたサービスが具体的にどんなものかを理解したいのなら、ご自身のメールの受信トレイをのぞいてみるのが一番です。さまざまな企業から届いたメールの何件かにざっと目を通してみてください。何か気づいたことはありませんか?

一部のメールにはおそらく、皆さんの名前が書いてあったり、皆さんが個人的に関心を持っている情報が盛り込まれたりしているはずです。あるいは、ありきたりの宣伝文句を載せているだけのスパムメールもあるでしょう。

では、どのようなメールだと顧客の受けが良いと思いますか?

もうおわかりですね。メールの件名をパーソナライズするだけでも、メールの開封率は26%向上します。これは単純な理屈で、相手の名前を盛り込んで挨拶を始めるのと、単に「こんにちは」から始めるのとでは印象が違うからです。前者の場合は、顧客に直接語りかけているような効果が出ますが、後者の場合は、言わば自動車販売店の開店案内のチラシを、無造作に顧客の郵便受けに放り投げているようなものです。

パーソナライゼーションの効果はメールに限ったことではありません。最近では、サービスのパーソナライゼーションにも企業から注目が集まっており、パーソナライゼーションの取り組みは、CMOの平均的な予算の14.2%を占めるようになっています。年々注目が高まっているサービスのパーソナライゼーションに、大企業もまた無関心ではいられなくなっています。

大企業がパーソナライズされたサービスを提供すべき理由

消費者は多くの場合、大規模な顧客ベースを有する大企業にとって、自分たちはただの番号のような存在に過ぎないと感じています。実際はどうであれ、たとえばNikeストアが、地元のスニーカーショップよりも自分たちを顧客としてより重んじているとはだれも考えません。大企業がたった1人の顧客のために時間を割くことなどないというのが、一般的な認識です。

もちろん一部の例外はありますが、多くの消費者は大企業のことを、自分たち1人ひとりに目を留めることのない非人格な組織であるように感じています。そこで、パーソナライズされたサービスを提供すれば、大企業はそのようなレッテルをはがして、それぞれの顧客に個別で優れた対応を行えます。さらに、そうしたサービスを提供していない他社に差をつけることもできます。

顧客維持に効果があることも、パーソナライズされたサービスを提供する大きなメリットの1つです。調査会社Segmentが発表した「2017 State of Personalization Report(2017年版パーソナライゼーションに関するレポート)」によると、消費者の44%は、パーソナライズされたサービスを受けて満足すると、その企業のリピーターになることがわかっています。この結果、顧客のロイヤルティが向上し、商品やサービスを積極的に購入してくれるようになります。

そのようなロイヤルティの高い顧客をいったん獲得したら、みすみす手放すようなことがあってはなりません。継続利用してもらえるだけの理由を与えましょう。たとえば、ロイヤルティプログラムを実施して、何度も購入してくれた顧客や知人を紹介してくれた顧客に報酬を提供すれば、2つの方向からブランドアフィニティ(ブランドへの親近感)を高めることができます。

そして今、このような施策は、CRMソフトウェアによってかつてないほど簡単に実現できるようになりました。CRMソフトウェアを使用すると、膨大な顧客データにシームレスにアクセスできるため、大企業でも消費者の購買パターンをより深く理解し、CXをパーソナライズできるようになります。

今日、あらゆるツールや技術を利用できる状況にあって、大企業がパーソナライズされたサービスを提供できない理由はありません。

サービスのパーソナライゼーションに必要な情報とは

的確にパーソナライズされたサービスを提供するには、適切なデータが必要です。それがなければ、顧客個人のレベルでインサイトを得ることはできず、優れたCXの実現は夢物語になってしまいます。

顧客の基本情報

「名前が何だと言うの?」と『ロミオとジュリエット』のヒロインは言いましたが、企業にとって、顧客の名前はパーソナライズされたサービスを提供するための入り口です。名前で呼びかければ、顧客はただの番号のような存在から、それぞれに独自の好みを持つ生身の人間へと変わります。

フォームに名前を記入してもらうところから、顧客との1対1のつながりはスタートします。名前を知ることは、1対1のつながりを築くための最初のステップであり、そこからパーソナライズされたサービスを少しずつ展開していくことになります。

したがって、顧客に必ず名前をたずねるようにしましょう。会員限定コンテンツの提供、魅力的な週間ニュースレターの配信など、代わりに何らかの価値を提供することは、顧客の基本情報を得るうえで効果的な方法です。

履歴情報

顧客の履歴情報は、パーソナライズされたサービスにおいて特に重要なピースの1つです。履歴情報によって、顧客がどのように自社とかかわってきたかをすぐに知ることができます。これは、顧客との関係性を時系列で教えてくれるタイムラインのようなものです。.

数え切れないほどの顧客を抱えている大企業でも、顧客1人ひとりについて細かく把握することは重要です。購入した製品やサービス、対応したサポート担当者、自社の利用期間といった情報を知っていなければなりません。

大企業の場合、このプロセスを自動化することは必須です。CRMソフトウェアなら、顧客の履歴情報を手間なく入手できます。.

