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顧客体験価値とは?その重要性と取り組むメリットや具体的な方法を解説

更新日: 2024年1月30日

現代のビジネス環境では、多くの業界で競争が激化しています。似たような商品やサービスを提供する企業が増えるなかで、顧客体験を通じて差別化を図る必要性に迫られています。
本記事では顧客体験価値を提供する重要性を確認しながら、取り組みにより期待できるメリット、実施において評価基準となる指標や具体的な方法を解説します。

顧客体験(CX)とは何か

顧客体験(Customer Experience:CX)とは、顧客がある企業やブランドとの接点を通じて得る体験の総称です。顧客体験には、顧客が商品やサービスを閲覧し、購入または契約し、購入後に問い合わせをするなど、一連のプロセス全体におけるあらゆる経験が含まれます。

商品やサービスの購入、利用、サポート、コミュニケーションなど、顧客が企業との関わりを持つ、すべての段階において影響を与える要素が含まれていることになります。

顧客体験の結果は、顧客の満足度やロイヤルティの向上、口コミの拡散、顧客の購買行動などに大きく関わります。顧客が良い体験をすることで、企業やブランドに対して共感や好意が生まれ、長期的な関係を築くことができます。

経験価値マーケティングの戦略的フレームワークを提唱したことで有名なBernd H. Schmitt氏は、その著書「Experiential Marketing: How to Get Customers to Sense, Feel, Think, Act, Relate」において、経験価値マーケティングのフレームワークを構成する要素を顧客体験の観点から下記の5種類に分類しています。顧客体験の種類を理解するために参考になる情報としてご紹介します。

  • SENSE(感覚)
    SENSEマーケティングは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を通じて感覚的な体験を生み出すことを目的に、五感に訴えかけるものです。企業や商品の差別化、顧客の動機づけ、商品の付加価値を高めるために用いられます。
  • FEEL(感情)
    FEELマーケティングは、顧客の内面的な感情や感じ方に訴えかけることで、喜びや誇りといった強い感情を引き出す体験を創出するものです。
  • THINK(思考)
    THINKマーケティングは、顧客が創造的に関与する認知的で問題解決型の体験を創出することを目的に、知性に訴えかけます。消費者がブランドや製品について深く考え、理解を深める機会を提供し、その過程で創造的な問題解決スキルを活用するような体験を作り出すことを目指しています。
  • ACT(行動)
    ACTマーケティングは、顧客の身体的な体験、ライフスタイル、相互作用に影響を与えることを目的としており、顧客の生活を豊かにすることに貢献します。
  • RELATE(関係)
    RELATEマーケティングは、SENSE、FEEL、THINK、ACTマーケティングの側面を含みつつ、個々の体験を超えて、他社や文化との関係性を強化するものです。自己改善や他人からの好意的な評価、社会全体とのつながりを求める欲求に訴えかけます。

出典:「Experiential Marketing: How to Get Customers to Sense, Feel, Think, Act, Relate」(Bernd H. Schmitt、1999年)

顧客体験価値の重要性


Zendeskが日本を含む世界中の消費者やビジネスリーダーを対象にしたCXに関する年次調査であるCXトレンドレポート2023年版によると、消費者は以下のような傾向を示しています。

あらゆるシーンでスムーズな顧客体験を提供するブランドを優先的に利用したいと回答した割合:70%
たった一度でも不愉快な思いをしたら他社に乗り換えると回答した割合:52%
企業はもっと自分について収集したデータを使用して顧客体験をパーソナライズすべきだと考えている割合 :59%

上記の結果から、顧客体験はブランドの事業戦略において非常に重要な位置づけにあることがわかります。顧客はあらゆる場面で一貫し、継続した顧客体験を望んでいます。

例えば、何かを購入した場合には、企業側がその顧客の行動について把握し、フォローやサポート、新たな情報提供を適宜行う必要があります。個々の顧客に対して、パーソナライズされた顧客体験を提供することが消費者の希望です。

また、調査に回答した消費者の半数以上が「たった一度でも不愉快な思いをしたら他社に乗り換える意向を持っている」と回答していることから、顧客を維持するのがいかに難しいかがわかります。

顧客に対して一度でも失望感を与えると、競合他社に移ってしまう可能性が高まります。顧客体験の質が、顧客の継続的な支持に密接に関連しているのは明らかです。

顧客が望むような顧客体験を実現するためにも、顧客に関する情報を丹念に収集して、的確な管理を行い、効果的に活用する体制が求められます。

顧客のニーズや体験を把握することによるメリット

顧客側の視点を把握することで期待できるメリットを解説します。

  • 顧客ロイヤルティの向上
    価値の高い顧客体験を提供することで、顧客の満足度を高め、顧客ロイヤルティを強化することができます。顧客からの支持を継続して得られれば、リピート購入が増え、顧客の生涯価値(LTV)が向上します。

