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長期的な成功につながる顧客ロイヤルティの育成とは?

発行日: 2021年12月9日
更新日: 2021年12月10日

顧客ロイヤルティとは?

顧客ロイヤルティとは、顧客がリピートという形で企業の努力に応えてくれることです。顧客が自ら進んで何度もリピートしてくれるわけですから、企業として心に響くカスタマーエクスペリエンスを提供できていると考えることができます。

会社に勢いのある時だけでなく先行きが見えない時にも変わらず贔屓にしてもらえるような顧客関係の構築は、顧客離れの低減とロイヤルティの向上を図るためのスキルや戦略を取り入れることから始まります。

顧客ロイヤルティは企業の利益を大きく左右します。Zendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート 2020年版では、次のような結果が得られています。

  1. 顧客の52%はお気に入りのブランドの商品を購入するための労力を惜しまない
  2. 顧客の74%は特定のブランドまたは企業に愛着を持っている

リピーター、ともすると何世代にもわたってのリピーターがいるということは、製品やサービスに揺るぎない価値が認められ、全体的にブランドから質の高いカスタマーエクスペリエンスが得られているというメッセージに他なりません。これこそ企業にとって最上の評価です。

顧客獲得と顧客維持

顧客を獲得することと顧客を維持することのどちらを優先すべきか、という従来からの議論がありますが、これは顧客ロイヤルティにも密接に関係しています。

コスト効率で考えると、顧客維持が顧客獲得をはるかに凌ぎます。『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事で紹介された、ネット・プロモーター・スコア(NPS®)という指標を考案したことで知られるBain & Companyの調査によると、顧客維持率をわずか5%上げるだけで利益が25~95%上昇したそうです。顧客維持は顧客ロイヤルティの評価に用いられる数ある指標のひとつです。

顧客ロイヤルティの評価

企業が顧客ロイヤルティを向上させたいと思うのは今に始まったことではありません。それでも、いざ顧客ロイヤルティ戦略の成果を評価するとなると、一筋縄ではいかないと感じる企業も多いはずです。顧客との関係をどれだけの期間維持できているかを評価に織り込む企業が多い一方で、例えばサービスの中断や事業拡大時の困難な状況といった厳しい時期にも変わらず支えてくれた顧客を評価に入れる企業もあるでしょう。また、顧客ロイヤルティの評価にチャーンレート(顧客の離脱率)といった指標を使う企業もあります。

顧客ロイヤルティ向上のヒント

ひとつはっきりしているのは、ロイヤルティは醸成し維持していかなければならないもので、一度導入すればあとは自動化できるという類いのものではないということです。カスタマーエクスペリエンス分野に秀でた企業に顧客ロイヤルティ育成のヒントを尋ねてみると、個人レベルの人間関係で重視されることの多くが、顧客とブランドの関係にも当てはまるという答えが返ってきました。

例えば、首尾一貫している、良き聞き手となる、学んだら行動につなげる、誠実であるといった気質は、どちらの関係でも大切になります。

カスタマーサポートからマーケティング、そしてブランディングまで、すべてのカスタマーエクスペリエンスを検討しながら、社内のプロセスと人の感情的要素をブレンドできた時に顧客ロイヤルティを適切に醸成することができます。このための取り組みに次のようなものがあります。

  • 顧客の負担を下げる
  • 優れたカスタマーサービスを提供する
  • 「感情データ」を活用して感情のつながりを作り出す
  • 顧客ロイヤルティの定義を再検討する

顧客の負担を減らす

顧客ロイヤルティを高める1つの方法に、顧客の負担を減らすというアプローチがあります。具体的には、顧客が製品やサービスについて使いづらさを感じていることがあれば、その原因を取り除いて容易に目標を達成できるようにします。シンプルさを前面に出したカスタマーエクスペリエンスにすれば、次もまたそのブランドを使いたいと思ってもらえる確率がグンと上がります。

