
セルフサービスは、サポートチームのエージェントやサポートを受ける顧客だけでなく、組織内のあらゆる部門にメリットをもたらす可能性があります。ヘルプセンターのコンテンツや指標をサポートチーム以外も利用できるようになれば、その情報はビジネスの拡大に役立つ強力なツールになります。
顧客との直接のエンゲージメントに関する指標は、カスタマーエクスペリエンスの最適化に何らかの形で関わっているあらゆる部門にとって有益なインサイトを提供してくれます。たとえば、次のようなメリットがあります。
- マーケティング部門は、どの機能が特に重要なのかを把握できます。顧客への理解が深まるため、非常に関連性の高いトピッククラスタに情報を提供して、マーケティングキャンペーンやセールスアセットのほか、顧客の成功をサポートする資料を計画、作成できます。
- 営業部門は、部門内でのセルフサービスエクスペリエンスを通して、顧客を説得する際に対処が必要な難題を把握し、主張を裏付けるアセットを共有して、製品の知識を深めることができます。管理職は、たとえば終了した取引について、その前に共有された記事や、その共有順序に関するレポートを実行できます。
- 製品部門は、効果を上げている機能や効果がない機能、拡張が必要な機能を把握して、顧客のニーズに合った製品ロードマップを効率的に作成できます。
- サポート部門は、容易に解決できる質問を回避することでチケット応答時間を短縮できます。ナレッジベースの信頼性が高ければ、全体のチケット数を削減することもできます。また、実際に顧客とやりとりする際は、同じナレッジベースを参照することで互いの意図を理解しやすくなり、顧客に自信を持ってもらえます。
- サクセス部門は、すばやく価値を提供し、顧客対応能力を拡大して、顧客とより深く関わりあうことで契約の更新や規模拡大の機会を増やせます。
まず顧客への影響を記述することがから始めて、次にビジネス全体にどのようなメリットがもたらされるかを検討しましょう。
視覚化する
企業が巨額の資金を注ぎ込んで開発した最高品質のカメラがあるとします。人間工学的にも、見た目にも、光センサーもレンズも、すべてが最高のカメラです。
その企業はこのカメラの宣伝にも莫大な費用をかけています。そのため、このカメラを使えば自分の子供は必ずスーパーモデルのように写り、風になびく髪はいつも完璧なスタイルで写り、有名な写真家Ansel Adamsの幽霊が自分のInstagramアカウントをフォローし始めるだろうと誰もが確信しています。
そのカメラを買ったとしましょう。投資に見合った価値を得ようとわくわくしながら、あなたは美しいデザインの箱からカメラを取り出します。そして、その下に隠されていた350ページ、7か国語におよぶ説明書を手に取ります。目次を見るだけで圧倒されてしまったあなたは、すぐにその説明書を投げ出して、がらくた用の引き出しにしまい込んでしまいます。次にあなたは、インターネットで検索してYouTubeでそのカメラの使い方を説明している適当な人を見つけます。対象の製品がカメラでも、洋服でも、B2Bソフトウェアソリューションでも、これは最近では当たり前になっている行動です。
この企業は巨額をかけてあなたを顧客にしたのに、適当な動画ブロガーやブログ、フォーラム、さらに悪いことには競合他社に会話を引き渡してしまいました。会話を十分に管理できないことに不満を募らせたこのカメラメーカーは、説明書と同じユーザーマニュアルをオンラインで公開することで対話の場を取り戻そうとします。しかし、探している情報を見つけるには何百ページもスクロールしなくてはなりません。またしても圧倒されたあなたは、Google検索に戻ってしまいます。
この例の最大の問題は、顧客であるあなたにとって何が重要なのかをカメラメーカーが検討したり、追跡したりしていない点です。マニュアルのPDFをオンラインで公開しても、追跡できるのはクリックされたかどうかのみです。会社的に考えて、顧客がどの章や段落、カメラ機能をクリックしたかを知ることができたらすばらしいと思いませんか?こうしたデータは、ビジネスにとって価値のある顧客分析情報となります。それがなければ、顧客に最高のサービスを大規模に提供するのは不可能です。