  • 口コミと評判への影響
    現代の消費者には価値の高い体験を、積極的にシェアする傾向が見られます。良い口コミと評判は、新規顧客の獲得につながり、ブランドの信頼性と認知度を高めます。
  • 競争優位性の確保
    顧客体験の差別化により、商品やサービスへの付加価値が得られます。モノがあふれ、商品そのものによる差別化が難しくなるなかで、市場での競合他社との戦いにおいて優位に立つための大きな要因となります。
  • 顧客ニーズの理解
    顧客体験価値を高めるためには、顧客のニーズや潜在的な要求を理解し、それにあったサービスや製品を提供する必要があります。取り組みを通じて、商品やサービス品質の向上、課題の改善が可能となります。
  • ブランドイメージの向上
    良質な顧客体験はブランドのイメージに大きな影響を与えます。心地よい顧客体験の提供により、ブランドに対するポジティブなイメージが構築され、社会的なブランド価値向上に貢献します。
  • イノベーションと成長の促進
    顧客のフィードバックや要望を収集するといった、顧客体験価値の創造におけるプロセスが、製品やサービスを改善し、革新するためのヒントとなります。顧客の声に真摯に耳を傾ける姿勢が、新たな発見をもたらします。

顧客体験価値を評価(計測)する指標


顧客体験価値を評価するための主な指標を紹介します。

  • 顧客満足度(CS)
    顧客が製品やサービスに対してどれだけ満足しているかを測定する指標です。アンケート調査やフィードバックを通じて顧客の声を集め、問題点を特定して改善に取り組むことで、顧客ロイヤルティを高める手段となります。
  • Net Promoter Score®(ネットプロモータースコア、NPS)
    顧客がどれだけ企業やブランドを他人に推薦する意欲があるかを測定する指標です。推薦者と批評者の比率を用いてスコア化し、業界ベンチマークとしても利用されます。
  • eNPS®(エンプロイーネットプロモータースコア、Employee Net Promoter Score)
    自社をどの程度外部に推奨するかを見ることで、従業員の満足度を表す指標です。従業員の意見をもとに、内部の改善を行うことで、最終的には顧客体験品質の向上にもつながります。
  • アクセス解析
    Webサイトやアプリのアクセスデータを分析し、顧客がサイトをどのように利用しているかを理解する手法です。顧客の行動を把握することで、改善策を見つけ出し、顧客体験を向上させます。
  • CES(顧客努力指標、カスタマーエフォートスコア、Customer Effort Score)
    顧客がサービスを利用する際に、どれだけ労力を要したかを測定する指標です。顧客の負担を減らす取り組みを行うことで、顧客満足度を向上させます。
  • リテンションレート(顧客維持率)
    Webサイトやアプリの再訪割合を示す指標です。長期的な顧客関係を示し、顧客との持続的な関わりを促進するための施策を考えるきっかけとなります。
  • LTV(顧客生涯価値、Life Time Value)
    顧客の継続的な取引期間によってもたらされる価値を測定する指標です。顧客との長期的な関係構築による収益を計測し、経済的な価値を把握します。
  • CS解決率
    問題解決率やワンコール解決率、一次解決率などを通じて、顧客への対応の質を評価します。顧客の問題をスムーズに解決することで、満足度を向上させます。
  • SNSにおける口コミ評価
    ソーシャルメディア上での顧客の声を収集し、キャンペーンの反響やネガティブな意見を把握することで、マーケティング施策の改善や調整に活用します。

顧客体験価値を高める方法


顧客体験価値を高めるための方法を解説します。

良質なカスタマーサポートの提供

先にも示したように、CXトレンドレポート2023によると、顧客は1回ネガティブな体験をしただけで、そのうちの半数が競合他社に乗り換えると回答しています。また、カスタマーサポートや顧客体験の質を顧客が重視しており、ロイヤルカスタマーになる要因であることも調査結果から明らかになっています。

あらゆるシーンでスムーズな顧客体験を提供するブランドを優先的に利用したいと回答した消費者の割合:70%
あるチャネルで始めた会話を別のチャネルでも続けられるブランドの製品を優先的に購入したいと回答した消費者の割合:66%

顧客体験をパーソナライズする

パーソナライズされたメッセージング、製品の推奨、カスタマイズ可能な製品やサービスなど、顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせた個別の体験を提供します。顧客情報管理の徹底に加え、データ分析とAIを活用することで、高度なパーソナライズ化を実現できます。

CXトレンドレポートでも消費者の59%は「企業はもっと自分について収集したデータを使用して顧客体験をパーソナライズすべきだ」と回答しており、企業が収集した情報を使って顧客体験をパーソナライズすることに対して、消費者は肯定的な反応を示しています。