顧客ロイヤルティを評価する際には、 顧客努力指標(CES)をベンチマークにして「負担の少ない」カスタマーエクスペリエンスを提供できていることを評価する方が、顧客満足度(CSAT)やNPSの向上といった王道の指標よりも効果的です。これは、Corporate Executive Board(CEB)によるカスタマーサービスとロイヤルティの調査で明らかにされた事実で、地域や顧客層が偏らないようにしながら97,000人の顧客にインタビューして収集したデータに基づくものです。

2017年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された記事に、「業績の維持に必要なのは、顧客に完璧な選択肢を提供することではなく、選択をシンプルにすること。たとえ最初に顧客を引き付けたのが価値ある提案であったとしても、その提案が必ずしもリピートを保証するわけではない」という記載があります。

逆も然りで、顧客の負担が軽減できる快適なカスタマーエクスペリエンスは顧客ロイヤルティに貢献しますが、リピートしたいと思ってもらうためには、これだけでは十分ではありません。

優れたカスタマーサービスを提供する

優れたカスタマーサービスを確実に顧客ロイヤルティにつなげていると認められている企業は、一様に先を見越すことの大切さを唱えています。例えば、顧客からの質問を予測し、数週間あるいは数か月のうちに切迫した問題が起こると予期される場合は未然に阻止するサポートをするなどです。優れたカスタマーサービスを提供できれば、カスタマーサポートチームは単に一度限り問題を解決するチームではなく、戦略的パートナーとなるブランドを押し出すことができます。

期待値を上回ろうという姿勢は、高い顧客満足度(CSAT)と顧客ロイヤルティに直結します。十分な訓練を受けた人をカスタマーサポートチームに揃えていれば、目の前にある問題は解決できます。ですが、カスタマーサービスにも長けている人が揃っていれば、真のパートナーシップに発展し得る顧客関係の構築につなげていくことができます。ここで一役買うのが、従来のカスタマーサポートとカスタマーサービスの連携です。

カスタマーサポートチームに専門知識以外のスキル習得を奨励し、そういったスキルを持っている人を採用すると、この連携を実現しやすくなります。チーム内で共感やラポールを育くむことはもちろんのこととして、会社と足並みを揃えて発展していけるように、従来のカスタマーサポートに関するKPIを使って評価することもできるでしょう。

例えば、Magnoliaでは、解決済みチケット数や解決までの所要時間が最適なKPIであるとは考えていません。その理由は、この会社ではカスタマーサービスの成功の定義に請求や配送の問題解決だけでなく、非常に多くのことを取り入れているからです。顧客がカスタマーサポートに求めているのは「取引」のサポートだけではなく、顧客の経験に親身に耳を傾ける役割も同じくらい重要だと考えています。

「感情データ」を活用して感情のつながりを作り出す

顧客との間に感情のつながりを築く方法はたくさんあります。驚かれるかもしれませんが、リストの上位にくるのは、高い還元率を誇るリワードプログラムではなく、ブランドをアピールするクレジットカードや「1つ買うともう一つ無料」というプロモーションでもありません。インフルエンサーの影響力を活用した手法をはじめとする、顧客ロイヤルティにフォーカスした戦略的なマーケティングでさえも、顧客とブランドの間に感情のつながりがなければ効果がありません。

Magnoliaでは、最前線で業務にあたるサポートチームが、顧客とのやり取りの中でこのつながりを生み出せる環境を作っているのです。また、企業は今後の方針を決める時にも感情データの力を活用できます。データを見ることで、長期的な関係構築のチャンスにつながる可能性の高い、影響力の大きい顧客の行動を割り出すことができます。

Deloitteによる最近の調査から、感情データを賢く使えば、顧客生涯価値を高め、ブランド・アンバサダー獲得につながる可能性があることが分かっています。ブランド・アンバサダーは多くの点で、究極の顧客ロイヤルティプログラムといえます。

