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AIとナレッジベースの組み合わせがサポートに大変革を起こす理由

発行日: 2020年5月4日
更新日: 2020年5月4日

AIの進化についてはさまざまな議論がありますが、こちらの長期予測が正しければ、近い将来、私たちの働き方は産業革命以来の大変革を遂げることになります。とは言え、既に今日の時点で、AIは私たちの働き方をより良くするためにさまざまな分野で取り入れられています。たとえばカスタマーサービスの分野では、「他人の感情をくみ取る」という人間ならではのサポート力をさらに高める要素として、AIが取り入れられています。他人の感情をくみ取ることは、少なくともAIの能力が人類を超える「技術的特異点(シンギュラリティ)」に到達するまでは、AIだけではカバーできないことです。

カスタマーサービスにおけるAIの役割と聞くと、多くの人はボットを思い浮かべると思います。ボットは、あまり複雑なものでなければ人を介さずに顧客の問題を解決できるため、カスタマーサービスに不可欠な要素となりつつあります。しかし、AIの役割はそれだけではありません。実はナレッジマネジメントにおいても欠かせない要素となっています。AIを活用して洗練されたナレッジベースを構築し、的確なナレッジマネジメントを行えば、業務コストを25%も削減することができます。そうなれば、カスタマ―エクスペリエンスの改善や対応時間の短縮につながるだけでなく、顧客とサポート担当者の双方に人気の高いセルフサービスがさらに活性化されます。

ではなぜ、AIを基盤としたナレッジベースが、優れたカスタマーサービスの提供に欠かせなくなったのでしょうか? ここからはその理由を探っていきましょう。

AIから提供される関連性の高いナレッジによって、迅速なサポートが可能になる

サポート担当者はAIシステムからナレッジを先回りで提供してもらえば、自分で解決策を探す手間を省くことができます。すると当然、顧客に待ってもらう時間も短縮できます。それがAIのおかげだとは思いもよらないかもしれませんが、今までなら「折り返し電話します」と言われていたのが、瞬時に答えが提示されるようになったことには、顧客もきっと気がつくはずです。

また、AIによってナレッジベースから多数のチームの情報を瞬時に引き出せるため、専門外の質問が来ても、さまざまな担当者にたらい回しにすることなく、自力で対応できるようになります。実際、顧客にしてみれば、問題の解決を企業にサポートしてもらいたいだけであって、適切な窓口かどうかまでいちいち気にしていられません。

顧客を待たせたり他のスタッフに引き継いだりするような対応が減れば、自ずと顧客からの信頼が高まり、関係性も深まります。調査会社ForresterのKate Leggett氏は次のように話します。「顧客の質問に1秒でも速く答えるには、サポート担当者の下に適切なデータとナレッジが揃っている必要があります。顧客が望んでいるのは、無駄な時間をとられたくないという一点に尽きます。とは言え、それが非常に難しいというのも事実です」

AIによってコンテンツの正確性と関連性が維持される

AIを活用するメリットは、問題解決に必要な情報を即座に手に入れられることだけではありません。AIを活用すれば、ナレッジベース内の情報の関連性が常に保たれるようになります。事実、アジャイル型のアプローチを採用してコンテンツを常に最新の状態に維持している企業ほど、セルフサービスでの問題解決率が高く、検索結果の精度も高いという複数の調査結果が出ています。製品やサービスが複雑になるにつれ、ヘルプセンターの管理はどんどん難しくなっていきます。しかし、AIの力を借りればその複雑さを解消することができます。

たとえばAIを活用すると、タイトルの変更、内容の追加、検索ラベルの改善が必要な記事を機械学習で特定し、レビューすべきコンテンツに定期的にフラグを付けることが可能になります。また、数あるAI機能の中でも最も便利なのが、顧客のサポートリクエストの内容を基に、新しいコンテンツの作成を提案してくれる機能です。この機能を使用すれば、社内のエキスパートは需要の高いコンテンツを簡単に特定し、そのコンテンツを優先的に作成できるようになります。そうしてコンテンツが充実すれば問い合わせの数は自然と減るため、サポート担当者はその分カスタマーサービスの質を追求できるようになります。

AIがサポート担当者の育成を支援

顧客から特殊な質問を受けた場合、経験豊富なサポート担当者なら必要な情報をすぐに引き出すことができますが、キャリアの浅い担当者はなかなか必要な情報にたどり着けず、顧客の貴重な時間を奪ってしまいがちです。しかし、AIを活用すれば、ナレッジベースからそのときの会話の文脈に沿って、関連するナレッジが即座に提示されるため、情報をあちこち探し回る必要がなくなります。通常、優先度の低いチケットから任される新人担当者も、それによってすぐにベテランの手を離れて戦力として活躍できるようになります。

ナレッジが瞬時に手に入るのであれば、状況に応じたコーチングも可能になります。Emergence CapitalのパートナーであるGordon Ritter氏とJake Saper氏は、このコンセプトを突き詰め、「コーチングネットワーク」という理論を完成させました。これは、サポート対応の前後に行う従来のトレーニング手法とは異なり、機械学習を活用してリアルタイムにサービスの品質を高めていく方法です。

AIを活用したコーチングネットワークでは、広範なサポート担当者のネットワークからデータを集めて、そこから最適な解決策を特定します。つまり、人間の知性を効果的に集約し、組織全体の知識を底上げしようということです。Saper氏が言うように、「世界の片隅でたった1人で進めている仕事が、図らずもそのネットワークのすべての人に気づきを与えているかもしれません」。

どういうことかと言うと、たとえば、複雑なセキュリティ関連の問い合わせに対し、AI基盤のナレッジベースから関連性の高い記事が提示されたとします。しかし、担当者はその後も調査を続け、問題解決につながるまた別の情報を見つけることができました。そうして知りたかった別の情報も見つかったわけですが、AIがなければ、その情報はきっとそのまま忘れ去られてしまうでしょう。しかし私たちにはAIがあります。AIによって、サポート担当者が想像力を働かせて見つけた情報がきちんと記録されます。そしてそれはサポートチームの集合知となるだけでなく、顧客の問題解決策の1つとしてこれから活用されるようになるのです。

AIは、セルフサービスの促進や、サポート担当者のエクスペリエンスの改善にも役立ちます。そちらの詳細もぜひご確認ください。