顧客にストレスを与えない

疑問や問題を抱えている顧客に対して、余計なストレスを与えないことが重要です。迅速な解決を望むときに、Webサイトで探しているコンテンツが見つからないだけで顧客は大きなストレスを感じます。

また、FAQへのリンクがわかりづらい、カスタマーサポートへつながりにくいといったことも、顧客のストレス要因となります。FAQやボットなど顧客が自ら問題を解決できるコンテンツを用意する、顧客管理の統一化を図り、一貫したカスタマーサポートを提供するなど、顧客のストレスや手間を軽減する体制を整備し、顧客体験の向上に努めます。

オムニチャネルによる顧客体験価値向上

顧客体験におけるストレス排除のためにも、高品質で一貫性をもったサポートが必要です。
対応者のレベルのそろったカスタマーサポートと、長期案件においても問い合わせ履歴が失われず、どのチャネルからでも対応が継続される体制づくりが求められます。

CXトレンドレポートでも消費者の66%は「あるチャネルで始めた会話を別のチャネルでも続けられるブランドの製品を優先的に購入したい」と回答しており、チャネルが多様化する現在、オムニチャネルな顧客対応の重要性がますます高まっています。

AIで変わる顧客体験

近年、AIの進化は私たちの生活のあらゆる面に影響を及ぼしています。ビジネスの世界では、顧客体験の向上を目指す企業がAIを積極的に取り入れています。その中でも、AIを活用した対話型の体験や顧客対応の自動化は、顧客との関係を新たな次元へと導いています。顧客体験において、AIは下記の役割を担います。

  • パーソナライズされた体験の提供
    AIは、顧客の過去の購入履歴や閲覧履歴、さらには好みや関心を学習することで、それぞれの顧客に合わせたパーソナライズされた体験を提供できます。これにより、顧客は自分だけの特別なサービスを受けることができ、顧客満足度が向上します。また、企業にとっても、顧客に最適な商品をAIがレコメンドすることにより、売上を直接的に増加させることができます。
  • 対話型体験の提供
    AIを活用したチャットボットや音声アシスタントは、顧客からの質問や要望に迅速に対応することができます。これにより、顧客は待たされることなく、必要な情報やサポートを人間を介さずとも自然な形で受けることができます。
  • 感情分析の活用
    AIは顧客からの問い合わせ内容や声のトーンから、喜びや悲しみ、怒りといった感情を分析することができます。特にネガティブな顧客とサポート担当者が話す際は、AIがサポート担当者に顧客の感情や状態を伝えてくれれば、サポート担当者は優先的に対応したり、情報収集や話し方など、顧客に寄り添った対応をするための準備をしたりすることができます。顧客は自らの感情に合った顧客対応が受けられるため、よりストレスのない体験をすることができます。
  • 予測と提案
    AIは大量のデータを分析する能力を持っているため、顧客の次の行動やニーズを予測することが可能です。これにより、企業は顧客に先んじて最適な提案やサービスを提供することができます。

AI技術の進化は、顧客体験をよりパーソナライズし、効率的かつ対話的なものに変えています。感情分析を活用することで、顧客の心の中をより深く理解し、それに応じたサービスを提供することが可能となります。企業がAIを適切に活用することで、顧客との関係をより深く、持続的に築くことができるでしょう。

ZendeskのAIソリューション


Zendeskは世界10万社以上が利用するカスタマーサービスプラットフォームです。あらゆるチャネルからの問い合わせを一元管理し、オムニチャネルで一貫性のある優れた顧客体験を実現できます。

ZendeskのAIは数十億件にもおよぶ実際のカスタマーサービスデータでトレーニングされており、導入後すぐにでも利用可能です。AIボットが顧客に自然な対話体験を提供し、自動で問い合わせに対応します。また、AIが受信した問い合わせに目的や言語、印象のラベルを付け、優先順位付けやルーティングを効率化することもできます。

さらには、OpenAIと連携し、問い合わせの要約や回答の詳細化・長文化、トーン変更など、生成AIを活用した機能も提供し、担当者の業務効率化を支援します。

ZendeskのAIソリューションにご興味がある方は、ぜひ下記のページで詳細をご覧ください。

顧客体験に特化したZendesk AIとは?

企業成長に直結する顧客体験価値の向上への取り組み

顧客体験価値は商品やサービス提供の全てに関連し、満足度やロイヤルティ、口コミの拡散、購買行動に影響を与えます。顧客体験価値の向上によって企業が得られるメリットは多岐にわたり、優良顧客を保持し続けることで生まれる利益は計り知れません。

顧客体験価値を高めることは、企業の未来にわたる競争力維持と成長力の源となり、これからの企業経営には不可欠な取り組みと言えるでしょう。

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