
Net Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)は、顧客の「企業に対する満足度」を示すもので、「顧客」と「企業や商品」の関係性を重視するマーケティングでは極めて重要な指標となります。近年、IT系の大企業でNPSが採用された結果、広く世間に知られるようになりました。今回は「NPSとは何か?」、また「NPSと顧客満足度との違いは何か?」について紹介します。
NPSとは何か
NPSはNet Promoter Score®の略で、自社の商品やサービスを購入した顧客が「その商品やサービスにどれくらい好意や信頼を持っているか?」を示す指標です。顧客ロイヤルティを数値化したものとも言えます。
NPSは業績の向上と強い相関関係があります。NPSが高いということは、その商品やサービス、および企業に対する好意的な消費者が多いということです。好意的な消費者は、リピート客として多くの商品を購入してくれるだけでなく、商品やサービスを広めるための口コミを行い、企業へのフィードバックを積極的に行ってくれるので、長期的な収益増加につながります。
NPSを使うと、顧客からのロイヤルティをシンプルに表現できるようになります。このため、顧客を重視する企業にとって極めて重要な指標となります。GoogleやApple、Facebook、Amazonといった米国の大企業でNPSが導入されたことで話題になり、日本でも認知度が高まっています。
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NPSのメリット
NPSには、次のようなメリットがあります。
- 理解しやすい
- NPSは質問に対する回答が点数で示されるため、測定が簡単です。計測方法も結果もシンプルなので、専門家でなくても理解しやすい指標といえます。
- 立ち位置が分かりやすい
- NPSは同じ質問で統一して計測できる指標となるため、競合他社と簡単に比較でき、業界内での自社の位置付けが明確になります。ただし、異業種の企業との比較はできません。業界が異なるとNPSの平均値が大きく変化してしまうためです。
- 経営に生かしやすい
- NPSは理解しやすく、業績と大きな相関関係があるので、さまざまな場面で経営分析に利用されています。「顧客」と「商品やサービス」の接点がある場面で使用されるケースが多く、KPI(重要業績評価指標)や広告の効果測定に利用できます。特にSNSからのシェアや口コミを利用したキャンペーンの分析に効果があるため、近年では利用の機会が増えているようです。そのほか、社内での人事評価、労働環境の改善にも活用できます。
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NPSのデメリット
一方、NPSには、次のようなデメリットもあります。
- 質問の設計が難しい
- NPSは、質問の仕方によって回答が大きく異なります。そのため、調査の目的を具体的に設定してから質問内容や言葉遣いを考える必要があります。質問の作成には、知識や経験が問われます。また、調査対象となる母集団によって回答が異なるため、適切な母集団を設定する必要があります。
- 科学的根拠がない
- 回答者の感覚は個人差が大きく、質問の仕方によっては評価の理由が分かりにくい、といったようにNPSは科学的な根拠に乏しいという批判もあります。
- 日本人には不向き?
- 調査結果は回答者の感覚に頼るものになりますが、日本人の回答は中間の「5」に偏る傾向が多いため、ほかの国の調査に比べてNPSが低くなりがちです。
NPSはどのように算出するか
NPSは、好意的な消費者の割合から批判的な消費者の割合を差し引いて算出します。
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アンケート調査の実施
自社の商品やサービスについて「友人・知人・同僚に薦める可能性」を質問し、0~10点の11段階で評価してもらいます。母集団は十分な数を確保しなければなりません。母集団が400人以上なら誤差は±5%以内、2000人以上なら誤差は±2%以内になります。
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回答の分類
質問に対する回答を次のように分類します。
- 9~10点:「推奨者」
- ロイヤルティの高い顧客で、ほかの消費者にも商品やサービスを薦めてくれる
- 7~8点:「中立者」
- ある程度は商品やサービスに満足しているが、他社に流れる可能性もある
- 0~6点:「批判者」
- 商品やサービスに不満を持ち、悪い評判を流す可能性もある
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NPSの算出
推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引いたものがNPSのスコア(-100~+100)になります。なお、改善が必要な点を具体的に発見するには、深く詳細な質問が必要となります。
NPSと顧客満足度との違い
NPSは顧客満足度とよく似ていますが、異なるものとして認識しなければなりません。
顧客満足度とは
顧客が現在、商品やサービスについてどの程度満足しているかを示す指標です。商品やサービスの品質を数値化したものといえます。ただし、現在の顧客満足度が高くても、リピート客になるとは限りません。そのため、今後の業績や収益性の予測には不向きです。
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NPSとは
「商品やサービスを他人に薦めたいか?」を質問することにより、顧客の今後の行動を数値化するものです。リピート客の割合、新たな顧客増加の可能性を示す指標となるため、今後の業績や収益性に大きく関わります。
顧客満足度よりもNPSの方が、「今後の業績」との相関性は高くなります。また、NPSは数値により統一された評価ができるため、分析にも使いやすいと言えます。そのため、企業の経営分析においてNPSが使われる機会が多くなってきています。
まとめ:NPSを把握し、上手に活用して売り上げにつなげよう
NPSは、SNSを用いて拡散させるマーケティングには欠かせない指標です。NPSの向上は、LTV(生涯顧客価値)の増加にもつながります。企業が長期的な利益を確保していくには、NPSを向上させるための施策が欠かせないものになっていくでしょう。