人間関係と同じで、顧客に感情のつながりを強要することはできません。これはデータがあってもなくても同じです。顧客との間に感情レベルのつながりを築く最善策は、事業のあらゆる部分で顧客のニーズに耳を傾けて顧客の意見を尊重することです。

つまり、顧客データを売って手っ取り早く儲けるのではなく、カスタマーエクスペリエンスの個別化(パーソナライゼーション)のために活用するなど、データの賢い使い方が求められるということです。また、顧客が好みの方法を選んでサポートを受けられるようにすることでもあります。

顧客重視を最大まで推し進めた企業の中には、顧客が欲する製品しか作らないという、顧客ニーズを中心に事業を展開しているところもあります。状況を問わず、企業は顧客本位の実現に向けデータを活用できます。

「顧客ロイヤルティ」の定義を再検討する

何が顧客ロイヤルティ向上につながるのかを理解すれば、それで終わりというわけではありません。顧客ロイヤルティとは、変化を続ける環境の中で、継続的に取り組んでかなければならないものです。変化にも色々あり、顧客層・ニーズ・好み・環境・世界観といった消費者側の変化もあれば、企業側の変化もあります。

また、景気の移り変わりや普及しているテクノロジーの進歩もあるでしょう。コアとなる忠誠心のあつい顧客を獲得できるかは、そうした変化を察知して機敏に対処していけるかどうかにかかっています。

これは、顧客ロイヤルティの定義が時代に即さなくなれば、思い切ってそれを捨てることも厭わないということでもあります。

例えば、「顧客が何年にも渡ってどんな時もその航空会社、靴のブランド、あるいは自動車会社だけを選ぶ」という、顧客ロイヤルティの伝統的な定義があります。これを近代化させると、複数のブランド、あるいは複数のカテゴリーで特定のブランドに加えて競合ブランドも愛用する、いわば「誠実さに欠ける」顧客の方が実は一般的であるということになります。

先見の明のある企業では、こういう行動も嫌がることなくそのまま受け入れます。ciValueでChief Strategic Consultantを務めるJoel PercyとThe Nielsen Companyで小売用製品リーダーシップ担当SVPを務めるJulie Currieは、全米小売業協会による2019年のBig Showで、顧客のディスロイヤルティを概説したうえで、小売店としてできる対応を紹介しています。

Currieは、「ディスロイヤルティ時代に顧客を味方にできるのは利他の心を持つ小売業者です。今日の小売業者はビジネスありきという立場をひとまず脇に置いて、最大限の情報を取り入れながら、中核となる消費者層の枠にとらわれずに消費者個人のニーズとウォンツに注意を払う必要があります。一般大衆をターゲットにする以上のことをしていかなければなりません。既存のお客様かどうかに関係なく、個々の消費者のニーズを満たすためにできる限りの努力をする、それが利他の心を持つ小売業者です」と述べています。

企業が長期的な視点で検討すべきもう1つのポイントが、ロイヤルティは実際には企業と顧客の間の互恵的関係であるという点です。企業はどんな時も変わらず贔屓にしてくれるリピーターを求めますが、ブランドは必ずしも顧客の恩に報いることができていません。

顧客には数多くの選択肢があります。そして、現代の企業が顧客の最終候補リストでトップの座を確保し続けるために実践できることもいくつもあります。例えば、製品をプレゼントして顧客を大切にしていることを示す、パーソナライズされたマーケティングなど、顧客本位を実現するために責任感を持ってデータを使用する、好みに合わせてサポート方法を選べるようにする、顧客の時間や努力を尊重する、といったことが挙げられます。

企業が顧客ロイヤルティを大切にすべき理由

顧客が長きにわたって愛用したいと思ってくれる、あるいは自分の時間を使って人に勧めたいと思ってくれるのは、企業にとって大変名誉なことです。企業は顧客のニーズと好みを中心に据えることで、息の長いロイヤルティを確保できます。

本記事でご紹介したポイントを踏まえ、ぜひ顧客ロイヤルティの構築と醸成に取り組んでみてください。

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