
最近の調査によると、2020年までにカスタマーエクスペリエンスはブランドの主要な差別化要因として価格や製品よりも重視されるようになると予測されています。これを踏まえれば、顧客を惹きつけ、関係を強化し、定着させるために、企業がカスタマーエクスペリエンスの投資を拡大しているのも当然の流れと言えます。そして、カスタマーエクスペリエンスの改善に相当な予算を割り当てている企業では、取り組みの成果を測定する手段が必要になるはずです。
しかし、カスタマーエクスペリエンスに関連する主要業績評価指標(KPI)は多岐にわたっており、あまりの数に圧倒されてしまうことでしょう。カスタマーエクスペリエンスをどう向上させるか、どのようにビジネスの成果につなげていくのかを検討するには、企業が掲げる目標に沿ってエクスペリエンス全体を分解し、細かく分析することが効果的です。そうすれば、達成したい目標を見据えながら、自社の業績評価に適したKPIを判断できるようになります。
たとえば、カスタマーエクスペリエンスの戦略が「アトラクション(惹きつけること)」、「エンゲージメント(関係を強化すること)」、「リテンション(定着させること)」の3つの側面に分けられる場合には、手始めに以下のKPIでの業績評価を検討することをお勧めします。
追跡すべき10のカスタマーエクスペリエンスKPI
- マーケティングキャンペーンの効果
- ダイレクトトラフィック
- 平均ページビュー数
- 顧客獲得率
- コンバージョン率
- カート放棄率
- 顧客解約率
- Net Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)
- 顧客満足度
- 平均解決時間
カスタマーアトラクション = 顧客を惹きつける
1. マーケティングキャンペーンの効果
この指標を見れば、特定のマーケティングキャンペーンの投資収益率(ROI)が明らかになり、企業全体の成長率を評価できます。現代のマーケティングにおいて重要なのは、単に広告を出すことではなく、顧客の声をビジネスに反映させ、ニーズを満たすことです。マーケティングキャンペーンの効果が高いほど、より優れたカスタマーエクスペリエンスを提供していると言えます。
2. ダイレクトトラフィック
ダイレクトトラフィックとは、トラフィック促進を目的とした企業の活動とは関連しない、何らかの操作で発生したトラフィックを指します。ブランド認知度と密接に関係しており、ダイレクトトラフィックを分析すれば、将来の成長につながるヒントを見つけられます。
3. 平均ページビュー数
訪問者がWebサイトにしばらく滞在し、いくつものページにアクセスしているなら、サイト上のコンテンツが訪問者にとって関連性が高く、興味を持てる内容だということです。訪問者の関心をそがずに、ブランドや製品についてもっとよく知ってもらうには、サイト上のカスタマーエクスペリエンスを改善することが一番の方法になります。
カスタマーエンゲージメント = 顧客関係を強化する
4. 顧客獲得率
バイヤージャーニー全体を通して優れたエクスペリエンスを提供できれば、見込み客との関係が深まり、購買の意思決定を後押しできるようになります。顧客獲得率が高いほど、マーケティングキャンペーンやセールスキャンペーンの投資効果が高いと判断できます。
5. コンバージョン率
カスタマーエクスペリエンスは購買プロセスに欠かせません。バイヤージャーニー全体のエクスペリエンスを最適化することで、あらゆるタッチポイントにおけるコンバージョン率を引き上げられます。コンバージョン率が向上したなら、それはつまり、カスタマーエクスペリエンスの効果によって見込み客がバイヤーファネルを順調に前進しているということです。
6. カート放棄率
Baymard Instituteによると、カート放棄率は平均68.53%にものぼります。その背景としてはさまざまな理由が考えられますが、カスタマーエクスペリエンスを刷新するだけでもその割合を大幅に改善できるはずです。カート放棄率の低下は、考え抜かれたユーザーエクスペリエンスが実を結んだことを意味し、リピーターの獲得や売上の増加が期待できます。
カスタマーリテンション = 顧客を定着させる
7. 顧客解約率
一定期間内にサービスの利用を停止した顧客の割合で、「チャーンレート」とも呼ばれます。解約率を抑えることは、顧客ベースと収入源の拡大に向けた第一歩です。解約率が低ければ、サービス水準に対する顧客満足度の高さ、カスタマーエクスペリエンスの質の高さ、顧客ロイヤルティの高さが伺えます。
8. NPS
NPSは、企業がどれだけ顧客に支持されているかを評価するうえで必須の指標です。NPSが低いなら、企業に対する顧客の見方をがらりと変えるための取り組みを考えなくてはいけません。VoC(Voice of Customer:顧客の声)プログラムの実施は、顧客の意見を製品やサービスに反映し、NPSを向上させるうえで、効果的な出発点となります。
9. 顧客満足度
顧客満足度(CSAT)は、ほとんどの場合、エクスペリエンスの種類別に測定されます。CSATの高さは、顧客中心の文化を醸成できていること、そしてそのエクスペリエンスが顧客の期待に応える、または期待を上回るものであることを示しています。
10. 平均解決時間
サポート担当者が顧客の問題を解決するために費やした時間の平均値です。この指標は、顧客満足度に直接関係し、チームの効率を反映しています。顧客の40%がカスタマーサービスの質の高さを聞きつけて競合他社から乗り換えているという調査結果も出ており、平均解決時間を軽視するわけにはいきません。
カスタマーエクスペリエンスの最適化戦略を評価するうえで、どの企業にも使える万能な方法は存在しません。さまざまな指標を組み合わせて包括的に分析することが、一番効果的な方法だと言えそうです。繰り返しになりますが、自社の目標を踏まえて、測定するべき指標を検討しつつ、まずは今回紹介した基本的なKPIからスタートしてみることをお勧めします。