対話型AIに対する顧客の本音とは AIチャットボットのさらなる活用へ

企業のCX戦略にボットを活用する際の、アプローチの是非についてご説明します。

発行日: 2021年6月8日
更新日: 2021年6月8日

かつてカスタマーサービスの分野では、自動化に関する悪評が瞬く間に広がった時期がありました。1980年代以降、コールセンターに導入されたのが自動音声応答システムです。このシステムは、担当者の対応を待つ顧客に対し、「たいへん長らくお待たせしており、誠に申し訳ありません」という白々しいメッセージを延々と聞かせ続けていました。

その後、それに代わったのがチャットボットです。ただし、ボットの会話がぎこちなく大した助けにならない場合、これも顧客の不満の種につながります。実際、米国の1,000人以上の消費者を対象にした2019年の調査では、顧客の86%が、選べる状況であれば、ボットではなく人間の担当者と直接やり取りしたいと回答しました。

ところが2020年、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの発生により、ドラッグストアや航空会社では電話での問い合わせが急増しました。一方、感染者の増加とソーシャルディスタンスの影響で、コールセンターの対応能力は低下しました。そこで、多くの企業は人員不足を補うため、チャットボットや音声アシスタントに頼るようになりました。

このように、顧客は突如として対話型AIと接触する機会が増えることになりましたが、意外にも、多くの顧客はボットとのやり取りに違和感を覚えませんでした。世界6か国、5,000人以上の消費者を対象にした調査によると、2020年12月の時点でチャットボットに否定的な顧客の割合は18%で、住所変更などの簡単な手続きについては、むしろボットを利用したいと答えた人が大半でした。

消費者全体がAIとの会話を受け入れているかと言えば、そうではありませんが、抵抗感が薄れていっているのは間違いありません。その主な理由は、今日のテクノロジーの性能がきわめて高くなったことにあります。

AIとの会話を心から受け入れてもらうには、顧客が対話型AIのどのような点を肯定的または否定的に見ているのか、また、CX(カスタマーエクスペリエンス)の強化に向けて自動化をどう活用するとよいのかを理解しておくことが重要です。

対話型AIとは

対話型AIの定義:データ、機械学習、自然言語処理(NLP)を使用して、音声入力やテキスト入力を認識し、ユーザーによって選択された言語で応答を返す人工知能技術のことです。

Zendeskのカスタマーサクセスコンサルタント、Giovanna Chethuan Esguerraが言うには、対話型AIとは、簡単に言えば人と話をする機械です。一方、Zendeskで大規模なサクセスチームのマネージャーを務めるSam Chandlerは、こう話します。「興味深いことに、AIの重要性を理解している企業でも、その中で実際に対話型AIを使用している企業の割合は20%に過ぎません。私が取引している企業の多くも、対話型AIのような機械学習ツールに関心を示していますが、使いこなせる自信がないと話していました」

企業のライフサイクル全体やチャネル戦略をサポートするというのが、AIの理想的な使い方です。たとえばチャットボットであれば、ヘルプセンターやFAQといったセルフサービス戦略と組み合わせるようにします。そうすると、返品依頼の連絡をしてきた顧客に対し、ボットを通して自社の返品ポリシーに関するコンテンツを提示するといったサポートが可能になります。

「どのような形態でAIを取り入れるにしても、他の分野と同じ方針で投資を行うべきです。AIそのものをCX戦略の目的とするのではなく、あくまでCX戦略の一部としてAIを取り入れることが大切です」とChandlerは強調します。「もともと設定していた目標に沿ってAIへの投資を行うと共に、測定可能なKPIを利用してAIによる目標の達成度合いを追跡する必要があります」

顧客の属性によって対話型AIへの見方はどう変わるのか

ご察しのとおり、対話型AIへの印象は消費者の世代によって異なります。

Esguerraは次のように話します。「『Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート』の2020年版では、多くの人がAIとのやり取りに積極的であることがわかっています。特に若い世代(Z世代やミレニアル世代)は、適切な回答を返してくれるのであれば、AIとのやり取りに抵抗を示さない傾向にあります。そうした世代は、子供のころから高度なテクノロジーに触れて育ってきたためです」