データ解析
先ほどのカメラのオンラインマニュアルが、ウェブに対応した形式に分解されて、検索しやすく参照しやすいトピッククラスタに分類されたとしましょう。これでカスタマーエクスペリエンスは改善されるでしょうか?もちろん改善できます。さらに、いろいろなメリットがあります。顧客が探しているものに関するインサイトを得られるだけでなく、次に何にアクセスしたか、どうやってアクセスしたか(検索またはクリック)、何度も閲覧され、共有され、フィードバックを受けているのはどのページなのかを知ることができます。
カメラメーカーがさらにお金をかけて顧客にアンケートを行ったとして、製品を購入した後のサポートで特に重要だったのは何かを尋ねても、薄ぼんやりとしか顧客が求めているものを把握できない可能性があります。そもそも、アンケートに全員が回答してくれるわけではありません。また、何が欲しいかを考えて知らせてもらうということは、顧客に負担をかけることになります。それに対し、ナレッジベース内では、顧客は追跡可能な操作を通して必要としているものを自ずと示してくれています。
それが顧客というものです。先述したように、顧客を分析して把握することは社内の複数の部門にメリットをもたらします。それがどのようなものかご紹介します。
ビジネス全体にわたる効果
アンケートの結果、顧客はクイックスタート ガイドを求めていると示されたとしましょう。そこであなたは、サポートポータルにクイックスタート コンテンツを追加します。しかし、これはアンケート結果に基づいたアプローチなので、一部の購入済みの顧客(アンケートに回答した顧客)にしか対応することができません。企業にとってこれは、推進していくにはかなり頼りないインサイトです。
一方、PDF形式のユーザーマニュアルを分解して、ウェブ対応のマイクロコンテンツとして再利用すれば、顧客に質問しなくても彼らが実際に求めているものを知ることができます。たとえば、暗いところでの撮影方法に関する記事を顧客は検索し、クリックしていることがわかるかもしれません。顧客は記事を検索し、共有し、評価し、コメントを投稿し、役に立つ記事としてランク付けしています。こうした顧客の行動は、企業が対処し、最適化すべきものについて、アンケートよりはるかに優れたインサイトを提供します。それが各部門にもたらすメリットについて考えてみましょう。
- マーケティング部門は、低照度センサーのすばらしい性能を顧客にアピールするためのキャンペーンを作成する、顧客が情報収集して購入に至るまでの期間に活用できるセールスアセットを開発する、既存顧客を維持してアップセルするためのコンテンツをカスタマーサクセス チームに提供することが可能になります。
- 営業部門は、(以前はまったく実現できなかった)すばらしい夜間撮影機能についてや、思い出を感情とともに呼び起こすために大切な細部を、いかに簡単にとらえることができるかを語れるようになります。手元で必要なドキュメントを簡単に参照できるため、購入までのプロセスを加速することができます。
- 製品部門は、そのカメラの低照度センサーの性能が顧客が期待をまだ満たしていないことを知り、顧客のニーズに応えられるよう製品ロードマップを調整できるようになります。
- サポート部門は、低照度下での撮影に関する質問に答える際に特に意識すべき情報を把握して、顧客からの信頼を深め、顧客にかかる負担を減らすことができます。
- サクセス部門は、ブランド展開や新機能を通して顧客を誘導し、製品を最大限活用する方法についての対話を深めることができます。すばらしい写真が撮影できれば、顧客はブランドの支持者になってくれます。つまり、驚異的な夜間撮影機能があるこのすばらしいカメラについて、自分の人脈に宣伝してくれます。また、付随するサポートやサービスも最高水準だと伝われば、インバウンドのリードをさらに獲得できます。
組織内のどの部門であってもかまいません。ナレッジベースを活用して、顧客にすばらしいカスタマーエクスペリエンスを提供している自分のチームの姿を思い描いてみましょう。