Zendeskでは、顧客の行動履歴が表示され、顧客の名前、住所、購入履歴、カスタマージャーニーに関する詳細なインサイトをすばやく引き出すことができます。

Zendesk’s Customer Context feature

デバイスの情報

カスタマーサービスにおいて、利便性は重要な要素です。顧客の主な使用デバイスを理解し、そのデバイスでやり取りする最良の方法を導き出す必要があります。

一般的に、若者ほどスマートフォンで買い物をする傾向がありますが、高齢者の場合は、ノートPCやタブレットを使うことが多いかもしれません。こうした傾向を見極めるのも大事な仕事です。

それを踏まえたうえで、パーソナライズされたサービスをデバイスごとに最適化しましょう。PC版で優れたサインアップフォームやニュースレターを提供している場合は、モバイル版でもそうしたコンテンツを用意すべきです。自社が対応しているどのデバイスでも、同等のユーザーエクスペリエンスと品質を提供できなければなりません。

言語と文化的期待値

多くの場合、大企業の顧客ベースは世界中に拡がっているため、すべての顧客と同じ方法でコミュニケーションをとることはできません。

そのため、多言語でカスタマーサービスを利用できるようにする必要があります。本社の国の言語をだれもが理解できると思ってはいけません。Webサイトから、顧客と直接会話するサポート担当者に至るまで、すべての接点が言語ごとにカスタマイズされていることが重要です。

顧客と接する際には、文化の違いも理解しなくてはなりません。たとえば、米国人とインド人では、カスタマーサービスに対する考え方が異なる可能性があります。それぞれの国外拠点に合わせてカスタマーサービスをパーソナライズすることは、必要不可欠な取り組みです。

次に考えるべきは時差です。Zendeskなら、スケジュールを複数設定できる機能を備えているため、世界各地の営業時間を顧客に表示できます。この機能を使用すれば、顧客が営業時間外に問い合わせをしてきた場合にも、いつごろ返答できそうか、おおよその日時をパーソナライズされたメッセージと共に知らせることができます。

Zendesk’s Multiple Schedules feature

場所や環境に関する情報

大企業の場合、通常はさまざまな場所に拠点があります。顧客の現在地に関する情報が得られれば、より適切な提案をスピーディに行えます。たとえば、顧客の近所の店舗で利用できる割引コードを発行するといったことが可能になります。

また、オンラインショップを運営している場合、地方に住む顧客には送料無料のサービスやオンライン割引コードを提供すると効果的です。地方住まいだと、実店舗にはなかなか足を運べない可能性がありますが、オンラインショップなら積極的に利用してお金を落としてくれるかもしれません。

CXのパーソナライゼーションに早速取り組みましょう

大企業におけるサービスのパーソナライゼーションは、一朝一夕に実現するようなものではありません。CXを変革する新たな方法がテクノロジーによってどんどん生み出される中、そうした技術面への投資に、大企業はより多くの資金を投じていくことでしょう。

重要なのは、常に顧客と歩調を合わせることです。企業側の優先事項を重視して、自社の都合を第一にサービスをパーソナライズすることがあってはなりません。顧客1人ひとりのニーズを念頭に置きながらサービスを構築することが大切です。

パーソナライズされたサービスを提供するための戦略を今のうちに立てておけば、将来的に正しい方向へと進めるようになります。卓越したCXを提供する方法についてもっと詳しく知りたい方は、「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」をご覧ください。企業の皆様が求めてやまない、顧客に関する有意義なインサイトがたくさん紹介されています。

レポートを読む

関連記事

記事

顧客体験設計(CXD)とは?軸となる考え方と基礎知識、実践方法を解説

顧客体験は顧客が商品やサービスを選ぶ際の、すべての段階において影響を与える要素です。顧客体験設計は、この顧客体験をあらかじめ企業側が設計し、望む方向へ導く手法となります。本記事では、顧客体験設計の考え方と実践について解説します。

記事

カスタマーインテリジェンスとは?定義・種類・例

カスタマーインテリジェンスとは、消費者のデータを収集・分析し、実用的なインサイトを引き出すプロセスのことです。本記事では、カスタマーインテリジェンスの定義や種類、具体例をご紹介します。

記事

顧客プロファイルとは? 定義・項目・作成方法

データを活用して充実した顧客プロファイルを構築し、より適切でパーソナライズされた体験を提供しましょう。本記事では、顧客プロファイルの定義や作成方法をご紹介します。

記事

顧客ライフサイクルマネジメントとは?定義、戦略、5つのステージ

顧客ライフサイクルマネジメントとは、消費者が購買に至るまでのステップを追跡するプロセスを指します。本記事では、顧客ライフサイクルマネジメントの定義や戦略、ステージについて解説します。