それより年齢層の高い顧客になると、ボットとやり取りしていることにしばらく気づかず、相手が人間ではないとわかってだまされたような気分になる人もいます。その点、若い世代はよりAI慣れしていると言えるでしょう。こうしたデジタルネイティブ世代はボットとやり取りした経験も多く、迅速で正確な回答が得られるのであれば、ボットの利用には積極的です。

一方、「若い世代」と言っても、相対的な表現でしかない点には注意が必要です。

Chandlerはこう説明します。「よく誤解されていますが、テクノロジーに関する『世代間ギャップ』は、普通の人が思っているよりもずっと遅い年齢から発生します。年齢層が高い顧客の方が、電話のようなライブチャネルを好む傾向にあるのは事実ですが、そうした傾向が見られ始めるのは、ほとんどの企業が考えているよりもかなり後で、70~80歳ぐらいからです」

そして、対話型AIに慣れ親しんできた世代が高齢層になれば、こうした傾向も変わっていくでしょう。実際に、世代間ギャップは既にほぼ気にしなくてよい段階に来ていると見る向きもあります。

「前述の調査結果によれば、『AIは簡単な問題の解決に役立つ』という考えに同意しなかった人は、いずれの世代でもごく少数でした」(Esguerra)

つまり、どの世代もおおむね、AIは簡単な質問になら問題なく答えられると考えています。ただし、より複雑な問題になると、ボットへの抵抗感は強くなります。特に、ベビーブーム初期に生まれた人や、沈黙の世代(米国で1928~1945年生まれの人を指す)に当てはまる人だと、その傾向が顕著です。

Chandlerは次のように話します。「しかし大事なのは、うまく使えさえすれば、世代の違いはそれほど問題にならないということです。チャットボットは、セルフサービスと人間の担当者の橋渡しのような存在です。年齢などの属性にかかわらず、顧客全体が抵抗なくAIを使用できるようにしなければ、CX戦略の一部としてAIを効果的に活用することはできません」

Chandlerはまた、CXに関する課題の原因が顧客の属性にあると考えてはならないと話します。対話型AIそのものではなく、その実装方法に問題がある場合も少なくありません。

「あるチャネルの成果があまり上がらない場合、顧客から受け入れられていないのかもしれません。あるいは、一部の問い合わせに関して、トピックやカスタマージャーニーの段階が適していないにもかかわらず、不適切なチャネルで対応しようとしている可能性があります」(Chandler)

AIとの会話はどれだけ「人間らしく」あるべきか

ボットを使う目的は、話している相手が本物の人間だと顧客に思い込ませることではありません。とは言え、対話型AIに顧客が違和感を覚えないような言葉遣いをさせることは大切です。

Esguerraはこう話します。「相手がボットであると顧客が理解しているとしても、できるだけ自然で親しみやすいトーンを心がけなくてはなりません。たとえば、自社の製品やサービスに関して、顧客が実際に使っている用語を使用できるようにすべきです。また、手持ちの顧客データを漏れなく活用して、ユーザー1人ひとりに合わせたエクスペリエンスを提供できるようにするとよいでしょう」

AIと適切な顧客データを組み合わせれば、チャットボットを通じて次のことができるようになります。

  • 顧客に名前で呼びかける
  • 顧客の現在の状況を確認するs
  • 顧客が購入済みの製品やサービスを調べる
  • 顧客のカスタマージャーニー全体を把握する

このように、ボットは顧客とのこれまでのやり取りを理解して、無駄な会話を省き、顧客に有益なサポートを提供してくれます。

「もしも顧客が既にヘルプセンターの一部の記事を読んでいるようであれば、ボットがその情報を理解して、問題解決に役立つ別の記事を提案できるようにします。AIを利用して高い成果を収めるには、その開発方法やユースケースを検討する際に、デザイナー、エンジニア、その他のあらゆる関係者に意見を聞き、消費者やビジネスに関する関係者全員の知識を総動員させるとよいでしょう」(Esguerra)

ボットによるサポートの利用可否は、顧客自身で選択できるようにしましょう。また、顧客が必要に応じて、人間の担当者とすぐに話せるような仕組みを作ることも肝心です。

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